少年が罪なき人々を殺した理由

アリス・シュルレアルお嬢様

読切(脚本)

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〇田舎町の駅舎
  そこには、棒で叩き潰された犬の死体と、泣き崩れる少年がいた
夢幻少女「・・・」
「ん? ここで何があったかって?」
「どうやら、ここで泣いてる少年を助けようと、黒い学生服を着た男がその犬を必要以上に痛めつけたらしくてよ」
「何事もやりすぎは良くねぇよなぁ・・・ ん? 嬢ちゃん、その縄あんたのかい?」
「えっ、そいつが犬を殺さないように、縄を貸した? あ〜、そいつは残念だったねぇ」
  しかし、少女は何故か嬉しそうにしていた
  この街に潜む恐ろしい黒鬼に惚れてしまっていたのだ

〇電脳空間
  ITO NEWS
  (国際真理機関ニュース)
未来人ディアイ「みなさん、おはようございます 悲惨な未来を変えるために私からのお願いです」
未来人ディアイ「先日、紗伽羅(さから)町にて、夢幻少女の目撃情報がありました 世界を救うには、彼女の存在が必要です」
未来人ディアイ「しかし、夢幻少女は、彼女と同じ姿をしている邪悪な怪人使い『マカ』に唆され、我々との協力を拒否しています」
未来人ディアイ「そこで、住民の皆さまには、救世主がマカを殺して、夢幻少女を救出することを祈って頂きたいのです」
  👁
未来人ディアイ「人々は、必要のない『目』を持っています それは必ず他の誰かと異なり争いを招く、主観的な視点です」
未来人ディアイ「国際真理機関では1つの解釈を与え、人々の迷いを払い、正しい結末、ただ1つの真実へと向かうための目を提供しています」
未来人ディアイ「私の絶対的な『1つ目』は、あなた方の善行を期待しながら、見ています」

〇おしゃれなレストラン
  とある食堂
  そこには世界的に有名な救世主の狐代仁と
  そのヒロイン的存在であるマカが昼食を取っていた
狐代仁「どうやら、この街にも国際真理機関のエージェントが潜んでいるみたいだな まあ、俺のそばにいれば安全なんだけどな」
マカ「うん ありがとう狐代くん」
狐代仁「やれやれ、世話の焼ける子だぜ」
マカ「でも、最近の狐代くん他の女の人と忙しいみたいだし、こうして久しぶりに二人きりになれて嬉しい」
狐代仁「は、ははははは!」
店員「お待ちしました 日替わり定食です」
狐代仁「あっ、そろそろ俺たちの頼んだやつも来るんじゃないか?」
マカ(話そらされた・・・)
狐代仁「うわっ ゴーヤとかオクラとか入ってるのか 俺、野菜嫌いで、食べ残しちゃうんだよね 君も物好きだねぇ」
黒鬼界護「もぐもぐ☆ ・・・・・・? 僕もあまり好きではないけど?」
狐代仁「食べてるじゃんwww」
マカ「健康を気にして食べてるんじゃない?」
狐代仁「へぇ〜 まぁ、俺は野菜なんか食べなくても健康を維持できるハイスペックな体を持ってるんだけど 君も大変だねぇ」
黒鬼界護「あ、君 また会ったね さっきは縄を貸してくれてありがとう」
マカ「えっ、誰?」
狐代仁「おいおい、ナンパかよ 残念ながら、こいつは俺の女なんだ さっさと消えな。マヌケ」
マカ「ちょっと言いすぎだよ!」
狐代仁「良いんだよ 俺はお前に相応しくない男に身の程をわきまえさせたくて、多少キツく言っただけじゃねぇか」
狐代仁「頭が良いのか? 力があるのか? 俺はこいつをテレビで見たことはない 何故なら、こいつにはそんな才能がないからだ」
狐代仁「それに対して、俺は世界の救世主「狐代仁」だ こんな田舎人が俺以上に優れているなんてこと、有り得ねぇだろ?」
狐代仁「おい、男 モテるための条件を教えてやる 女は強くて才能があってカッコいい奴のことを好きになるんだ」
狐代仁「凡人には無理な話かもしれないがな」
黒鬼界護「うん、肝に銘じておくよ ごちそうさまでした」
  カイゴは微笑み、その場を去ったが目だけは笑っていなかった

