第9話 アームガンの少年(脚本)
〇西洋の街並み
以龍とイリアがアドベントギルドを出た後、腕に変わった銃を装着している少年がギルドの扉をくぐった。
・・・見れば見るほど変わった銃だ。
引き金や撃鉄はなく、あるのは銃身と弾倉だけ。
しかも、その弾倉にはカードスロットのようなモノがついている。
〇西洋風の受付
少年はギルドの受付近くにある長椅子に腰を掛ける。
──装備を解除したのか、少年の腕に装着してあった銃は消えていた。
受付の女性が少年の姿を目にして話しかけてくる。
「あら? 『ラビッシュ』くんじゃない。 どう? 『フォルクス』の方は?」
「ダメダメ。 おいらの攻撃じゃ、全然致命傷にならないんだ。 ──で、奴はやばくなったらすぐに逃げ出すし」
「とりあえず、シグナルは撃ち込んだから、続きは明日だね」
そう話しながら少年は立ち上がり、依頼書が多数貼り出されている壁の方へと歩いていく。
「せめて、信用のおける仲間でもいれば── ・・・あれ? 昼に貼ってあったグリズリーは誰かが持っていっちゃった?」
「それでしたら、先ほど解決しましたよ」
「ありゃりゃ。 また、ハイクラスの小遣い稼ぎに持っていかれちゃったか・・・」
「いえ。 その依頼を受けたのは、ノーマルの男女ペアでしたよ?」
「ノーマルアドベントのペアが、もう解決させたってこと?」
「ええ。 ──でも、なんか変な二人組でしたよ? 依頼報酬を互いに譲りあったりなんかしてて」
「!! ──その二人と連絡って取れる!?」
「うーん・・・ 二人とも初めて見るアドベントでしたからねぇ」
「あ、でも帰ったのはついさっきのことだから、もしかするとまだ──」
話の途中でラビッシュはギルドを飛び出していった。
〇西洋の街並み
夜のとばりのおりた街並みをラビッシュは見渡す。
(こんな時間だ。 急ぐ理由でもなければ、まだこの街にいるはず・・・ ──だとしたら、宿屋か!?)
ラビッシュは宿屋に向かって走っていった。
〇旅館の受付
──ギルテの街、宿屋。
イリア「すみません。 二人部屋って空いてます?」
以龍とイリアは宿屋に来ていた。
──イリアが空き部屋の確認を取る。
「二人部屋かい? ちょいと待っておくれよ」
宿の女将が宿帳らしきモノを確認する。
どうやらあれに宿泊状況が記載されているようだ。
以龍 渚「ちょっと待て。 二人部屋ってなんだ?」
イリア「ダメですよ。 今のアナタを一人にすると、また無茶をしかねないですからね」
以龍 渚「だからって、二人部屋はまずいだろ?」
イリアの目を見てみる。
・・・意見を変える気はなさそうだ。
以龍 渚「・・・何を言っても無駄か」
「はい、お待たせ。 二人部屋だと3千だね」
イリア「あ、はい。 ちょっと待ってくださいね」
──イリアが財布を確認するよりも早く、以龍が三枚の金貨をカウンターに置いた。
「まいど。 これが部屋の鍵ね。 部屋は二階の奥になるよ」
以龍が鍵を受け取り、階段に向かって歩き出す。
イリア「宿代くらい、私が出したのに・・・」
以龍 渚「どうした? 早く来いよ」
イリア「・・・これを銀貨に崩してもらえますか?」
女将に両替を頼もうとするが──
以龍 渚「行・く・ぞ」
以龍が戻ってきて、イリアの手を引いた。
イリア「ちょ、ちょっと。 宿代の半額を──」
以龍 渚「今度は俺が奢る番だ」
イリアの手を引いて、階段の方へ──
「──そこの二人、ちょっと待ったぁ」
宿の入口の方から、以龍とイリアを呼び止める声が聞こえてきた。
息を切らせながら現れたのは──
ギルドで『ラビッシュ』と呼ばれていた少年だった。