エピソード14〜いざ、聖裁大学へ〜(脚本)
〇駅前広場
〜22:20 聖裁大学最寄り駅〜
「はあ、はあ・・・やっとここまで着いた・・・」
学長バルバロッコ「少し・・・聖裁大学を侮っておったわ・・・。完全にわしらが後手後手になっておる」
上子「ここまで来る途中、大雨やら雷やら降ってきましたからね。それだけで体力持ってかれましたよ」
リオ「その大雨や雷は、おそらく魔法ね。私たちが歩いている地点に、局所的に降ってきたから・・・」
学長バルバロッコ「どうやら、聖裁大学は、魔法使い総動員でわしらに歯向かうつもりのようじゃな」
上子「そうですね。・・・これが、人望の差かあ・・・」
学長バルバロッコ「おい、わしを横目にそれを言うな」
リオ「はあ、私がみんなをテレポートで飛ばすことができたら、時間も大分短縮できたのに・・・」
上子「テレポートだとあっという間ですもんねー。こんなに疲れなくて済んだし、メイクも崩れなくて済んだし」
上子「あーもう、ここまで良いこと一つもないですよ!」
リオ「・・・上田くん、それは私に対しての侮辱かな?殴るぞ」
上子「いや怖ッ!そんな笑顔で「殴る」なんて言わないでくださいよ!」
リオ「まー魔力の強いあんたなら自分以外もテレポートできたでしょうけどねー何なら私の魔法コピーしてみる?してみなさいよ」
上子「いっ、痛っ、ちょ、胸ぐら掴まないでください!」
学長バルバロッコ「・・・まあまあ二人とも、争いはその辺に・・・」
上子「む、無理ですよ!俺は魔法の力を浴びないとコピーできないんです!」
上子「リオ先輩が自分をテレポートしたところで、俺がその力を浴びる訳じゃない。俺もテレポートできる訳じゃないんです!」
リオ「ほぉーこいつ人の傷を抉りやがって。ほら物は試しでコピーしてみなさい!魔法浴びなくとも根性でコピーしてみなさいよ!」
上子「ふぇあ〜〜頬引っ張らないでくだひゃい。い、いかん。女の子にこんなに攻められたら・・・な、何かに目覚めそう・・・」
リオ「ぎゃああ〜「目覚めそう」とか急に何気持ち悪いこと言ってるのこのヘンタイ!!」
上子「うわあっ!り、リオ先輩の平手打ちが来る!ちょ、待って・・・」
上子(くっそ〜マジでテレポートをコピーすることができたらここから逃げられるのに・・・使え!根性で使ってみせろ俺ェ〜!!)
リオ「・・・あれ?」
リオ「う、上田がいない!急にどこに行ったの!?」
「・・・こ、ここです・・・駅の看板の上です・・・」
学長バルバロッコ「な、何でそんなところにいるんじゃ!まるでテレポートしたみたいに・・・。・・・まさか上田、貴様・・・」
学長バルバロッコ「リオの魔法をコピーしたのか!?」
上子「ふぃ〜〜無事戻って来れた・・・。ど、どうやらそうみたいです」
リオ「あ、あんた、いつ私の魔法をコピーしたの?さっきあんたが言ったように、あんたがコピーするためには・・・」
上子「ええ、魔法の力を浴びないといけないはず・・・でしたけど」
上子「・・・どうやら、それだけではなかったみたいですね」
学長バルバロッコ「・・・上田。貴様、今日はまだわしの魔法はコピーしていなかったよな?」
上子「あ、はい」
学長バルバロッコ「ちょっと貴様の肩を触るぞ」
上子「ええっ!?ちょ、急に人に触るとか何言ってるんですか学長!ヘンタイじゃないですかあ〜〜」
学長バルバロッコ「・・・・・・・・・・・・」
上子「あ痛ぁッ!!触るって言うか、殴ったじゃん今!!」
学長バルバロッコ「すまんすまん、ちょっと腹が立ったのでな」
学長バルバロッコ「さあ上田、わしのパイロキネシスを出してみろ。ちょっと木陰に隠れて、こっそりと、じゃぞ」
上子「わ、わかりました。それじゃあ・・・」
上子「・・・つ、使えました・・・。パイロキネシスも、バッチリと・・・!」
学長バルバロッコ「・・・なるほど。そういうことか」
学長バルバロッコ「上田は、魔法の力を浴びるだけではなく・・・」
