第二十話「ずっと言えなかった」(脚本)
〇荒廃した国会議事堂の大講堂(水槽あり)
怪物と化した彩音さんのかぎ爪が、
セナに襲い掛かる瞬間──
二人の間に飛び込んで、レーザーガンを
盾にして彩音さんの攻撃を防いだ。
神崎セナ「奏太・・・!」
城井奏太「俺も戦う。 セナにだけ全てを背負わせたりはしない」
神崎セナ「・・・弱点は首。 最初に卵が植え付けられた場所だ」
神崎セナ「そこを叩けば、 超再生能力が機能しなくなる」
城井奏太「わかった」
神崎セナ「私が奴の注意を引きつける。 奏太はその隙に攻撃してくれ」
城井奏太「でもその胸の傷・・・平気なのか?」
神崎セナ「大丈夫だ。ただし時間はあまり 作れない・・・もしもの時は、 私もろとも撃って構わない」
城井奏太「!」
神崎セナ「ためらうな。一瞬の隙を逃すな」
城井奏太「・・・・・・」
神崎セナ「気持ちを強く持ち、自分を信じろ。 願いの強さが力に変わる・・・ そうなるように・・・私は作った」
城井奏太「作った?」
神崎セナ「忘れ去られた世界の中で」
城井奏太「・・・・・・?」
セナは一気に飛び出した。
怪物と化した彩音さんはそれに応じ、
二人は激しい死闘を繰り広げた。
俺は彩音さんの首筋に向けて、
レーザーガンを向ける。
だが目にも止まらぬ速さで動く二人に、
照準を定めることができない。
城井奏太「くそっ・・・! 無理だ。 セナに当たらないなんて保証はない」
トリガーにかける指が震える。
この状況で確実に敵だけを
狙い撃たなくてはならない。
そう思えば思うほど、
トリガーを引けなかった。
城井奏太「・・・ダメだ! 俺にはできないっ!」
諦めかけた瞬間、
セナの声が頭の中で響いた。
神崎セナ「奏太。ごめん」
城井奏太「セナ・・・?」
セナは目の前で戦いを続けている。
直接、俺の頭に話しかけているのだ。
神崎セナ「もう最後になるかもしれないから・・・ どうしても謝っておきたい。 こんな世界に、奏太を巻き込んでごめん」
城井奏太「ごめんって・・・ 今更そんなことどうでもいい。 あいつを倒して、一緒に元の世界に帰ろう」
神崎セナ「・・・ずっと言えなかった。 ずっと奏太に隠し事をしていた」
城井奏太「・・・・・・?」
神崎セナ「今まで不思議に思ったことはなかったか? 三年前、目の前で突然私が消えたこと」
神崎セナ「こうして私とだけ テレパシーで繋がれること・・・」
城井奏太「どういう・・・ことだ? 何が言いたい」
神崎セナ「・・・・・・」
城井奏太「答えろ! セナ!」
神崎セナ「・・・奏太のいる平和な世界は ・・・私が作ったんだ」
城井奏太「作った・・・? なんだよ、それ」
神崎セナ「人間とデフィジョンの力が、 それを可能にした」
神崎セナ「奏太のいる平和な世界は、 私の力が暴走してできた・・・ もう一つの世界なんだ」
城井奏太「な、何言ってんだよ」
神崎セナ「奏太は三年前に死んだ。それが現実だ」
城井奏太「冗談はやめろよ。 じゃあ今いる俺はなんなんだよ」
城井奏太「ゲームのキャラクターみたいに 実体のない存在ってことなのかよ?」
神崎セナ「・・・ごめん。奏太」
その言葉を最後に、セナの声が途切れた。
こちらを一瞥することもなく、
懸命に戦うセナの言葉とは思えなかった。
だが戦いの最中にセナの目に光っていた
涙は、彼女の言葉に嘘がないことを
物語っていた。
城井奏太「そんなの、そんなこと・・・ 信じられるわけないだろ・・・」
退屈でつまらなかった毎日も、春斗や
彩音さんも、全てが虚構だというのか。
だが平和で変わらない日常が続くこと
以上に、幸せなことなんてない──
セナはそう気づいていたからこそ、
デフィジョンのやって来ない
もう一つの世界を作ったのかもしれない。
城井奏太「でも・・・この土壇場に来て、 それはないだろ・・・」
茫然として、
レーザーガンを持っていた手を下した。
彩音さんがセナに襲いかかった。
桐島彩音「ギイヤァァァァ!!!」
化け物になった彩音さんの右腕が
セナを弾き飛ばす。
もう時間はない。
セナの限界は近かった。
走り出して、セナの前に飛び出した。
神崎セナ「奏太・・・! なんで・・・!?」
城井奏太「俺は・・・俺は・・・ ずっとセナに会いたかった」
城井奏太「ここがどんな世界だって、 自分がどこにも存在しない人間だって」
神崎セナ「・・・・・・!」
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