怪人監獄

しゅういちろう

エピソード1(脚本)

怪人監獄

しゅういちろう

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怪人監獄
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〇法廷
裁判官「判決を言い渡す」
裁判官「被告人は怪人として罪のない人々に危害を加え、社会に多大なる損害を与えた──」
「よって、獄門刑務所への終身刑を言い渡す──」

〇荒野の城壁
  ここは日本の最果てにある、獄門刑務所──

〇刑務所の牢屋
鬼頭祐樹(ここがあのヒーローに捕まえられた怪人や戦闘員が送られるという獄門刑務所・・・)
後藤浩二「よう、兄ちゃん。 新入りかい??」
後藤浩二「俺は後藤浩二って言うんだ」
後藤浩二「実は俺は昔、戦闘員でさ・・・」
後藤浩二「銀行強盗をやっていたんだぜ!!」
後藤浩二「兄ちゃんも戦闘員だろ?」
鬼頭祐樹(今、ここで正直に正体を明かす必要もないな・・・)
鬼頭祐樹「ああ、俺も戦闘員だった・・・」
鬼頭祐樹「俺は武器やヤクの運び屋をやっていたんだ」
後藤浩二「そうか・・・」
鬼頭祐樹「噂だと、ここの刑務所はヒーローに捕まえられた怪人や戦闘員しかいないとか・・・」
鬼頭祐樹「いるのか? 怪人・・・」
後藤浩二「おいおい・・・」
後藤浩二「怪人に近づきたいなんて、恐ろしいこと考えるなぁ」
鬼頭祐樹「恐ろしいこと??」
後藤浩二「すぐにわかるよ」

〇警察署の食堂
鬼頭祐樹(食事の時間だ・・・)
鬼頭祐樹「あ、あいつは?」
松田原竜二「今日は牛フィレのステーキか・・・」
鬼頭祐樹(囚人なのにフランス料理のフルコースだと?)
鬼頭祐樹「おい、あいつは何者だ??」
後藤浩二「あいつと目を合わせるな・・・」
鬼頭祐樹「?」
松田原竜二「おい! てめえ!! 何を俺にガンつけてんだよ!!」
モヒカンの囚人「いや・・・ 別に・・・」
松田原竜二「てめえごときが俺にガン垂れるなんて許せねえ!!」
モヒカンの囚人「ひ、ひええ・・・ 命だけはお助けを・・・」
皇帝<カイザー>「全く落ち着いて飯も食べられない・・・」
鬼頭祐樹「か、怪人だと・・・」
後藤浩二「奴の名前は松田原竜二」
後藤浩二「殺し、ヤク、武器の密輸などなど、悪いことならなんでもやる、最強最悪の暴力団である『黒龍会』の若頭だ」
鬼頭祐樹「・・・」

〇中庭
鬼頭祐樹「休憩の時間か・・・」
囚人A「あちちっ!! 燃え殺される・・・」
鬼頭祐樹「どうした!?」
臼井幸助「やだな・・・ 何でみんな逃げるんだよ・・・」
教育家<ソフィスト>「アハハ!!」
教育家<ソフィスト>「燃えろ! 燃えろ!」
鬼頭祐樹「あいつも怪人なのか?」
後藤浩二「また燃やしてやがる──」
後藤浩二「やつの名前は臼井幸助・・・」
後藤浩二「軍事兵器を作っている濱岡重工の研究者だった男」
後藤浩二「新作兵器の開発を行っていた最中、突然、自分を怪人に改造・・・」
後藤浩二「濱岡重工の研究所を放火して、多くの同僚を焼き殺したらしい・・・」
鬼頭祐樹「さっきの食堂の松田原といい、看守は何をしているんだ?」
後藤浩二「看守は見て見ぬふりだ」
鬼頭祐樹「見て見ぬふり?」
後藤浩二「ここの表向きはヒーローに捕まえられた怪人や戦闘員がいれられる刑務所となっているが・・・」
後藤浩二「怪人は情報提供に協力すれば、ここの刑務所を出ない限りは何をしても自由ということになっている・・・」
後藤浩二「戦闘員のわしらは、怪人にとっての暇つぶしのおもちゃ」
後藤浩二「踏みつぶそうが、バラバラにしようが、怪人の気分次第だよ」
鬼頭祐樹「そんなことがあっていいのか・・・」
後藤浩二「怪人がわしら戦闘員を殺してくれた方が、わしらをこのまま牢屋に入れるよりも安上がりで税金もかからない」
後藤浩二「政府の上の連中の本音はこんなところだろうよ」
次藤勝「おい、新入り!!」
次藤優「ちょっと顔貸せや!!」

