特級戦隊2048 stand for myself

マネスタ

エピソード0「stand for myself」(脚本)

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〇大きい交差点
  今日もまた、ヒーローが怪人を倒した。
「おお、『オーガルド』が怪人を倒してくれたぞ!」
「流石ヒーローだ!強ぇ!」
村雲威作「・・・ふん」
  つくづく、馬鹿だと思う。
  どこにでもヒーローが駆けつけるようになった社会で、ヒーローに勝つこともできない怪人に、一体何ができるというのか。
村雲威作「(こんなの、雑草狩りと何が違うってんだ)」
村雲威作「(どんなにぶちのめしても・・・意味ねぇじゃん)」
  村雲威作、15歳。
  異能力者として、そして普通の若者としてもずば抜けた才能を持ち合わせた彼にとって──
  現代のヒーロー社会は、あまりにも無味乾燥なものに見えた。

〇繁華な通り
怪人A「オラオラ、殺しちまうぞ~!?」
  白昼に発生した、銃乱射事件。
  殺傷目的はなかったようだが、街の一部が完全に占拠された状態となっている。
  武装しているにも関わらず、一般人に対しては非攻撃的。
  さらには不可解な要求も相まって、警察側の大きな混乱を招いた。
  犯人からの要求は──『ヒーローを連れてこい』というものだったのである。
怪人A「さてさて・・・あと10分もすりゃそこいらのヒーローが来るだろ」
怪人A「くく、ヒーローをぶっ飛ばせたら気持ちいいだろうなぁ」

〇繁華な通り
村雲威作「ふむ・・・」
  ヒーローと怪人の、生産性のない戦いが嫌いだ。
  だが、だからと言って放っておくのも、それはそれで癪だ。
  どうやら犯人たちはヒーロー対策をしているらしいが──俺であれば問題ないだろう
村雲威作「(さてと、久々の出番だ)」
  見ていて癪なので、自分が犯人を倒す。
  そんな選択ができるのは────自分が強力な異能者だからである。
村雲威作「さぁて──悪者退治だ!」
  村雲威作の異能「ジェット」。
  全身の至る箇所から空気を放出し推進力を得ることができる、『全身ジェット人間』。
怪人A「な────誰だ!」
怪人A「ぐふ・・・」
「おい、どうし────」
「だ、誰だ!ヒーローか!?」
村雲威作「気にするな!ただの天才だ!」
  目にも止まらぬ速さで繰り出される打撃。
  一瞬にして犯人の集団は全員が戦闘不能となった。
村雲威作「・・・あ?終わりぃ?」
村雲威作「(対策してたんじゃねぇのかよ・・・呆気ねぇ)」
  ヒーローらしい、カッコいい戦い。
  
  そんなものは、ここに存在しない。
  今日もまた、怪人が倒された。
  ただ、それだけの話。
村雲威作「・・・つまんねぇことすんじゃねぇよ、チンピラ」
怪人A「(クソが・・・こんなガキに)」
怪人A「邪魔されてたまるかァァァァ!!」
村雲威作「────!?」
  ”それ”が非常に危険なものだということを、感覚的に理解した。
村雲威作「(────!!)」
村雲威作「・・・!!」
  間一髪の回避。
  横を掠めていった光線が、鉄筋コンクリートの建築物に巨大な風穴を作った。
村雲威作「なるほど、『それ』か!!」
  犯人が手にした、謎の兵器。
  それが対ヒーローの秘密兵器であるということは、火を見るより明らかだ。
村雲威作「弱ぇくせに、武器でイキんな、チンピラ!」
怪人A「クソガキが!ぶっ殺してやる!」
村雲威作「(──!? 連発!?)」
  ジェットの推進は強力だが、弱点もある。
  それは、一度加速してしまえば、軌道の変更が難しいというもの。
村雲威作「(クソッ、回避が────)」
村雲威作「────」
怪人A「─────は?」
  『ヒーローは、お願いされずとも駆けつけてくれる存在でなければならない』
  『想定外の存在だからこそ────ヒーローはカッコいいのだ』
???「クハハハハハハハハ!」
???「随分と物騒なものを持ち歩いているな! 結構結構!」
  突如として目の前に珍妙な人物が現れた。
  全身を鎧のようなもので覆い、野太い声で高笑いする謎の男。
  男は犯人が発射した光線を片手で軽々と受け止め────
  悠然と、こう名乗った。
???「私の名は─────マスタァァァァァァァボォォォォォォォォズ!!!」
???「今日も今日とて────完璧に"パーフェクト"なヒーロー日和だな、怪人よ!」