学長バルバロッコ「魔法を使う者に触れるだけでも、魔法をコピーすることができる!」
リオ「な、なんて使い勝手の良い力なの・・・。あ、ち、ちょっと待って!」
リオ「あんたのテレポート、自分以外も飛ばせたりする?おじいちゃんを飛ばしてみて!」
上子「わ、わかった。学長、行きますよ・・・。それッ!!」
リオ「・・・うそ、でしょ・・・」
リオ「自分以外も、飛ばせた・・・!!」
学長バルバロッコ「確かに、他の人も飛ばせた、が・・・」
学長バルバロッコ「飛ばした先が木の上とはちょっと困るのう。まだ人が周りに居るというのに。悪目立ちしたらどうするんじゃ」
上子「す、すみません。コントロールがなっていないみたいですね」
学長バルバロッコ「・・・とにかく。上田が初めて、わしのパイロキネシスを使った時も思ったが・・・」
学長バルバロッコ「コピー元の魔法使いの魔力の強さに関係なく、上田は高い能力を出せるようじゃ」
上子「確かに、最初パイロキネシス使った時、グラウンドの倉庫、灰にしちゃいましたからね、俺」
学長バルバロッコ「勝ち誇りながら言うな!!貴様の実家に請求書送るぞ!!」
上子「じ、実家に送るのは勘弁してください・・・」
学長バルバロッコ「・・・つまりじゃ、リオ。お前も、今後の努力次第によっては・・・」
学長バルバロッコ「自分だけではなく、他の人も飛ばすことができる・・・。その可能性を見出せたんじゃないじゃろうか?」
リオ「あ・・・!」
学長バルバロッコ「魔力が高くなれば、自分以外も飛ばせるようになる。まあ、そのためには相当修行する必要があるかもしれんが・・・」
リオ「・・・でも、そうね」
リオ「・・・私もいつか、自分の力で人を助けることができるかもしれない・・・!」
リオ「上田が他の人をテレポートしたのを見た時は、正直ちょっとショックだったわ。力の差を見せつけられたようで・・・」
上子「・・・リオ先輩・・・」
リオ「・・・でも・・・私の側に、私の魔法の模範となる魔法使いがいる。それがとても心強いんだということも、感じたわ・・・」
リオ「・・・上田。聖裁大学との問題にケリが付いたら、私の修行に付き合ってくれる?」
上子「良いですよ。俺もリオ先輩みたいに、正確な地点に飛べるようになりたいですし!」
リオ「ありがとう。助かるわ!」
学長バルバロッコ「まさか、聖裁大学にたどり着く前に、上田の魔法についてこんなに大きな収穫があるとはのう」
学長バルバロッコ「しかも重要なのは・・・。今わしたちがわかった情報は、聖裁大学の奴らには知られていないということじゃ」
上子「!!」
学長バルバロッコ「どこかで盗み聞きされていればアウトじゃが・・・今は魔法使いが近くにいる気配はない。じゃから情報は漏れてはいないじゃろう」
学長バルバロッコ「今得た情報はわしらの武器じゃ。じゃから上田、お前にお願いがある」
学長バルバロッコ「ギリギリまで、テレポートを使うな」
学長バルバロッコ「テレポートを使ったら、どうやって上田が魔法をコピーしたのか、聖裁大学の奴らは怪しむじゃろう」
学長バルバロッコ「じゃから、ここぞという時まで使うでないぞ。良いな」
上子「・・・わかりました。気をつけます」
学長バルバロッコ「・・・よし。では、少しここで時間を食ってしまったが、いよいよ聖裁大学の敷地内に入るぞ」
学長バルバロッコ「・・・みんな、くれぐれも用心するように。油断は禁物じゃぞ」
上子「・・・わかっています。行きましょう!」
〇お嬢様学校
〜22:50 聖裁大学 校門前〜
学長バルバロッコ「・・・とうとう着いたぞ。ここが聖裁大学じゃ」
学長バルバロッコ「・・・そして・・・。わしらを迎えてくれる者がおるの」
上子「・・・聖裁大学の、魔法使い・・・!」
リオ「せいぜい10人・・・といったところかしら。中々多いわね・・・」
「・・・あらあら。随分遅かったですわね」