〇体育館の裏
次藤勝「俺らに挨拶なしとはどういうことじゃ? ボケ!!」
次藤優「何、黙っとるんじゃ!! 殺すぞ!!」
次藤勝「ちっ・・・ 相変わらず無言だ・・」
次藤優「兄ちゃん、殺しちゃおうぜ。 こいつ」
次藤勝「そうだな」
剣闘士<グラディエーター>「斬り殺してやる」
軍団兵<レギオン>「いいや、俺がなぶり殺してやる」
鬼頭祐樹(このままだと殺される・・・)
剣闘士<グラディエーター>「怪人に変身しただと?」
軍団兵<レギオン>「でも、2対1 俺たち兄弟の相手ではない」
剣闘士<グラディエーター>「我が剣をくらえ!!」
蛮族<バルバロス>「ぐわああ・・・」
軍団兵<レギオン>「俺の攻撃もくらえ!!」
蛮族<バルバロス>「ぐわああ」
剣闘士<グラディエーター>「ふん 口ほどでもない」

〇おしゃれなリビングダイニング
鬼頭祐樹「じゃあ、行ってきます」
鬼頭結衣「いってらっしゃい」
鬼頭結衣「道草しちゃダメよ」
鬼頭浩一「最近、怪人が人を襲う事件が頻発している」
鬼頭祐樹「大丈夫だよ。 心配性だな」
鬼頭萌香「お兄ちゃん!! 行ってらっしゃい!!」
鬼頭萌香「帰ったら一緒に遊んでね♪」
鬼頭祐樹「うん。 一緒に遊ぼう」
鬼頭結衣「祐樹ったらいつの間にかあんなに大きくなって・・・」
鬼頭結衣「はーい」
鬼頭結衣「こんな時間に誰かしら?」
鬼頭浩一「隣の佐藤さんかな?」
鬼頭萌香「どうしたの? ママ」
切り裂きジャック「くくく・・・」
切り裂きジャック「獲物見つけた~」
  その日の午後──
鬼頭祐樹「ただいま・・・」
鬼頭祐樹「血だらけ?」
鬼頭祐樹「父さん!!」
鬼頭祐樹「母さん!!」
鬼頭祐樹「萌香ぁ」

〇荒れた倉庫
鬼頭祐樹「こ、ここは・・・」
後藤浩二「よかった! 目を覚ましたぞ!!」
後藤浩二「ここは今は使われていない倉庫だよ」
後藤浩二「あんた、次藤兄弟にやられて、ここに運ばれたんだ・・・」
後藤浩二「この人が外科医で助かったよ」
白羽根栄一郎「恐ろしい回復力だ!?」
白羽根栄一郎「あんなにやられても、意識を取り戻すなんて・・・」
後藤浩二「あんた、無茶過ぎるよ。 戦闘員の分際であの次藤兄弟を一度に相手にするなんざ・・・」
鬼頭祐樹(俺が怪人だということはバレていないのか・・・)
鬼頭祐樹「そんなにヤバい奴らなのか?」
後藤浩二「兄の次藤勝は元総合格闘家」
後藤浩二「試合中に対戦相手の右目をえぐり取って、格闘技界から永久追放された」
鬼頭祐樹「弟の方は?」
後藤浩二「弟は次藤優。 こいつの方が更にヤバい」
後藤浩二「中学生でヤクザを刺し殺して少年院へ」
後藤浩二「それから、傷害、強盗、恐喝、強姦、違法薬物・・・ まさしく犯罪の総合デパート」
後藤浩二「兄より強くて」
後藤浩二「そして、兄よりバカ」

〇荒野の城壁
  翌日──

〇刑務所の牢屋
後藤浩二「痛むか?」
鬼頭祐樹「ああ・・・」
後藤浩二「とりあえず、怪人に目を付けられたくなければ、牢屋の中でじっとしているに限る」
看守「おい!!」
看守「面会だ」
鬼頭祐樹「俺に?」
鬼頭祐樹「誰だ?」

