怪人の日常

yu-ki

怪人の日常(脚本)

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〇高層マンションの一室
バン「私の名前はバンというのだ。 人間が見たらキャッと声を上げるくらい ごつい外観だ。 自分が鏡を見てもいかついな、と思う」
  こんな私について話させてくれ。
  忙しいから後で、って?
  まあまあ、なかなか人間と話す機会がないもので聞いてくれよ。
  私はこのマンションに住んでいる。
  眺めが良くていいだろ?
  私も気に入っている。
  実はこのマンションは私の所属している会社が借り上げているもので、人間が窓越しに怪人の姿を見ても、怪人と見えないような
  特殊フィルムが貼られている。
  仕事が休みの日は私はこの部屋で過ごすのだ。
  妻も紹介しよう。
バン「妻のよしこだ。私も表情は読めないが、気立ての優しい怪人だぞ」
よしこ「あら、人間のお客様なんてこのマンションに住んでから初めてね。 夫とはどういういきさつで仲良くなったのかしら」
  オレは引越したばかりで近くを散策しようとしたら道が分からなくなって誰かに道を聞こうとしてこのマンションに声を掛けた。
よしこ「あらあら、それはお困りでしたわね。 あなた、後で道を教えて差し上げてくださいな」
  この部屋のドアをノックして怪人が出てきたときは、何かのイベントにでる衣装を着けた人かと思った。
  いや待て、夫婦でコスプレをして、オレを
  からかっているんじゃないだろうか。
  怪人なんてこの世にいるのか?

〇高層マンションの一室
よしこ「怪人がドアを開けてびっくりしたでしょう。人間が怖がるのはもう慣れっこになってますの」
バン「時間があるなら少し話を聞いてくれないか?怪人の生活を聞くのも悪くなんじゃないか」
  うん、まあ、家に帰っても晩飯を作るくらいですることもないし、聞いてみるかな。
  オレは許可をもらいバンさんの衣装?を触らせてもらった。案外表面は柔らかい。
  カラフルな外観は私たちの皮膚に当たるのか。

〇高層マンションの一室
バン「よおし、若者よ、私たちの話を聞いてくれ。私たち怪人は地球生まれではない。 別の銀河のある星で生まれ育った」
バン「その星は私たちのような人間からすると怪人と呼ばれる者ばかりが暮らしている。 スカウトをしに地球から時々人間が来る」
バン「地球の技術は君が思うより進んでいてワープホールを使って案外短時間でその星に たどり着けるのだ」
  日本語も上手ですね、とオレが話すと、
  時計型言語変換装置があれば怪人の住む星の言葉も日本語に変換されるということだ。
  何から何までとんでも話だ、情報量が多すぎて目を丸くするばかりだ。
  よしこさんがお茶を持ってきてくれた。
  食料の買い出しとか、外出するときはどうするか聞くと、食料は会社が届けてくれるので買い物に行かなくて済むが、
  外の空気に触れたいとき、バンさんが会社に行くときは多少エネルギーは使うが、人間の姿になることができるそうだ。

〇高層マンションの一室
よしこ「たまには外にでて散歩したり、ジョギングしたりしないと身体に良くありませんものね」
バン「人間になる時はどんな人間になるかイメージした姿になれるし、今まで人間に怪人だと見破られたことはないぞ。あはは!」
  バンさんは笑い声を立てたが、表情が読み取り辛い。普段のお仕事は何をされているんですか、と聞くと
バン「普段は怪人ばかりであとは人間が数名のオフィスで事務をしているようだ。 イベントの怪人役で出演要請があることも」
バン「イベントでは悪い怪人役ばかりでヒーローに倒されるのは少しつらいが、仕事と割り切っているさ」

〇高層マンションの一室
よしこ「さあ、バンがたくさん話すのを聞いて喉が渇いたでしょう。 お茶しかありませんが、どうぞ、お飲みになって」
  オレはもっともっとたくさんのことを聞きたかった。良い怪人が登場するアニメがあってもいいんじゃないか。
  そうすれば人々の怪人に対するイメージもすこしづつ変わり、いつかバンさんたち怪人も・・・ヒーローとして
  登場できるんじゃないかな、その点はどう考えていますか、と聞いたがバンさんはとりあえず現状に満足している、と答えた。

〇高層マンションの一室
  いつの間に時間が過ぎていた。
  興味深い話ばかりでまだまだ聞き足りない感じがした。
  よしこさんの出してくれたお茶をぐいと飲みほし、今日はありがとうございました、また遊びに来ていいですか。もっと話を・・・。
  と言いかけたらなんだか急に眠くなった。
バン「かわいそうだがこの若者には眠ってもらい翌日には会社の者に私たちと出会ったこと、話をしたことを忘れる操作をしてもらおう」
よしこ「お茶に混ぜた薬はそれほど強力ではなくこの若者は明日の朝には目覚めることになるのね。仲良くなれそうだったけど残念ね」
バン「それが私たちの宿命で仕方ないさ。 私たちは人々の心の中ではまだ悪役なんだ」

〇高級マンションの一室
  あれ、いつの間に眠っていたのか。
  もう朝だ。また会社にいかなきゃ。
  きのうはえーっと道に迷って、どうしたんだっけ。
  そんなことは、いいや。急げ急げ。間に合わないかも。昨日の晩御飯はなんだったかな。
  食べないで眠っちゃったのかな。

〇高層マンションの一室
  会社が終わりパソコンで検索をしているうちに、あれ?この怪人どこかでみたような。イベントで見かけたのかな。
  部屋から夜空を眺めてみる。
  この宇宙のどこかにぼくたちと同じ背格好の宇宙人はいるのだろうか。
  いたら会いたいなあ。
  きっとオレたちと同じ容姿でなくても、宇宙人には会えると信じたい。その方が楽しいもんな。よし、今日はこれで終了だ。
  明日も早起きして、がんばるぞ。
  待ってろよ、オレのまだ知らないことたち。明日も良い日だといいな。
  おやすみなさい。

コメント

  • 「怪人の日常」という講演会で全国を回れそうだなあ、と呑気に読んでいたら、最後はそうなりますか。怪人に限らず「自分たちと違う者」が悪いのではなく、それを頭ごなしに排除しようとする私たちの差別意識の方に問題があるのかもしれませんね。

  • いい人達で、これから交流できるようになる、と思ったら…なんだか分かり合えそうな可能性があっただけに、少し寂しさの残るエンドでしたね。

  • 宇宙から来た怪人が地球で生活するのに人間に危害を加えないならもっと仲良くなれたらいいですね。怪人は性別や顔の表情が分からないから心で繋がっているんでしょうか?

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