プロフェッサーS900はかく語りき(脚本)
〇荒廃した街
2xxx年・・・遠いようで近い未来
人類は未知のウィルスに侵され、怪人なる者が大頭する
ウィルスに侵されたためか、人外なる強力な能力を有する彼ら
彼らはその能力を悪用し、各自怪人組織を作り出す
人類はそれらに対抗すべく
人類の英知である科学技術を結集させ
世界中に武装集団ヒーロー組織を結成させるのだった
この物語は、日本の東京に住む怪人の『とあるストーリー』である
プロフェッサーS900「どうした? お前達の力はそんなものか・・・?」
〇荒廃した街
紅 朱雀「くそっ! コイツ・・・強すぎる!」
青井 竜二「朱雀っ! 一旦落ち着け! 冷静になるんだ!」
紅 朱雀「ハアッ、ハアッ・・・ く、くそっ! こうなったら・・・!」
紅 朱雀「はあああっ!」
青井 竜二「朱雀っ! もう、よせっ! おそらく『教授』には通用しない!」
しかし、青井がたしなめるも
直情型の朱雀の耳には届いていない・・・
紅 朱雀「はあああっ!」
たしなめる青井の言葉を無視し
『教授』こと、プロフェッサーS900に向かって単独で突っ込んでいく、紅朱雀・・・
虎白 加奈「・・・とおっ!」
紅 朱雀「い、痛ッ! ちょっおま、加奈? 何すんの?」
虎白 加奈「ん・・・ 何となく・・・」
紅 朱雀「は、はああああ?」
〇荒廃した街
プロフェッサーS900「フフ・・・ なあ? 青井よ お前、『三本の矢』の話を知っているか?」
〇荒廃した街
青井 竜二「あ、ああ、知っているとも・・・ 毛利三兄弟の有名な話で・・・」
青井 竜二「・・・あっ!」
紅 朱雀「ど、どおした? 青井⁈」
青井 竜二「・・・よし! お前ら! 連携だ!」
虎白 加奈「ああ! なるほど!」
紅 朱雀「え? 何?」
青井 竜二「朱雀! いいからそのまま、加奈と連携を!」
紅 朱雀「分った!」
青井 竜二「俺は後ろから二人の援護をする!」
紅 朱雀「よっしゃー! みんな行くぞっ!」
青井 竜二「おう!」
虎白 加奈「あいよ!」
〇荒廃した街
プロフェッサーS900「・・・ふふ、いいぞ・・・ さっきのバラバラの攻撃とは違う 呼吸のあった素晴らしい連携だ」
〇荒廃した街
紅 朱雀「何ッ⁈」
青井 竜二「・・・お前まさか・・・⁈」
虎白 加奈「・・・」
〇荒廃した街
プロフェッサーS900「・・・ふふ 目的は達成された・・・ では、さらばだ・・・」
意味深な言葉を残し
どことなく去っていくプロフェッサーS900・・・
〇荒廃した街
紅 朱雀「あっ! 待ちやがれ!」
青井 竜二「・・・アイツもしかして」
紅 朱雀「ああ?」
青井 竜二「い、いや、何でもない・・・」
虎白 加奈「・・・ね、帰ろ?」
紅 朱雀「・・・ああ、そうだな!」
青井 竜二「だな・・・」
プロフェッサーS900
彼は何者で、何が目的で戦っているのだろう?
三人は様々な思いを胸に秘め、各々帰路につく
〇田舎駅の駐車場
それから数日後・・・
ここはとある東京の田舎駅
おばあちゃん「毎朝、タクシーでの送迎 すまないねえ・・・」
寺井 銀次郎「いえ、仕事ですので・・・」
おばあちゃん「そうかい・・・ また、明日もお願いするね・・・」
寺井 銀次郎「はい、かしこまりました」
休憩に入り、静かに煙草を一服する寺井
寺井 銀次郎(・・・さて、遠出したし、都会に戻るとするか)
紅 朱雀「運転手さーん! すいませんが、乗っけてくんない?」
寺井 銀次郎(な・・・? 何故、ここにコイツが⁈)
実はこの寺井の正体は怪人プロフェッサーS900だったのだ!
