ほんのりひやっとシリーズ 1

桜海(おうみ)とあ

オープンルーム(脚本)

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〇低層ビルの屋上
黒田光「おお! すっげぇ! 眺め最高ー!!」
  黒田は、スマホを取り出して
  ベランダからの景色を撮影する
不動産業者・女「こちらの物件は、南向きですので日当たりもいいですよ」
黒田光「最近、家にいることが増えたんで、日当たりの良さはポイント高いですね」
不動産業者・女「ここから花火大会も観られるんです」
黒田光「まじですかっ!」
黒田光「更にポイント追加っ!」
不動産業者・女「ふふっ」

〇中規模マンション
黒田光「俺は黒田光。自称ミーチューバーだ」
黒田光「今日もネタを求めて、街をぶらついている」
黒田光「道中、オープンルームの看板をみつけた」
黒田光「比較的、新しいマンションの入り口にぽつんと置かれた立て看板」
「『家賃6.5万 1LDK 家具付き、ルーフバルコニーあり 呉川駅まで徒歩5分 敷金礼金、今ならサービス!!』」
黒田光「賃貸マンションのオープンルームって珍し──」
黒田光「──って安っっっ!!」
黒田光「これはなーんかあるはず・・・」
黒田光「ネタになりそうな匂いあり!!」
黒田光「そして俺は、オープンルームのベルを鳴らした」

〇低層ビルの屋上
  黒田は、不動産業者の女に向かってスマホの画面を向けた
  スマホのカメラに映る女は、
  動画撮影されていることに気づかずに、物件の説明を続けている
黒田光((ぶっちゃけ、引っ越す気ないけど、))
黒田光((案内のお姉さん可愛いし))
黒田光((『街ブラしてたら可愛い不動産屋さんに会えた』、で、『MeTube』にあげても、ファン登録増えそう))
黒田光((てか、制服姿とか、最高すぎないか))
不動産業者・女「!?」
不動産業者・女「・・・」
  女はカメラに気付き、ついと、カメラから顔を背けた
黒田光((やっべぇ))
黒田光((お姉さんの照れた顔、))
黒田光((萌える────!!))
不動産業者・女「あ、あのお・・・」
不動産業者・女「スマホでの撮影は──」
黒田光「日差しあっちぃー!!」
黒田光「バルコニー堪能したんで、部屋に戻ります!!」
不動産業者・女「あ、えっと・・・はい」

〇おしゃれなリビング
  黒田は、スマホの撮影を続けたまま、室内へと入る
黒田光「床もキレイですねー」
黒田光「壁紙は真っ白だし、前の入居者の汚れとか、全然ないですね」
不動産業者・女「退去時に、専門業者がクリーニングをしますので、」
不動産業者・女「壁紙も家具も新しいものに交換しております」
黒田光「ああ、それでピカピカなんですね!!」
不動産業者・女「もし、壁紙がお気に召さないようでしたら、」
不動産業者・女「弊社の『虹の花不動産』では、賃貸物件でも可能な壁紙サービスをしておりますので、」
不動産業者・女「よろしければカタログご覧になりますか?」
黒田光「ああ、そういうのは、いらないんです」
黒田光「現状維持でオッケーなんで」
不動産業者・女「・・・はあ」
黒田光「そうだ。バスルーム見てもいいですか?」
黒田光「やっぱ一日の癒やしは、風呂ですよね!!」
黒田光「風呂、風呂ぉー♪」
不動産業者・女「ふふっ」
  廊下を通り過ぎて、脱衣所の扉を開けた

〇白いバスルーム
  黒田はスマホで撮影を続けたまま、
  バスルームへと足を踏み入れた
  バスタブへと腰を下ろす──
黒田光「ふいー」
黒田光「このバスタブ、めちゃくちゃ広いですね」
黒田光「しかし、どこもキレイですね」
不動産業者・女「洗面所もバスルームもクリーニングが入っておりますので」
黒田光「ふーん・・・」
黒田光「部屋の壁紙もキレイでしたもんね」
黒田光「てゆうか、お姉さん」
黒田光「脚もキレイですね 壁紙と同じぐらい真っ白です」
不動産業者・女「やだっ!!」
不動産業者・女「や、やめてください!!」
不動産業者・女「カメラで映さないでください!」
黒田光「そんな照れなくても」
黒田光「減るものじゃないでしょ」
不動産業者・女「お客様・・・」
黒田光「!!」
不動産業者・女「あまりふざけるようでしたら、 お帰りいただきますよ」
黒田光「ああ、はいはい」
黒田光「わっかりました」
黒田光「スマホ、しまいますよ しまえばいいんでしょ」
  黒田は、スマホの画面を落として、ジャケットの胸ポケットにしまう
黒田光「これで、いいですよね?」
不動産業者・女「・・・ええ。はい」
不動産業者・女「ご協力ありがとうございます」
黒田光「いえいえ」
黒田光((──と見せかけて ちゃっかり撮影してるんだけどねぇ・・・))

