ここが俺(私)の蔵杏大学

萩野 須郷

エピソード11〜交渉〜(脚本)

ここが俺(私)の蔵杏大学

萩野 須郷

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〇地下室
  〜??:?? 聖裁大学 地下室〜
「・・・う・・・」
シキブ「・・・あ・・・頭が痛い・・・ですわ」
シキブ(聖裁大学の魔法使いに連行されている途中、いきなり後ろから頭を殴られて・・・そのまま気を失っていましたわ)
シキブ「それにしても・・・ここは一体・・・ん?」
シキブ「・・・私の身体が・・・椅子に固定されていますわね・・・。しかも・・・」
シキブ(辺りには武器がちらちらと・・・。ここはさしずめ、拷問部屋といったところかしら?)
「・・・ようやく目が覚めたようですね」
レイ「・・・ようこそ。聖裁大学へ」
シキブ「ここが大学の一室・・・ですか。随分物騒ですわね」
レイ「大学はあくまで表向きですから。裏では色々やってますのよ?」
レイ「ここはとある地下の一室・・・。私もあまりこの部屋は好きではないのですが」
レイ「学長から「ここに収容しろ」との命令なので、仕方ないですわ」
シキブ「あなた・・・なぜその学長とやらの言うことを素直に聞けるんですの」
シキブ「あなた自身は、蔵杏大学に恨みなんてないんでしょう?」
シキブ「あなたはあくまで、聖裁大学の魔法使いの一人・・・」
シキブ「蔵杏大学の学長や、リオさんとは何の関わりもないのではなくて?」
レイ「・・・あなたは・・・。聖裁大学と蔵杏大学の因縁を知っていますのね」
シキブ「ええ。蔵杏大学の学長から聞きましたわ」
シキブ「聖裁大学の学長が元々王様で、蔵杏大学の学長とリオさんが、かつてその王族に仕えていたと・・・」
シキブ「ですから、蔵杏大学を恨む者がいるとすれば、それは王族。普通の民衆は流石にこの国まではやって来ないでしょうし」
シキブ「あなたは王族の家来か何かですの?」
レイ「家来・・・ですか。それは違います」
レイ「デパートでの件があって以来、王様は誰も信用できなくなりました」
レイ「あんなに信頼していたバルバロッサ一族から裏切りを受けたんですもの、そう思うのも無理ありませんわ」
シキブ「裏切りでは・・・ありませんわ。学長は・・・リオさんは・・・」
レイ「もしかしたらそうかもしれない。でも、結果的には同じことですわ。リオさんは、王様の孫を置いて行ったのですから」
レイ「聖裁大学の学長には、バルバロッサ一族を恨むだけの理由があるということです」
レイ「そうして、誰も信用できなくなった王様は、自分の一族も疑い始めました」
レイ「そしてついに、王様は自らの手で、自分の一族や家来たちを・・・」
シキブ「随分・・・短絡的な発想をする王様ですわね」
レイ「自分の最愛の孫を傷つけられたんですもの、無理ありませんわ」
レイ「そうして、王国は崩壊。デパートの崩壊が、一つの国の崩壊をもたらしたのです」
シキブ「その王様・・・。ついには、自分の周りから誰もいなくなったんですのね」
レイ「・・・いいえ」
レイ「流石の王様も、手を上げなかった者がいますわ」
レイ「そして、その者は、王様と一緒にこの国に来たんですの」
レイ「今、その子は、聖裁大学の魔法使いの一人として活動していますわ。・・・魔物を操る魔法使いとして、ね」
シキブ「・・・そんなっ・・・まさか、あなたが・・・!」
シキブ「しかし・・・不思議ですわ。誰も信じられなくなった王様が、自分の手を血に染めた王様が、手を出さないなんて・・・」
シキブ「そんな人がいるとするなら・・・王様がかつて溺愛していたという・・・。しかしその子はもう・・・」
シキブ「もしかして、生きてた・・・?デパートの崩壊に巻き込まれて、亡くなったと思っていましたけど・・・」
シキブ「まさか、あなたの正体は・・・王様の・・・ッ!!」
レイ「・・・それはあなたのご想像にお任せしますわ」
レイ「それに、私はこんな話をするために、わざわざこんな好きでもない場所に来た訳ではありません」
レイ「この前、私を追い詰めたあの新入り・・・。そいつについて、知っていること全てを話してもらいますわ」
シキブ「・・・嫌だ、と言ったら?」
レイ「・・・床をご覧なさい」
