〇近未来の会議室
エックス総統「では、定例幹部会を始める」
「ハッ!!」
エックス総統「テリー、現時点の我々の支持率は？」
智将テリゲン「世界平均は約72%」
智将テリゲン「革命から２年経ちますが、順調に上昇しております」
エックス総統「地域別ではどうだ？」
智将テリゲン「オーシュやフリカーでは高いですが」
智将テリゲン「怪人差別意識が根強いニポは未だ前時代への懐古的意見が多いです」
剛将ヴィスマルク「あの国らしいな」
エックス総統「ヴィス!! トロの『武器よさらば』作戦の進捗は？」
剛将ヴィスマルク「順調だ」

〇基地の倉庫
暴将ヴィスマルク「トロのやつ、イキイキしてるよ」
悪食トロゴー「これはヴィンテージ水陸両用戦車!!」
悪食トロゴー「美味そうだ」
悪食トロゴー「いただきますっ!!」
悪食トロゴー「美味い!!」
暴将ヴィスマルク「各国戦力のバランスを保つ必要あるから少しずつ」
暴将ヴィスマルク「文字通り平らげているところだ」
エックス総統「引き続き頼む」

〇近未来の会議室
エックス総統「他に共有事項は？」
智将テリゲン「未確定ですが、１つ」
智将テリゲン「烈洞　赤也（れつどう　あかや）の件です」
智将テリゲン「目撃情報がありました」
エックス総統「烈洞か」

〇岩山
智将テリゲン「現在は本人か確認のため、部下を向かわせております」
エックス総統「わかった。引き続き調査を頼む」

〇近未来の会議室
エックス総統「よし、では定例幹部会を終了する!!」
エックス総統「皆、引き続きよろしく頼むっ!!」
「ハッ!!」

〇近未来の通路
智将テリゲン「総統、会議終了早々恐縮ですが」
智将テリゲン「阿久征（あくせい）氏が面会を希望されています」
智将テリゲン「私で対応しておきましょうか」
エックス総統「いや、私も同席する。お招きしてくれ」

〇研究機関の会議室
智将テリゲン「阿久征さん、お待たせしました。総統と私で話を聞きましょう」
エックス総統「本日はどのようなご用件で？」
阿久征　元首相「どうもこうもない!! なぜこの私が家電量販店などで働かねばならんのだ!?」
智将テリゲン「何故と申されましても」
智将テリゲン「今年度から実施の26項目の適正検査の結果」
智将テリゲン「プロモーション能力と声の大きさが優れているので」
智将テリゲン「適した職が充てられているかと」
阿久征　元首相「バカな!!私は元首相だぞ!!」
智将テリゲン「何度も申し上げておりますが、過去の経歴などは一旦白紙となります」
阿久征　元首相「ふざけるなっ」
阿久征　元首相「怪人ぶぜいがっ!! 貴様らのやっていることは人権侵害だ!!」
智将テリゲン（どの口がぬかすか）
エックス総統「テリー、私が話す」
エックス総統「阿久征さん、この制度は本年度から開始しているものなので、率直な意見は歓迎する」
エックス総統「だが、あなたが前職の身分を尊重されたいと言うのであれば」
エックス総統「我々が『ホライズン』だった時代に政府が流した数々のデマゴギーの責任もとっていただくことになる」
阿久征　元首相「ぐうっ」
エックス総統「我々の方針は革命前の罪には罰を与えずだが」
エックス総統「あなたにその覚悟があるのであれば例外としよう」
阿久征　元首相「チッ!!覚えてろよ!!」
智将テリゲン「少し頭に血が昇りました。フォロー恐れ入ります」
エックス総統「なに、気にするな」
エックス総統「では私はこれで失礼する」
智将テリゲン（総統、阿久征のあの態度を見て、よく落ち着いていられますね）

〇テレビスタジオ
阿久征　首相「皆さん」
阿久征　首相「悪の組織『ホライズン』による破壊活動が続いておりますが、安心してください!!」
阿久征　首相「我々ニポ国は」
阿久征　首相「怪人なんかには負けません!!」
阿久征　首相「烈洞君を中心とした政府の戦隊『KAMIKAZE』が」
阿久征　首相「この平和な世界を守ります!!」
烈洞　赤也「悪しき怪人を殲滅致しますっ!!」
「正義は必ず勝つ!!」
　　ニポ政府は、私達を悪と断罪することで、支持率を上げようとしていた
　　破壊活動も人に危害を加えることもホライズンでは御法度だった
　　総統もニポ政府の対応には胸を痛めていたのに