〇繁華な通り
マスター・ボーズ「ほら、撃てるもんなら撃って来い!」
怪人A「ぐ、こなくそぉ!」
マスター・ボーズ「ふんっ!」
村雲威作「(光線を・・・弾きやがった。 バケモンか・・・!?)」
怪人A「う、嘘だろ・・・? こんなバケモンが来るなんて・・・」
マスター・ボーズ「おっと、連射はオススメしないぞ。 暴発されても困るのでな!」
怪人A「くっ・・・! うおおおおおおお!」
マスター・ボーズ「さて、これで安心だな。 ムショでしっかり更生してきなさい!」
  男は倒れていた犯人たちを一箇所に集めて縛り上げると、謎の兵器を回収した。
村雲威作「・・・」
マスター・ボーズ「さて────そこの少年!」
村雲威作「わっ・・・な、なんだよ」
  ヒーロー活動には、国家機関による特別な認可が必要であり、認可をもらっていない異能者には認められていない。
  立場上、今の威作は怪人とさほど変わらないのだ。
  ヒーローにとっては、取り締まるべき相手であるとも言える。
村雲威作「・・・」
マスター・ボーズ「いい戦いっぷりだった! 私ほどではないが、カッコよかったぞ」
村雲威作「・・・は?」
マスター・ボーズ「君、ヒーローじゃないだろう? だというのに飛び出すなんて────」
マスター・ボーズ「強烈に"グレイト"だ! もう少し経験を積めば、本物のヒーローになれるぞ!」
村雲威作「あぁ・・・うん・・・」
マスター・ボーズ「また会うこともあるだろう。 その時は、しっかりヒーロー免許をもらっておくんだぞ!」
マスター・ボーズ「では、さらばだ! マスター・ボーズという名前、鮮烈に覚えておけよ!」
村雲威作「・・・」
村雲威作「・・・なんだありゃ」
  『マスター・ボーズ』というヒーローは聞いたことがない。恐らく無名のヒーローなのだろう。
  だが、光線を素手で弾き飛ばすほどの強さのヒーローなど、そういるものではない。
村雲威作「本物のヒーロー、か」
  今日この日、俺は────
  初めて、自分の『上』を知った

〇廃ビルのフロア
  とある廃ビルにて
ウチムラ「・・・チッ」
ウチムラ「在庫にも限りがある。 次からはもう少しまともな人間を雇うか・・・」
  違法兵器ブローカーであるウチムラの元には、十数台もの光線兵器が用意されている。
  今の仕事は適当な怪人に武器を売り、対ヒーロー戦闘における有用性を確かめるというもの。
  今のところ、威力については申し分ないことが確認できているが、肝心の実績が出ていない。
ウチムラ「(実績がねぇと、宣伝にならねぇな)」
  この兵器とて、ただの宣伝道具に過ぎない。
  ウチムラが関わる計画は、非常に遠大なものだ。
ウチムラ「『誰でも異能力者に勝てるようになる武器』か。 下手すりゃ、市場が変わるかもな」
ウチムラ「さて・・・」
ウチムラ「目撃者と回収者は・・・掃除しておかねぇとな」

〇一人部屋
村雲威作「マスター・ボーズ、か」
  ただ強かったのではない。
  あのヒーローは、普通のヒーローとは、どこか異なる
  俺が好きになれない、人々の期待を背負っただけのヒーローとは違う。
村雲威作「・・・よく分からねぇな」
  俺は天才だ。
  誰かに憧れたことなどない。
  実際、他人にできて自分にできないことなど、一つもなかった。
  だが────マスター・ボーズは、明らかに俺の知らないものを持っているように見えた。
村雲威作「・・・・・・」
村雲威作「ヴィランでも探せば、その内また会うだろうな」

〇ビルの裏
村雲威作「・・・」
村雲威作「(・・・尾けられているな)」
  尾けられるようなことをした覚えは、今のところ一つしかない。
村雲威作「(今朝の連中の・・・仲間、いや黒幕か)」
村雲威作「(好都合だ、今度こそ成敗してやる。ちゃんと勝たねぇと気持ち悪い)」
村雲威作「(捕まえたら、あの変な武器の出どころでも吐かせるか)」
  その距離、十数メートル。
  だが──
村雲威作「────」
ウチムラ「────」
  彼らの戦闘においては、短すぎる距離だ。
村雲威作「(硬ぇ!? 異能者か!?)」
  建物の壁を縦横無尽に飛び交いながら交錯する二人。
  威作の攻撃は常人なら一撃で吹き飛ばすほどに強力なものだが──
ウチムラ「・・・未熟だな」
村雲威作「あぁ?」
ウチムラ「異能に頼り切った戦い方、甚だ不快だ」
村雲威作「────!?」
  手刀から繰り出される、本物の刀のような鋭い斬撃。
  明らかに、常人の動きではない。
村雲威作「・・・っぶね」
ウチムラ「異能に頼り切った未熟者では、鍛えた強さには勝てん」
村雲威作「はっ、フラグ立てやがったな。安心しろ」
村雲威作「次でぶっ倒す!」
村雲威作「(最高速度で──!)」
  ジェットの能力は、一定程度使用することで、体内の空気の通り道が広がる副作用がある。
  戦闘開始から十数秒で、ジェットは最高速度を出せるコンディションとなった。
村雲威作「『高・速・弾』!! (ハイ・ソニック・ダン)」
ウチムラ「『硬・攻性・撃』!! (コウ・ストライク・バン)」
  音速に匹敵する超高速の突進技と、極限まで高めた身体能力から繰り出される掌底がぶつかり──
村雲威作「ぐあっ・・・」

