オカルト考察部ー消える地蔵ー

りいち

第一章 二つの怪談(脚本)

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りいち

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〇学校の部室
  ──キーンコーンカーンコーン
  放課後のチャイムが校内に鳴り響く。
  ここは赤パンダ学園オカルト考察部の部室。
  私、辻堂朱里(つじどう あかり)はこのオカルト考察部、略してオカ考部に所属する2年生。
  いつもは私より先に誰かが先に来ているはずだが⋯
「あかり!」
  部室の奥にある準備室から同じく2年生の佐藤凛花(さとう りんか)が顔を出した。
朱里「りん! 準備室にいるなんて珍しいね」
凛花「部長にカメラを探しといてって頼まれたのよね」
朱里「カメラ? そんなのあったっけ?」
凛花「私もそう思ったんだけど、ほら見て! こんなに立派なカメラを見つけちゃった!」
朱里「わあ、高そうなカメラ! こんなのうちの部にあったんだ!」
凛花「なんかさ、今日のテーマを検証するのに写真が必要みたいでさ」
朱里「スマホじゃダメなのかな?」
凛花「フィルムカメラじゃないとダメみたいだよ」
朱里「そうなんだ。 で、その部長は?」
凛花「もうすぐ来るはずなんだけど⋯」
坂内部長「ごめんごめん、待たせたね。 お、朱里ちゃんも来てたのか」
朱里「部長!」
凛花「カメラありましたよー!」
坂内部長「さすが凛花ちゃん! よく見つけたね」
朱里「あの、今日のテーマってなんですか? このカメラが必要だって聞いたんですけど」
坂内部長「ああ、今日のテーマは──」
坂内部長「『消える地蔵』だよ」