〇研究機関の会議室
智将テリゲン「器の大きいお方だ」
智将テリゲン「ん!?」
智将テリゲン「烈洞本人と確認!?」

〇荒地
エックス総統「バンからの報告だとこの辺りか」
智将テリゲン「はい、ただ、先程から応答がありません」
剛将ヴィスマルク「やられたかもしれねぇな」
エックス総統「警戒を怠るな」
智将テリゲン「あれは!?」
智将テリゲン「バン!!」
智将テリゲン「無事か!?」
隠密バンシュー「・・・」
智将テリゲン（かろうじて息はあるが）
智将テリゲン（銃撃を受けている）
智将テリゲン（まさか!?）
　　わーはっはっは

〇空
零殲(烈洞搭乗)「ノコノコ来やがったな『ホライズン』の害虫ども!!」

〇荒地
エックス総統「烈洞!!」
剛将ヴィスマルク「おい、ありゃあ零殲（ゼロセン）じゃねぇか」
智将テリゲン「全て破壊したと思っていましたが」

〇コックピット
烈洞　赤也「久しぶりだなぁ!!」
烈洞　赤也「元気そうで何よりだ!!」

〇荒地
　　オレはこの２年最悪だったぜ
　　平等社会だかなんだか知らねぇが
　　怪人どもをいたぶれなくてよぉ
智将テリゲン「烈洞!!貴様、よくもバンを!!」
　　コソコソ嗅ぎ回ってきた害虫を潰しただけだぜ
剛将ヴィスマルク「相変わらずイヤな野郎だ」
　　平和ボケしたてめぇらに零殲を止められるかなぁ!?
　　くらいな!!
智将テリゲン「ぐっ」
エックス総統「零殲相手ならば私が行く」
智将テリゲン「そんな!?総統の身に何かあったら!?」
剛将ヴィスマルク「そうだぜ!!オレとテリーで・・・」
エックス総統「安心しろ」
エックス総統「私はこんなところでは死なない」
エックス総統「行くぞ!!」

〇空
零殲(烈洞搭乗)「やはりお前が来たかエックス!!」
エックス総統「烈洞、年賀の納め時だ!!」
エックス総統「今からでも遅くない、降伏しろ!!」
零殲(烈洞搭乗)「相変わらず」
零殲(烈洞搭乗)「ムカつく野郎だ」
エックス総統「ぐうっ」
零殲(烈洞搭乗)「ハッ!!どうしたよ!?」
零殲(烈洞搭乗)「世界政府とかいって調子に乗ってたせいで弱くなったんじゃねぇのか!?」
エックス総統「ふっ」
零殲(烈洞搭乗)「何が可笑しい!?」
エックス総統「私はもともと弱いさ」
零殲(烈洞搭乗)「はぁ!?」
エックス総統「だからこそ」

〇荒地
エックス総統「同じ志を持つ仲間と共に行動し」

〇森の中
エックス総統「過去の思い出に縋る時もある」
エックス総統「だが」

〇空
エックス総統「そんな私だからこそ」
エックス総統「創れる未来があると信じている!!」
零殲(烈洞搭乗)「ワケのわかんねぇ事言ってんじゃねぇよ!!」
零殲(烈洞搭乗)「最大出力でお見舞いしてやる」
零殲(烈洞搭乗)「特煌砲（とっこうほう）」
零殲(烈洞搭乗)「チャージ」
エックス総統「先の世を切り開く一陣の刃となれ」
零殲(烈洞搭乗)「発射!!」
エックス総統「『ホライズン・ブレード』」
零殲(烈洞搭乗)「なっ!?」

〇コックピット
烈洞　赤也「ま、まずい」
烈洞　赤也「くそ、かくなる上は」

〇空
エックス総統「さぁ、烈洞!!観念して・・・」
エックス総統（今のは・・・零殲の脱出ポッド!?）
エックス総統「逃げ足のはやい男だ」

〇荒地
智将テリゲン「総統が零殲を打ち破ったぞ!!」
剛将ヴィスマルク「さすがだぜ!!」
エックス総統「2人とも怪我はないか!?」
智将テリゲン「無事でございます!!」
剛将ヴィスマルク「腕は錆びてないようだな!!」
智将テリゲン「しかし烈洞は・・・」
エックス総統「ああ、逃げられてしまった」
エックス総統「だが零殲を一機無力化できただけでも収穫だ」
剛将ヴィスマルク「しっかし、烈洞はどこから零殲を!?」
智将テリゲン「それについては」