レイ「・・・ああなりたいなら、話さなくても良いですわよ?」
シキブ「・・・こいつッ・・・!!」
レイ「私たちも、そんなに悠長にはしていられませんの。話すか、話さないか。・・・今ここで、決めてもらいたいですわ」
シキブ「・・・・・・・・・・・・」
シキブ「・・・私は・・・私の答えは・・・もう決まっていますの」
シキブ「話しませんわ。・・・絶対に」
シキブ「私は、自分の仲間を売るようなことはしない」
シキブ「あんたの思い通りに行く訳にはいかない。残念だったな、お嬢ちゃん」
シキブ「何なら、俺の覚悟がどれだけあるか見せてやろう。ほら、ここにいくつか拷問器具があるだろう。片っ端からそれを使ってみろ」
シキブ「俺の意志がどれだけ堅いか。お前たちに思い知らせてやる」
レイ「・・・なるほど」
レイ「流石は・・・蔵杏大学の裏ボスと言われているシキブさんですわね」
レイ「あなたなら、そう言うだろうと思っていました」
レイ「安心なさい。私はあなたを痛めつける気はありません」
レイ「あなたには、痛みで攻めても効かないだろうと思っていましたし」
レイ「ですので、違ったアプローチをしますわ」
シキブ「違ったアプローチ・・・ですって?」
かわいい犬「ワンワン!!」
シキブ「・・・・・・わ・・・・・・わ・・・・・・」
シキブ「わんちゃんんんんんんん!!!!」
シキブ「な、なんてかわいらしいんですの、この子・・・。毛がもふもふで、そのつぶらな瞳・・・」
レイ「・・・シキブさん。確かあなた、犬が大大大好きなんですわよね?」
レイ「でも、両親が動物アレルギーなので、飼えない・・・と聞きましたけど」
シキブ「そ、そうなのですわ」
シキブ「私は全然平気なのですけれど。両親は全身にじんましんは出るわ、鼻水は止まらないわで大変なのですわ」
シキブ「なので、うちは動物を飼うのは禁止されていますの・・・」
レイ「でも、あなたは今一人暮らしをしている。飼おうと思えば飼えるはずですよね?」
シキブ「それはそうなのですけど。私はまだ大学生ですし、一つの命を預かるという勇気が出ないのですわ」
レイ「・・・そんな、もったいない」
レイ「この子は現在、保健所で保護されていますの」
レイ「でも、引き取り手が見つからなくて。・・・近々、殺処分される予定なんですのよ」
シキブ「・・・な、なんですって・・・」
レイ「あなたは、そんなこの子を見捨てるんですか?大学生だから。勇気が出ないから。そんな理由で、この子を見殺しにするんですの?」
シキブ「そんなっ・・・そんなことはいたしません。そういうことならば、私が・・・」
レイ「おっと。私の話はまだ終わっていませんわ」
レイ「例の蔵杏大学の新入り。そいつについて話してくれなければ・・・この子は渡しませんわよ」
シキブ「な・・・何だと・・・」
シキブ「ふざけるな・・・そんな・・・命を弄ぶような真似しやがって・・・ッ!」
レイ「・・・違います。私はただ、交渉しているだけです」
シキブ「そんな話には乗りませんわ。どこの保健所で保護されているか調べれば、私が直接この子を引き取って・・・」
レイ「無理ですわよ」
レイ「あなたは今拘束されている。その状態でどうやって調べるんですの?」
シキブ「・・・くっ・・・!!」
レイ「・・・では、もう一度、あなたに問いましょう」
レイ「もし新入りについて話してくだされば、この子はあなたが引き取ることができます」
レイ「しかし話さないならば・・・。この子は、殺処分行き。絶望のまま一生を終えることになるでしょう」
レイ「・・・どちらでも、お好きな方を」
シキブ「わ・・・私は・・・仲間を売ったりなんて・・・」
かわいい犬「・・・クウン・・・」
シキブ「・・・ううっ・・・」
シキブ「そんな目で、見つめないでくださいましっ・・・!」
シキブ「・・・・・・・・・・・・わかりましたわ」
シキブ「上田さんについて・・・私の知っていることを、話しましょう。嘘偽りなく、ね」
シキブ「その代わり、この子はもらいます。・・・もしこの約束を反故したら・・・」
レイ「・・・安心なさい。私は約束は守りますわ」
レイ「ちゃんと話してくだされば、ね。ではまず、その上田とか言う奴の魔法について話してもらいましょうか・・・」