〇刑務所の面会室
堀川瑞希「鬼頭君お久しぶり」
鬼頭祐樹「君は?」
堀川瑞希「忘れた??」
堀川瑞希「高校のとき、同じくクラスだった堀川瑞希」
鬼頭祐樹「一体何の用だ??」
鬼頭祐樹「高校の同窓会のお誘いか?」
堀川瑞希「今、私、ジャーナリストなの」
堀川瑞希「ここ、獄門刑務所のルポを書いてるの」
堀川瑞希「そしてね、鬼頭君が犯した事件を追っていたら重大なことに気がついたの・・・」
鬼頭祐樹「重大?」
堀川瑞希「鬼頭君が怪人が暴れた相手・・・」
堀川瑞希「調べたら、全員相手は半グレとかヤクザとか」
堀川瑞希「被害者は全員前科者の悪人ばかり」
堀川瑞希「鬼頭君はわざと捕まって、この刑務所に収監されるために怪人になったんじゃないの?」
堀川瑞希「10年前の犯人『切り裂きジャック』に復讐するために」
鬼頭祐樹「くだらない」
鬼頭祐樹「帰る」
堀川瑞希「待って!」
堀川瑞希「そこまでして復讐したいの? 犯人に」
堀川瑞希「鬼頭君が怪人になってまで行う復讐なんて亡くなった家族の人たちもも望んでないと思うの・・・」
鬼頭祐樹「これは俺自身が望んでやっていることだ」
堀川瑞希(鬼頭君・・・)
堀川瑞希(高校時代はあんなに優しかったのに・・・)
堀川瑞希(いや、優しすぎたからこそ怪人になったのか・・・)

〇中庭
鬼頭祐樹「ん? 戦闘員の死体が転がっている・・・」
鬼頭祐樹「また怪人にやられたのか?」
鬼頭祐樹「この傷は!?」
鬼頭祐樹「間違いない!! 父さん、母さん、萌香の傷と全く同じ!!」
鬼頭祐樹「『切り裂きジャック』のものだ!!」

〇刑務所の牢屋
後藤浩二「よう、どうだった? 面会は?」
鬼頭祐樹「正直に伝えたいことがあるんだ」
後藤浩二「か、怪人!?」
蛮族<バルバロス>「すまない・・・ 騙すつもりも、驚かすつもりもないんだ・・・」
蛮族<バルバロス>「端的に言う・・・」
蛮族<バルバロス>「俺の家族は怪人『切り裂きジャック』に殺された──」
蛮族<バルバロス>「俺は仇を討つために自らの身体を怪人に改造して、この刑務所に潜りこんだのだ」
蛮族<バルバロス>「間違いなく怪人『切り裂きジャック』はこの刑務所に潜んでいる」
蛮族<バルバロス>「何か情報がないか?」
後藤浩二「『切り裂きジャック』がこの刑務所にいるとの噂は聞いたことがあるが──」
後藤浩二「でも、誰なのかはワシにもわからん・・・」
後藤浩二「ひょっとしたら、ここのドンの松田原なら知っているかも・・・」
蛮族<バルバロス>「わかった。 松田原だな」
後藤浩二「でも、お前も昨日見ただろう?」
後藤浩二「あいつに近づくのは危険過ぎる──」
後藤浩二「それでも行くのか??」
蛮族<バルバロス>「ああ・・・」
後藤浩二「じゃあ、止めはしない・・・」
後藤浩二「仇を討てるといいな・・・」
蛮族<バルバロス>「行ってくる・・・」
後藤浩二(退くも地獄、進むも地獄・・・)
後藤浩二(まさしく修羅の道だな・・・)

〇刑務所の牢屋
  松田原の牢屋
美女「もう、竜二さんエッチ!!」
松田原竜二「げへへ・・・。いいじゃねえか」
鬼頭祐樹「お取込みの最中だが失礼する!!」
美女「失礼します・・・」
鬼頭祐樹「囚人の分際で女を連れ込むなんていい身分だな」
松田原竜二「あん? 何のようだ?」
鬼頭祐樹「怪人『切り裂きジャック』についての情報を聞きたい」
松田原竜二「聞きたいことがあれば力づくで聞いてみろ」
皇帝<カイザー>「まあ、俺に勝てればの話だが・・・」
皇帝<カイザー>「ほお・・・ お前も怪人なのか?」
皇帝<カイザー>「しかし、この皇帝<カイザー>の敵ではないわ!!」
皇帝<カイザー>「くらえ!!」
蛮族<バルバロス>「それがどうした?」
皇帝<カイザー>「バカな!! 傷一つもついてないだと・・・」
蛮族<バルバロス>「じゃあ、今度は俺の番だな」
皇帝<カイザー>「ぐわああ・・・」
松田原竜二「この俺を一撃だと・・・」
松田原竜二「ひょっとして、こいつ、『ザグレウスの心臓』を?」
蛮族<バルバロス>「手加減はしといた・・・」
蛮族<バルバロス>「もう一度聞く。 『切り裂きジャック』は誰だ?」
松田原竜二「知らねえ!! 何も知らないんだ!!」
蛮族<バルバロス>「仕方ない。 とどめを刺すか・・・」
松田原竜二「あいつは本物のサイコパスなんだ!! 正体をばらすなんて間抜けな真似はしねえ!!」
松田原竜二「そ、そういえば、普段から刃物を扱いに手慣れている人間じゃないかという噂を聞いたことがある・・・」
蛮族<バルバロス>「刃物の扱いに慣れている・・・」
蛮族<バルバロス>「あいつか!?」

