APAS討伐部~パートナーになったのは、最凶最悪の怪異でした~

菜鳥オウル

6.4人での初任務のようです。③(脚本)

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菜鳥オウル

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〇広い公園
酒巻「君は、逃げて」
茨木「酒巻様──!!」

〇黒
茨木(ああ、これは)

〇寂れた村
武士「悪鬼め、覚悟しろ!」
???「ははっ。俺もここまでか・・・」
???「──茨木、てめぇは逃げろ」

〇広い公園
茨木(一度は、従った。でも今度は・・・)
茨木「今度は、無視させていただきます!!」
茨木「──うあっ!!」
酒巻「茨木!!」
酒巻「なんで!? 逃げてって言ったのに!!」
茨木「馬鹿ですか、貴方は・・・ 逃げたりなんて、できませんよ・・・」
茨木「ようやく、分かったんです。 今度こそ、必ず──」
茨木「・・・」
酒巻「茨木? 茨木!!」
玲奈「酒巻くん、茨木さん、大丈夫!?」
酒巻「俺は無事。けど、茨木が──!」
野狐の少年「あ・・・僕・・・ そんなつもりは・・・」
野狐の少年「ごめんなさい、ごめんなさい・・・!」

〇大企業のオフィスビル

〇広い公園
男1「おらっ!」
男2「死ねっ!」
野狐の少年「お願い、やめて・・・!!」

〇オフィスのフロア
須佐川「──なるほどな」
須佐川「ええっと、なんだったか。 野狐の・・・」
管野「管野です」
須佐川「そう、管野くん。この監視カメラ映像だが、どうしてこうなったのか心当たりはあるか?」
管野「いいえ、全く分かりません。第一、2人とも知らない人なんです」
管野「僕が下校してたらいきなり殴りかかって来て、やめてって言ってもやめてくれなくて、それで・・・」
玲奈「思わず怪異の力が出ちゃったのね」
管野「はい」
管野「・・・あの、僕、やっぱり討伐されちゃうんですか?」
管野「APASの人達はそういう組織だって、お母さんが言ってたし・・・」
玲奈「・・・」
須佐川「んー。そうだなぁ」
須佐川「確かに人間を傷つけている以上、今まで通りだと討伐することになるんだが・・・」
須佐川「この映像を見る限りだと、今回のはどう考えても正当防衛だ」
須佐川「うちのメンバーにも負傷者は出たが・・・」
茨木「この通り、完全回復しましたから」
玲奈「茨木さん!」
酒巻「茨木、もう大丈夫なの!?」
茨木「ええ。私は鬼ですから、それなりに身体は頑丈なんです」
茨木「この時代の技術があればあの程度の火傷、一瞬で治りますよ」
管野「あ、その・・・さっきはごめんなさい。 僕、あなたに・・・」
茨木「──頭を上げてください」
茨木「最後のあれは、妙な気配を感じましたから。恐らく貴方の意思ではなかったのでしょう」
茨木「だから、気にしないでいいですよ」
管野「はい・・・」
須佐川「とまあそういう訳だから、お前の処遇は今のところ一旦保留だ」
須佐川「今後の事は俺が上に掛け合ってみる。なに、悪いようにはならないさ」
管野「──!」
須佐川「とりあえず今日は親に迎えに来て貰え。その時に俺が事情を説明しよう」
管野「ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます・・・!」
玲奈「・・・よかった」

