不良王に、俺はなる!

はじめアキラ

不良王に、俺はなる!(脚本)

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〇飾りの多い玄関
アサト「日本一の不良王に、俺はなる!」
  ちょっと待って。僕は思いっきりずっこけた。拳を突き上げたアサトが、突然目の前でそんなことを叫んだからだ。
  しかも、某大御所マンガの台詞をモロパクリして。
アサト「俺には不良の才能がある、それを今日から開花させてやろうと思う!」
アキト「え?」
アサト「ガタイが良く、声がでかく、人相も悪い俺だぞ!」
アサト「喧嘩しても多分強いはずだし、何故今までその才能に気づかなかったのか・・・・・・!」
アキト「いや、ガタイいいのは柔道やってたからじゃん・・・・・・」
アサト「俺の突き進むロード、見ていてくれよアキト!」
アキト「人の話聞けよオイ!」
  彼は宣言するだけ宣言すると、そのまま“いってきます!”と元気よく言って家を出ていった。
  金髪リーゼント、改造学ランっていったいいつの時代の不良のつもりなんだろう。
  まあ、間違いなく部屋に散らばってる、十年ちょいくらい前の不良マンガを読み漁った結果なのだろうが。
アキト「・・・・・・馬鹿なの?」
  そもそも不良なら、予鈴の四十分前にはちゃんと学校に到着するような時間に律儀に家を出ていくのはどうなんだろう。
  いつもの癖が既に抜けていないではないか。もっと言えば。
アキト「つか、お前の高校、進学校じゃん。不良いんの?見たことないけど?」
  地元のどっかに不良はいるかもしれないが、ヤツの学校に不良がいるのを見たことがない。
  正直、既にスタート地点に立てていないような気がするのは気のせいか。
  僕はため息を一つついて、ガタイのいい男子高校生の後を追いかけることにしたのだった。

〇小さいコンビニ
  そして僕は。そんなアサトの、彼なりに“不良になろうとして頑張りました”なシーンの数々を目撃することになる。
アサト「うおらぁ!てめぇら何しとんじゃあ!?」
  おお、凄いじゃん。登校途中に、コンビニ前の不良三人をぶっとばしたぞ。
  ・・・・・・気弱そうな中学生をカツアゲしようとしていた不良だけど。
  でもってめっちゃ中学生に感謝されてるんですけど。ほら、そこやらかした、って顔しないの。

〇教室
アサト「おらおらおら!このクラスで一番強いのは誰だぁ!?」
  おお、まさに不良っぽいね。クラスで一番強い奴をぶっとばすってアレでしょ?
  残念ながら学校に来るの早すぎて教室に殆ど誰もいないんですけどね!真面目すぎるでしょ、不良気取るなら遅刻くらいしないよ。
アサト「なんだとコラ、俺に言いたいことがあるのか?」
  おっと、しばらくして登校してきたクラスメートに声かけられたぞ!眼があった男子にガンつけるとかちょっと不良っぽいね!
  まあ、お前何その面白いカッコ!写真撮らせろよー!ってみんなにわらわら集まられて人気者になってるし、
  それ断れてない時点でもう不良じゃないんだけどね!

〇学校の廊下
アサト「な、なんだとこ、いやその、何でございましょうか」
  おっと不良ルックなくせに、先生にタメ口もきけないぞこいつー!
  目上を敬えっていうのがもう完全に染みついちゃってるじゃん、駄目じゃん!
  しかも明らかに校則違反の恰好で学校来たアサトに対して先生が
  “どうした武田!?何か辛いことでもあったのか、先生がなんでも話を聴くから相談してくれ!”ってガチで心配してるんですが。
  校則違反さえ叱られないってどゆことよ。
アサト「え、えっと、その・・・・・・」
  もう諦めなってば。窓の外から一部始終を覗いていた僕、ため息をつくしかなかった。
  お前、自分が学年トップの成績の優等生だって事実をすっかり忘れてない?
  そりゃ叱られるより心配されるに決まってるだろ、この真面目君め。

〇飾りの多い玄関
アサト「は、はっはっは!この俺の、イカした不良の才能が花開いた瞬間を見たかアキト!」
アキト「あー・・・・・・ハイハイハイハイ」
  その日の夕方。律儀にハンドボール部の助っ人を手伝って帰ってきた不良()は、偉そうに僕の前で胸を張ったのだった。
  頭にかぶっていた金髪リーゼントのカツラと、ネットで買った改造学ランのコスプレ服を脱ぎながら。
  自分の髪染める勇気もないし自分の学ランを実際に改造する度胸もない時点で無理だと何故わからないのか。
アサト「しかも、最終的には人のものを盗んで帰ってきた!どうだまさに悪人だろう!」
  そう堂々と宣言する彼の腕には――にゃぁ、と可愛い鳴き声を出す白い子猫の姿が。
  盗んだって、道端に捨てられていた子猫を見て見ぬふりできずに拾ってきただけやんけ、と僕は心の中でツッコミ。
  根本的なところに善意と誠実さしかない奴が、不良王になんぞなれるわけがないのである。
アキト(まあ、しばらくはお遊びに付き合ってあげますかね)
  ふぁあーと。同じく彼に拾われた元捨て猫の僕は、尻尾を立てて大きく欠伸をするのだった。

コメント

  • アサトは猫ちゃんだったんですね! まるで【吾輩は・・である】と令和
    版ですね。いや、原作より私は好きです。アキト君がどれほど不良という存在と対極しているのか、それを温かい笑いで表現されていてとっても良かったです。

  • 不良になろうとしても根が真面目で、しかも優等生ときたらまず不良は無理でしょう。根本的に不良のなんたるかを勉強して出直しましょう。

  • 昔のヤンキー漫画の影響で、いきなりヤンキーになるって発想はすごいですよね。
    でも、根がいい人すぎておもしろかったです。笑
    先生にタメ口をきけないヤンキーとかかわいいです。

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