3 ハラハラは突然(脚本)
〇洋館の廊下
腰を引き寄せられて──
セイラ(あ・・・、目閉じてる)
密着しているところが熱い
顔が近づいてきて、思わず目を閉じた
セイラ(俺、ホントにコイツと・・・)
鼻がかすり吐息がかかった──
その時、鷹野が叩かれた──
セナ「いってーな!!」
伊乃里「また女の子に手だして!!」
目の前にいた女性は美紅と一緒にいた人だ
セナ「伊乃里!?」
伊乃里「その子に謝りなさい!!」
ファン「なーんだ」
セイラ(??)
ファン「あんた、マネージャー公認じゃないんだ フフフ なら、すぐ別れさせられるわ♫」
セイラ(マネージャー? 鷹野の? 鷹野はいったい何者なんだ?)
伊乃里「え? もしかして本当にセナの彼女?」
鷹野が背中をつついた
セイラ「は、はい セイラと申します」
伊乃里「申し訳ないけど、今すぐ別れてもらうわ」
凛とした美しく強い声だった──
セナ「オレは絶対別れないからな!!」
伊乃里「却下!! 音楽活動に支障がでたらどうするの!?」
セナ「支障は出さないし、ファンも大切にする!! これからは遅刻もしない イベントも全部出る!! だから、頼む、伊乃里」
伊乃里「・・・・・・」
セナ「・・・・・・」
しばらくお互いがにらみあっていた
伊乃里「珍しいわね・・・そこまで言うのなら・・・ 1ヶ月よ。それまでに気持ちを整理しなさい」
ファン「えー、そんな!!」
伊乃里「あなたも、接近禁止命令出されたくなかったら、自分の行動を見直す事ね」
ファン「あたし、そんな脅しでセナ推しやめませんから!!!!」
伊乃里「はあぁ・・・ セナ、もうすぐスタートよ 準備しなさい」
セナ「ああ、了解 ありがとな、伊乃里」
伊乃里「まだ、許したわけじゃないから」
セナ「セイラ」
セイラ(名前呼ばれただけなのに・・・ 俺、変だ、いや、この格好のせいだ)
セナ「巻き込んじまってごめんな」
どこか寂しそうな
鷹野の背中を見送った
セイラ「はぁ・・・」
〇ジャズバー
おかみく「もう、どこ行ってたの? ライブ始まっちゃったでしょ!!」
セイラ「悪い・・・ トイレ行ってた」
おかみく「トイレって、長すぎでしょ!? 見て、セナよ ここのピアニストなんだ」
ライトでキラキラしていた
セイラ「そ、そうなんだ」
おかみく「あれ? もしかして知ってた?」
セイラ「まさか!! 全然知らない!!」
おかみく「そう?」
セイラ「ああ、本当に知らなかった!!」
おかみく「まあ、いいや ほら、次の曲始まる♪」
セナ「皆さん、こんばんは 今日も楽しんでいってください」
〇幻想空間
演奏が始まると
観客みんなセナに釘付けだった
クラシックは良く知らないが
テレビや映画で耳にする曲も
いくつかあった
どれも美しい音で
どこか物悲しい──
胸の奥が熱くなり
涙が出てきた
すすり泣いている人もいた
〇ジャズバー
セナ「それでは最後の曲です ある人に捧げます・・・」
ファンたち「ある人ってだれですか?」
セナ「まだ秘密ですよ」
胸の奥が熱くなった
セナから目が離せなかった
鍵盤の上の指が
なめらかにゆっくりと動き
まるで自分が撫でられているような
そんな感覚に陥った
あんな事があって
単純かもしれないが──
見た目で判断していた自分を恥じた
〇教室
美紅「ちょっと、昨日なんで勝手に帰ってんの?」
力丸「いや、オーナーさんがいいよって」
美紅「はぁ!?はぁ!?はぁ!? 誘ったのアタシよ、アタシ!!」
力丸「でもあの後、彼女と帰るつもりだったろ?」
美紅「な、な、な、な そんなワケ・・・ないでしょ」
セナ「おかみくっている!?」
すごい歓声だ──
クラスに来ただけで女子のこの反応はいかに
美紅「何か用?」
セナ「この前の報奨金もらいに来た」
美紅「は!?」
セナ「お前の金魚のフン手当してやっただろう?」
力丸「いくらだ」
セナ「てめぇには関係ねぇ 引っ込んでろ」
美紅「まあ、まあ、まあ セナ、外で話そ」
セナ「ったく、めんどくせぇな どうせ払う気ねぇだろ?」
美紅「あのね、そっちが勝手に連れて帰ったんでしょ!?」
セナ「うるせぇ!! 払わないなら、セイラのIDよこせ」
セイラ!!!!
美紅「セイラって・・・」
セナ「誰?とか言うなよ オーナーから詳細は聞いてる」
美紅「そ、そう? いや、たまたま、たまたまね、友達の友達の友達のツテで来てもらったから・・・」
セナ「親友だってウラもとれてる」
美紅「えーっと、ね、だから、たまたま」
セナ「早く教えろって!! オレには時間がねぇーんだよ!!」
力丸「やめろ!! だいたい、お前みたいなヤツに美紅はホイホイ個人情報を教えたりしない!!!!」
美紅「そうよ、セイラから直接聞きなさいよ!!」
セナ「じゃあ、どこにいったら会える?」
美紅「と、図書館とか?」
力丸「ブハッ!!」
セナ「きったねぇな・・・ ツバとんだぞ」
セナ「会えなかったら慰謝料な、おかみく」
美紅「会えるに決まってるでしょ?」
力丸「おい!! 図書館って」
美紅「ごめん、反射的に」
力丸「俺の行くとこ言ってどうする?」
セナ「おい!!」
力丸・美紅「うわぁ!!」
セナ「お前さっき吹き出したろ? セイラのこと知ってるな?」
力丸「し、知らない」
セナ「ウソだな おい、行きそうなトコ教えろ」
力丸「ほ、本屋とか・・・」
セナ「どんだけ本好きなんだ?」
美紅「あんたもでしょ?」
セナ「まあ、な つーか、お前セイラ狙ってねぇよな?」
力丸「ああ、俺には心に決めた人がいる・・・」
セナ「おい、みんな聞いたか?」
セナ「俺には心に決めた人がいる──って 武士かよ!?」
美紅「ちょっと、みんな!?」
力丸「・・・・・・」
セナ「オレも、ココロに決めた人がいっるぅ〜💕」
美紅「セナ、ふざけないでよ!!」
美紅「力丸、大丈夫?」
セナ「震えてやんの 怒ったか? なあ?」
力丸「こんな事で怒るわけないだろ?」
セナ「だよな? ハハッ」
美紅「セナ・・・あんたのそういうとこが」
力丸「鷹野!!」
セナ「なんだよ、急に怒鳴るなよ」
つづく
楽しい!1話から一気に読みました。
百合あり、BLあり(今のところは勘違いだけど)
ジャンル抜きに、フツーに学園モノの作品として面白い展開ですね。
サブキャラたちも、個性的で物語を盛り上げています。