〇白いバスルーム
不動産業者・女「どうです?」
不動産業者・女「キッチンとかも、ご覧になりますか?」
黒田光「あ、いやもう十分です」
不動産業者・女「そうですか」
黒田光「駅チカで、家賃も安いですし・・・」
黒田光「でも、う、うーん・・・」
不動産業者・女「なにか、気になることでも?」
黒田光「しいていえば、 ・・・安すぎ?」
不動産業者・女「安い・・・のが駄目なんですか?」
黒田光「なんかあるでしょ。この物件」
不動産業者・女「・・・「ある」とは?」
黒田光「「でる」って言ったほうがいいかな?」
黒田光「ここ、人死んでますよね?」

〇白いバスルーム
黒田光「聞いた話だと、」
黒田光「人が死んだ物件って、めちゃくちゃ安くなるらしいじゃないですか」
黒田光「殺人事件があった物件だと、更に安くなるって話ですよね」
黒田光「この部屋で人が殺された」
黒田光「だから、こんなにも安いんじゃないんですか?」
不動産業者・女「・・・」
黒田光「ぶっちゃけましょうよ」
黒田光「この部屋は、 ただ人が死んだんじゃない、殺された」
黒田光「だから、こんなにも安いんだって」
不動産業者・女「・・・」
黒田光「ほらほらっ!! 言っちゃいましょ!」
不動産業者・女「申し訳ございません」
不動産業者・女「その件に関しては、ご契約者様に対してご説明する予定でしたもので・・・」
黒田光「ただの冷やかしには説明するつもりは、なかったと?」
不動産業者・女「いえ!! そんなことは・・・」
黒田光「酷いですね。 俺は、ここに引っ越す気で見に来たのに」
不動産業者・女「・・・お話せず、申し訳ございません」
黒田光「てことは、 やっぱり、この部屋で人が殺された」
  不動産業者の女は、コクリと頷いた

〇白いバスルーム
黒田光「おお!! ビンゴー!!」
  黒田は、その場で飛び跳ねた
黒田光「で、で、で、 ちなみに死体はどこに?」
不動産業者・女「・・・これ以上は、ちょっと」
黒田光「誰にも言いませんって」
黒田光「それにほら、 ベッドを置く位置とか、」
黒田光「家具の配置を考えるときに参考にしたいだけなんで」
不動産業者・女「それでしたら、 どこに置かれてもかまわないかと」
黒田光「え・・・ それって、まさか・・・」
  黒田は、バスルームの中を見渡した
  シャワーの先から、ぽたりと水滴が床に落ちる
黒田光「・・・ここ?」
不動産業者・女「・・・はい」

