APAS討伐部~パートナーになったのは、最凶最悪の怪異でした~

菜鳥オウル

2.開始早々不穏な空気です。①(脚本)

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菜鳥オウル

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〇古い本
  収容No.0001 ヤマタノオロチ
  危険度;特級SSS
  八つの頭を持つ大蛇。
  かつて神々により討伐されたと思われていたが実は生存。
  元水神のようだが神としての力は封じられている模様。
  解放されれば危険度は特級SSSSを優に越えると推測される。
  関連ファイル;
  ■■■■■■■■■■■■の概要《閲覧禁止》

〇明るいリビング
玲奈「って、どういうことですか!!」
須佐川(電話)「どうもこうも、資料に書いてある通りだ。そいつはヤマタノオロチ、八田島時雨は偽名だな」
玲奈「それが分からないって言ってるんですよ!」
玲奈「ヤマタノオロチって伝説級の怪異じゃないですか! あんなのの手綱を取るなんて、私には無理です!」
玲奈「それに、もし百歩譲ってバディに納得したとしても──」
八田島「狐守さーん。さっきのシュークリームはー?」
玲奈「あーはいはい、冷蔵庫の中に入れてるから自分で取って!」
玲奈「──こんなやつと同居なんて絶対に嫌です!!」

〇オフィスのフロア
  私達が白狼との戦いを終えて討伐部に戻ると、机の上に茶封筒とメモが置かれていた。
  メモには須佐川さんの字で、住所とそこに向かえという旨の言葉。

〇マンションの共用廊下
  指定された場所はとあるマンションの一室だった。
  茶封筒の中に部屋の鍵が入っていたので、それを使って中に入ると・・・

〇明るいリビング
  綺麗に片付けられたリビングの机の上に、「仲良し同居計画」とタイトルのついた冊子が置かれていたのだった。

〇明るいリビング
須佐川(電話)「結構いい考えだと思うんだがなあ。ほら、バディって信頼関係が重要だろ?」
玲奈「だからって同居する必要ないでしょう。こんなやつと暮らせば私の生活が崩壊します」
玲奈「それに一応、男と女ですよ?」
須佐川(電話)「ヤマタノオロチを男の部類に入れていいものなのかは分からんが・・・」
須佐川(電話)「しかしお前が一緒に住まないとなると、そいつは野放しになるんだが、それは陰陽師として許せるのか?」
玲奈「え? 仕事以外の時は施設に戻せば良いのでは?」
須佐川(電話)「それはできない。施設に戻さないという条件でプロジェクトに参加させてるからな。破れば俺がやつに手を噛まれる」
玲奈「須佐川さんの都合じゃないですか・・・」
須佐川(電話)「仕方ないだろ、こっちにも色々あるんだ」
須佐川(電話)「ともかく、お前が監視をしないと言うのなら、八田島は自由の身になるわけで・・・」
須佐川(電話)「そうなるとなにが起こるかは想像できるよな?」
玲奈(・・・)

〇コンビニの店内
八田島「あっ、これ美味しそう!」
八田島「んー、普通に並んでるだけだし・・・」
八田島「持っていっていいよねー」
コンビニ店員「こらー! 止まれ、万引き犯め!!」

〇明るいリビング
玲奈(なりかねない・・・)
玲奈「分かりました。非~常に不本意ですが、同居に同意します」
須佐川(電話)「おっ、本当か!? いや~、助かるわ!」
玲奈「ただし、ヤマタノオロチの食費は経費で・・・」
須佐川(電話)「・・・」
玲奈「──須佐川さん?」
  ツー、ツー・・・
時雨「ねえねえ狐守さーん。僕、この「びーる」ってお酒よりも清酒がいいー」
玲奈「・・・もう、」

〇東京全景
「須佐川さんの馬鹿ーーーーーー!」

〇個別オフィス
須佐川「──ハックシュン!!」
須佐川「はあ。さては狐守が俺の悪口でも言ってるな?」
須佐川「──まあいいか。これでひとまず第一関門を突破できたんだから」
須佐川「頼んだぞ4人とも。人間の未来はお前達の絆と、このプロジェクトの成功にかかってるんだからな」

〇大企業のオフィスビル
  ──数日後。

〇オフィスのフロア
玲奈「ああもう! やっぱり無理よ!」
酒巻「あはは・・・荒れてるね、狐守さん」
玲奈「荒れずになんていられないわ。 だって──」

〇男の子の一人部屋
  ──生活面でも。
玲奈「いい加減起きなさい! 仕事に遅刻するわよ!」
八田島「仕事なんて知らない。僕はまだ寝るの」
玲奈「なに言ってるの! 起きないなら調伏するわよ!」
八田島「キミには無理だよー・・・」
八田島「すー、すー・・・」
玲奈「こら、寝ないでってば!!!!」

〇線路沿いの道
  ──仕事面でも。
玲奈「ターゲット発見!すぐに調伏──」
八田島「はぁ~~~~」
八田島「怪異を見つけた途端喧嘩売るなんて、ほんっと猪みたいだよね、キミ」
玲奈「なによ!? 私は怪異を討伐するのが仕事なの! あなたも知ってる・・・」
玲奈「──あ」
八田島「ざんね~ん。逃げられちゃったー」
八田島「でも心配しないでいいよ、あいつは放置してても大丈夫だからー」
玲奈「なに言ってるの!! 追いかけるわよ!!」
玲奈「──って、腕を放しなさい!!」

〇オフィスのフロア
玲奈「──そんな感じでずっと振り回されっぱなしなのよ」
玲奈「仕事の方も、「納得した仕事じゃないと手伝わないから」なんて言うし」
玲奈「あいつの食費は経費で出してくれることになったから金銭面では救われたけど、私の気力は持たないわ」
玲奈「酒巻くんの方はどう?」
酒巻「あー、俺は・・・」
酒巻「まあ、ぼちぼちかな?」
玲奈「そう・・・ さすがは怪異退治の名門・源家の一族よね。怪異の扱いに慣れてるって感じ」
酒巻「いやいや、そんなことないよ。大体俺の家は傍系の傍系のそのまた傍系だし」
酒巻「それに、そのせいで俺的には若干気まずいと言うか・・・」
玲奈「ん、何か言った?」
酒巻「いや、何でもない」
酒巻「でも狐守さんはよく頑張ってると思うよ」
酒巻「茨木さん曰く、八田島さんは怪異の中でもいろんな意味で特殊なタイプらしいし──」
酒巻「なによりあの境遇で怪異との生活を受け入れてること、俺はすごいと思ってる」
玲奈「ああ・・・」

〇広い和室

〇オフィスのフロア
玲奈「・・・そうね。陰陽師を目指し始めた頃の私が今の状況を聞いたら卒倒するわ」
玲奈「はぁ。本当、なんで怪異ってみんなあんな感じなのかしら。自分勝手で迷惑極まりない・・・」
???「へえ。キミ、そんなこと思ってたんだ」
玲奈「──!!」
八田島「でもそれ、僕からすればキミ達人間の方がそうなんだけど」

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