ものぐさな名探偵 ~つまらない依頼はお断り~

HALPIN

2.竜のねぐらを探せ(脚本)

ものぐさな名探偵 ~つまらない依頼はお断り~

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〇一戸建て
功刀絢花「着いた着いた!」
吉良誠一郎「えっと・・・ 普通の民家みたいだけど」
功刀絢花「ただの民家じゃねぇ。事件現場だ!」
吉良誠一郎「事件現場!?」
功刀絢花「宏斗少年が竜を目撃した現場であり」
功刀絢花「彼が石を投げ込んだって家だぜ」
功刀絢花「まあ、宏斗少年は・・・」
宏斗「俺はやってない!」
功刀絢花「って言ってるけどな」
功刀絢花「とりあえず」
功刀絢花「家主に話を聞いてみようと思ってな」
功刀絢花「さてと・・・」
与志之「はい」
功刀絢花「ども、クヌギ探偵事務所の功刀絢花です」
与志之「探偵!?」
功刀絢花「はい。探偵の功刀絢花です」
功刀絢花「ってことで・・・」
功刀絢花「ちょっと、お話を聞かせてもらえます?」
吉良誠一郎(うーん、このノリはどうなんだ?)
吉良誠一郎「絢花ちゃん、もうちょっと探偵らしい 言葉遣いをしたら?」
功刀絢花「なんだよそれ?」
功刀絢花「素人がプロに意見するのか?」
吉良誠一郎「いや、そうじゃないけど」
与志之「いったい、何のご用件で?」
功刀絢花「宏斗という少年についてなんすけど・・・」
与志之「宏斗?」
吉良誠一郎「その、お宅に石を投げ込んだと言う」
与志之「ああ、あの悪ガキか!」
功刀絢花「本人はやってないと言ってましたけどね」
与志之「嘘に決まっておる」
与志之「あんな、馬鹿げた言い訳をしおって」
功刀絢花「その言い訳っていうのは」
功刀絢花「竜を見たって話ですか?」
与志之「そうじゃ」
功刀絢花「あなたは竜を見ていないんですか?」
与志之「竜なんているわけがなかろう!!」
功刀絢花「そうですか?」
功刀絢花「いないと決めつける根拠は?」
与志之「根拠も何も、当然じゃろう!」
功刀絢花「勝手な決めつけですね」
功刀絢花「その調子で、宏斗少年が石を投げ込んだと決めつけたんじゃありませんか?」
与志之「ワシの早とちりだとでもいう気か!」
功刀絢花「まあ・・・」
功刀絢花「その可能性も否定できませんよね?」
与志之「そんなはずがなかろう!」
功刀絢花「彼だという証拠でも?」
与志之「そうか、なるほど」
与志之「あの悪ガキの親にでも雇われたんだな」
功刀絢花「ほら、また早とちり」
与志之「なんだと!」
吉良誠一郎「ちょっ、絢花ちゃん あんまり挑発するような言い方は・・・」
功刀絢花「間違ってるのはこの人だし」
吉良誠一郎「・・・」
功刀絢花「ちなみに、私を雇ったのは少年本人です」
吉良誠一郎「500円でね・・・」
与志之「子どもの言うことを真に受けるとは」
与志之「付き合いきれんわ」
吉良誠一郎「待ってください!」
与志之「気分が悪い。もう帰ってくれ!」
吉良誠一郎「すみません。謝りますから!」
吉良誠一郎「もう少しだけお話を・・・」
功刀絢花「おい、誠一郎 勝手なことするなよ!」
吉良誠一郎「でも、ちゃんと話を聞かないと」
与志之「まだ何かあるのか?」
吉良誠一郎「それは」
吉良誠一郎「絢花ちゃん、他に聞きたいことは?」
功刀絢花「さあな」
功刀絢花「勝手にが呼び止めたんだから 続きの話はお前がしろよな!」
吉良誠一郎「そんなぁ」
功刀絢花「まあ、探偵なら凶器の確認くらいは するだろうけどな」
吉良誠一郎「そっか!」
吉良誠一郎「あの、最後に投げ込まれたという石だけでも見せてもらえませんか?」
与志之「ああ、それなら、ここにある!」
与志之「窓は子どもの親が弁償すると言っているし」
与志之「そんな石ころ、ワシには必要ない」
与志之「欲しければくれてやる!」
功刀絢花「割れたのは、そこの窓ですか?」
与志之「そうじゃ」
功刀絢花「・・・」
与志之「もういいじゃろ。帰ってくれ!」
与志之「くだらんことに巻き込まれて迷惑じゃ!」
功刀絢花「くだらないって、また決めつけ」
吉良誠一郎「それで、何か分かりそうなの?」
功刀絢花「いや」
功刀絢花「とりあえず話を聞けたってだけだな」
功刀絢花「捜査はこれからだ!」
吉良誠一郎「じゃあ、収穫はこの石ころだけか・・・」
功刀絢花「さぁ、次に行くぞ!」
吉良誠一郎「はいはい」

