戦線共狂

烏塵(からすちり)

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〇森の中
フラット「燃ーえろよ燃えろーよ。 炎よ燃ーえーろ・・・・・・」
フラット「ふひっ、ふはは。 あははははっはっはっはは!」
フラット「また燃やしちゃった! 燃やしちゃったんだ!」
フラット「僕が燃やした!」
フラット「人を燃やした!」
フラット「あはははっはははっは!」
フラット「・・・・・・」
フラット「あぁ・・・・・・」
フラット「もう、嫌だ」
フラット「なんで僕は怪人なんだ?」
フラット「普通でいたくても襲われて。 蹴られ殴られ貶されて」
フラット「そうだ、」
フラット「死のう」
フラット「辺りは炎に包まれて。 今怪人化を解けば死ねるんじゃないか」
フラット「まだナイフも心臓に刺さったままだし」
フラット「人でなしならもういいか」
???「待て!」
クラフト「そこまでだ、怪人!」
フラット「・・・・・・誰」
クラフト「私の名前はクラフト! 人に危害を加える怪人に仇なす怪人!」
クラフト「怪人にはお前らのような人殺しが多い。 そのせいで私みたいな人畜無害な怪人が人間から迫害されるんだ!」
フラット「僕だって好きで殺してるんじゃないんだよ。 勝手に触れられて、勝手に皆燃えてるんだ」
クラフト「それでもお前が人を殺したのには変わりない! さぁ怪人、観念しろ!」
フラット「いきなり襲われて車に積まれて。 皆で僕を押さえつけて、心臓に刃物を突き立てられて。 それでも僕が悪いの?」
フラット「怪人化しないと死ぬってなっても、それを受け入れろっていうの?」
クラフト「うるさい! 貴様が人間に危害を与えたのは事実! おとなしく対峙されろ!」
フラット「君はどうなの。 人の姿の時には無害でも―――」
クラフト「そんなのはどうでもいいんだよ!」
フラット「・・・・・・」
クラフト「お前が人を殺した悪人であること以外は俺にとってはどうでもいいんだよ!!」
クラフト「俺は悪い怪人の首をたくさん取って人間たちに認めてもらうんだ! 俺も人のように話せば心もある! 迫害されれば苦しいんだって」
クラフト「怪人も人なんだって知ってもらうんだ!」
クラフト「だから」
クラフト「だから、夢のために殺されてくれよ!」
フラット「そう・・・んだ」
クラフト「・・・・・・わかってくれたか?」
  そうなんだ。
  怪人を殺せば。
  怪人をたくさん殺せば、人になれるのか。
  認めてもらえるのか。
  なら。
フラット「殺そう」
クラフト「はぁ!?」
フラット「これで、一つ目」
フラット「これからどのくらいの命を取ればいいんだろう」
フラット「十、二十? どれだけ取っても今まで取ってきた数には足りないな」
フラット「・・・・・・」
フラット「あぁそうだ、首を切っておかないと」
フラット「よいしょ、っと」
フラット「・・・・・・」
フラット「あぁ、こんな顔だったんだ」

コメント

  • さっきまで自分を殺そうとしていた怪人が、今は躊躇なく他人を殺しているという状況の異常さたるや。戦線では「恐々」ではなく、敵も味方もみんな一緒に狂っている「共狂」という言葉がふさわしいのかもしれませんね。

  • なんだか初めておもちゃを与えられた子供のようで。
    何も知らない、目的もわからない、そんな怪人にとんでもないことを植え付けてしまいましたね…。

  • 怪人同志も怪人と人間の間も、なにか負の連鎖になっているように感じました。誰も決して得をすることのないこの流れをフラットが食い止めてくれることを祈りたいです。

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