五話 生きる意味(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
──晶。
私は、みんなを救いたいんだ。
誰も死なせたくない、誰も傷ついてほしくない。
だから戦う。
どんなことがあっても、絶対に逃げないって決めたんだ。
でも君は──
逃げたっていいんだよ。
君までこんな危険な目に遭い続ける必要はないんだ。
私は君に、生きていて欲しいから──
〇警察署の医務室
七年前──
中井 雛「うん。 身体能力向上装置、問題ないよ。 体もちゃんと健康でよかった!」
黒沼 晶「・・・」
中井 雛「・・・大丈夫?」
黒沼 晶「・・・俺はこれで失礼します」
中井 雛「ま、待って、晶くん!」
中井 雛「自分と莉呑(りのん)ちゃんを比べないで。 晶くんは晶くんのあり方でいいんだから」
黒沼 晶「分かってます。 俺は莉呑のように強い力を持っていない。 だから人の命が助けられないのは仕方がない」
黒沼 晶「そんな力の弱い俺が「全員の命を救いたい」と思ったって、ただの偽善にしかならない」
黒沼 晶「それでも、人が目の前で死んでいくのは辛い。 俺じゃなくて、莉呑が生きてたのならなかった犠牲ですから」
中井 雛「晶くん・・・」
大型ギャラジー出現。
エージェントは速やかに現場に向かってください!
黒沼 晶「・・・行ってきます」
中井 雛「気をつけてね、晶くん。 死んじゃダメだよ」
黒沼 晶「・・・はい」
〇渋谷のスクランブル交差点
渋屋 杏「ぱぱー!」
杏の父親「こら、いつも一人でどこかに行くんじゃないって言ってるだろ?」
渋屋 杏「えへへ、ごめんね。 きれいなお花があったの、見て!」
渋屋 杏「えへへ、かわいいでしょ!」
杏の父親「うん、かわいいね。 でも次からは俺も一緒に行きたいな」
渋屋 杏「うん、いいよ!」
大型ギャラジーだ!! 逃げろーーッ!!
「!!!」
渋屋 杏「ぎゃ、ぎゃらじーって・・・ おとうさん、わたし、死んじゃうの!?」
杏の父親「大丈夫だよ、杏。 杏のことは父さんが守るから」
渋屋 杏「う、うん! そうだよね、大丈夫だよね!」
ぐわあぁぁぁぁっ!
隊員「は、早く・・・逃げるんだ・・・!」
渋屋 杏「いやあぁぁぁぁぁぁっ!!」
杏の父親「杏! こっちだ、逃げるぞ!!」
彼女たちは運が悪かった。
その日は、歴史上最大の被害者数が出た日だった。
その日に地上に舞い降りたギャラジーは、人の命を弄ぶことを快楽だと感じる生命体だったのだ。
黒沼 晶「・・・行くぞ」
黒沼 晶「なんだ!? 手応えはあるのに、どうして動きが止まらない!?」
黒沼 晶「楽しんでる、のか? 殺戮を・・・!」
黒沼 晶「早くあいつを止めないと・・・!」
うわぁぁぁぁぁあ!!!!
助けてぇぇぇぇぇっ!
黒沼 晶「──ッ!」
黒沼 晶「莉呑なら、すぐに大型ギャラジーだって倒せたはずだ」
黒沼 晶「なのに俺は、俺はなんだ・・・!? どうして上手くやれないんだ、何のために生き残ってるんだよ・・・!」
杏の父親「はぁ、はぁっ!」
渋屋 杏「おとうさん、もう走るのつかれたよぉ・・・!」
黒沼 晶「生きてる人がいる・・・!」
黒沼 晶「そうだ、弱くても俺は戦わなくちゃいけないんだよ・・・! これ以上の犠牲を出さないために!」
黒沼 晶「後ろに下がれ、俺が前に出る!!」
杏の父親「助かるよ、ありがとう!」
黒沼 晶「息の根を止めさえすれば・・・! あいつが力尽きるまで、撃ち続けてやる!」
黒沼 晶「なんだ、大外れだぞ?」
黒沼 晶「!? この攻撃・・・俺を狙ったものじゃない・・・!?」
黒沼 晶「まさか・・・!」
うわぁぁぁぁぁん!
おとうさぁぁぁぁぁん!
杏の父親「杏・・・逃げるんだ・・・!」
黒沼 晶「!!」
杏の父親「き、君・・・俺のことは、大丈夫だから・・・!」
杏の父親「杏を、杏を救ってくれ!」
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