レイ「待ちくたびれてしまいましたわ」
上子「・・・お・・・お前は・・・。それに、お前の隣にいるのは・・・」
上子「シキブ先輩!!」
シキブ「ご機嫌麗しゅう、上田さん。やっと、来てくれましたわね。もう来ないかと思ってましたわ」
シキブ「見てのとおり、私は無事ですわ。椅子に縛り付けられてはいますが・・・。でも、何ともありませんの。だから・・・」
シキブ「ここにいる輩、みんなまとめてやっつけてくださいまし」
上子「・・・わかりました」
レイ「おっと。本当にそんなことして良いんですか?シキブさんはまだ、こちらの手にありますわよ」
レイ「つまり・・・。あなたたち蔵杏大学の今後の動きによっては、シキブさんを傷つけることもできますわ」
上子「・・・ぐぬぬぅ」
「・・・心配ないわ」
「要は、私たちが先にシキブ先輩を救出しちゃえば、問題ないってことでしょ?」
レイ「・・・!!り、リオさん。いつの間にシキブさんの隣に・・・」
レイ「で、ですがあなたは他人をテレポートすることはできない。シキブさんの側に来ても、何もすることはできないですわ!」
レイ「あなたがこれから何か行動するより、私がシキブさんを傷つける方が早い!残念でしたわね、リオさ・・・!」
レイ「あががががッ!!きゃああああああ・・・」
リオ「シキブ先輩!大丈夫ですか!今、縄を外します!!」
シキブ「ありがとうございます・・・。ふう、身体が楽になりましたわ」
シキブ「それにしてもリオさん、お見事ですわね」
シキブ「まさかあなたがスタンガンを使うなんて・・・」
リオ「た、確かに私のキャラじゃないですけど・・・。でも、私、決めてましたから」
リオ「シキブ先輩を一番に助けるのは、私だ・・・、って」
シキブ「・・・ふふっ。流石はバルバロッサ学長のお孫さん・・・ですわね」
「・・・何が・・・」
「何が、バルバロッサ学長の孫だ、忌々しい・・・!!」
「あんたのせいで、あんたたちのせいで、私は・・・」
レイ「こんなに醜い顔になったんだろうがァァァァァァ!!」
リオ「・・・!!」
リオ「・・・あ・・・あなたは、一体・・・誰なの・・・?」
レイ「・・・ふふ。私のことはもう覚えていない、ですか。そうですか」
レイ「自分の都合の悪い記憶だけは消しやがって・・・。自分が何をしたのか・・・わかってんのか!!」
レイ「確かに、あの時から私たちは成長している。長く会ってなかったし、わからないのも無理ありませんが・・・」
レイ「ちょっとは予想してくれよ。デパートで友達を置き去りにした、バルバロッサ一族が!!」
リオ「・・・!!ま、まさか、まさか・・・」
リオ「シキブ先輩からの手紙にも書いてあった・・・王様の・・・孫・・・」
リオ「や・・・やっぱり生きていたんだ・・・良かった・・・」
リオ「セリーナちゃん!!」
レイ「・・・ふ、ふふ・・・ふふふ・・・」
レイ「セリーナちゃん、ねえ・・・」
レイ「確かに、それは王様の孫の名前ですわ。でもね・・・」
レイ「私の名前は、レイ・・・」
レイ「私は・・・あのデパートの崩壊の日。セリーナ様とリオの2人と、デパートで偶然会った、あなたたちの友達ですわ!!」
レイ「・・・もちろん、覚えていますわよね?私のこと・・・」
リオ「・・・あ・・・ああっ・・・!!」
レイ「当時、私たちは3人でデパート内を歩いていた。その時デパートの崩壊に巻き込まれた。そしてあなたは・・・私たちを置いて去った」
レイ「私とセリーナ様は崩壊に巻き込まれ・・・そして私は王様と共に、2人でこの国に来た」
レイ「・・・もう、私の言いたいこと、わかりますわよね・・・?」
リオ「・・・い、嫌・・・そんな・・・そんな・・・!!」
レイ「セリーナ様は、死んだ。だからここにはいませんのよ・・・。それが、真実ですわ!!」
緊張感やら何やらを壊す通常運転の上田くん、いろんな意味で貴重な存在ですねw
この緩急メリハリの利いた空気感、毎話楽しいですね!