四話 杏の想い(脚本)
〇男の子の一人部屋
中型ギャラジー襲撃から二日。
この二日間ギャラジーからの侵略はなく、エージェントの俺たちは暇を持て余していた。
黒沼 晶「あっ」
黒沼 晶「あーー、やっちまった。 またゲームオーバーかよ・・・」
俺はこの二日間、日課の筋トレを除いて部屋にこもりきりだった。
先日届いたゲームをやり込んでいたからだ。
黒沼 晶「集中力も切れてきたし、今日はゲームをやめてジムで過ごすか」
〇トレーニングルーム
中井 雛「杏ちゃん、無理はダメだからね!」
渋屋 杏「分かっています。もうあいつに介抱されるのだけは嫌ですから」
中井 雛「もう、すぐそういうこと言う!」
黒沼 晶「先生、おはようございます」
中井 雛「晶くん! おはよう!」
渋屋 杏「・・・」
渋屋には明らかに嫌な顔をされている。
あっちに行けと言わんばかりだ。
黒沼 晶「俺はあっちで筋トレしてます」
中井 雛「分かった。ごめんね、晶くん」
渋屋 杏「先生は謝らないでください」
渋屋 杏「全部こいつの自業自得なんですから」
中井 雛「杏ちゃん、晶くんは命の恩人なんだよ!? 分かってるの!?」
渋屋 杏「私なんか救ってくれなくても良かったのよ!」
「!!!」
ズキリ、とその言葉が胸に突き刺さった。
今まで何回も言われたことがある言葉だ。
その言葉を聞くたびに、人を救う理由が分からなくなる。
黒沼 晶「やめろ、それ以上言うな・・・!」
渋屋 杏「どうして私なんかを救って、どうして・・・!」
中井 雛「杏ちゃん」
中井 雛「約束したよね? そのことは言わないって」
先生の声は鋭く、冷たかった。
先生がこんな風に怒る姿は初めて見た。
渋屋 杏「ご、ごめんなさい、先生・・・」
中井 雛「ごめんね、晶くん」
黒沼 晶「い、いや、大丈夫です」
中井 雛「杏ちゃんも、色々事情を抱えてるの。 人を助けたいという思いや、彼女の実力は確かなんだけどね」
黒沼 晶「はい、それは分かってます。 あいつもあいつなりに努力している」
中井 雛「分かってくれて嬉しいよ。 辛い思いをさせてしまうかもしれないけれど・・・杏ちゃんのこと、お願いね」
中井 雛「でももちろん、自分の体や心も大切にすること!」
黒沼 晶「はい!」
〇オフィスの廊下
黒沼 晶「・・・」
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