〇学校の部室
坂内部長「さて、」
  三人が席に着いたところで部長が口を開く
坂内部長「まずは「消える地蔵」について説明しよう。2人はこの話を知ってるかい?」
凛花「この真田里町(またりちょう)に伝わる都市伝説か何かですか?」
坂内部長「うん、似たようなものだけど、この話はここ最近になって噂され始めた怪談だ」
朱里「怪談かぁ・・・」
坂内部長「ははは、朱里ちゃんは怖い話が苦手だったっけ?」
朱里「あ、全然! 怖いってわけじゃないんですけど!」
凛花「あかりは不思議なことが起こると解明したくて仕方なくなるもんね」
凛花「伝え聞いた怪談だとそれが本当かどうか調べられないからモヤっとしちゃうらしいですよ?」
朱里「ちょ、ちょっとりん!」
坂内部長「なるほどねぇ。 でもこの話はこの学園がある町が舞台と言われている話だ」
坂内部長「もしかしたらなにか謂れ(いわれ)を探れるかもしれない」
朱里「それはちょっと楽しみかもしれないです」
凛花「その気持ち、すっごくわかる! 自分の目で見ないと信じられないもん!」
坂内部長「ははは、さすがオカ考部員! 2人とも、なかなかの変わり者だ」
凛花「部長だけには言われたくないですぅ!」
坂内部長「はは、そりゃそうだ」
坂内部長「それじゃあ話を戻そう」
坂内部長「「消える地蔵」 この話はとある町の郊外の池のほとりで実際に起こった体験談と言われている」
坂内部長「ある夏の日の夕方、大学生のA君はバイトの帰りに友人の家に遊びに行く予定になっていた」
坂内部長「少しバイトが長引き、日もほとんど沈みかけていたため、自転車に乗っていたA君は近道をしようと例の池の横を通ることにした」
坂内部長「すると前方に小さな祠が見えた。 「あれ、あんなところに祠なんてあったっけ?」」
坂内部長「A君はスピードを落とし、横を通り過ぎる瞬間に横目で祠の中を覗いた」
坂内部長「そこには目を閉じた大きな一体の地蔵が静かに佇んでいる」
坂内部長「まわりは街灯が少なく、日も落ちて暗くなっていたことから少し気味悪さを感じたA君は、」
坂内部長「早く先を急ごうとスピードをあげた。 しかし、しばらく行くとまた前方に祠が見えた」
坂内部長「「えっ・・・?」 その見た目は先ほど見た祠と全く同じに見える」
坂内部長「通り過ぎる瞬間、気になったA君はまた祠の中を覗いてみた」
坂内部長「すると、大きな一体の地蔵がまた目を閉じて佇んでいる。 「これ、さっきのと同じ・・・」」
坂内部長「咄嗟に今来た道を振り返るが、先ほどの場所に祠があったかどうかは暗くてよく見えない」
坂内部長「「ま、似たような地蔵なんていくらでもあるか」 気を取り直してA君はまた先を急ぎ始めた」
坂内部長「するとまた前方に祠のような影が見えた。 「また・・・?」 3度目もA君は祠を覗く。 するとそこには、」
坂内部長「目を開けてこちらを見据える大きな地蔵があった。そしてA君が見ている目の前で祠ごと消えたんだ」
「えっ!?」
坂内部長「A君は一瞬頭が混乱したが、すぐに恐怖が襲ってきて一目散に自転車を漕いだ」
坂内部長「(い、今、俺と目が合わなかったか!? やばいやばい!) 全速力でペダルを漕いでいたA君の前に、突如大きな地蔵が現れた」
坂内部長「「うわっ! ぶつかるっ・・・!」 急ブレーキをかけながら咄嗟に目を閉じたA君の耳に微かに声が聞こえた」
坂内部長「み・・・つ・・・け・・・て」
「ひっ・・・」
坂内部長「衝撃も何も感じなかったことに気づき、恐る恐るA君が目を開けてみるともうそこには何も居なかったそうだ」
朱里「こ、怖い話ですね」
坂内部長「さすがの朱里ちゃんでもやっぱり怖いんだね」
朱里「怖いものは人並みに怖いですよ! 私をなんだと思ってるんですか、部長!」
坂内部長「あはは、悪い悪い」
坂内部長「でも、興味深い話だろう? 舞台がこの町というなら尚更ね」
凛花「あれ? そういえば部長、この話とさっきのカメラと何の関係があるんですか?」
坂内部長「ああ、実はこの話が噂されるよりずっと前からこの池にはもう1つ怪談が存在するんだよ」
朱里「もうひとつ?」
  部長が口を開きかけた瞬間──
  遅くなりましたあああ!!
翔太「ふぃー・・・ すんません! 来る途中でサッカー部の顧問に捕まっちゃって」
真希江「あら、もう始まってたのね」
朱里「翔太くん! 真希江さん!」
  嘉神 翔太(かがみ しょうた)と桜井 真希江(さくらい まきえ)
  2人ともオカ考部の部員で、翔太くんは1年の後輩、そして真希江さんは部長と同じ3年だ
凛花「相変わらず翔太は運動部にモテモテねえ」
翔太「やめてくださいよ佐藤先輩。僕もうバスケ部と陸上部も掛け持ちしてるんですからぁ。これ以上は無理っすよ」
朱里「よくそれで体力持つね」
翔太「さすがに毎日全部行ってるわけじゃないっすよ! どっちも練習試合用のヘルプ要員なんで」
翔太「僕の本業はオカ考部っすよ!」
真希江「あら、じゃあ他のは副業?」
翔太「あったり前じゃないっすか!」
  (何そのバイトみたいな感覚)
「それで、話はどこまで進んだのかしら?」
坂内部長「新しい怪談の方を話し終えたところだよ」
凛花「真希江さんは知ってたんですか? この話」
真希江「ええ。 私が嘉神くんに聞いて面白そうだと思ったから議題にするよう坂内くんに言ったんだもの」
朱里「翔太くんから?」
翔太「その話、僕の兄貴の友達が体験した話なんすよ」
朱里「お兄さんの友達が!?」
真希江「いい知り合いを持ってるわね、嘉神くん。 これからも話題提供、期待してるわ」
翔太「まかせてください!」
  (なんか変な方向に話が進み始めた・・・)
坂内部長「そろそろ本題に戻っていいか? もう1つの怪談を今から話そう」
「はい!」
坂内部長「こっちの話は池にまつわる古い怪談だ」

