リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第六話 勝負する天使(脚本)

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久望 蜜

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〇高級マンションの一室
ユリナ「さて、それでは悪魔に関する報告を。 班長の小天使二人から頼む」
リンドウ「はい。一班は本日、中級悪魔を一匹捕獲しましたわ」
リンドウ「並行して、通信機器の整備も行っています」
ツキミ「あら、一匹だけ? 二班は下級悪魔を二匹も捕まえたわよ?」
リンドウ「下級だからでしょう?」
ツキミ「何ですって!」
ヨモギ「はいはい、静粛にするっすよ!」
ヨモギ「ウチの班は、なんと中級と下級の悪魔を一匹ずつ捕縛したっす」
ユリナ「どちらも捕まえたのは、わたしだけどな・・・・・・」
ツキミ「何だ、ユリナ様のおかげじゃないの」
リンドウ「さすがですわ」
ユリナ「それはさておき、通信機器の調整はどうなった?」
リンドウ「実は、先ほど一時的に天界のドラセナと繋がりまして、いくらか情報を得られましたわ」
リンドウ「また、こちらの現状についても、報告できましたわ」
リンドウ「ただ、またノイズが出てしまい、通信が途切れてしまいましたの。復旧に努めますわ」
ツキミ「ドラセナからの報告によると、監獄から逃げた悪魔はちょうど二十匹」
ツキミ「上級悪魔ミルヴスが先導して、脱走した模様です」
ユリナ「ミルヴスか・・・・・・。 確か手練れだと聞いたことはあるが、実際に戦ったことはないな」
リンドウ「ユリナ様なら、大丈夫ですわ」
ツキミ「そーそー、それに私もいますし!」
ヨモギ「ツキミは別の班だから、関係ないっすよ!」
ヨモギ「それに実力的に見ても、いざというとき頼りになるのはウチだけっす!」
リンドウ「いいえ、ヨモギが一番信用ならないですわ」
ツキミ「そーそー!」
ヨモギ「何をー!!」
ユリナ(この子たち、確か同期だったよねぇ。 仲がいいのか悪いのか、よくわからないなぁ・・・・・・)
ヨモギ「よし、じゃあ今日中に捕まえた悪魔の数で、決着をつけるっす!」
リンドウ「悪魔の強さは関係なく、数で勝負ということですわね?」
ツキミ「望むところよ!」
ユリナ(班長なんだから大人しくしていてほしいんだけど、いっても聞かないか・・・・・・)
ユリナ(あぁ、統率力に欠ける自分が恨めしい・・・・・・)
ヨモギ「じゃあ、今から勝負っすよ!」
ヨモギ「よーい、ドン!!」
ユリナ(仕方ない、せめて危ないことにならないように見張っておくか・・・・・・)

〇川沿いの原っぱ
アルテミシア「見つけたっす!」
ゲンティアナ「どきなさい、私が仕止めますわ!」
アルテミシア「させないっす!」
エノテラ「ケンカをしている間に、抜けがけよ!」
エノテラ「やったー! アタシの勝ち!」
中級悪魔「ウオォォォ!」
エノテラ「あり? もしかして、まだ元気?」
ゲンティアナ「もう、何をやっていますの!」
中級悪魔「グアァァァ・・・・・・」
ゲンティアナ「捕まえましたわ!」
エノテラ「あー! アタシのエモノ!」
ゲンティアナ「ちょっと、あなたのエモノではなくってよ!」
アルテミシア「次は、あっちに悪魔っす!」
ユリナ(うーん、多少危なそうではあるけど、ちゃんとフォローはしあえている・・・・・・)
ユリナ(これなら、見ていなくても大丈夫かな)

〇開けた交差点
アルテミシア「今度こそ、ウチが捕まえるっす!」
エノテラ「セイっ!」
下級悪魔「がっ・・・・・・」
エノテラ「やったー! 捕まえた!」
アルテミシア「くー! 先を越されたっす!」
アルテミシア(いつまで経っても悪魔捕まえられないし、ウチは役立たずっす・・・・・・)
アルテミシア(このまま先輩の役に立てないなら、二人と代わったほうが・・・・・・)
アルテミシア「いや、ヘコんでいる場合じゃないっす!」
アルテミシア「ウチが、イリス様の分まで先輩を支えなきゃいけないんすから!」
アルテミシア「どこか、他に悪魔は・・・・・・ん?」