〇岩山
阿久征　元首相「烈洞のやつ!! あっけなくやられおって!!」
阿久征　元首相「早くこの場を離れねば」
智将テリゲン「直接聞きましょうかね」
阿久征　元首相「ひいっ!!」
エックス総統「やはりあなたの手引きでしたか」
エックス総統「残念ですが、連行させていただきます」
阿久征　元首相「なぜ貴様ら害虫共を殺そうとしただけで私が罪に問われるのだ!!」
阿久征　元首相「こんな世界間違っている!!」
智将テリゲン「総統」
智将テリゲン「コイツはココで始末しましょう!!」
阿久征　元首相「ひいっ!!」
智将テリゲン「今なら誰も見ていません。こんなヤツ、生かしておいても害しかありませんよ!!」
阿久征　元首相「や、やめろ」
智将テリゲン「命令をいただければ、私が・・・」
エックス総統「テリゲン!!」
エックス総統「落ち着け」
エックス総統「阿久征さん、部下の非礼を詫びる」
エックス総統「あなたには、牢に入ってもらう」
エックス総統「そこで自分の罪を振り返ってくれ」
阿久征　元首相「・・・」
エックス総統「気を失ったか」
エックス総統「テリー、私は阿久征氏を連行する」
エックス総統「ヴィスと共に後処理を頼む」
智将テリゲン「か、かしこまりました」
智将テリゲン「総統」
智将テリゲン「申し訳ありません」
エックス総統「テリー、君の気持ちはよくわかる・・・」
エックス総統「だが、今は耐えてくれ」
智将テリゲン「はい」

〇荒地
剛将ヴィスマルク「なるほど、そんなやり取りが」
剛将ヴィスマルク「アイツは不殺の掟には厳しいからなぁ」
智将テリゲン「なぁ、ヴィス」
智将テリゲン「どうして総統はあそこまで自分を律し、目的のため邁進できるのだ!?」
智将テリゲン「何か知らないか!?」
剛将ヴィスマルク「そういやテリーは収容施設解放からの付き合いだったな」
剛将ヴィスマルク「アレはまだホライズンを結成する前」

〇森の中
エックス「ふぅ・・・」
エックス「人間め」
エックス「オレが怪人ってだけで無茶苦茶しやがる」
エックス「だが、こんなところまで追ってはこないだ・・・」
ヨーコ「だぁれ!?」
エックス「ひっ!!」
エックス（人間の子!?）
ヨーコ「もうお迎えのお時間？」
エックス「い、いや・・・ん!?」
エックス（この子、目が・・・）
ヨーコ「アナタ病院の人じゃないの？」
エックス「ああ・・・違う」
ヨーコ「そうなんだ!!」
ヨーコ「じゃあヨーコとここで遊ぼう!!」
エックス「い、いや、オレは」
ヨーコ「名前はなんていうの？」
エックス「・・・エックス」
ヨーコ「エックスさん!!一緒にお話しよう」
エックス「オレと話!?」
ヨーコ「うん」
エックス（目が見えないからオレの事を差別しないのか）
エックス（話・・・か）
エックス「オ、オレでよければ」
ヨーコ「やったー!!」

〇森の中
エックス「で、そいつが本当になんでも美味いって食べるんだ」
ヨーコ「フフ、面白いね」
ヨーコ「私もなんでも食べられるよ!! あっちに美味しい実があるの」
エックス「おいおい、危ねぇぞ」
ヨーコ「キャッ」
エックス「危ないっ!!」
ヨーコ「ありがとう」
ヨーコ「エックスさんなんだか体が・・・」
エックス（・・・）
エックス（短い安らぎの時間だったな）
エックス「黙ってて悪い、オレは怪人なんだ」
エックス「もう行くから」
ヨーコ「エックスさん」
ヨーコ「すごい!!私怪人さんって初めて会ったよ!!」
エックス「え!?」
エックス「怖くない・・・のか!?」
ヨーコ「怖い・・・？なんで？」
エックス「だってオレ怪人だから」
ヨーコ「エックスさんはお話も面白いし、私を助けてくれたよ。どうして怖いの？」
エックス「・・・」
ヨーコ「どうしたの？」
エックス「いや、なんでもない」
エックス「ヨーコ、君さえよければ、またココに来ていいかい？」
ヨーコ「うん、モチロン!!またお話しましょう」
エックス「ありがとう・・・」