〇地下室
シキブ「・・・という訳で、上田さんは魔法を浴びることによって、その魔法をコピーすることができますの」
シキブ「ただし、魔法が使える時間はタイムリミットがありますのよ」
シキブ「タイムリミットはおそらく夜の12時・・・。まだ確証はないですが、ね」
レイ「なるほどなるほど。タイムリミットですか」
レイ「これはこれは良いことを聞きました」
レイ「・・・では、以上で結構ですわ。貴重な情報、ありがとうございました」
レイ「これからあなたを固定してる器具を外しますが・・・くれぐれも逃げたり、私に危害を加えないでくださいね」
レイ「そんなことをしたら、あの犬は渡しませんわよ」
シキブ「・・・ちっ。あなたのことを一発殴ってやろうかと思ってましたのに」
レイ(・・・危ない危ない)
かわいい犬「キャンキャン、キャンキャン!!」
シキブ「まああこの子・・・私の足にすりすりしてますわよ〜!飼い主が誰かわかってるんですのね!!」
レイ「はいはい、ノロケはもう良いですから。・・・はい、あなたを椅子から外しましたよ」
シキブ「わんちゃん〜〜〜!!」
かわいい犬「キャウウウン・・・」
シキブ「はああもふもふ・・・癒されますわね・・・」
シキブ「ほんと、殺処分にならずに済んで良かったですわ」
レイ「・・・あ、そのことなんですけどね」
レイ「確かに、この子は保健所に保護されてて、もうじき殺処分される予定でした」
レイ「しかし、あなたが引き取らなくても、私が引き取るつもりでいましたのよ」
シキブ「・・・え?」
レイ「私も犬を飼いたいと思っていて、でもまだ飼う勇気がなかったんですけど」
レイ「殺処分になると保健所の人から言われて。それなら私が引き取る、って決心したんですわ」
レイ「まあ、結局あなたが引き取ることになってしまいましたが。ちょっと残念ですわ」
シキブ「・・・あなたって・・・」
シキブ「意外と、良い人なんですのね」
レイ「なっ!「意外と」は余計ですわよ!!」
シキブ「生き物を飼うなんて、生半可な気持ちではできないことですわ。それなのにあなたは飼うと決心した」
シキブ「中々できないことだと思いますわよ」
レイ「うっ・・・うるさい!あんたは結局、仲間を売ったくせに!」
シキブ「そうですわね。・・・でも」
シキブ「上田さんは、きっと何とかしてくれる。例えあなたたちに上田さんの情報を漏らしても」
シキブ「・・・だから私は、わんちゃんを救う方を選びました。わんちゃんを救えるのは私だけだと思っていましたからね」
レイ「ふ、ふん、屁理屈言わないでくださいよ!ただ単に犬が飼いたかっただけでしょう!」
シキブ「・・・ふふ、そうかもしれませんわね」
レイ「・・・ちょっと、さっきから何ずっとニヤニヤしてるんですか、気持ち悪い」
シキブ「何だか、あなたをただの悪い奴だとは思わなくなってきましたので。それが嬉しくて、私は笑っているのですわ」
シキブ「・・・それに。あなたはさっき、私を傷めつけるつもりはない、と言っていましたけど、そんなことはないはず」
シキブ「聖裁大学の学長は、本当は私を拷問するつもりで、ここに収容しろとあなたに命令したのではなくて?」
レイ「・・・・・・・・・・・・」
シキブ「拷問しないなら、何もこんな部屋じゃなくて良い。私の身体を拘束する必要もないと思いますの」
シキブ「拷問せず、別の方法で私に話させようとした。・・・それは、あなたなりの精一杯の、王様に対する抵抗ではなくて?」
レイ「・・・証拠も無しに、べらべらと・・・」
レイ「私は、あなたを追い詰める一番良い方法を思いついただけですわ」
シキブ「・・・そうですか」
シキブ「もし、あなたが王様ではなく、バルバロッサ学長と一緒にいたのなら。・・・もっと優しい子に育っていたかもしれませんわね」
レイ「・・・ふざけたことを。誰があんな裏切り者のところに・・・」
シキブ「デパートが崩壊したあの時。本当にあなたは、リオさんが意図的に「置いて行った」と思っていますの?」
レイ「・・・・・・その話はやめなさい」
レイ「あの子の気持ちはどうであれ・・・私は置いてかれた。そのせいで、傷ついた」
レイ「このマスクの下にも、傷が残っている。一生消えない傷だと、医者に言われましたわ」
レイ「服の下も言わずもがな。私はもうボロボロなんですの」
レイ「あの日から、私の心と身体には一生治らない傷がついた。・・・私はそれが許せないのです」
レイ「私はこんなに傷ついているのに、あの子はピンピンしてて・・・のうのうと生きてる・・・。こんな・・・こんなことって・・・」
シキブ「それは違いますわ」
シキブ「リオさんは、ずっと苦しんでいる。自分のせいで友達が傷ついたと・・・」
シキブ「あなた方は一度、じっくり話し合うべきですわ。私がその場を設けても良いですわよ」
レイ「・・・、無理、ですよ」
レイ「そんなこと、王様が認めません」
シキブ「どうして・・・どうしてそこまで、王様のことを・・・」
レイ「あの方だけが・・・あの方だけが、私の味方だった・・・」
レイ「誰からも見捨てられた私を・・・ここまで育ててくれたんですの・・・」
レイ「私には・・・その恩を返す「義務」があるんですのよ・・・だから・・・」
シキブ「・・・まだ広い世界を知らないお嬢さん、覚えておきなさい」
シキブ「どれだけ大切な人でも・・・お世話になった人でも・・・。その人が道を踏み間違えているのなら・・・」
シキブ「私たちは、その道を正さなければなりません。例えそれが、自分の身内だとしても・・・ね」
シキブ「それが相手を救うことでもあるんですの」
レイ「・・・・・・相手を・・・救う・・・」
シキブ「あなたの王様は、間違ったことをしていますわ」
シキブ「それは、あなたも既に気づいているはず」
シキブ「犬を救う決心を持ったあなたなら。王様に立ち向かう勇気も・・・持てるはずですわ」

次のエピソード:エピソード12〜少女よ、前を向け〜

コメント

  • シリアス回の次の今回は、ヒューマニティ溢れる素敵な回になりましたね!シキブ先輩カッコイイ!
    (でも本当は、わんちゃんに気持ちを奪われていましたw)

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