〇農村
  その昔、真田里町がまだ
  真田里村と呼ばれていた頃の話。
  この村の外れに大きな池があった。
  その池は何も無い村の子供達にとって
  魚を捕ったり、泳いだりできる
  恰好の遊び場だった。
  ある日のこと。
  その日は真冬で気温が低く、
  池には氷が張っていた。
  子供達は冬は危ないので
  池で遊ぶことを禁止され、
  池から少し離れた神社で
  ボール遊びをしていた。
  その時、子供達の1人が蹴ったボールが
  神社の境内を出て、
  石段を転がり落ちはじめた。
  慌ててボールを取り損ねた少年が
  その後を追いかける。
  だが、ボールは転がり続け、
  氷が張った池の上で止まった。
  ボールを追いかけることで
  精一杯だった少年は
  そこが氷の上であることにも気づかず、
  池の上に足を踏み出してしまう。
  案の定、氷は割れ、少年は冷たい水の中に
  放り出された。
  少年の悲鳴を聞き、慌てて他の子供達が
  駆けつけると、
  そこには必死にもがく少年の姿があった。
  大変な事が起きた、と気づいた子供達は
  大人を呼びに行く者
  少年を手繰り寄せられる枝木を探す者
  それぞれが必死に少年を助けようと
  行動を開始した。
  だが、子供達の助けを聞いて
  大人が駆けつけた時には
  その努力も虚しく、少年は
  凍るように冷たい水の中深く
  沈んだ後だった
  この亡くなった少年を弔うために
  池のほとりに一体のお地蔵様が建てられた
  それから数年後
  真田里村が再開発されることになり
  このお地蔵様の移設の話が持ち上がった
  大きかった池は
  住宅地開発のために縮小され、
  お地蔵様は神社のある山の入口に
  移された
  そして近隣の村々と合併し、
  真田里町へと名前を変えたこの地域で
  密かに噂話が囁かれるようになる
  夜になるとお地蔵様がいなくなる。
  もしお地蔵様がいなくなった時は、
  池の周りで写真を撮れ
  そうすればお地蔵様が写るだろう。
  その横に佇む少年の霊と共に⋯

〇学校の部室
「・・・・・・」
坂内部長「とまあ、こんな話だ」
真希江「その話は初めて聞いたわね。 坂内くんが調べたの?」
坂内部長「ああ。 俺はばあちゃんにこの話を聞いたことがあってね」
坂内部長「本当にそんな話があったのかどうか、両親や近所のお年寄りにも聞いてみたんだ」
坂内部長「それによると、40年くらい前まではあの池の怪談として語り継がれていたらしい」
坂内部長「それと、もう1つ言い忘れたことがあってね」
凛花「まだあるんですか?」
坂内部長「お地蔵様と少年の霊は、ネガフィルムにしか写らないらしい」
翔太「ネガフィルム?」
真希江「色が反転して写るフィルムのことよ」
真希江「光にかざせば写した内容を確認できるみたいだけど、そのままだと何が写ってるのか、はっきりと分かりづらいみたいね」
坂内部長「そう。 だからネガフィルムで撮った写真は必ず現像する」
坂内部長「だが、現像した写真にはお地蔵さんと少年の姿は写っていないらしい」
坂内部長「なかなか興味深いだろ?」
凛花「それが本当ならオカ考サイトに載せるにはピッタリの話ですね!」
朱里「そういえば、そのお地蔵様って今もあるんでしょうか?」
坂内部長「それはまだ確認していなくてね」
坂内部長「ちょうど明日は土曜日で学校も休みだ」
坂内部長「みんなで探しに行ってみるのはどうだろう」
真希江「あら、楽しそうね いいじゃない」
朱里「私も賛成です」
凛花「じゃあ私、このカメラ持って行きますね」
翔太「あ、あのぉ・・・ 明日は陸上部の練習に参加するって言っちゃって・・・」
坂内部長「もちろん陸上部を優先させてくれてかまわない。急な話だからな」
翔太「すみません」
翔太「僕も行きたかったなあ」
朱里「翔太くんはフィールドワーク大好き人間だもんね」
翔太「だって遠足みたいで楽しいじゃないっすか」
坂内部長「それじゃあ、明日は嘉神以外の4人で調査だな」
坂内部長「明日の10時に真田里町5丁目のバス停前で集合だ」
「了解!」

次のエピソード:第二章 お地蔵様の謎

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