〇白いバスルーム
黒田光「ビンゴ!! ビンゴー!!」
  黒田は、
  子供のように、はしゃいで飛び跳ねた
黒田光「俺って天才!!」
「──バタタッ」
  バスタブから飛び出し、
  バスルームの壁へと鼻先を近づけて、舐めるように眺める
黒田光「・・・あー。くっそ」
黒田光「事件の痕跡って・・・」
黒田光「もう無いかぁー」
不動産業者・女「・・・お客様」
黒田光「ああ、はい?」
不動産業者・女「お客様は、こういった物件に」
不動産業者・女「興味がお有りなのですか?」
黒田光「・・・ああ、興味があるっていうか」
黒田光「こっちとしては、人が死んでるほうが好都合っていうか」
黒田光「美味しいっていうか・・・」
不動産業者・女「どういうことですか?」
黒田光「俺ね、『ミーチューバー』なんですよ」
不動産業者・女「えっ! あの『Me Tube』のですか?」
黒田光「『黒田光のクロミツチャンネル』って知らないかな?」
不動産業者・女「くろ・・・」
不動産業者・女「ああ────!!」
不動産業者・女「『高雄山をケンケンパで登頂する!』 で、イノシシに追いかけられてた人!!」
黒田光「(あー。それ結構、昔のやつ・・・)」
不動産業者・女「観ました! すごく、くだらなくて最高でした!」
黒田光「えっと、これって、褒められたのかな?  褒められたんだよね」
不動産業者・女「温泉まんじゅうを何個、口の中に詰め込めるかなんて、ほんと、しょうもな──」
不動産業者・女「すみません・・・」
黒田光「いや、いいけど・・・」
黒田光「しょうもなくても、くだらなくても、 観てくれるだけありがたいんで」
不動産業者・女「そんな方が、 どうしてこの物件なんですか?」
黒田光「正直、チャレンジ動画って飽和状態でさ」
黒田光「『Me Tube』に、芸能人が参戦してきたら」
黒田光「底辺ミーチューバーが、同じことしても勝てっこないつうの」
不動産業者・女「・・・ふふっ」
黒田光「笑うよね。 まじで、今、 笑っちゃうほどファン登録増えないんで」
不動産業者・女「ご、ごめんなさい! でも、クロミツさんは底辺じゃないですよ」
黒田光「ありがとう。優しいね」
黒田光「でも、事実、売れてないんだ」
黒田光「だから、過激なことでもしないとさ、」
黒田光「てことで、この部屋で、 『心霊系チャレンジ!』 狙ってみようかなって!!」
黒田光「見た感じ、事件の痕跡なんかないけど」
黒田光「撮影中にポルターガイストとか起きるかも知れないし」
黒田光「何より殺人事件の現場に住むって、 話題性あるじゃないですか」
不動産業者・女「怖くないんですか? ・・・幽霊とか」
黒田光「ファン登録が増えるんなら、幽霊の出演、大歓迎!!」
黒田光「まあ、そうでもしないと、このご時世生き残れないわけ」
不動産業者・女「・・・そういうことでしたら、 お引取り願えますか?」
  女は、黒田をバスルームから出るように促した

〇おしゃれなリビング
黒田光「え!? ちょ、ちょっと!!」
  先程までの朗らかな態度とは一変して、
  冷たい態度をとる女に、黒田は戸惑った
黒田光「でも、動画撮影禁止とか、物件の規約に無いですよね!?」
不動産業者・女「お帰りください」
  女の異様な空気に気圧されて、渋々廊下へと出る
不動産業者・女「申し訳ございません」
不動産業者・女「本日のオープンルームは、 これで終わらせていただきます」
黒田光「え!?」

〇シックな玄関
黒田光「ええええええ!!」
不動産業者・女「お帰りください!!」
  有無を言わさぬ様子で、玄関へと黒田は追いやられる
黒田光「ま、待ってくださいって!!」
黒田光「こっちはさ、殺人が起きた物件なんていう」
黒田光「誰の借り手もつかない物件を、借りてやろうって言ってんですよ」
不動産業者・女「お引取りを」
黒田光「金は払うんだから、 何したっていいでしょ」
黒田光「実際、こういう物件を撮影して動画あげてるやつだっているんだからさ!!」
不動産業者・女「お引取りください」
黒田光「それってさぁ、 ここで撮影したら場所特定されて」
黒田光「殺人現場だって広まるから拒否ってるんじゃないんですか?」
黒田光「いわくつき物件なんて、ネットに書き込まれたら、誰も借りませんもんね!!」
不動産業者・女「お借りになる方には、きちんと説明をいたします」
黒田光「はぁ?」
黒田光「なにいってんですか!!」
黒田光「こっちが振るまで、誤魔化そうとしてましたよね!?」
不動産業者・女「・・・さい」
黒田光「つまりオタクは、殺しがあった事故物件だってこと隠して、」
黒田光「この先も人に貸すつもりなんじゃないんですか!?」
不動産業者・女「・・・うるさい!!」
  黒田は、女に背中を力強く押された
  よろけて、廊下の壁に肩をぶつける
黒田光「うっわ・・・」
黒田光「お姉さんの本性出ちゃったよ」
不動産業者・女「もうお帰りください!!」
  玄関のタタキに足先が降りた
  ひんやりとした石の感触が足の裏に伝わる
  靴を履くのもままならないまま、
  黒田は女の顔をもう一度見た
  青白い顔をした女が、唇を噛み締め、
  こちらを睨みつけている
黒田光「答えてくださいよ、悪徳不動産業者さん!!」
不動産業者・女「本日はご足労いただき有難う御座いました。先程の動画、必ず消してくださいね」
黒田光「そっちが誠意を見せたら消しますよ」
不動産業者・女「お客様のためを思って申し上げたんです」
黒田光「オタクの保身のためだろ!?」
不動産業者・女「必ず、消してください」
不動産業者・女「決して、サイトにアップしないように」

