僕とあいつの夏祭り

シュシュール。゜⋆。゜⋆

僕とあいつの夏祭り(脚本)

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僕とあいつの夏祭り
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〇神社の出店
  ある日の夏祭り──
ユウキ「わぁ!水の騎士・フェリックスのお面だ!!」
ユウキ「すんげーかっこいい!!」
  僕は大喜びで、そのお面を手に取った。

〇水の中
  水の騎士・フェリックス。
  毎週日曜日の朝に放送される、アニメのキャラクターだ。
  五人の騎士が、囚われのお姫様を助けるために、戦っていくというストーリー。
  それで、僕はダントツでフェリックスのことが大好きだ。
  強いし、かっこいいし、優しいし・・・
  とにかく、僕の憧れの存在だ。

〇神社の出店
ユウキ「おじさん、このお面ください」
屋台のおじさん「あいよ! まいどあり〜」
ユウキ(よっしゃ!! 買えたぞ!)
  僕は小さくガッツポーズをとる。
  さっそくフェリックスの気分を味わおうと、お面を顔につけた。
  だが、突然!
  キャアアアアアアアア!!!!!
  女の人の悲鳴が、耳にキーンと届いた。
  何が起きているのか分からず、あたふたしていると、次は
  バ、バケモンだ!!
  バケモンがいるぞぉぉぉ!!
  と、ガタイのいい男の人が、大きな声で周りに伝えていた。
(一体、どうしたんだろう・・・)
  僕は不思議に感じて、辺りを歩き始めた。
  だけど、声は止まらない。
  歩く足音が悲鳴そのものになっている。

〇黒背景
ユウキ「えぇ、ほんとにみんなどうしたのさ・・・」

〇神社の出店
  混乱していると、僕のすぐそばで、ヒソヒソと話し声が聞こえた。
  あれ、バッドラックルじゃね・・・!?

〇黒背景
ユウキ「えっ、バッドラックル!?」
ユウキ「え・・・」

〇神社の出店
バッドラックル「フゴ!?(えぇ!?)」
  自分の声は、いつの間にか、怪人『バッドラックル』の声になっていた。

〇魔界
  不幸を呼び寄せる怪人・バッドラックル。
  五人の騎士の宿敵だ。
  不運を操って戦う、恐ろしい怪人。
  だけど・・・

〇黒背景
  ヒャッハッハー!!驚いた ?驚いたよなァ?
  運を操って、オレ様の仮面にチェンジしたんだ!ハッハー!
  残念だったなァ?小僧
  バッドラックルのうるさい声が、頭に響く。
ユウキ「小僧じゃない!僕の名前はユウキだ!」
ユウキ「てか、バッドラックルって話すことできるの・・・!?アニメの中でもずっと、「フガ」とか「グオォ」とか言ってるから」
  アァ・・・?今は、そのー・・・なんだ、特別な力を使ってんだ、ハッハー!!
ユウキ「へぇ〜・・・」
ユウキ「じゃなくて!なんで僕にこんなことをしたんだ!」
  アァ?それはな・・・
  それ、は・・・
  オ、オレ様だって、人気が欲しい、から・・・
  それに協力して欲しい・・・的な?
ユウキ「え!?」
  その理由を聞き、呆れて、ため息をつく。
ユウキ(あぁ〜・・・こいつ、人気キャラ投票で最下位だったの、なんかで見たな)
ユウキ「と、とにかく!僕を元の姿に戻してよ!!」
  必死で叫ぶ。周りから変に見られようと、今はちっとも恥ずかしくなかった。

〇黒背景
  そして、揉み合い続けた結果・・・
ユウキ「えっ!ミッションをクリアしないと、変身を解いてくれないの!?」
ユウキ「なんだよそれ!」
  ヒャハハハッ!そんなカッカすんなって!オレ様がいるんだから!な?
ユウキ(はぁ、めんどくさいことになった)

〇神社の出店
  早く元の姿に戻りたい、そう願っていると、
  じゃあ、最初のミッションを与えよう!
  なんて、バッドラックルは楽しげにミッションを言った。
  よし、まずはあの女を助けろ!
  僕が遠くに目をやると、そこには泣いている女の子がいた。
女の子「うぇーん!痛いよぉ・・・」
  大声で泣いている女の子に、僕はそっと近づく。
バッドラックル「フシュー・・・(大丈夫?)」
女の子「ひえっ・・・」
  さらに女の子は大声で泣き出した。
バッドラックル(わわわ、どうしよぉ・・・)
  手当り次第に体を触って、なにか出来ないか確認してみる。
  すると、僕は腕のところにある謎のボタンを押してしまった。
バッドラックル(──え)
  なぜか、自分の手のひらから絆創膏がニョキニョキ現れた。

〇黒背景
ユウキ「お、おい!なんだよこれ!」
  ハッハッハ!どうだ、驚いただろ?これはな、相手の気持ちを読み取って、それに応じて必要なものが出る!
  超優れものなんだ!ヒャハハ八!
ユウキ「おぉ、なんかすげぇな」
  これがあれば何とかなる。そう考えた時。

