この世の女は俺のママ!

危機綺羅

3.無力なママではいられない。その2(脚本)

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〇荒地
「人がいずれたどり着く場所の一つに、 ”死の国”というものがあります」
「そこではいつも雨が降っており、 辺りには朽ちた道具が散乱していました」
「降っている雨も、 ただの雨ではありません」
「木々を枯らし、土を溶かす、 口にすれば毒となる呪いの雨でした」
「なにもしなければ、雨に打たれ 人々は弱り死んでしまうでしょう」
「しかし人々は諦めませんでした」

〇荒野の城壁
「人々は協力し、苦心の末、 雨をしのぐ建物を作りました」
「呪いに打ち勝ち、手に入れた楽園の中で 人々はいつまでも平和に暮らしました」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「──けれど、今も雨は降り続いています」
クロシカ「良い子は楽園に入れますが、 悪い子は・・・」
クロシカ「楽園の外で、雨の中をさまようことに なるかもしれません・・・!」
シタラ「・・・」
クロシカ「──というお話です 有名な物語の一つですね」
シタラ「あの・・・」
クロシカ「なんでしょう?」
シタラ「その絵は?」
クロシカ「絵があった方がわかりやすいと 思いまして・・・」
シタラ「ちょっと絵が気になって、 話に集中できないというか・・・」
クロシカ「そうですか? 子供たちからは、 評判が良いのですけど・・・」
クロシカ「リシマがもっと小さいころなんて、 見るたびにキャーキャーと喜んで──」
シタラ(それは悲鳴なんじゃ・・・?)
シタラ「あ、あの! それでその物語は、 降物とどういう関係があるんですか?」
クロシカ「おっと、ごめんなさい・・・ 話がそれていましたね」
クロシカ「では、降物について絵を使い説明を──」
シタラ「あの、絵は一旦置いてもらって・・・」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「”降物”とは金属や未知の素材で作られた 道具で、空から降ってくる物です」
クロシカ「前触れなく大量に降り注ぎ、 そこに山を作ってしまうのです」
シタラ「や、山? そんなに降ってくるんですか?」
クロシカ「村や町が埋もれてしまうほどです まさしく、山のように降りますから」
クロシカ「──その降物でできた山のことを、 多くの人は”スポット”と呼ぶんです」
シタラ「・・・町とか、元々あった場所を 潰すから”呪い”なんですか?」
クロシカ「それもあります。ただもっと、 直接的な理由があるんです」
クロシカ「降物が降ってくる時、 そこには一緒に”雨”が降るんです」

〇荒野
「──物語と同じように木々を枯らし、 土を溶かし、毒となる”呪いの雨”が」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「雨が止むころには、降物が降り積り、 しばらくすれば草も生えなくなります」
クロシカ「人々も去っていき、降物だけが残る そうしてできるのが”スポット”なんです」
シタラ「そんなの、まるでさっきの話の・・・」
クロシカ「”死の国”のようですね 実際、故郷では私もそう教わりました」
クロシカ「降物は死の国から降ってきたもので、 それは呪いに違いないと」
クロシカ「──そして、そんな呪いを集めることを 生業にしている人もいます」
シタラ「・・・アルさん?」
クロシカ「ええ、彼がここを訪れたのも、 最近できたスポットへ行くためですから」
シタラ「最近? この近くにですか!?」
クロシカ「幸いにも、人は住んでいませんし、 水源にも影響がない場所でしたけど・・・」
クロシカ「呪い──降物は非常に恐ろしく、 人の手には余るものです」
クロシカ「なにが起こるかわかりませんから、 シタラちゃんも近づかないようにね?」
シタラ「わ、わかりました・・・」
シタラ(降物とかスポットって、 そんなに危ないものだったんだ・・・)
シタラ(──でも、降物に関しては 私が思ってたのと印象が違うような・・・)
クロシカ「──シタラちゃん」
シタラ「はい?」
クロシカ「その、枕元にあるのって・・・?」
シタラ「ああ、これはアルさんが──」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「触っちゃダメ!」
シタラ「ど、どうしたんですか?」
クロシカ「早くそれから離れて! いい? ゆっくりとここから出るの」
シタラ「え? あの、クロシカさん・・・?」
クロシカ「シタラちゃん、落ち着いて聞いてくれる?」
クロシカ「そこにある物、それは”降物”なの!」
シタラ「・・・え、これが?」
クロシカ「そう、だからこっちに──」
シタラ「でもこれ、トランシーバーですよ?」
クロシカ「とらん・・・?」
クロシカ「──ともかくこっちへ来て! なにが起こるかわからない物なの!」
シタラ「いやいやいや! そんな危ない物じゃないですよ!?」
クロシカ「お願いだから言うことを聞いて!」
シタラ「クロシカさんも聞いてください!」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「──つまり、シタラちゃんは その降物の使い方がわかるんですね?」
シタラ「まあ、だいたいですけど・・・」
クロシカ「誰から教わったんですか? ・・・いえ、アルさんですね」
クロシカ「あの人、子供になんてものを・・・ 信じられない!」
シタラ「いえ、その、元から知ってるので」
クロシカ「・・・知ってる?」
シタラ「というか、本当に降物なんですか?」
シタラ「未知の素材とか、そういうのは 使われてなさそうなんですけど・・・」
クロシカ「シタラちゃん・・・なにを言ってるの?」
シタラ「だって、プラスチックとかシリコンが 使われてるだけですし・・・」
シタラ「中身のパーツに使われてる金属とか、 そこまではわかりませんけど・・・」
シタラ(でもおもちゃで見たことあるし、 そこまで希少な物は使われないよね?)
クロシカ「シタラちゃん・・・あなた・・・」
クロシカ「もしかして、降物がなにかわかるの?」
シタラ「へ? いやいや、違いますよ!? 普通に知ってる物だっただけで・・・」
シタラ(あ、でも──)