〇玄関の外
  力強く扉が閉まり、鍵がかかる音が響く
黒田光「なんなんだよ! あの態度!」
黒田光「このっ!! 悪徳不動産屋がっ!!」
  黒田は、扉を思いっきり蹴った
  じんとした鈍い痛みが足先に戻ってくる
黒田光「・・・でも、まあいいや」
黒田光「こっちには、伝家の宝刀があるんで」

〇本棚のある部屋
黒田光「見てろよ、悪徳不動産業者め」
  先程、撮影したスマホの動画を、チャンネルへアップロードする
黒田光「タイトルは、『心霊物件借りようとしたら悪徳業者にキレられた』にするか・・・」
「──ピロン!!」
「『アップロードが完了しました!!』」
「『すぐに公開しますか?』 YES  ・  NO」
「──カチッ!!」
「『クロミツちゃんねるに、新着動画がアップされました!!』」
「──ピロンッ!!」
「『視聴者からの新着コメントがあります』」
黒田光「おおお──!! きたきたぁ──!!」
「”クロミツの新作!! 待ってましたぁ!!”」
「”うわっ!! なにこれ!? 驚いたっす!!”」
「”新天地すぎるだろwwwww”」
黒田光「”これからは、こういった社会悪を抹殺していくんで!! ”」
黒田光「”応援よろしく!!”」
黒田光「これで、この女は終わったな・・・」
黒田光「これからは『クロミツチャンネルの天誅シリーズ』でも撮るかなぁー」
「──ピロンッ!!」
「『視聴者からの新着コメントがあります』」
黒田光「なんだよぉー。 この反応、好感触かよぉー」
「”これって・・・”」
「”独演、ってやつですよね”」
黒田光「・・・は?」
「”クロミツ、一人芝居うめえやん!”」
黒田光「・・・なになに?」
黒田光「なにいってんだよ、こいつら」
黒田光「ばっちり可愛い女子も出演してるだろうが」
  慌ててアップロードした動画をクリックした

〇血まみれの部屋
  動画には、
  血しぶきで汚れた部屋が映っていた
「(黒田) 壁紙は真っ白だし、」
「(黒田) 前の入居者の汚れとか、全然ないですね」
「──ザザッ!!」
「──ザザザザザザザザザザ」
「(黒田) ああ、そういうのは、いらないんです 現状維持でオッケーなんで」
「──ザザザザザザザザザザ」
  なぜか、女の姿は映っておらず、
  女が話した箇所は、砂嵐のような異音へと変わっていた

〇流れる血
  バスルームの床が映った。
  黒田の靴下の先が、赤く染まっている
「(黒田) ──ふいー」
  バスタブに腰を下ろし、安堵の息を吐く黒田
  バスタブに赤い湯が満ち、
  無造作な形に切り取られた白い塊が浮遊する
  また、たぷんっとひとつ浮かび上がり、
  真紅のネイルが塗られた足先が顔を覗かせた
「(黒田) ──ビンゴ!!」
「(黒田) ビンゴ!! ビンゴー!!」
  画面が揺れ、赤く染まるバスルームの全体が映り込む
  シャワーノズルから血が滴り、バスルームの床を赤く染めている
「事件の痕跡って・・・ないかあ」
「──ペタッ」
「──ペタッ ────ペタッ、ペタッ」
  血の湯船から出た黒田は、バスルームの壁に触れた
  そのたびに赤い手形が壁一面に広がっていった──

