⑥第3ステージ・トーク投票(脚本)
〇おしゃれな教室
めぐるはフラグ質問について考えてみた。
(ア)は素敵なフレーズだけど、これだけで告白にもっていくのはつらそうだ。
「無理って言うな」の(イ)は、命令口調のせいでちょっと怖い。
トンカツ丸ごとの(ウ)を告白に結びつけるのも無理がある。
そう考えると、(エ)が一番いいかもしれない。
(エ)
昨日から学び
今日に生き
明日に期待する
今日の午後は休もう
3行目までは忠告とか標語みたいだけど、4行目でクスッと笑わせてくれる。
無理しなくていいよと優しく応援しているようだ。
そういう告白だったら、「好きになっちゃう」とまではいかなくても、心はちょっと傾きそうだ。
・・・そんなことを考えて、(エ)に投票した。
手をグーにしている人は少なかったので、めぐるもパーで挙手しておいた。
山里先生「はい、そんなわけで、第3投票の結果、ステージフレーズは(エ)に決定! いやー、圧倒的だったなあ」
山里先生「グーとパーに気をつけながら挙がった手を数えましたが、紹介役の女子は3人ともパーで(エ)に投票してたね」
山里先生「トーク投票では、まずその3人に理由を聞いてみよう。どうだい、崎本と小板橋と掛井?」
指名された3人は顔を見合わせた。
誰から喋るか相談するような間が流れたが、最初に口を開いたのは、やはり小板橋さんだった。
小板橋「あたしからでいい? 実は、消去法で決めましたー」
小板橋「(ア)は、宝石のプレゼント付きの告白だったら嬉しいけど、それで魔女にされても困っちゃうって感じだし・・・」
小板橋「(イ)は「無理って言うな」って偉そうじゃない? それに「やってもいないのに」って、なんかやらしい意味にもとれるからダメ!」
小板橋「あたしが出した(ウ)は、トンカツって何それ、意味不明! って感じで無いな~・・・ってことで、消去法で(エ)に決定!」
みんなから、笑いや拍手が涌いた。
なんだかすごく説得力があったのだ。
掛井「私は──(エ)の告白が、一番、相手のことを考えてくれてるなって気がして、1票入れました」
めぐる「私もそんな感じです。 「今日の午後は休もう」ってところが優しくていいな、って思いましたー」
山里先生「はい、3人ともありがとう! じゃあ、続いて少数意見も聞いてみよう。 たしか山田は(ウ)に挙げてたよね?」
山田「はい、(ウ)に入れましたー。 だって、惚れるでしょ。「私と付き合ったら、トンカツの丸かじりさせてあげる」とか言われたら!」
山田「それに、「丸かじり」って、なんか深い意味がありそうでいいよね」
山田「さっき小板橋が「やらしい意味にもとれるからダメ」とか言ってたけど・・・」
山田「俺は逆に、そういうのがいいと思う! いいじゃん、丸かじり。なんかこう、期待させるよ!」
小板橋「えーっ、何それ。 やらしー。さいてー!」
小板橋さんが声を上げ、みんながどっと笑った。
山田くんもウケ狙いで言ったのだし、小板橋さんも本気で怒ってはいないのだ。
山里先生「はいはい。2人とも喧嘩すんなよー。 要は、人によって捉え方も感じ方も違う、ってことだ。 まずは人の意見を楽しんでいこう!」
山里先生「他に少数意見としては、島津が(イ)に入れてたよな。理由を聞かせてくれるかい?」
島津「えーと・・・さっき、偉そうとか言われちゃったけど・・・僕はこのフレーズの出てきた本を読んでるので、そうは思わないんです」
島津「ネタバレを気にすると説明しにくいけど・・・このセリフを言ったのは男の人で、それを書いたのは女の人なんです」
島津「そして──彼女は、それを言った彼のことが大好きなんです。それを隠そうともしてないんだけど、2人は恋人ってわけじゃないんだ」
島津「僕は、そういう2人っていいな、って思ってて・・・だから、告白ってわけじゃないけど、奥に優しさを感じて(イ)を選びました」
山里先生「はい、ありがとう。 後で出典の本を明かしてもらうのが楽しみになってくるね」
山里先生「あとは、(ア)にも何票か入ってたよね。 その中で、森がパーで挙手してくれてたけど、理由を聞かせてくれるかい?」
森「えーと──(ア)に入れた理由は、ギャップ萌えです!」
森「宝石と少女の──ファンタジーでミステリーなフレーズでしょ? 崎本ちゃんが選んだ、って言うなら納得だけど・・・」
森「それをあの、考え無しの単純くんの戸橋が見つけた、ってのがいいよね。 もしあいつがこのフレーズで告白してたら、可愛くない?」
教室が、どっと涌いた。
この場にいない戸橋くんのキャラクター、というのもあるし、森さんが彼をいじるのもお馴染みなのだ。
山里先生「はい、貴重なご意見ありがとう! みんなも分かったと思うけど、投票の理由も人それぞれで面白いよね。少数意見だって侮れない!」
山里先生「多数決や選挙のシステムは、多数派ばかりに目を向けがちなんだ。 時々こうやって、物事をいろんな角度から見る習慣をつけとこう」
山里先生「そんなわけで、この第3ステージでは(エ)がステージフレーズに選ばれました。でも次のステージではがらっと変わるはずだよ」
山里先生「次からは、さっき出したみたいなフラグ質問を、みんなから出題してもらうんだ。 誰か、ぱっと思い付く人はいるかい?」
先生の問いかけに、教室のあちこちでざわめきが起こる。
やがて一人の手が挙がった。──森さんだ。