〇川に架かる橋
功刀絢花「この辺りだな・・・」
吉良誠一郎「えっ、ここがなんなの?」
功刀絢花「竜の目撃談があった地点だよ」
功刀絢花「その橋の手前辺りで空を見上げたら 細長い何かが飛んでたらしいぜ」
功刀絢花「ほら」
吉良誠一郎「本当だね ヘビみたいのが飛んでたって書いてある!」
功刀絢花「うーん・・・」

〇空
功刀絢花「竜に見まちがえそうなものはないな」
吉良誠一郎「川沿いで空が開けてるからね」
吉良誠一郎「書き込みはイタズラだったのかな?」
功刀絢花「いや、一つならともかく複数あるからな」
吉良誠一郎「じゃあ、彼らは何を見たんだろう?」
功刀絢花「それを調べてるんじゃねぇか!」
吉良誠一郎「そ、そうだよね」
功刀絢花「本当に竜だったら大発見だな!」
吉良誠一郎「それはないと思うけどね」
功刀絢花「スカイフィッシュでも大歓迎だぜ」
吉良誠一郎「やれやれ」
功刀絢花「さっ、次行くぞ!」
吉良誠一郎「まだあるの?」

〇開けた交差点
功刀絢花「この辺りでも空飛ぶ何かを見たって 書き込みがあったんだけど・・・」
吉良誠一郎「それらしいものは何もなさそうだね」
吉良誠一郎「竜の住処って感じの場所でもないし」
功刀絢花「宏斗少年の目撃場所、さっきの橋の上 それから、この交差点」
吉良誠一郎「何か分かったの?」
功刀絢花「本当に竜がいたのかも知れねぇぜ」
吉良誠一郎「えっ?」
功刀絢花「ほら、見てみろよ」
功刀絢花「三カ所がほぼ一直線上にある」
吉良誠一郎「たしかに・・・」
功刀絢花「やっぱり、空飛ぶ何かが 真っ直ぐに空を横切ったんだ」
吉良誠一郎(まだ何とも言えないと思うけどな)
功刀絢花「この直線上の公園やら空き地やら 隠れてそうな場所を捜索してみようぜ!」
吉良誠一郎「えっ、本気?」
功刀絢花「ああ」
功刀絢花「面白くなってきたぜ!!」
吉良誠一郎「おいおい」
功刀絢花「竜、スカイフィッシュ、宇宙人 なんでも来やがれ!!」
吉良誠一郎「ねえ、絢花ちゃん」
吉良誠一郎「もう一つの依頼はどうするんだよ!」

〇広い公園
功刀絢花「うーん、ここにはいないのか?」
吉良誠一郎「・・・」
功刀絢花「この公園なら、竜のねぐらに ぴったりの広さだと思うんだけどなぁ」
吉良誠一郎「この辺りで一番広い公園だからね」
吉良誠一郎「でも、本当に竜が住んでたとしたら もっと目撃者がいるんじゃないかな?」
功刀絢花「なるほど、目撃者か!」
功刀絢花「なあ、そこの少年!」
少年「えっ、俺?」
少年「なんだよ?」
功刀絢花「この公園にはよく来るのか?」
少年「ああ、夏休みに入ってからは毎日だな」
功刀絢花「じゃあ、竜がいるのを見たことないか?」
少年「はぁ?」
功刀絢花「スカイフィッシュかも知れない とにかく、空飛ぶ巨大な生き物だよ」
少年「そんなのいるわけねーじゃん!」
功刀絢花「いるかもしれないだろ!」
少年「いたら、子どもたちの噂になってるよ」
少年「でも、そんな噂、聞いたことねぇもん」
吉良誠一郎「噂か。なるほどね」
吉良誠一郎「公園とか空き地とか人が集まる場所に そんな生き物がいたら」
吉良誠一郎「きっと大騒ぎになるもんね」
少年「ああ」
少年「まあ、竜なんて見つけたら 大人たちには秘密にするかもしれねぇけど」
少年「子ども同士の間じゃ あっという間に噂が広がるはずだぜ」
功刀絢花「・・・」
少年「じゃあな、姉ちゃんたち!」
少年「もし本当に竜を見つけたら 俺にも教えてくれよな!」
功刀絢花「たしかにな・・・」
吉良誠一郎「どうしたの、絢花ちゃん?」
功刀絢花「私は大きな間違いをしてたみたいだ」
吉良誠一郎「そうだね、竜なんかいるはず・・・」
功刀絢花「伝説の生き物が ひと気の多い場所に住んでるはずがねぇ」
吉良誠一郎「えっ?」
功刀絢花「するとだな・・・」
功刀絢花「よし、ここを探してみるか!」
吉良誠一郎「まだ続けるの?」
功刀絢花「ああ、当たり前だろ!」
功刀絢花「何としても竜を見つけてやる!」
吉良誠一郎「もう一つの依頼はどうするんだよ!」

