〇水中
　　海には人間の知らない未知の生物がいる
　　人間が深海を探索するように・・・
　　彼らもいつか地上へ現れるかもしれない

〇海岸の岩場
ベリア「やっと地上に辿り着いたわ 水の外が泳げないのは本当だったのね」
ベリア「たまたま状態の良い人間に寄生できて助かった」
ベリア「でも、この姿でもまだ陸では動きづらいわ」
ベリア「しかもこの見た目だと人間のおとぎ話に登場する人魚みたいじゃない」
ベリア「もっと陸で動く為の身体を探さないと」

〇漁船の上
葉本 辰郎(はもと たつろう)「もうすぐ陸だからと油断するなよ！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「ここ最近、原因不明の水難事故が多発してるんだ！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「おやっさん、まさか『ジャイアント』の噂を信じてるんですか？」
阪中 智春(さかなか ともはる)「人を海に引きずり込んで沈むほど巨大化する怪物『ジャイアント』の噂を」
阪中 智春(さかなか ともはる)「あんなのは不幸な事故と昔話の伝説を混ぜて騒いでるだけですよ」
阪中 智春(さかなか ともはる)「海が荒れたのを深海で巨大化したジャイアントが暴れてるからだとか迷信のお決まりパターン」
阪中 智春(さかなか ともはる)「ネッシーみたいなもんですよ」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「お前は分かってねえ」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「海で生きてくなら感覚を研ぎ澄ませておけ」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「海は何がある分からねぇ」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「はっ・・・！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「おいっ・・・！ 船の下に何が気配を感じないか？」
阪中 智春(さかなか ともはる)「は、はい？ 下ですか・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「何も・・・えっ・・・」

〇沖合
阪中 智春(さかなか ともはる)「・・・おやっさん！ 下に・・・大きな・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「大きな・・・影が・・・嘘だろ・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「波が荒れてる！ すぐに船のスピードを飛ばすからお前はどこかに掴まってろ！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「下のやつに気づかれますよ！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「バカヤロウ！ 急に荒れた波を見ろ！このままじゃ船が沈むぞ！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「下の奴の正体は分からねぇが・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「もし、この巨大な影がジャイアントなら奴は海の深くにいる！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「逃げるなら今しかない！ 飛ばすぞ!!」
　　猛スピードで船を進める
　　荒れた海の上を何度も左右に揺れる
葉本 辰郎(はもと たつろう)「チクショー！ ダメだ！船がひっくり返る!!」

〇水中
「おやっさん！うわああああ──」
「智春！諦めるな！──」

〇海岸の岩場
葉本 辰郎(はもと たつろう)「智春！ 大丈夫か！しっかりしろ！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「おやっさん！ 俺たち助かったんですか？」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「ああ！船が沈んでから気づいたら浜辺の近くまで流れ着いていたようだ」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「後はお前を連れてなんとかここまで泳いで来れた」
阪中 智春(さかなか ともはる)「海に沈んだ時、俺見ました・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「ジャイアントがいたんです！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「お前も見たか・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「海にあんな化物がいるなんて・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「俺たち、たどり着ける距離まで来てたから助かったけど・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「もし・・・あのままあそこで海に引きずり込まれてたら・・・俺たち・・・死んでました」
阪中 智春(さかなか ともはる)「何で海にあんなのがいるんですか！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「・・・・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「漁師を辞めたくなったか？」
阪中 智春(さかなか ともはる)「おやっさんは続けるんですか！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「俺はおやっさんと漁をする時が楽しかった・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「でも海に化物がいると知ってしまった・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「おやっさん！俺は・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「俺はやめねえ！だかな・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「お前はまだ若いから辞めてもいいんだ！」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「・・・智春、悪かったな」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「一人前にしてやる約束だったが・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「俺も『ジャイアント』はただの噂だと思っていた」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「だが、ここ数年の海に違和感があった」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「何かが・・・海の底にいる気がずっとしていた・・・」
葉本 辰郎(はもと たつろう)「本物を見ちまったからにはお前を海に連れてけねぇ」
阪中 智春(さかなか ともはる)「おやっさん・・・」

〇埋立地
ジャイアント「船は沈んでしまったが、乗組員は助けられた」
ジャイアント「巨大な危険生物も退治できたが・・・」
ジャイアント「すでに奴らの仲間が地上に上陸してしまったようだ」
ジャイアント「俺は海でしか力が使えない」
ジャイアント「そちらで海の中まで引き込んでくれ」

〇断崖絶壁
ローガン「あいよ！」

〇断崖絶壁
阪中 智春(さかなか ともはる)「おやっさんだって怖いはずなのに・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「俺はどうすれば・・・」
ベリア「あら、アナタ良いところに」
阪中 智春(さかなか ともはる)「うわっ！人魚姫!?」
ベリア「アナタの身体を使えばより動きやすそうね」
阪中 智春(さかなか ともはる)「ジャイアントに比べたら人魚姫なんて可愛いもの・・・えっ・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「うわあああ──」
ローガン「そこまでだ！」
ベリア「痛ったいわね！くらえ！」
ローガン「なに！ 光線が効かない！」
ローガン「しまった！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「うっ・・・」
ベリア「あら、せっかくの身体を傷つけちゃった」
　　致命傷を負った智春は崖から足を踏み外す

