エピソード9(脚本)
〇古いアパート
小走駿太郎「なにっ! 山本の爺ちゃんが? すぐ戻る」
小走駿太郎「早希。山本の爺ちゃんが意識戻ったってよ!」
武井早希「そう。よかった」
小走駿太郎「急いで東京戻るぞ」
小走駿太郎「おばちゃんも来るだろ?」
吉永麻衣「私? なんで?」
小走駿太郎「山本の爺ちゃん、早希の婆ちゃんの元恋人なんだ」
小走駿太郎「あ、いや、違うのかな」
小走駿太郎「ってか、それを聞きにここに来たんだった」
吉永麻衣「待って。もっと詳しく聞かせて」
小走駿太郎「あー、えーと、山本の爺ちゃんの家におばちゃんの通帳があってな」
吉永麻衣「通帳?」
小走駿太郎「おっと」
慌てて手で口をふさぐ小走。
小走駿太郎「若い頃の早希の婆ちゃんの写真があってだな」
小走駿太郎「その人が赤ん坊を抱いてて、それがたぶん」
吉永麻衣「お父さん!」
武井早希「え?」
小走駿太郎「そう。たぶん、そうなの。 だからこうやってはるばる——」
吉永麻衣「父は今どこにいるの?」
〇停車した車内
吉永麻衣「母は娼婦だったの」
武井早希「なんで言うのよそんなこと!」
吉永麻衣「自分の祖母がどんな仕事をしていたってかまわないじゃない」
吉永麻衣「私はそんなこと全然気にしないわ」
小走駿太郎「ははーん。 それで早希は俺に婆ちゃんのこと教えなかったのか」
武井早希「あーもうムカつく!」
吉永麻衣「そのくらいあの時代は大変だったのよ」
吉永麻衣「そのおかげで私たちはこうして産まれてこれたんだから感謝しなくちゃ」
武井早希「バカバカしい」
武井早希「それで誰が父親かわかんないんだから本当のバカよ」
吉永麻衣「あら、相手はお客さんじゃないわよ?」
武井早希「なんでそう言い切れるのよ」
吉永麻衣「当時、売春防止法というのが制定されてね」
吉永麻衣「母は私を産んだ時にその仕事を引退してたのよ」
小走駿太郎「ふーん。じゃあ、父親って?」
吉永麻衣「それは、教えてくれなかったの」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)