〇神社の出店
  あ、でもそれ使えんの一回だけだわ。
バッドラックル「フゴ、(え、)」
  いやぁそれ、かなりパワーを使っちゃうからね。だから一回なの、ゴメンネ☆
バッドラックル(はぁ・・・?)
  苛立ちを抑えつつ、彼女に絆創膏を渡した。
女の子「ふぇ・・・」
女の子「・・・いいの?」
女の子「・・・・・・ありがとう!」
  とても輝かしい笑顔を見せて、絆創膏を貼り出した。
  するとそこに、ちょうどお母さんらしき人が来た。
  僕は女の子に手を振り、そそくさと逃げた。

〇黒背景
  オマエ、なかなかやるな!
  これでオレの好感度も少しは上がったな!ギャハハ!
ユウキ「笑うなよ!僕がどれだけ酷い目にあってるか・・・」
  サァサァサァ!お次はどうしよっかなァ〜
ユウキ(無視かよ・・・)
ユウキ「あー!!もういいさ!やってやる、ミッション全クリしてやる!」
  僕は怒鳴って、宣言した。

〇神社の出店
  ・・・・・・
  ・・・
  ──もうどれくらい経っただろう。
  日が沈み、空は真っ黒になっていた。
バッドラックル「フゴゴ・・・(疲れた・・・)」
  お年寄りの方の荷物持ちを手伝っては、犬に吠えられ、
  屋台の手伝いをしては、自分より小さい子供達に遊ばれて、
  挙句の果てには、写真会やら握手会やら。
  大勢の人だかりができた時もあった。
  ・・・スゲェ、ビックリだ。まさかオマエがこんなにもできるニンゲンだったなんて
  オレら、最強のバディを組めるな!!ハッハッハ!
バッドラックル「組みたくねーよ!」
  僕はしかめっ面をする。
  よし、じゃあ最後のミッションを与えるぞ。
バッドラックル「フゴッ!?(最後!?)」
バッドラックル「グオォー!!(よっしゃー!)」
  瞬時に笑みがこぼれる。そして、最後のミッションが告げられた。

〇古びた神社
  バッドラックルに案内され、僕は薄気味悪い神社の前に来た。
  ここからメッチャ禍々しい気配がするぜ
  僕も気配を察知しようと、息を潜める。
  すると、少し遠くから何か話し声が聞こえてきた。
「おい、・・・しろ!」
「い、や!やめて!離して!!」
バッドラックル「この声、」
  体がウズウズして、足が勝手に走り出す。
  あ、おい!待て、勝手に行くな!
  でも面白くなりそうだから、ついて行くぜ!ユウキ!ギャハハ!!

〇古びた神社
バッドラックル「フガ!(おい!)」
バッドラックル「なっ!?」
バッドラックル「フゴゴ!?(マキちゃん!?)」
  とっさにマキちゃんの方に走る。
マキ「誰よあなた!」
  嫌っ!と強く押され、僕はおじさんの方へ吹っ飛ばされた。
屋台のおじさん「うおっ!なんだよコイツ」
  おじさんはそのまま後ろへ尻もちをついた。
  それと同時に何かが落ちる。
バッドラックル「これ──」
  おいユウキ!避けろ!

〇古びた神社
バッドラックル「ヴ・・・」
  僕はとっさに地面を見る。
  そこには、粉々に砕かれた『仮面』があった。
「チッ、外したか」
  ふと、後ろの方から声がした。
  ・・・ッ!なんでここにオマエがいんだよ!
  キャラクト!
バッドラックル「フガ!?(キャラクト!?)」

〇ステンドグラス
  神出鬼没の怪人・キャラクト。
  無数の仮面を持っており、その仮面をつけられた者は操られてしまう。
  五人の騎士の敵であり、確かバットラックルとは犬猿の仲だったような・・・
  最近出てきたから、そのくらいのことしか分からない。謎多き怪人だ。

〇古びた神社
キャラクト「アーァ・・・せっかくオレの下僕を増やせる機会だと思ったのに」
キャラクト「バッドラックル、なに邪魔してんだよ・・・!」
  ジリジリとこちらに近づいてくる。
  鬼のような形相で、怒りをあらわにして。

〇黒背景
ユウキ「どうするんだよぉ・・・バッドラックル」
  ・・・よし、これが最後のミッションだ
  あの女を救え!
ユウキ「そう言うと思ったよ!僕だって、あの子は救わなきゃいけないんだ」
ユウキ「あの子は、僕の──」
  イヨォーシ!そうと決まれば、あんな雑魚なんか、ササッと倒すぞ!
ユウキ「全然聞く耳持たねぇじゃん、あいつ・・・」

〇黒背景
  いいか?ユウキ
  アイツの弱点は、顔面だ
  ヒビさえ入れば、あとはこっちのもんよ
  ギャハハハハ!
  オレ様のチカラ、今はオマエにくれてやる!ありがたく思えよ!ヒャッ八ー!
ユウキ「うん、分かった」
  そんじゃ、一緒に行くぞ!!

