読切(脚本)
〇ファンタジーの学園
グラナーテ「まあ、今年のバラは一段と 綺麗に咲いたわね」
リーゼ「まるでお嬢様とゲオルグ様の ご結婚を祝福しているようですね」
グラナーテ「リーゼ、気が早いわよ。 まだ半年も先の話なのに」
リーゼ「お2人のご婚約から早10年・・・ 半年など誤差の範囲でしょう」
リーゼ「あんなにお転婆だったお嬢様が 立派になって嬉しゅうございます」
グラナーテ「リーゼが厳しく 教育してくれたおかげね」
グラナーテ「公爵家に嫁いだ後も 引き続き仕えてくれるなんて心強いわ」
リーゼ「このリーゼ、 どこまでもついてまいりますとも」
グラナーテ「・・・あら? 見て、珍しい鳥がいるわ」
リーゼ「本当に。 しかもずいぶんと人懐っこいですね」
グラナーテ「ふふっ、綺麗な色。 まるで物語に出てくるドラゴンの──」
グラナーテ「・・・!」
グラナーテ「(・・・? なんだか目眩が・・・)」
リーゼ「お嬢様!? 誰か、医師を・・・!」
〇城の客室
グラナーテ「ん・・・ わたくしはいったい・・・」
ゲオルグ「グラナーテ、目覚めたんだね!」
リーゼ「お嬢様・・・! ああ、よかった・・・」
リーゼ「お嬢様はもう3日ほど、 お眠りになっていたんですよ」
グラナーテ「えっ、3日も!?」
リーゼ「その間ずっと、ゲオルグ様が ついていてくださいました」
グラナーテ「まあ・・・ ゲオルグ様、ありがとうございます」
ゲオルグ「礼には及ばないよ。 婚約者なら当然のことだ」
グラナーテ「ふふ、わたくしは幸せ者ですわね」
グラナーテ「けれど、どうして3日も 眠ってしまっていたのかしら?」
ゲオルグ「・・・呪いだ」
グラナーテ「の、呪い?」
リーゼ「あの見慣れない鳥ですよ。 あれが呪いの運び手だったんです」
ゲオルグ「くそっ、リンブルク侯爵家め!」
グラナーテ「リンブルク侯爵家・・・ お父様と敵対している派閥の家ですわね」
ゲオルグ「自分の娘を僕に嫁がせるために 卑劣な手段を使ったんだ」
ゲオルグ「・・・地獄に落ちればいい!」
グラナーテ「ゲオルグ様。次期公爵とあろうお方が そのような物言いをしては──」
ゲオルグ「大事な君が危機に晒されているんだ! 冷静でいられるわけがないだろう!」
グラナーテ「(大事な、だなんて・・・ なんだか面映ゆいわ)」
グラナーテ「ええと、『晒されている』ということは、 まだ呪いはとけていないのですか?」
ゲオルグ「ああ。 詳細はまだ調査中だが」
グラナーテ「いったいどのような呪いが かけられたのでしょうか?」
ゲオルグ「・・・ドラゴンになる呪いだ」
グラナーテ「・・・!」
ゲオルグ「あと7日以内に呪いをとかなければ、 君はドラゴンになってしまう」
リーゼ「ああ、お嬢様・・・ なんておいたわしい・・・」
ゲオルグ「今、リンブルクの者たちを 尋問をしているが難航していて・・・」
グラナーテ「・・・」
ゲオルグ「動揺するのも無理はないさ。 しかし──」
グラナーテ「最っ高ですわね!」
「ええっ!?」
ゲオルグ「グラナーテ、何を言ってるんだい? ドラゴンになってしまうんだよ?」
グラナーテ「大歓迎ですわ! わたくし、ドラゴン大好きですもの!」
リーゼ「・・・お、お嬢様、そのように 興奮されてはお体に響きます」
グラナーテ「興奮せずにはいられないわ! だって、ドラゴンよ、ドラゴン!」
グラナーテ「強くて気高くてかっこよくて、 わたくし、昔から大好きでしたの!」
ゲオルグ「グラナーテ、本気かい?」
グラナーテ「あら、わたくしにドラゴンが出てくる お話をたくさん聞かせたのはどなた?」
ゲオルグ「ぼ、僕だが・・・ それは幼いときのことだろう?」
グラナーテ「わたくし、あの頃からずっと ドラゴンに憧れておりましたの」
ゲオルグ「でも、よく考えてくれ。ドラゴンに なったら僕たちは結婚できないよ?」
グラナーテ「愛の形は人それぞれ」
グラナーテ「わたくしがドラゴンになって、ゲオルグ様が 英雄になれば問題ございません」
グラナーテ「心行くまで戦いましょう!」
ゲオルグ「いやいや、僕が聞かせた英雄譚だと、 たいていドラゴンは倒されるよね?」
グラナーテ「あら。わたくしがドラゴンになるからには、 そう簡単には負けませんわよ?」
ゲオルグ「そこに情熱を燃やさないでくれ!」
グラナーテ「ああ、わたくしは どんなドラゴンになるのかしら」
グラナーテ「火を吐いたり風を起こしたりするのが ひそかな夢でしたの」
リーゼ「はあ・・・お嬢様に次期公爵夫人としての 教育を施した苦労が全て水の泡に・・・」
ゲオルグ「リーゼ、諦めてはだめだ! 僕が必ず、呪いをといてみせる!」
グラナーテ「ふふっ、7日後が待ち遠しいですわね」
なかなかユニークなヒロインですね。呪いがかけられていなくても、結婚後は大体の女性が家庭内でドラゴンになって火を吹きますよね。呪われたままでも呪いが解かれても、どっちにしろゲオルグの将来が思いやられるなあ。
悲しみに暮れるかと思いきや、まさかの憧れだったのですね笑
ドラゴンは確かにかっこいいけども…。
呪いをかけた側も思いもしなかったでしょう笑
呪いが気に入ってしまったんですね。笑
でも、ゲオルグさんにしてみれば、愛する彼女と結婚出来なくなってしまうかもしれない…って不安になりますよね。
これからどうなってしまうんでしょう。