幻想冒険譚 Advent(アドベント)

いりゅーなぎさ

第10話 バウンティ(脚本)

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〇旅館の受付
  ラビッシュは呼吸を整え、以龍とイリアに話しかけてきた。
ラビッシュ「・・・兄ちゃんたちだよね? グリズリーの依頼を解決したっていうのは」
以龍 渚「? アンタは?」
ラビッシュ「おいら『ラビッシュ』ってんだ。 ・・・実は、兄ちゃんたちに折り入って頼みたいことがあるんだけど──」
イリア「渚さん、ここではちょっと・・・」
  周りを見渡すと、宿泊客らしき人たちが何事かとこちらをチラチラ見ているのに気付いた。
以龍 渚「そうだな。 ラビッシュって言ったっけ? とりあえず話は部屋で聞こう」
ラビッシュ「あ、おいらのことは『ラビ』って呼んでくれていいよ」
イリア「ラビくんね。 私はイリア。──で、この人は渚さん」
ラビッシュ「ま、おいらは兄ちゃん姉ちゃんって呼ばせてもらうよ」

〇日本家屋の階段

〇古いアパートの廊下
  階段を上がり、2階の廊下を奥まで進んでいく。
  鍵に書かれた部屋番号と同じ番号の部屋の扉を開ける。

〇可愛らしいホテルの一室
  そこはベッドが2つ置かれた、小さな部屋だった。
  イリアが奥のベッドに自分の荷物と杖を置き、腰を掛ける。
  以龍は手前のベッドの脇に剣を立てかけ、そのベッドに腰掛ける。
  ラビッシュは勝手知るかのように、中央のソファーに腰掛けた。
以龍 渚「じゃあ、その頼みたいことってのを聞かせてもらおうか」
ラビッシュ「面倒な駆け引きとかは嫌いだから、単刀直入に言うよ。──おいらの追ってる『バウンティ』を手伝ってほしいんだ」
以龍 渚「バウンティ?」
ラビッシュ「え!? 早々にグリズリーを片付けたって言うのに、バウンティについては何も知らないの?」
イリア「・・・少々、訳ありなんです」
ラビッシュ「ま、詮索はしないよ。 ──バウンティってのは、早い話が賞金首のことだよ」
ラビッシュ「あらかじめ依頼をもらわなくても、その賞金首のテットを倒せば報酬がもらえるんだ」
イリア「でも、バウンティの対象になるテットはものすごく強いテットが多いし、居場所もわからない場合がほとんどだから、」
イリア「対象の居場所を探すだけでもものすごい日数がかかる場合もあるの」
ラビッシュ「それは大丈夫。 もう奴は見つけてあるし、シグナルを撃ち込んであるから、追跡するのもそんなに難しくない」
ラビッシュ「──問題はおいらの攻撃じゃあ、致命傷を与えられないってことなんだ」
  そういうと、ラビッシュは以龍に右腕を見せる。
  ラビッシュの右腕に光が集まり、アームガンが生成される。
  ──ラビッシュがギルドを訪れた際に装備していた、あの変わった銃だ
イリア「アームガンの『フォースウェポン』!?」
ラビッシュ「フォースウェポンがそんなに珍しい? ──そういえば、兄ちゃんも姉ちゃんもリアルウェポンを使っているみたいだね」
以龍 渚「・・・なんか、お前と話していると知らない言葉ばかり出てくるな?」
イリア「フォースウェポンって言うのは、今のラビくんみたいに何もないところから魔法で自分の武器を作り出す能力なんです」
以龍 渚(・・・もしかして、俺が丸腰でいたのはそういう能力を持っていたからなのか?)
イリア「とは言っても、私もフォースウェポンの生成を目の前で見たのは初めてなんです」
以龍 渚「・・・なぁ? お前はそれほどの力を持っているって言うのに、なんで俺たちに声をかけたんだ?」
イリア「私もちょっと理解できないですね。 強い人を探しているのでしたら、私たちなんかより強い人たちはたくさんいますよ?」
ラビッシュ「対等の条件で同行してくれるアドベントでないと意味がないんだ」
ラビッシュ「腕のいい人を雇っても、きっとその手柄はその人の手柄にされてしまう。 ・・・おいらみたいな子供のアドベントならなおさらさ」
以龍 渚「俺がその手柄を横取りするとは考えていないのか?」
ラビッシュ「それはないね」
以龍 渚「なぜそう言い切れる?」
ラビッシュ「ギルドで面白い話を聞いたよ? 兄ちゃんと姉ちゃん、グリズリーの報酬を互いに譲り合ってたんだってね?」
イリア「あ、あれは渚さんが──」
ラビッシュ「おいらね、その話を聞いたときに『その人たちしかいない』って思ったんだ。 よこしまな考えなしに共に戦ってくれるのは」
以龍 渚「俺みたいな奴をそう評価してくれるのはありがたいが、お前の話は少し考えさせてくれないか?」
ラビッシュ「明日のチェックアウトの時にこの宿の受付で待ってるからさ、その時に答えを聞かせてよ」
  ラビッシュはソファーから立ち上がり、部屋の入口に向かっていく。
ラビッシュ「──いい返事を期待してるよ、兄ちゃん」
  ラビッシュは以龍たちの部屋を後にした。
イリア「渚さんはどうするつもりなんですか? ──まさか、受けるおつもりなんですか?」
以龍 渚「『まさか』!? ・・・意外だな、お人よしのアンタからそんな言葉が出てくるなんて」
以龍 渚「ちょっと話しただけだが、とりあえずは信用できる相手だとは思うぞ?」
イリア「私もラビくんは信用できるいい子だと思いますよ?」
以龍 渚「じゃあ、なんで『まさか』なんだ?」
イリア「ラビくん、肝心のバウンティの内容も対象テットの特徴も言わずに帰っちゃいましたよ?」
イリア「・・・私が言いたいのは、仕事の内容も何も知らないまま引き受ける気だったんですかってことです」
以龍 渚「・・・」
以龍 渚「──追うぞ、イリア」
イリア「はい」

次のエピソード:第11話 仲間

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