〇古びた神社
バッドラックル「フガフゴ!(キャラクト!)」
バッドラックル「グオァァァ!(その子から離れろ!)」
キャラクト「ハァ、可哀想に」
キャラクト「アンタがモタモタしてるから・・・」
バッドラックル(・・・ん?あの影は)
キャラクト「行っちゃいなよ、オレの下僕・・・」
?「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
バッドラックル「ガッ!?」
  急な突風に、僕は慌てて避けた。

〇黒背景
ユウキ「なんだよ、さっきの」
  ──マズイ、マズイことになったぞ
ユウキ「えぇ?」
  アイツ、あの女に仮面をつけやがった!
ユウキ「え!」
  チッ・・・とにかく、あの女の方には手を出すな!キャラクトだけに集中しろ!

〇古びた神社
バッドラックル「グッ・・・」
バッドラックル(これじゃあ、片方だけ攻撃なんて無理だよ・・・両方から攻撃が来る・・・)
  このままではダメだ、でもいい案が出てこない。
  どうしようと悩み続けている時。
  ユウキ!手を前に伸ばせ!
バッドラックル(こ、こう・・・?)
  僕はまっすぐ手を正面に伸ばした。
バッドラックル「フゴ・・・(これは・・・)」
「・・・・・・!?」
  ぐんぐん吸収されるたびに、ずっしりとなにかの重みを感じる。
  今日出会ったヤツらの不運を吸収してたのさ!大ピンチな時も、この技があれば・・・!ギャハハハ!!
  よし、ユウキ!そのまま上に上げろォォォ!
バッドラックル「グオォ!(うん!)」

〇古びた神社
  真っ黒い不運の塊は、暗い空へ高く打ち上げられた。
キャラクト「・・・」
キャラクト「ププッ!何も起こらねぇじゃねぇか!」
キャラクト「超絶ダサいな・・・ギャハハ!」
バッドラックル(いや・・・なにかが降ってきてる)
  ぽつん、ぽつんと肌に当たっているそれは、

〇古びた神社
バッドラックル「フゴッ!(雨だ!)」
キャラクト「ンナッ!?」
キャラクト「ヤメロォ!ヤメルンダ!!」
キャラクト「アァ・・・アァァ・・・」
  キャラクトがフラフラとよろめく。
  ハッ!オマエは、顔だけじゃなくて、水にも弱いんだもんなぁ・・・?ギャハハッ!
キャラクト「クッ、ソが・・・」
キャラクト「コノヤロォォォ!!」
  バキッ!!

〇古びた神社
ユウキ「ん・・・」
ユウキ「あれ・・・!?いつの間にか元に戻ってる・・・!!」
ユウキ「よっしゃぁぁぁ!どうだ、バッドラック・・・」
ユウキ「ル・・・」
  僕の足元には、ふたつに割れてしまったフェリックスのお面があった。
  でも、周りにキャラクトの姿もない。
  弱い雨が降る中、近くで小さな声が聞こえた。
「・・・ユウキ、くん?」
ユウキ「マキちゃん・・・!」
  お面を持ち上げ、すぐにマキちゃんの元へ行った。
ユウキ「大丈夫?」
マキ「えぇ」
マキ「・・・あの、男の人は?」
ユウキ「そ、それは」
  アイツなら、今オレ様と一緒にボスに捕まっちまった。
ユウキ「その声!」
  ・・・楽しかったぜ、ユウキ。また遊びに行くかもな、ギャハハッ!
  カタカタと震えていたお面は、ピタリと止まり、動かなくなった。
ユウキ「バッド・・・ラックル・・・」

〇神社の出店
  数年後──
マキ「どうしたの?ユウキ」
ユウキ「ん?あぁ、ちょっと、お面が気になって」
マキ「お面?」
  どうも夏祭りになると、あの時のことが蘇ってくる。
  今でも、あのお面がありそうな気がして。
  まぁ、そんなわけないんだけどね。アニメ終わっちゃったし。
  ギャハハッ!ユウキ、楽しめよ?
ユウキ「──!?」
ユウキ「さっきの声・・・」
ユウキ「──ふふっ、お前の分まで楽しんでやるよ!」
  END

コメント

  • 人間の社会でも、なぜかしら良い人よりも悪役の方が人間味や面白味が感じられるのは不思議です。出会った人の悪い運(バッド・ラック)を吸い取ってパワーに変えるというバッドラックルの必殺技は頼もしいような切ないような。作者さんのアイデアが光るクライマックスシーンでした。

  • ゆうき君は楽しむはずだったお祭りでとんだ災難に巻き込まれましたね。でも時が過ぎ、その出来事を懐かしく思い出しているところから、怪人の中に何か魅力を見出しからなのかもしれませんね。

  • なんだか少し寂しい気持ちになりましたが、最後の展開でいつでも繋がっているんだなと思うとほっこりしました。
    それにしてもだいぶ便利な技が多いこと…

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