〇けもの道
(ソウガさんが降物だって言ってたの、 あれも単なるマイクだったっけ・・・)

〇暖炉のある小屋
シタラ(私が知ってることは、 ここでは当たり前のことじゃない?)
シタラ「あの、私は・・・その・・・」
クロシカ「──ごめんなさい」
シタラ「え?」
クロシカ「私、シタラちゃんを問い詰めるような ことをしてしまって・・・」
シタラ「え、いや、そんな! 心配してくれたんでしょうし!」
クロシカ「お話の続きは、明日にしましょうか? 今日はもう疲れてるでしょうから」
シタラ「・・・ありがとうございます」
クロシカ「・・・」
シタラ「クロシカさん?」
クロシカ「シタラちゃん、もしも本当に 降物のことがわかるなら・・・」
シタラ「えっと、それは・・・」
クロシカ「──ご、ごめんなさい! それじゃあ、なにかあったら呼んでね?」
クロシカ「おやすみなさい!」
シタラ「お、おやすみなさい・・・」
シタラ(・・・私、本当になんなんだろ?)

〇児童養護施設

〇暖炉のある小屋
ヤラリシマ「シタラ!」
シタラ「──な、なななんですか!?」
シタラ「え? り、リシマくん? おはようございます・・・?」
ヤラリシマ「挨拶はいいよ! なあ、クロシカさん知らねえか!?」
シタラ「クロシカさん・・・? えっと、昨日の夜に会ったけど」
ヤラリシマ「今朝は?  ここに泊まったりしてないのか?」
シタラ「いや、そんなことは・・・ どうかしたの?」
ヤラリシマ「いないんだ・・・ クロシカさんがどこにも!」
シタラ「少し外に出てるとか?」
ヤラリシマ「朝からずっといないんだ! それに誰も知らないのはおかしいだろ!」
シタラ「そ、そんなこと言われても・・・」
ヤラリシマ「あ、ごめん・・・」
ヤラリシマ「たぶん、最後に会ったのはシタラなんだ なにか知ってたら、教えてほしくて」
シタラ「でも、知ってることなんて──」

〇暖炉のある小屋
クロシカ「もしも本当に、 降物のことがわかるなら──」

〇暖炉のある小屋
シタラ「──スポット、かも」
ヤラリシマ「スポット?  クロシカさんがスポットに行ったのか!?」
シタラ「昨日、降物とかスポットの話をしたの だから、絶対ってわけじゃないけど」
ヤラリシマ「──母さん!」
シタラ「り、リシマくん!?」
シタラ(──本当に、スポットに? いやでも、私にはどうしようも・・・)

〇けもの道
ヤラリシマ「──ハア、ハア!」
ヤラリシマ「うわっ!?」

〇黒背景
ヤラリシマ「くそっ・・・いってぇ・・・!」
「おい、大丈夫か?」

〇けもの道
ヤラリシマ「──アル兄ちゃん!」
シタラ「うわ、本当に追いついてる!?」
ヤラリシマ「シタラも・・・?」
アルバス「シタラママから聞いたぜ 一大事なんだろ?」
ヤラリシマ「──そうだ、そうなんだよ!」
ヤラリシマ「母さんが、もしかしたらスポットに! それで、だから・・・!」
アルバス「迎えに行きたいって? けどよ、一人じゃ危ないだろ」
ヤラリシマ「なんだよ、止めに来たのかよ!?」
アルバス「手伝いに来たんだよ! ママを心配すんのは、息子として当然だろ!」
ヤラリシマ「む、息子って・・・」
アルバス「クロシカママが言ってたぜ! 前は”母さん”って呼んでたんだってな?」
ヤラリシマ「え、あ、俺・・・ そういえばさっきも母さんって・・・」
シタラ(クロシカさんが、リシマくんの お母さん・・・?)
アルバス「リシマ、とりあえず俺に掴まれ! その方がずっと早いからな」
ヤラリシマ「──うん! ありがと、アル兄ちゃん!」
アルバス「よし、シタラママも離すなよ? 全速力で走るからな!」
シタラ「ぜ、善処します!」
  は、速すぎでしょぉおおおお!?

次のエピソード:4.無力なママではいられない。その3

コメント

  • 雨が降るとこうなっちゃうの絵で不意をつかれました
    しばらく笑ってました

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