〇新緑

〇開けた交差点
ヨモギ「アサギさん!」
アサギ「ああ、ヨモギちゃん・・・・・・だったな?」
ヨモギ「そうっす! こんなところで、どうしたんすか?」
アサギ「ああ、ちょっとタバコを買いにな」
ヨモギ「身体に悪いって聞くっすよ?」
アサギ「ハハッ、ちげぇねぇな」
ヨモギ「あ!」
アサギ「何だ?」
ヨモギ(悪魔の気配っす! ・・・・・・前から歩いてくる、あいつっすか?)
下級悪魔(せっかく人間にとり憑いたんだ、誰かを襲ってやりてーな・・・・・・。 よし、前から歩いてくる、あいつらを!)
ヨモギ(こっちに向かってきたっす・・・・・・! アサギさんを守らないと!)
下級悪魔「ハッハー! くたばれ!」
ヨモギ「あいつ、不審者っす! アサギさん、早く逃げるっす!」
アサギ「いや、しかし! 君をおいていけるわけねぇだろ!」
下級悪魔「か弱い人間の子どもに、何ができる!」
ヨモギ「タアッ!」
下級悪魔「へ?」
ヨモギ「ヤッ!」
下級悪魔「ゲフッ」
ヨモギ「ハッ!」
下級悪魔「ガハッ」
下級悪魔「くそっ、何でだ!?」
ヨモギ「ウチはこう見えても、天界空手九十九段の武闘派っす!」
ヨモギ「素手での戦いは得意だし、お前くらいならこの姿でも引けはとらないっすよ!」
ヨモギ(まぁ、殻の人間にはちょっと気の毒っすけど・・・・・・)
下級悪魔「お前、天使か! くそ、覚えてやがれ!」
ヨモギ「あ、身体から抜けたっす!」
ヨモギ(でも、アサギさんが見ている前で追いかけるわけには・・・・・・)
アサギ「行け!」
ヨモギ「え?」
アサギ「追いかけてぇんだろ? 俺は詮索しねぇよ。 自分のしたいようにしろ」
ヨモギ「あ、ありがとうっす!」

〇学校脇の道
下級悪魔「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・ こ、ここまで来れば・・・・・・」
ヨモギ「甘いっす!」
ヨモギ「アタタタタタッ!」
下級悪魔「グハッ・・・・・・」
ヨモギ「やった! 捕縛完了っす!」

〇開けた交差点
アサギ「さぁて、一服してから帰るか・・・・・・」
中級悪魔「グオォォォ!」
アサギ「おっと、また新手の悪魔か」
ヒクイ「おい、誰に手ぇ出してやがる!」
中級悪魔「アアアァァ・・・・・・」
ヒクイ「全く、少しは自衛してくれ。 あんたは本当に悪魔に遭遇しやすいな」
アサギ「ああ、ヒクイか。サンキューな」
ヒクイ「そして、この期に及んで呑気なもんだな・・・・・・」
アサギ「トラブルには慣れているだけだ。それに、この体質は仕事に向いているんだぜ?」
アサギ「放っておいても、向こうから悪霊が来てくれるからな。それを祓えば、金になる」
ヒクイ「祓い屋といっても、悪魔祓いは専門外だろ」
アサギ「まぁな。だから、お前には感謝しているぞ? 悪魔に襲われたときは、助かるからな」
ヒクイ「ったく・・・・・・」
ヒクイ「あ、そうだ。今、この町は悪魔がやたら多いからな。早く出ていったほうがいいぞ」
アサギ「わかっているさ。変な気配が増えたからな。 お前も気をつけろよ」
ヒクイ「・・・・・・ああ」

〇広い和室
ヨモギ(結局、勝負は三人とも引きわけだったっす・・・・・・)
ヨモギ(まぁでも、アサギさんを守って悪魔を捕まれられたし、少しは先輩の役に立てたっすかね?)
ヨモギ「さぁて、一晩寝かせたカレーはうまいっすよ! どんどん召しあがれっす!」
アサギ「おぉ、けっこういけるじゃねぇか!」
ヨモギ「へへっ」
ユリナ(何だかあの二人、いつの間にか仲よくなっているわね・・・・・・)
アサギ「おっと、電話だ」
ユリナ「誰だろ? こんな時間に・・・・・・」
ヨモギ「ヒクイが、また何かやらかしたんじゃないっすか?」
ヒクイ「何もしてねぇよ!」
アサギ「おい、ヒクイ。 学校から電話だ。鳶坂って先生から」
ヒクイ「・・・・・・あ?」
ヨモギ「ほら、やっぱり!」

〇広い玄関
アサギ「お前、また何かやらかしたのか?」
ヒクイ「いや・・・・・・まぁ、心当たりがないこともないけど・・・・・・」
アサギ「そうそう、お前の秘密は彼女たちには黙ってやったんだから、感謝しろよ」
ヒクイ「ヘイヘイ」
ヒクイ「もしもし、先生? わざわざ家にまで電話してきて、何の用だ?」
ヒクイ「・・・・・・・・・・・・」
ヒクイ「は? お前、まさか──」

次のエピソード:第七話 尾行する天使

コメント

  • アニキに加えて天使二人にも絵が付いて画面が華やかになりましたね♪
    ヨモギの出番が多くてワイ得回でした!
    緑の子は要る子!!

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