怪人が溢れるこの世の中で

りるか

怪人が生まれる(脚本)

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りるか

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〇黒背景
井原 正「これは、怪人で溢れた世の中のお話」

〇電車の中
電車怪人「いやー優先席空いてて良かったわー」
電車怪人「荷物多くて大変だったんだよね」
老人「すみません・・・私もう年寄りなので席を譲っていただけませんか?」
電車怪人「は?何で」
老人「もうヨボヨボで立ってるのが辛くて・・・」
電車怪人「普通に嫌だけど」
老人「そこの荷物詰めたら座れるじゃない・・・」

〇コンビニの店内
コンビニ怪人「おいっ!いつまで待たせるんだ!!早くしろっ!」
店員怪人「も、申し訳ありません💦 実はレジが壊れてしまいまして・・・」
コンビニ怪人「そんなの知ったことかっ! お前が悪いんだろ!!」
店員怪人「すぐに何とかしますお待ちください」

〇オフィスのフロア
会社怪人「君はこの作業に一体どれだけ時間がかかるんだ!?」
部下怪人「・・・すみません」
会社怪人「こんなの誰にでもできる簡単な仕事だろう!?」
部下怪人「・・・はぁ。わかりました、頑張ります」
会社怪人「何だそのため息は!?反省してるのか!?」
部下怪人「ちっ」
井原 正「・・・」

〇黒背景
  怪人じゃないと、生きていけないこの世の中

〇大企業のオフィスビル
井原 正(・・・雨か)
井原 正「傘、忘れたな」
小名木 良「よっ、帰りか」
井原 正「小名木!」
小名木 良「それ、貸すよ。俺は折り畳みあるからさ」
井原 正「良いのか!?」
小名木 良「この忙しい時期に風邪なんて引いたら大変だろ?そっちの部署も忙しいだろうし」
井原 正「あぁ。じゃあ、ここはお言葉に甘えるよ。ありがとう」
小名木 良「部署が離れてからあまり話す機会もなかったな」
井原 正「そうだな。でもお前は変わってないようで良かったよ」
井原 正(こいつは同期だからそれなりに付き合いは長いけど、出会った時からずっと優しかったな)

〇大教室
社長怪人「今日入社した君たちには、我が社のより一層の発展に誠心誠意尽くすことを誓ってもらう」
社長怪人「そこで、目の前にある紙ににこれからどんな貢献をしてくれるか」
社長怪人「30文字以内で記載してくれ」
井原 正(貢献ねー・・・。これ守れなかったら減給とかされんのかな)
井原 正(とりあえず、何かそれらしいことでも書いとくか)
  カチカチッ
井原 正(・・・ん?)
  カチカチカチ
井原 正(ペンが壊れて出てこないっ!?)
井原 正(さっきまでは普通に使えてたのに!!)
社長怪人「あと1分後に回収する。もう殆ど書き終わってるか?」
井原 正(ヤバイ!!てか早くないか!? 早く他のペンを──)
井原 正(ペンが投げられてきた・・・?でもどこから?)
小名木 良「それ、使えよ」
井原 正「えっ」
小名木 良「良いから早く」
井原 正「ありがとう」

〇オフィスの廊下
井原 正「あのっ!」
井原 正「さっきはありがとう。すごく助かった。これ、返すよ」
小名木 良「いや、気にするな。カチカチしてたからまさかとは思ったけど、気付けて良かった」
小名木 良「俺は小名木 良。今日から一緒に働く仲間だ。よろしくな」
井原 正「俺は井原 正。これからよろしくな、小名木」
小名木 良「あぁ。所で井原。そのペンは君にあげるよ」
井原 正「えっ、なんで!?見た感じ、まだそんなに使ってないペンだろうし・・・」
井原 正「あっ、もしかして潔癖症とかだったか!?悪い、新しいの買って返すから!」
小名木 良「アッハッハ。違うよ。今日はまだこれから書類の記載とかあるだろう」
小名木 良「それに、友好の証として受け取って欲しいんだ」
井原 正「・・・わかった。そういうことならありがたく頂くよ」
井原 正「じゃあ明日俺が渡すペンも、友好の証として受け取ってくれよな」
小名木 良「分かった。楽しみにしてる」
先輩怪人「いつまでぺちゃくちゃ喋ってんだ!!!!!!!!!!!!うるせーっ!!!!!!!」
「すみませんっ!!!!!」

〇大企業のオフィスビル
井原 正(あのペン、仕事が辛くなった時とかに見ると初心を思い出せて頑張れるんだよな)
小名木 良「俺たちも、もうここに勤めて長いよな」
小名木 良「それにしても、お前があの時に書いた貢献できること、今思い出しても・・・ははっ」
小名木 良「わ、悪い!でも・・・ふっ、笑っちまう」
井原 正「お前まだそのこと覚えてんのか!?」
井原 正「もう忘れたかと思ったのに」
小名木 良「あれが貢献と問われたら微妙な所だが、記憶に残る良い内容だったと思うよ」
井原 正「絶対馬鹿にしてるだろ。そういうお前だって」
井原 正「『家族のために会社から捨てられない位には尽力する』」
井原 正「とか、結構喧嘩腰な内容だったじゃん」
小名木 良「懐かしいなぁ。俺がまだいるってことは、ちゃんと実行できてるってことだよな」
井原 正「はいはい。これからも家族のために頑張りたまえ」
小名木 良「そうだな。お前も頑張れよ」
小名木 良「じゃあ、俺こっちだから。その傘は家族のだから明日返せよ〜」
井原 正「おう。じゃあまたな!傘、ありがと。気をつけて帰れよ」
小名木 良「おう!」
井原 正(あいつは、まだ怪人じゃなくて良かった)