〇荒れた倉庫
老人の囚人「た、助けてくれ・・・」
切り裂きジャック「ぐふふ・・・」
鬼頭祐樹「見つけたぞ!! 『切り裂きジャック』いや・・・」
鬼頭祐樹「白羽根栄一郎」
白羽根栄一郎「なぜ、私が『切り裂きジャック』だとわかったのかね?」
鬼頭祐樹「犯人は刃物の扱いに慣れているという噂を聞いた・・・」
鬼頭祐樹「外科医なら職業柄、刃物の扱いに慣れているはず」
殺人鬼<>「そうとも、私こそ『切り裂きジャック』」
鬼頭祐樹「正体表したな・・・」
殺人鬼<>「お前も怪人か!?」
蛮族<バルバロス>「10年前に殺した、鬼頭一家を覚えているか?」
殺人鬼<>「覚えてるよ。 あの一家は殺すのが楽しかったな♪」
殺人鬼<>「特に娘が「お兄ちゃん、助けて!?」と泣け叫びながら、刃物を突き刺したときは本当に興奮したよ♪」
殺人鬼<>「お前はあの家族の生き残りか? じゃあ、すぐにあの世で逢わせてやる!!」
殺人鬼<>「バカな・・・ 傷一つついていない・・・」
殺人鬼<>「ひょっとして、『ザグレウスの心臓』を移植したのか!?」
殺人鬼<>「あの心臓を使えば、怪人の力は3倍になるが・・・」
殺人鬼<>「心臓の負担が重く、寿命が3年に縮むものだぞ。 お前、正気か?」
蛮族<バルバロス>「お前のような罪を犯しながら、ぬくぬくと生きている奴を地獄の底に引きずり込めるなら、俺の寿命など安いものだ・・・」
蛮族<バルバロス>「地獄で先に待っていろ!!」
殺人鬼<>「ぐわああ」
蛮族<バルバロス>「終わった・・・」

〇刑務所の面会室
堀川瑞希「刑務所内はどのような感じでしょうか?」
次藤勝「じゃあ、俺たちが教えてやろうか?」
次藤優「ぐへへ・・・」
堀川瑞希「か、怪人!?」
剣闘士<グラディエーター>「とりゃあ!!」
堀川瑞希「あ、アクリル板が・・・」
剣闘士<グラディエーター>「ぐへへ・・・ 久しぶりの上玉だ」
軍団兵<レギオン>「兄ちゃん、すぐ殺さないで、俺が楽しむ分も残してくれよな」
堀川瑞希「鬼頭君、助けて!!」
剣闘士<グラディエーター>「へへっ 助けを呼んでも誰も来ねえよ」
剣闘士<グラディエーター>「ぐわああ」
軍団兵<レギオン>「に、兄ちゃん・・・」
軍団兵<レギオン>「お前、また殺されに来たのか!?」
蛮族<バルバロス>「何かしたのか?」
軍団兵<レギオン>「き、効いてないだと・・・」
軍団兵<レギオン>「なあ、これからは考えを改めて真面目に生きる。 だから命だけは・・・」
蛮族<バルバロス>「お前、今までそう言って命乞いをしてきた人間を何人殺したんだ?」
軍団兵<レギオン>「ぐわああ!!」
堀川瑞希「鬼頭君・・・ 鬼頭君でしょ?」
蛮族<バルバロス>「鬼頭、そんな奴は知らん!!」
蛮族<バルバロス>「二度とこの刑務所には近づくな!」
堀川瑞希「鬼頭君・・・」

〇荒野の城壁
  この日以降、鬼頭祐樹の姿を見た人は誰一人としていなかった──
  獄門刑務所の実態を書いた瑞希のルポのおかげで、獄門刑務所は監視体制は改善され──
  二度と戦闘員たちが怪人に無意味に殺されることはなくなったという──

コメント

  • 刑務所という閉鎖空間における怪人と人間たちの異常な関係性。目の付け所がすごいと感心しつつ、読み応えがありました。限られた登場人物の中で誰が犯人なのかと思っていたら、そうきたか、という感じですね。正常な社会(塀の外の世界)を象徴する堀川さんの存在も物語全体の引き締め役となっていてよかったです。

  • 無法地帯とはまさにこのこと…。
    でもそんな場所にわざわざはいって…。
    復讐という名の入所かもしれませんが、遊び道具となっていた人に対してはまさに救世主ですね!

  • 監獄モノ好きなので楽しく読めました🌟
    想像以上にやりたい放題で面白かったです。

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