〇空

〇研究施設の玄関前
玲奈(はぁ、今日は長い1日だったわね。 早く帰ってゆっくりしたいわ・・・)
八田島「・・・ねえ。どうして調伏しなかったの?」
玲奈「え?」
八田島「今までは怪異を見るなり討伐しようとしてたでしょ。なのに今日そうしなかったのは?」
玲奈「・・・」
玲奈「私ね、ずっと怪異が嫌いだったの。怪異は人を傷つけるものだと思ってたから」
玲奈「でも、あなたの話を聞いて・・・ そして、あの子の叫びを聞いて、そうじゃない怪異もいるんだって分かった」
玲奈「だから何も知ろうとせずに、すべてを排除してしまうのは良くないと思ったの」
八田島「それで調伏せず、捕まえたの? 僕の話を信じてくれたから?」
玲奈「まあ始めは疑ってたんだけどね。あなたは人食いの伝承のあるヤマタノオロチだし」
八田島「あれだって、8割方嘘しか書かれてない」
玲奈「そうなの。ごめんね」
玲奈「・・・本当にごめんなさい。私、あなた達の事を知ろうとしてなかった。今までずっと間違ったことをしていたわ」
八田島「ううん。キミは人間として普通の行動をしてただけ」
八田島「そんな中で、怪異である僕の言葉を信じてくれた。それで十分」
八田島「──ありがとう」
玲奈「そう言って貰えてほっとしたわ」
玲奈「──けどまさか、八田島さんに感謝される日がくるなんて」
八田島「・・・時雨だよ」
玲奈「え?」
八田島「僕の名前。時雨って呼んで。 キミには、そう呼ばれたい気がする」
玲奈「──時雨?」
時雨「うん」
時雨「──だって、本当に嬉しいんだもの。 僕の話をまともに聞いてくれる人間に会ったのは、久しぶりだったんだから」
時雨「お礼に、次からキミの望むことだけは叶えてあげてもいいよ」
玲奈「・・・それ、シュークリームと日本酒の報酬付きでっていうオチはない?」
時雨「ないない」
時雨「あ、でもさっきの分は貰わなきゃ。キミの方からシュークリームいっぱい買ってくれるって言ったんだし」
時雨「ほら、早く行こ! お菓子屋さん閉まっちゃう!」
玲奈「あ、ちょっと! 急に走らないでってば!」
玲奈「・・・ふふっ」
玲奈(人間と怪異は、もしかしたらずっとすれ違ってるだけなのかも)
玲奈(きっかけさえあれば、同じ場所で一緒に生きて行くことはできるのかもしれないわ)
玲奈(私がそのきっかけになれたら・・・)
玲奈(なんて。そんな事を考えるより、まずは時雨ともっと仲良くならなくちゃね)
玲奈(今日は一歩前進できたし、あと少し・・・)

〇空

〇通学路
  ──翌朝。

〇おしゃれなキッチン(物無し)
玲奈「さてと。今日から心機一転頑張りますか」
玲奈「朝ご飯は・・・ 時雨の好きな卵で目玉焼きにでもしようかしら」
玲奈「──って、え?」
玲奈(冷蔵庫の中、卵が1個もない!? 昨日10個入りのパック買ったはずだったのに)
玲奈「──はっ」
玲奈(三角コーナーに卵の殻10個分・・・)
玲奈(さてはあいつ、私が寝た後に──!)
玲奈(っていうか、リビングの方、日本酒の瓶置きっぱなしだし!)
玲奈(それに洗濯物もそのまんま! 畳んでおいてって頼んだのに!)
玲奈「ああもう・・・」
玲奈「時雨────!!!!」
  心の距離は縮んでも同居生活が上手くいくようになるとは限らない。
  そのことを、身を以て感じた私だった。

次のエピソード:7.変化にもいろいろあるようです。①

コメント

  • 遅くなりましたがここまで読ませて頂きました!面白いです😆
    怪異にも事情がある。昔起こった祟なんかも、好き勝手やってきた人間に対する彼らの怒りの感情なのかもしれませんね。
    そして仲良くなった時雨さん、なんか可愛いですね😍二人の同居生活もドタバタな感じが私好みなので、続きも時間見つけて読ませていただきます👍
    (遅読ですみません……)

  • 正反対の二人が互いに影響されて絆が深まっていく。バディ物の醍醐味ですね!対話と行動を重ねて認めあっていくのがとてもすてきでした。
    そして酒巻さんと茨木さんの過去(前世?)がめちゃくちゃ気になります…!

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