読切(脚本)
〇荒野
ワイルドエース「今日こそ決着を付けるぞ、デストロイド・ダイヤ!」
デストロイド・ダイヤ「それはこちらの台詞だ、ワイルドエース!」
正義と悪が対峙する。よくある光景、セオリー通りに戦いは続いて・・・・・・必殺技で決着がつくいつもの日常。
「「「うおおおおおおおおお!」」」
この日も、その筈だった。
〇荒野
お互いの必殺技が決まる瞬間、世界は停止した。
「「何・・・・・・!?」「バカな・・・・・・!?」」
困惑する二人を他所に、光が溢れ・・・・・・二人はそれに飲まれた。
〇古い畳部屋
二人は少し寂れた部屋に立っていた。
だが、それよりも二人に驚愕を与えたのは一枚のタブレットにうつる画面。
自分達が漫画の中で戦っている光景。
二人は、その部屋の主『東・B・円』というペンネームを名乗る女から自分達が彼女の描いた漫画の登場人物であることを知った。
二人の感想は『そういうこともあるんだな』と呑気なものだった。
ダイヤ(実に不可思議だが、事実と認めるしかない)
ダイヤ(それよりも、この女をコントロールして漫画の続きを我らデストリアンの有利になるように書かせれば・・・!)
護世武「おいダイヤ、まさかデストリアンの有利になるような内容を書かせようとは思ってないよな ?」
ダイヤ「そ、そんなわけないだろ!(なぜバレた!?)」
護世武「俺達の決着は正々堂々と決めるべきだ」
護世武「それに今は、円の事が重要だ・・・」
円は今スランプに陥っていた。続きが書けなくなって数ヶ月、そのせいで二人の世界は停止したのだった。
〇古い畳部屋
〇古い畳部屋
〇古い畳部屋
〇古い畳部屋
二人が円の部屋に来て数日後、円は未だに筆を取れずにいた。
物語はクライマックス、それ故に終わらせる事に恐怖を抱いてしまい・・・彼女は何も書くことが出来なくなったのだ。
ダイヤ「それなら、描かなくてもいいんじゃないか?この後の続きはデストリアン大勝利!絶望の未来へレッツゴーって感じで!」
護世武「だからぁ、やめろっつってんだろ!」
ダイヤ「だがどうする?どちらにせよ彼女に続きを描かせないことには何も始まらんぞ」
護世武「そう、どうするかだよなあ・・・」
ダイヤ「そうだ!ここはフェアに彼女を惚れさせることで決着をつけるのはどうだろうか?」
ダイヤ「正々堂々、彼女が好きになった方が有利な漫画を描いてもらう。これならいいだろう」
護世武「いや、その理屈は・・・」
ダイヤ「決まりだな!」
護世武「ええ・・・」
護世武(マジでやるのか・・・?それに、それでスランプが治るとは思えないけど)
〇遊園地の広場
〇見晴らしのいい公園
〇ゲームセンター
〇劇場の舞台
〇古い畳部屋
ダイヤ「ふむ、次はどこにいこうか。円は行きたいところはあるか?」
東・B・円「・・・」
護世武「大丈夫か?顔色悪いけど・・・」
東・B・円「・・・ねぇ、なんで二人は決着をつけたいの?」
東・B・円「流石に、二人が私に続きを描いてほしいから良くしてくれるのはわかるよ・・・でも」
東・B・円「続きを、終わりを描くってことは物語が終わって・・・二人の世界がもう終わっちゃうってことなんだよ?」
東・B・円「それなのに、どうして・・・」
ダイヤ「・・・」
ダイヤ「俺はお前に悪として産んでもらった。そして、武は正義として産まれた」
ダイヤ「俺達だけじゃなく、円みたいな人間にもいつか終わりは来る・・・来なきゃならない・・・」
ダイヤ「その結果がどうあれ、ヒーローも悪の組織も決着をつけて終わらせなければならない」
デストロイド・ダイヤ「俺が勝てば世界はデストリアンの物となる。デストリアンにとっての楽園が出来るのだ」
護世武「俺も、デストリアンと決着をつけて・・・ワイルドエースじゃなくてただの護世武に戻らなくちゃいけない」
護世武「ヒーローになりたいから産まれたんじゃない。平和な世界にしたいから、ヒーローになったんだ」
ワイルドエース「俺達、ヒーローの本質は自己否定だ。俺達のいらない世界の為に、俺は戦うんだ」
いつしか、二人の姿はこの世界に来る時の形・・・怪人とヒーローに変わっていた。
デストロイド・ダイヤ「ヒーローか」
ワイルドエース「悪の怪人か」
ワイルドエース「善か悪かなんてのは紙一重だ。それを見た人や、描いた人が出した答えがそれなんだ」
デストロイド・ダイヤ「そして、その決着もな」
ワイルドエース「君は終わらせるのが恐くなったんじゃない。正義か、悪か、どっちかを選べなくなったんだ」
デストロイド・ダイヤ「だけど、今ここで俺達が喋っているということは・・・もう答えは出てるんだろう?」
東・B・円「!」
東・B・円「・・・」
東・B・円「・・・私は、二人と別れたくない。ずっと一緒にいたいよ」
東・B・円「だけど、わかった」
東・B・円「描くよ、私。私だけの答えを」
ワイルドエース「ああ、楽しみにしてる」
デストロイド・ダイヤ「デストリアンにとっていいラストならなおいいが、お前の答えなら納得しよう」
この世界に来たときと同じように、光に包まれて二人は消える。
東・B・円「さよなら、私の大好きな人達」
〇宇宙空間
正義と悪の違いは、コインの表か裏かでしかない。
裏向きの人には、裏が表で表が裏で
それこそ、薄皮一枚紙一重
運命によって、あるいは描いた誰かによって宙に舞い・・・回っていく。
そして今、一つの世界で一枚のコインが地面に落ちようとしていた。
〇荒野
「「「うおおおおおお!」」」
必殺技同士のぶつかりあいでは決着がつかず、ヒーローと悪の怪人は己の拳をぶつけ合い戦っていた。
一撃、強いのが入った音が荒野に響く。その後地面に倒れる音ももちろんセットで・・・
そして、最後に立っていたものは・・・!
一人としていなかった 。
「「「いやいやいやいや!!!」」」
〇古い畳部屋
デストロイド・ダイヤ「今のは普通決着つけるところだろ!?引き分けって何?何なの?」
ワイルドエース「格好つけた台詞が無駄になったんだが!?どういうことなんだ円!」
東・B・円「私、決めたんだ」
東・B・円「決着はつけないってのが私の決着ってことで~」
東・B・円「正義と悪の戦いは、これからだ!みたいな?」
デストロイド・ダイヤ「打ち切り漫画かよ!?」
ワイルドエース「そんなオチで・・・いいわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
〇宇宙空間
まあ、小難しいことを色々書いたが・・・コインが横向きに落ちることも案外あるのかもしれない
ここから、どっちに倒れるかは・・・・・・ここで書くのは無粋ということにしておこう。
つーかんじで、お願いします
歴史を見れば、ある意味正確なラストでした。(大体戦国時代にしても三国志を見ても、強すぎる国は滅びました)
作者の苦悩がわかるような気がします。クライマックスはどうしたら良いか、続編を作るか、などアイデアと作品の結果が全てが命です。
お話考えてると悩みますよね。
私の場合は先にクライマックスと結末を考えておいてからお話作ってます。
でも、彼女が選んだんだから、この終わり方でいいと思います。
作者ですからね!