〇大企業のオフィスビル

〇大企業のオフィスビル
  翌日

〇オフィスの廊下
井原 正(さて、傘を返しに行くか)
井原 正(昨年、部署が分かれてから仕事してるあいつみたことなかったけど)
井原 正(きっと上手くやってんだろうな)
井原 正「おっ、ここか」
  ピッ
井原 正「すみません、小名木いま──」

〇オフィスのフロア
小名木 良「おい何してんだ!?」
小名木 良「昨日徹夜してでも終わらせろって言ったよな!?」
井原 正(・・・えっ?)
小名木 良「・・・何でお前はこんな小学生でも分かるようなことが出来ないんだ」
部下「す、すみません!!最近休日出勤も多くてなかなか頭が回らず──」
小名木 良「それは言い訳だろ。無能を理由に仕事を停滞させるな」
部下「も、申し訳ありませんっ!!」
井原 正(よっぽどまずい失態を犯したのか・・・?それにしてもあんな言い方は流石に)
小名木 良「おっ、井原じゃないか。傘を返しにきてくれたのか」
井原 正「っ!あぁ、盗み聞きみたいなことして悪かったな」
小名木 良「こっちこそ気付かなくて悪かったな」
小名木 良「こいつ、本当に仕事の出来が悪くて、俺も手を焼いてるんだ」
部下「・・・」
小名木 良「本当に勘弁して欲しいよ」
井原 正「・・・傘、ありがとな。もうお前に借りないように気をつけるよ」
小名木 良「おう!またな!」

〇オフィスのフロア

〇オフィスのフロア

〇オフィスのフロア
井原 正「・・・じゃあな、小名木」

〇オフィスの廊下
井原 正(そうか。お前は、家族を守るために)
井原 正「怪人になるしかなかったんだな」

〇黒背景
  この世は怪人で溢れてる

〇電車の中
お年寄り「ちょっとアンタ」
妊婦「はい?」
お年寄り「そこ退いてもらえる?私、歳だからもう立ってるのもやっとなのよ」
妊婦「えっ、でもここは優先席なので」
お年寄り「優先席は妊婦専用だってのかい!?年寄りだって座らせなさいよ!」
妊婦「──ですが」
お年寄り「融通の効かない女だね!!もう良いよ!あっちの人に頼むから」
お年寄り「──すみません・・・私もう年寄りなので席を譲っていただけます?」
優先席に座ってた男性「は?なんで」
優先席に座ってた男性(お前散々妊婦さん虐めといて調子良すぎ。荷物だってわざとに決まってんだろ)

〇電車の中
井原 正(切り取った部分だけでは分からない)

〇コンビニの店内
コンビニ店員(あーあ。廃棄弁当持って帰ったのバレて店長に説教喰らうとかダルっ)
コンビニ店員(てか別に捨てられるもん何だから持って帰っても良いだろうがあのハゲっ!!)
コンビニ店員(あーっ!!ムシャクシャするっ!!)
コンビニ店員(ヤベッ!!イラついてレジ殴ったら壊れちまった!!)
客「これ下さい」
コンビニ店員「しょ、少々お待ちください」
客(さっきレジに八つ当たりしてるのを見たし、その前に舌打ちもしていた)
客(前々からコイツはなにかと問題が目立ったからな)
コンビニ店員「ちっ。何でこんなめんどくセーことに・・・」
客「おいっ!いつまで待たせるんだ!!早くしろっ!」
コンビニ店員「も、申し訳ありません💦 実はレジが壊れてしまいまして・・・」
客(壊れたんじゃない、お前が壊したんだ・・・っ!!)

〇コンビニの店内
井原 正(本来怪人じゃない人も、見方次第では怪人になってしまう)

〇オフィスのフロア
井原 正(この世には怪人が溢れてる)
井原 正「誰かにとってのヒーローは、 誰かにとっての怪人だった」

〇大教室
社長怪人「よしっ!紙を左のやつに回せ!一番左のやつは前に持ってこい!」
井原 正「はいっ」

〇白
  会社のヒーローになる 井原

〇オフィスの廊下

〇オフィスのフロア

〇黒
  これは、怪人で溢れた世の中のお話
  運営 タップノベル
  コラボ 東映エージエンシー
  制作 りるか
  
  怪人役 あなた
  ご視聴ありがとうございました

コメント

  • 確かに人は、怪人な一面を持っていますよね…
    私も余裕がなくなると、よく怪人になります。
    特にお腹が空くと…『山月記』って、知ってます?
    ああなります。

  • とても考えさせられる作品でした。
    “自分を肯定するために人を見下す”という行為は、自身の弱さの現れなんだそう。
    私も誰かの怪人になってるかもしれない、とハッとさせられました。
    ヒーローの彼みたいに、強い自分でありたいです。

  • 怪人というものの解釈で、痛烈な社会風刺にドキリとさせられました。生きるということで、ある程度没我的にならざるを得ないこtもありますが、完全に人間性を喪失したら怪人と化してしまいますよね!エンドロールの痛烈な皮肉は胸を刺すようでした!

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