訳アリの兼業で個人タクシー業を営んでいたりする
寺井 銀次郎(まあいい 早く送ってしまおう)
青井 竜二「すいませんね! 丁度列車が行っちまったみたいなんで」
寺井 銀次郎(な、青井もだと・・・・・・⁈)
虎白 加奈「という事で、お願いしやーす!」
寺井 銀次郎(虎白まで・・・ な、何て日だ しかし、断るわけにもいくまい)
寺井 銀次郎「はい! かしこまりました! ちなみにどちらまで?」
「池袋まで!」
〇山並み
タクシーの助手席に青井
後部座席に朱雀と虎白が乗り込み、山道をしばらく進んでいく
青井 竜二「すいませんね、早く帰りたかったもんで」
寺井 銀次郎「いえいえ」
寺井 銀次郎(そうか、たまたまだったか・・・ 私の杞憂だったな・・・)
青井 竜二「・・・運転手さん つかぬ事をお聞きしますが さっきのお年寄りの方はお知り合いですか?」
寺井 銀次郎「いえ・・・ 常連のお客様になります」
青井 竜二「なるほど そうですか・・・」
虎白 加奈「なんか あのおばあちゃん 嬉しそうだったもんね」
紅 朱雀「そうだな! 後姿が楽しいって感じだったな!」
寺井 銀次郎「はは・・・ これは、これは・・・ ありがとうございます」
〇山並み
しばらく時間が経過し
後部座席の2人は静かになる
ミラー越しに確認する寺井
なるほど、2人は寝てしまっているようだ
青井 竜二「はは・・・ 二人とも寝てしまっているみたいですね」
寺井 銀次郎「・・・きっとお疲れだったんでしょう」
青井 竜二「はは・・・そうですね・・・ ところで・・・」
青井 竜二「こんなところで、貴方は何をしているんですか? 寺井 銀次郎・・・ いや、プロフェッサーS900!」
寺井 銀次郎「なっ!?」
驚きを隠せない、寺井ことプロフェッサーS900
青井 竜二「実はだいぶ前から、貴方の事を調べさせてもらってですね」
寺井 銀次郎「・・・」
青井 竜二「ああ、安心してください 後ろの2人はこの事は知らないので」
寺井 銀次郎「なるほど・・・」
青井 竜二「丁度私生活の貴方に会ったんで この機会にゆっくり、話をしてみたくてね」
寺井 銀次郎「・・・怪人の この私とですか?」
青井 竜二「そうです 貴方は不思議な怪人だ この前も俺達に戦闘アドバイスをしてくれた」
寺井 銀次郎(・・・)
寺井 銀次郎「そうですね いいでしょう・・・」
寺井 銀次郎「私がこの仕事をしているのは ・・・生きていくためです 私が私らしく生きていくためにね」
青井 竜二「なっ!?」
驚きを隠せない、青井。
それもそのはず、怪人であるプロフェッサーS900が生きていくために働いている?