〇本棚のある部屋
黒田光「な、なんだよ・・・これ」
「『視聴者からの新着コメントがあります』」
「”撮影場所、特定しモース!!”」
「”東京都呉川区呉川町南9−30”」
「”それ、2年前の殺人マンションじゃね?”」
「”呉川OLバラバラ殺人事件ですよ”」
「”事件情報くらさい”」
「”物件を案内してた不動産の女性が、内見客に殺されたらしい”」
「”バラバラになった遺体がバスタブに詰め込まれてた。って”」
「”被害者、ぐぐったら、めっちゃ可愛かった”」
「”まじかっ”」
「”被害者の勤め先は「虹の花不動産」わず”」
「”犯人まだ捕まってないよ”」
「”可愛いというから画像拾ってきました!!”」
「” 被害者画像リンク↓ 『 https://・・・・・・・』”」
黒田光「虹の花不動産?」
黒田光「・・・って、どこかで」
黒田光「あの不動産屋だ!!」
黒田光「いや、まさか・・・ありえない」
黒田光「じゃああれは、幽霊とか・・・」
黒田光「ビンゴなわけないだろ」
黒田光「いやいや、幽霊なんか、いるはずないだろ」
黒田光「きっと、違う──」
黒田光「違ってくれ──」
  黒田は、震える指先で、コメント欄に添付された被害者女性の画像URLをクリックした

〇本棚のある部屋
  ──突然、部屋の電気が消えた
「(黒田) な、なんだ! なんだよ!!」
  暗闇の中、光るスマホの画面を黒田は見つめる
  スマホが突然、振動し始めた
「──ザザ」
  スマホから発せられる異音が、
  部屋中に響き渡る
「(黒田) ────ひっ!!」
「──ゴトン!!」
  黒田は怖くなり、スマホを床へと落としてしまった
「な。なんなんだよぉ」
  ふと、黒田は自分のつま先へと視線を向けた
  履いている靴下が、血でぐっしょりと濡れている
「うわぁ!!」
  黒田は驚き飛び跳ねて、パソコンデスクに手をついた
「──ズリュッ!」
  と濡れた、嫌な感触が手のひらから伝わる
「あああぁー!!」
  手をついた場所にべったりと手形がついている
「──ピチョッ」
「──ピチョッ」
  なにかが髪の先から滴る──
  暗闇の中、電源の落ちたパソコンモニターへと顔を向けた
  そこに映る黒田は、まるで血を浴びたかのように、ずぶ濡れだった
  ダウンロードされた画像がスマホの画面いっぱいに表示される
  画面には、先程、黒田を案内した女がいた──

〇本棚のある部屋
「(黒田) ひぃいいい!!!!」
  突然、窓が開き、
  冷たい風が入り込んできた──
「──ザザッ」
  スマホから出ている異音が止んだ
  と同時に、黒田の目の前にぼんやりと人影が浮かびあがった
「(黒田) うわあああああああ!!」
  目の前にいるのは、あの不動産屋の女だった──
  血だらけの女が、黒田へと近づいてくる──
「(黒田) やっ! やめろ!!」
「(黒田) く、く、来るな! 来るなぁあっ!!」
  女がニコリと微笑んだ──
女「──ビンゴ」

〇血まみれの部屋
女「──ザザザザザザザザザザザザ」
女「──ああ」
女「だから言ったのに」
女「ネットで広まったら 人間の狩場がなくなって困るから、」
女「動画消して欲しかったのに」
女「でも人生の最期に、 ファン登録、増えてよかったですね」
女「──ごちそうさまでした」
女「──ふふっ」

〇血まみれの部屋
「(電話の着信音) 〜♫ 〜♫〜♫」
「──はい。 虹の花不動産です」
「オープンルーム、明日もやっていますよ」
「いつでも、お待ちしてます」
  「 オープンルーム 」
  
  
  ーENDー

コメント

  • テンション高く撮影している彼とお姉さんの温度差で、迷惑客ってこんな感じなんだろうなぁ…って思ってたら、後半すごくて!
    めちゃ怖かったです!

  • 〇チューバー精神でガンガン行く主人公がリアルだなと思いました笑そして、まさかのオチにびっくり。後半になるにつれて畳み掛けるようなテンポ感ですごくハラハラしました!

  • はっちゃけた主人公と、大人しくモブっぽい不動産屋のお姉さんの対比が面白いと思いながら読み進めていたのですが、驚きの展開にびっくりです。とても面白かったです。

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