心読みとひなたについて

yu-ki

心読みとひなたについて(脚本)

心読みとひなたについて

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〇田舎の公園
  公園に親子が来た。
  子供は何か親に訴えたいようだ。
  お菓子を買ってもらえなかったのか。
  子供の心にお邪魔するかな。

〇田舎の公園
  今日は休日で朝からずっと家で過ごしていた。気分転換に公園に来てみた。
  青空を眺めてベンチに座っているといい気分だ。

〇田舎の公園
  オレは人間の影にオレ自身を同化させ、影の主の心を読むことができる。他の人間に同化している間、オレの肉体は存在するが

〇黒
  心がない、いわば抜け殻のような存在になる。全くおかしな能力を生まれ持ったものだ。

〇田舎の公園
  もともとオレは無口でクラスでも目立たないタイプだ。一日中人と話さないことだってある。
  空気みたいな存在だろうな。

〇田舎の公園
  そんな俺だからオレが抜け殻のように見えたところで気にする奴なんかいない。先生だっていつものことかと気にしない。
  さて、その子の影になり心を読んでみると
  するかな。
子供「ぼくね、おうたをおおきなこえでがんばったんだよ。でも、みんながぼくのこえだけおおきいってわらうんだ。がんばったの・・・」
  そうかそうだよな、認めてもらえないのは悲しいよな、わかる、わかるぞ。きっといつかその頑張りがむくわれるさ。

〇教室
  授業が退屈な時、グランドで授業を受けている生徒の影になり替わってそいつの心を読んで楽しんでいる。

〇田舎の学校
  サッカーでゴールを決めた子の心はたいそう晴れやかでなり替わったオレの心も高鳴った。

〇田舎の学校
  オレは脚も速くないが、短距離走で一位になった奴の影になり替わったとき、走っている間、前方に人がいない爽快さを味わった。

〇田舎の学校
  校長先生が全校生徒を前に訓示を述べるとき、やっぱり校長先生も人前ではドキドキするんだとわかって少し安心した。

〇黒
  しかし、人の影になり替わって一時楽しんでも所詮それは人の感情でしかなく、オレの心は空っぽのままだった。

〇黒
  何かをしたい意欲も湧かず、将来何をしたいのか、どんな人間になりたいのかわからずただ何となく日々を送っていた。

〇教室
  新学期になり、オレたちは新しい教室へ移り、ほかの生徒のおしゃべりが聞こえた。
  (転入生が入ってくるんだって)

〇教室
  担任の先生がまず教室に入って来て、その後から、色白の髪の長いきりっとした面持ちの女の子が教室に入ってきた。

〇教室
ひなた「初めまして。私の名前はひなたと申します。どうぞよろしくお願いします」

〇教室
  その子の声は高く細いけれどよく通った。気品ある態度で教室はピンと張り詰めた空気になり、その後歓迎の拍手が
  起こった。

〇教室
  オレは基本、今まで人に興味を持つことがなかったが、この子はどんな子でどんなものが好きで何を考えているのか気になった。

〇教室
(ひなたはオレの能力をどう思うだろう。 オレはひなたにどう見えているのだろう。 不愛想だと思っているかな・・・)

〇教室
  なんだかいつものぼんやりした気持ちがすっかりどこかへ吹き飛んだようで、周りの景色も華やいだものに見えた。

〇教室
  オレは自分の気持ちの変わりように驚いていた。一人の人間の存在でこんなにやる気がでたり気持ちがあがったりするものなのか。
  午前中の授業をオレにすれば真面目に受け、お昼休みに突入した。
  女子がひなたの周りに集まっていたが、
  うまい具合に人がいなくなるのを見計らい、校舎を案内することにした。

〇田舎の学校
ゆうき「今日は天気もよく風も良い具合だ。オレが校舎を案内するよ」
  オレがこんなふうに自分から話しかけて
  自分で行動を起こすなんて・・・。自分でもそのことに驚いた。

〇田舎の学校
  オレたちはお昼休みの自由な雰囲気の中、
  あちこちと校舎を巡った。朝から緊張していたのかひなたは外へ出て伸びをした。

〇田舎の学校
  伸びをしたひなたの周りで光がきらきら踊るようだった。それを見てオレまで伸びをしたように気分が晴れ晴れとしていた。

〇教室
ゆうき「お前さ、家の方向が同じだったら途中まで一緒に帰らないか」
  オレは平静を装いつつも緊張でどぎまぎしながらやっとのどの奥から声を出した。
ひなた「ええ、ありがとう。まだ道に慣れてなくて。一緒に歩いてくれると心強いわ」
  なんて、素敵な言葉を返してくれるんだろう。家まで送り届けるさ。任せておきな。

〇田舎の公園
  幸い、オレの家とひなたの家は近いとわかり、学校のことやよく聞く音楽など話しながら下校した。
  オレはもちろん話下手だがひなたもそれほど口数は多くないようだ。でも黙っていてもそれで空気が重くなることはなかった。
  ひなたは時々達観しているような表情を見せたり言葉も大人びていて、同世代の女子に比べてだいぶお姉さんのように見えた。

〇田舎の公園
  季節も夏になり、ひなたと毎日下校する日々を送っていた。将来どんな職業に就きたいかとか進路とかお互いのこともわかってきた。

〇田舎の公園
  オレは思った。ひなたにならオレの能力を打ち明けてもいいんじゃないか。人に話しかけることを自分で諦めていたオレが・・・
  オレがこんなに積極的に行動している。
  きっと明日も良い日になると思わせてくれる人間に出会ったんだ。時期を見て話そう。

〇田舎の公園

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コメント

  • その特殊な能力のために、ラストは犯罪やそれに類する行為に帰結するかもと思いながらドキドキ読んでいたのですが、キレイに着陸してホッとしましたw 能力は、使う人の心根とその理解者次第ですね!

  • 特殊な能力を持ってても、日向ちゃんに会う前はせっかく能力を持て余しているように見えましたが、ひなたちゃんと出会ってからはなんだかいい方向に変わってきていて、ほっこりしました。

  • 彼がひなたさんに出会い、成長していくところがすごくよかったです。
    運命の出会いだったのかもしれませんね。
    人の心を読んで悪用することもなく、幸せを同じように感じているあたり、彼の人柄が出てます。

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