〇ビルの裏
ウチムラ「ふん、異能に頼り切った強さなど、こんなものだ」
村雲威作「ぐ・・・あ・・・」
ウチムラ「こんな人間が蔓延るのは、社会にとって毒だ。早々に終わらせなければな」
  歯が立たない。
  研ぎ澄まされた格闘術から繰り出された技は、俺の最高威力を真正面から打ち砕いた。
村雲威作「(嘘だろ・・・こんなことが・・・)」
  俺は天才だ。
  だというのに、敗北し地に伏している。
  胸の内を満たすのは──屈辱、ではない。
村雲威作「(んだよ・・・もっと上があるじゃねぇか)」
  自分よりも上。
  それを目指すことを、いつの間にかやめていた。
  俺の敗因は、自分と、自分を取り巻く全てを過小評価したことだ。
村雲威作「クソが・・・」
ウチムラ「────は?」
  突如として、ウチムラが握っていた銃が握り潰された。

〇ビルの裏
マスター・ボーズ「・・・元RDの一流エージェントが、『パニッシャー』のブローカーとはな」
ウチムラ「────」
ウチムラ「な──貴様、は」
マスター・ボーズ「身柄を預かるぞ。拷問はしないから安心したまえ」
マスター・ボーズ「・・・悔しいか、少年?」
村雲威作「────」
村雲威作「ただ単に──惨めだ」
  マスター・ボーズは、静かに俺の話を聞いてくれた。
村雲威作「俺ってさ、天才らしいんだ。 テストは常に満点だし、運動も余裕。 戦闘でも超強ぇ」
村雲威作「で、いつの間にか俺が一番だと勘違いしてた。 身の程知らずなバカなんだよ」
マスター・ボーズ「・・・」
村雲威作「だから・・・もうこんなことはやめる」
村雲威作「明日から、普通の人間として生きていくよ。もう・・・ヒーローの真似ごとは──」
マスター・ボーズ「それはダメだ」
村雲威作「・・・え?」
マスター・ボーズ「その『諦め方』は、癒えぬ傷になるぞ。 もう少し、自分に素直になってみなさい」
村雲威作「素直て・・・本心だよ。嘘なんか──」
マスター・ボーズ「嘘かどうかじゃない。 今の君は、視野狭窄になっているぞ」
マスター・ボーズ「考えてみろ。 今の君は、そんなに愚かか?」
村雲威作「────」
マスター・ボーズ「自分の未来を、裏切っていいのか?」
  未来の自分。
  そんなものを考えることになるのは──本当に久しぶりだ。
  何せ未来を考える度に──決まりきった結論に、辟易としていたから。
  どうせ俺は、天才として活躍するだけ。
  想定外の面白さなど存在しない。
マスター・ボーズ「だが、君は今──大きく成長した」
マスター・ボーズ「自分の未熟さを知り、地に伏し──そして上を向くことを思い出した」
村雲威作「────!」
マスター・ボーズ「・・・いい顔になった。 ヒーローの最低条件、クリアだな」
村雲威作「・・・クソが、嫌なこと考えさせやがって」
村雲威作「・・・なぁ」
マスター・ボーズ「なんだ?」
村雲威作「今度から、修行つけてくれよ」

コメント

  • 威作の言葉「敗因は自分を取り巻く全てを過小評価したこと」というのは常人にも耳が痛い人生の真理ですね。他者をバカにすることは自分の未来の可能性も潰してしまうということなんだ。彼は己の未熟さに気付いたから、これからは天才的な能力をさらに伸ばしていく一方ですね。

  • たしかに向上心は人間が生きていく上で、とても大切なものですね。自分より優れている存在が、身近にいるということは自分を成長させてくれる、村雲君が教えてくれました。

  • 村雲が天狗になって👺いる時、マスターが出現してくれて良かった。人は敗北を知らなけば無意味な人生を送ることになります。それにしても、マスターは全てにおいてカッコよすぎです。

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