寺井 銀次郎「驚いているようですね・・・」
青井 竜二「あ、ああ・・・」
寺井 銀次郎「では問いますが・・・ 私と貴方達の違いって 何ですか?」
青井 竜二「えっ! そりゃ・・・ 怪人と・・・人間ですけど・・・」
寺井 銀次郎「では問いますが 怪人と人との明確な違いは何ですかね?」
青井 竜二「そ、それは、超人的な力があるか無いか それに・・・」
寺井 銀次郎「・・・それに?」
青井 竜二「う・・・」
青井は「悪人か善人か」と言いかけたが、言葉に出せなかった
何故なら、目の前にいる寺井は人間そのものだったのだから
たたみかけるように
寺井ことプロフェッサーS900は青井に向かって語りかける
寺井 銀次郎「実は親父の代からタクシー業を営んでいましてね 私は小さい頃から、親父のタクシーに乗って育ちました」
青井 竜二「・・・」
寺井 銀次郎「うちの親父も怪人でしたが 力を暴力として使ったことは無かった あるとしたら、このタクシー業にのみでした・・・」
青井 竜二「そ、そうですか・・・」
寺井 銀次郎「私も同じです 私が貴方達ヒーローに向かって力を使ったことがありましたか?」
青井 竜二「あっ! そういえば・・・」
青井は思い出していた
プロフェッサーS900は自分達に向かって力を行使していない事を
威嚇でしか力を使っていない事を
寺井 銀次郎「私はね、この仕事に誇りを持っている 理由は純粋にこの仕事が好きだし 人様の役に立つからだ」
青井 竜二「・・・」
寺井 銀次郎「さっき自分が送ったお客様を貴方は覚えてますか?」
青井 竜二「え、ええ 確か山の頂上で住んでいて 毎日貴方があの駅まで送っているんですよね?」
寺井 銀次郎「そうです」
青井 竜二「毎日タクシーだとお金がかかると思うから バスを使えば、とは思ってますけどね・・・」
寺井 銀次郎「山道だと、バスは通れない 細い道があるんですよ・・・」
青井 竜二「!」
寺井 銀次郎「それに田舎のバスは時間が限られているし お年寄りだと、車がつかえなくなっていく」
青井 竜二「76歳以上になると 極端に身体能力が落ちていくので 車の免許を返納していく人が増えましたしね」
寺井 銀次郎「そうです 家族がいない人には 私達が必要になってくるんですよ」
青井 竜二「・・・」
寺井 銀次郎「私は望まぬ形で、怪人として生まれて来た でも、私がやっている事は人と変わらないんです」
青井 竜二「そ、そういえば 貴方は数日前も 私達に戦闘のアドバイスをしてくれましたよね?」
寺井 銀次郎「そうですね 強くなって欲しいから そして、本当の悪が何なのかを知って欲しいし、成長してほしいから」
青井 竜二「・・・!」
賢い青井は理解した
その言葉が真実である事を納得させるために寺井が真面目に仕事をしている事を
そして
自分達を影ながら支えてくれている事を
博学にして人徳あり
だから、『教授』=プロフェッサーS900なのかと、青井は理解した
寺井 銀次郎「・・・私が言える事はここまでです」
青井 竜二「そうですか・・・ 何故貴方が『教授』と言われているか その所以が何となく分った気がします」
寺井 銀次郎「ありがとうございます・・・ 何故、ウィルスがバラまれたのか 誰か何のために行ったのか?」
青井 竜二「・・・」
寺井 銀次郎「そこら辺も 賢い貴方なら、理解していく事でしょう」
〇池袋駅前
それからしばらくして・・・
一行は目的地にたどり着く
紅 朱雀「いやー爆睡してたわ!」
虎白 加奈「にひー同じく!」
「運転手さん! ありがとうございました!」
寺井 銀次郎「いえいえ、お疲れ様でした! 皆さん、お気をつけてお帰りください!」
虎白 加奈「はーい!」
紅 朱雀「じゃ、帰るか!」
〇繁華街の大通り
しばらく街中を歩いて行く3人
虎白 加奈「・・・ね? 怪人も悪い奴ばかりじゃないんだね?」
青井 竜二「な、お前起きてたのか・・・?」
虎白 加奈「にへー」
紅 朱雀「ん? おいおい、2人とも何の話してんだよ?」
「ヒ・ミ・ツ!」
紅 朱雀「えー!」
おしまい
バトルシーンなのにコーチと生徒みたいな雰囲気があったのはそういう訳だったのか。プロフェッサーと呼ばれるのも伊達じゃないですね。運転手の仕事にも真摯に取り組む「地に足がついた怪人」だからこそ、言葉にも説得力がありました。
人間と怪人の違いはあれど、単純に「善と悪」と決めてしまうのは早計かと、この作品を読んでいて思いました。
教授はいろんな角度から物事を見て、実行していくところが立派だと。
それを受け入れるヒーローもまた、成長しているんだと思いました。
ヒーローと怪人が議論を行った場合、平行線で終わり力で決着をつけるのが定番ですが、本作では思考の深さが見られますね。寺井さんことプロフェッサーS900は、自身なりの答えと根拠をしっかり抱いて魅力的なキャラですね。