〇古びた神社
功刀絢花「どうだ。ここなら竜がいそうだろ!」
吉良誠一郎「古い神社だね・・・ たしかに雰囲気はあるけど」
功刀絢花「もう管理者のいない廃神社だ」
功刀絢花「竜が隠れるにはもってこいだろ?」
吉良誠一郎「分からなくはないけど」
吉良誠一郎「竜なんていないと思うよ・・・」
功刀絢花「うるせぇ、探してみるぞ!」
吉良誠一郎「もう一つの依頼はどうするんだよ」
吉良誠一郎「お金も受け取っちゃってるし 何もしないでいるわけにはいかないよ!」
功刀絢花「お前が勝手に受けたせいだろ」
功刀絢花「この仕事が片付いたらするから」
功刀絢花「誠一郎も気合入れて探せよな!!」
吉良誠一郎「そもそも竜がいないとしたら」
吉良誠一郎「この捜索は永遠に終わらないんじゃ・・・」
功刀絢花「いいから、探せって」
吉良誠一郎「・・・」

〇古びた神社
吉良誠一郎「だんだん暗くなってきたな」
吉良誠一郎「ねえ、絢花ちゃん」
吉良誠一郎「そろそろ諦めたほうがいいんじゃない?」
功刀絢花「・・・」
吉良誠一郎「竜なんて本当にいるとは思えないし」
吉良誠一郎「もう一つの依頼にも取りかからないと」
功刀絢花「分かってるよ」
功刀絢花「しゃーねーな」
功刀絢花「夜になる前に、そっちの調査もしてみるか」
愛那「あれは事故でも自殺でもないです」
愛那「夫は、不倫相手の女に殺されたんです!!」
功刀絢花「依頼人の思い込みにつきあうのは 面倒だけどな・・・」
吉良誠一郎「思い込みかどうかは調べてみないと 分からないだろ?」
功刀絢花「電話でもすりゃ 被害者を屋上に呼び出すことはできる」
功刀絢花「でも、2キロも離れた場所から 被害者を突き落とすのは不可能だろ」
功刀絢花「共犯者がいたならともかく」
愛那「あの女が夫を屋上から突き落としたんです」
功刀絢花「依頼人は不倫相手の女が ”自身の手で”したんだと決めつけてる」
吉良誠一郎「まあね」
功刀絢花「そんなの思い込みだろ?」
功刀絢花「証明しろって言われてもなぁ・・・」
吉良誠一郎「でも、調査くらいはしないと」
功刀絢花「分かってる」
功刀絢花「負け戦に挑むみたいで気は進まねぇけど」
功刀絢花「とりあえず現場に行ってみるか・・・」
吉良誠一郎「転落死の現場は 被害者が勤めていた会社だよね?」
功刀絢花「ああ、ここから、すぐ近くだ」
功刀絢花「五分も歩けば着く」
吉良誠一郎「ちょうど良かったね」
功刀絢花「まあ」
功刀絢花「私の計算通りだな!」
功刀絢花「効率のいい捜査だろ?」

次のエピソード:3.ダッシュで捜査

コメント

  • 絢花さんのマイペースっぷりがイイですね!いずれの事件も”思い込み””決めつけ”への対応が謎を解くカギになりそうな気配ですね。続きも気になります!

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