〇古びた神社
マカ「ここへ来たかった」
狐代仁「なんだここ? ただの古臭い神社だな」
マカ「いいえ ここは、かつて怪人たちを閉じ込めて蠱毒の儀式をした場所 恐ろしい怪奇が眠っているって噂の忌み地」
マカ「閉じ込められた怪人たちはやがてそれぞれの思念を融合させた 一体であるようで複合体な、その怪人の名は『キュビスム』」
マカ「そいつを撮って、仲間にしたいってところだよ」
狐代仁「マカが怪人たちを従わせるために使っているカメラか」
狐代仁「たしか、怪人を映したスケルトン写真とマカの写真を重ねて撮ることで、マカへの攻撃を、その怪人の方へ受け流せるっていう・・・」
マカ「そういう使い道もあるけど、今回は違うことをする あの子が来たら早速始めるよ」
狐代仁「あの子・・・?」
マカ「あ、来た」
夢幻少女「・・・」
黒鬼界護「・・・」
  そこには、夢幻少女に無理やり引っ張られて来た界護がいた
黒鬼界護「お二人は姉妹だったのですか?」
マカ「いいえ 私の姿に擬態した全くの別人だよ この子は『夢幻少女』」
マカ「・・・なるほど あなた夢幻少女に気に入られているみたいだね」
黒鬼界護「え・・・? あの、僕はどうしてここに呼び出されたのですか?」
マカ「「怪人になって、私たちと旅をしてほしい」んだって」
  プルルルルル・・・
狐代仁「俺の電話だ お前ら静かにしてくれ」
「・・・」
狐代仁「もしもし 俺だ」
???「マカ暗殺の件はどうした?」
マカ「暗殺・・・?」
???「早くしなければ、チート能力は没収する まあ、元のニート生活に戻りたいのなら、構わないが・・・」
狐代仁「!! これからやるつもりだったんだ!!」
???「期待しているぞ」
マカ「どういうこと・・・?」
狐代仁「悪いな、マカ 世界のために、お前を倒さなくてはいけなくなった」
狐代仁「最近、俺の彼女たちに子供が出来たみたいでよ この力で働かなきゃ、そいつら養えねぇんだ」
マカ「えっ、子供!?」
  狐代は、神社周辺の木々を一振りで切り倒し、丘の下にいる人々を見下ろした
狐代仁「ここで、祭りをやっていたのはちょうど良い」
狐代仁「お前らァ、聞け!! 俺は救世主狐代仁!! 今から世界の反逆者マカを退治するために、俺を祈り、力を貸してくれ!!」
マカ「・・・嘘でしょ!? 私はここで死ぬつもりはないんだけど!」
  マカはカメラを構えたが、狐代によってカメラは神社の奥へ弾き飛ばされた
狐代仁「そう簡単に、怪人を呼び出されてたまるかよ 俺たちのハッピーエンドの邪魔をするな」
  そんな中、二人に目もくれずキュビスムの方へ向かう者がいた
  界護だ
狐代仁「おい・・・ 何しようとしてる?」
黒鬼界護「僕は人間を辞めることにしたんだ」
狐代仁「は・・・?」
狐代仁「おいおい余計なことはするな 俺の決めた、こいつを倒して終わりのストーリーに部外者が入ってくんじゃねぇ」
  界護はカメラを拾い上げた
黒鬼界護「君とマカさんにどんな事情があるのか知らないけど、僕はマカさんを略奪し、この世界を破壊したいと思っている」
「えぇ・・・!?」
狐代仁「世界を破壊するってお前 自分は特別な存在だと思ってんのか? 経験がないからそんなことを・・・」
狐代仁「あぁ、そうだ、有り得ねぇだろ お前みたいな凡人が上手くいった前例はない」
黒鬼界護「でも僕は、身の程知らずに飢えている 諦めたままで、一度きりの人生を消費したって面白くない」
狐代仁「やめろ!! 夢を見るな!!」
怪人キュビスム「良い選択をした 今の僕に後悔はない」
狐代仁「野郎・・・ やりやがったな・・・!! 変身!!」
救世主エクスキューショナー「エクスキューショナー参上!!」
怪人キュビスム(英単語を調べて、そのまま名付けた感じの名前だな)
救世主エクスキューショナー「何をボケっとしている!!」
  救世主は強かった
  その斬撃は怪人キュビスムの全身に強い衝撃を与え、瀕死の状態へ追い込んだ
救世主エクスキューショナー「もう一度、同じ技を喰らえばお前は死ぬ 分かったか? お前は、己の惨めな実績を見直して、ここで身の丈にあった最期を迎えろ」
怪人キュビスム「フフフ・・・ 君は確か、人々の祈りで強くなるみたいなことをいってたね?」
救世主エクスキューショナー「そうだが 何がおかしい?」
怪人キュビスム「ならば、あそこにいる罪のない人々を殺す」
「!?」
救世主エクスキューショナー「ま、待て!!」

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コメント

  • 黒鬼が人間をやめて怪人キュビスムになることを選ぶまでのアンビバレントな心の葛藤をもう少し詳しく知りたかったです。救世主狐代はふざけているのか真面目なのかよくわからない魅力的なキャラクターでしたね。

  • 自覚のある悪人でも、人の命を奪うということは決して許されることではないですが、彼女にその最後を見届けてほしかった彼の一面を哀れにも感じました。

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