幽霊のウワサ(脚本)
〇学校の部室
とある日の放課後。
私が資料室でくつろいでいると、聞きなれた足音のあと、扉が勢いよく開いた。
実音「瑠菜ちゃーん!聞いて聞いて!」
現れたのは見るからに上機嫌な様子の実音だった。
こういう時の彼女は、大体変な案件を抱えている時だ。
実音「演劇部の部室がね!「出る」らしいの! これはオカルト同好会としては黙っておけないよね!?」
瑠菜「また始まった・・・」
実音「いやいやいや!今回こそガチなの!ガチ怪奇現象なの!」
実音が勝手に立ち上げたオカルト同好会は、すでに3か月ほどこのやりとりを繰り返していた。
これまでトイレの花子さんやら動く絵画や人体模型やら、学校の怪談的なものの調査につきあわされているが、当然何もいなかった。
ちなみに私は全然オカルト的なものは信じないし、面倒だからやりたくなかったけど、勢いに流されてしまった形である。
瑠菜「はぁ、じゃあ一応聞くけど、どんなのが出るわけ?」
面倒ではあるけど、このモードの彼女を無視すると余計面倒になるため、聞くだけ聞くことにした。
実音「ふふん。よくぞ聞いてくれました! これは実際に部員さんが体験した話らしいんだけどね」
台本を読んで練習をしていた時、誰かが練習に付き合ってくれた気がしたんだけど、顔を上げたら誰もいなくて・・・
衣装が全然決まらないー!って思ってその日は帰ったんですけど、次の日にフルコーデが揃ってて・・・
衝撃的なシーンの時に、照明がひとりでにバチバチッ!ってなったことがあって、顧問に「いい演出だねぇ」って・・・
実音「どう!この恐怖体験の数々!」
どんな怪談を聞かされるのかと思いきや、出てきたのはほっこりエピソードの数々だった。
瑠菜「なんというか・・・思ってたのと違う」
実音「でしょ? 今回のは流石の瑠菜ちゃんでも興味湧いたって顔してるよ」
瑠菜「まあ、今までのやつよりはちょっと面白そうかも」
実音「そんなわけで、早速今夜調査に行ってみよー!」
瑠菜「いきなりすぎない!?」
実音「善は急げっていうでしょ! もう演劇部顧問からの許可は取ってあるからね!」
確かに面白そうとは思ったけど、やっぱり面倒なことになってしまった。
〇黒背景
僕には、歳の離れた姉がいた。
僕が小学生の頃、姉は高校生だった。
その姿に、僕は憧れていた。
姉は、キラキラしていた。
姉から毎日、友達と撮ったプリが〜とか、カラオケに行って〜とか、彼氏が〜とか、そんな話を目を輝かせて聞いていた。
自分もそうなりたくて、真似して、姉のスカートを勝手に穿いてみたりした。
怒られた。
「男の子なんだから、お姉ちゃんみたいにはなれないのよ」と母に言われた。
その時は納得した。
でも、僕の女子高生というものへの憧れは、ずっと胸の奥にこびりついていた。
そんな僕も高校生になった。
そこで、転機が訪れた。
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