〇森の中
エックス「ヨーコ、君の目は治らないのか？」
ヨーコ「手術をすれば治るって先生は言ってたけど」
ヨーコ「私、孤児だからお金が無くて」
エックス「そうか・・・」
エックス「ヨーコ・・・オレの友人にケガを治療できる怪人がいる」
エックス「その目も治るかもしれない、試してみるか？」
ヨーコ「ホント!?」
ヨーコ「うん!!やってみたい!!」
エックス「そうか!!じゃあ、今度一緒に来るよ」
ヨーコ「私、目が見えるようになったら海が見たい」
エックス「ああ、一緒に見よう」
エックス（目が治ったら・・・）
エックス（オレの姿を見たら・・・）
エックス（お別れかな）

〇林道
ヴィスマルク「吃驚したぜ、お前が人間を助けたいなんてな」
エックス「あの子は・・・特別なんだ」
　　きゃー
エックス「ヨーコ!?」

〇森の中
チンピラ「怪人とつるんでるやつがいるって聞いたが」
チンピラ「こんなガキだったのかよ」
チンピラ「いきなり声かけてきやがるから撃っちまったじゃねぇか」
エックス「ヨーコ!!」
チンピラ「ひぃっ!!」
チンピラ「に、逃げろ!!」
エックス「待ちやがれ!!」
ヨーコ「待って、エックスさん・・・」
ヨーコ「私が悪いの・・・ エックスさん達が来たと思って驚かせちゃったから」
エックス「関係あるか!!アイツ殺してやる!!」
ヨーコ「エックスさんお願い」
ヨーコ「人間を殺さないで」
ヨーコ「優しいエックスさんでいて」
エックス「ヨーコ」
エックス「ヴィス」
ヴィスマルク「この子がヨーコか」
エックス「ヴィス!!ヨーコの傷を治してくれ!!」
ヴィスマルク「エックス、無理だ・・・」
ヴィスマルク「俺の能力は治るケガしか治せない」
ヴィスマルク「この傷ではもう助からない」
エックス「そんな・・・」
エックス「なんとか・・・なんとかしてくれ!!」
ヨーコ「エックスさん・・・お友達を困らせないであげて」
エックス「ヨーコ」
ヴィスマルク「気休めにしかならないが」
ヴィスマルク「この子の目の治療と、一時的な痛み止めくらいならオレの能力で出来る」
ヴィスマルク「何か最後に見せてやってやれ」
エックス「最後・・・」
エックス「ヨーコ・・・海を、海を見に行こうか」
ヨーコ「うん・・・行きたい」
エックス「ヴィス頼む」
ヴィスマルク「ああ」
ヨーコ「エックスさん・・・？」
エックス「ああ・・・オレだ」
エックス「怖いか・・・？」
ヨーコ「ううん」
ヨーコ「カッコいい」
エックス「そうか」
エックス「ヨーコ」
エックス「今から海を見に行こう」
エックス「ヴィス」
ヴィスマルク「ああ、行ってこい」

〇朝日
　　これが海・・・!?
　　そうだ
　　あの光って見えるのは？
　　あれが太陽、そして水平線だ
　　キレイ
　　そうか
　　ねぇ、エックスさん
　　なんだ？
　　いつかこの世界のみんなでこの水平線を見て
　　みんな仲良くキレイだねって言い合える日が来るかな？
　　そうだな、きっと来るさ
　　いや・・・
　　オレが実現させるよヨーコ!!
　　誰も虐げられることなく
　　笑いあえる
　　理想の世界を
　　・・・
　　ヨーコ？
エックス「ヨーコォォ」
暴将ヴィスマルク「あの日が、オレ達にとって ”全ての始まり”だった」

〇荒地
智将テリゲン「・・・」
剛将ヴィスマルク「アイツにとって」
剛将ヴィスマルク「世界征服は始まりでしかない」
剛将ヴィスマルク「今まで人間達が実現出来なかった究極の平和を」
剛将ヴィスマルク「ヨーコの望んだ世界を実現するためのな」
智将テリゲン「私は・・・」
智将テリゲン「私は心のどこかで総統の方針に疑問を持っていた」
智将テリゲン「だが」
智将テリゲン「私の心の迷いは晴れた!!」
智将テリゲン「総統の理想のため、私も尽力する!!」
剛将ヴィスマルク「おう」
剛将ヴィスマルク「アイツも長年総統の役割を担って辛いはずだ」
剛将ヴィスマルク「オレ達で支えてやろう」
智将テリゲン「ああ」

〇墓石
エックス（ヨーコ・・・）
エックス（世界征服は果たしたけど、まだまだ課題は多いよ）
エックス（でも）
エックス総統「必ず実現する」
エックス総統「世界の夜明けを」
エックス総統「水平線のその先を」
エックス総統「この”エックス総統”が!!」