〇水中
阪中 智春(さかなか ともはる)（俺・・・今度こそ・・・死んで・・・）
ジャイアント「ちっ・・・ローガンの野郎何やってんだ！」
ジャイアント「助けるには、一か八か・・・ 融合するしかない」

〇断崖絶壁
ローガン「クソっ・・・俺のミスだ せっかくジャイアントが助けた命を・・・」
ベリア「あら、よく見るとアナタのほうが丈夫そうね」
ベリア「アナタで良いわ」
ローガン「・・・奴らに光線が効かなくなってきてる」
ローガン「やむを得ない・・・これを使うか」
ローガン「俺もただでは済まないが・・・ せめて青年を死なせてしまった罪を償わなくては・・・」
ローガン「ジャイアント・・・後は頼んだぞ・・・」
「待て──」
ジャイアント「青年はまだ生きている！」
ローガン「ジャイアント！ お前、陸に上がれないはずだろ！」
ジャイアント「あの青年と融合した」
ジャイアント「何故かあの青年と融合している間は陸に上がっても身体が縮むことはないらしい」
ジャイアント「しかも力の使用が可能だ！」
ベリア「マズい！アイツが・・・逃げなきゃ！」
ジャイアント「逃がすか！」
ジャイアント「『ディフィゥジョン（融合解除）』」
　　ベリアの身体から人間の女性が分離した
ベリア「あっあ・・・息が・・・苦しい・・・」
ベリア「海に・・・戻らなきゃ・・・」
　　ベリアは崖から飛び降りた

〇水中
ベリア「・・・苦しかった」
ジャイアント「捕まえたぞ！」
ジャイアント「『ハンドカフ（電撃拘束）』」
ベリア「身体が痺れて動けない！」
ジャイアント「俺と一緒に沈んでもらう」
　　沈むほどにジャイアントは巨大化していく

〇埋立地
ベリア「止めて・・・お願い・・・」
ベリア「せっかく生まれてこれたのに・・・」
ジャイアント「残念だが、お前たちは抹消しなくてはいけない」
ジャイアント「我々、人間の責任だ」
ベリア「イヤ・・・いやあああ──」
ジャイアント「『オールディフィゥジョン（全融合解除）』」
　　ベリアの姿は消滅した
ジャイアント「沈んだ廃棄物からこんな怪人を誕生させてしまった我々のな・・・」

〇海岸の岩場
ローガン「気がついたか、青年」
阪中 智春(さかなか ともはる)「アレ？ 俺は変な化物に切られて・・・海に落ちて・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「傷がない？ 夢だったのか」
阪中 智春(さかなか ともはる)「いや、でもアンタ・・・誰だ？」
ローガン「俺はローガンだ あれは夢じゃないんだ」
ローガン「海に落ちた後は覚えているか？」
阪中 智春(さかなか ともはる)「はっ・・・ジャイアントが！ やっぱり奴らはジャイアントの仲間だったのか！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「アンタが俺を助けてくれたのか！ ありがとう！」
ローガン「イヤ・・・実は君の身体にその・・・ジャイアントが・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「なんかよく分からねぇけど、海にはヤバい奴らがまだまだいるんだ しかも浜辺すら安全じゃないなんて・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「こんな危険な海におやっさんだけ行かせるわけには行かないな！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「俺はおやっさんを説得するまで漁師を続けるぞ」
阪中 智春(さかなか ともはる)「怖いけど、アンタみたいな人がいるならちょっと勇気が湧いてきた！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「俺の名前は阪中 智春だ ローガンさん、アンタ強いんだよな」
阪中 智春(さかなか ともはる)「頼む！ あの化物たちから、おやっさんを説得するまで俺たちを守ってくれねぇか？」
ローガン「え～と、ジャイアントが君に融合してるから、あれ？ まあ、うむ！任せとけ！」
ローガン「・・・ちょっと海に入ってくれないか」
阪中 智春(さかなか ともはる)「は、はい？」
ジャイアント「お前、ちゃんと青年に説明しろよ！」
ローガン「お前は意識あるのか 青年のほうは記憶ないみたいだな」
ジャイアント「この智春という青年と融合すると陸での活動も可能だからお願いしようという話だっただろう！」
ローガン「いや、でも化物と融合したとか話しづらいし可哀想だし・・・」
ローガン「真実はいつか話すから、取り敢えず青年と話を合わせとかないか」
ジャイアント「お前、本当ナリに見合わずいい加減だな！」
ジャイアント「他の人に見つかるとマズいから青年に変わるが、お前頼むからちゃんとしてくれよ！」
ローガン「あいよ！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「あれ？」
ローガン「智春くんの話は分った！ 俺が化物から君とそのおやっさんを守ってやるぜ！ これからも宜しくな！」
阪中 智春(さかなか ともはる)「マジですか！ 断られると思ってたのに・・・」
阪中 智春(さかなか ともはる)「本当にありがとうございます！ よろしくお願いします!!」
ローガン（いつか必ず真実を・・・）