第十九話「最後の戦い」(脚本)
〇荒廃した国会議事堂の大講堂(水槽あり)
全てが信じられなかった。
目の前には胸を貫かれたセナが
水槽の中で浮かんでいた。
城井奏太「セナ! 返事をしてくれ・・・!」
気配を感じて振り返ると、一人の女兵士が
無表情で立ち尽くしていた。
城井奏太「彩音さん・・・? 彩音さんなのか? いったい、この状況は・・・」
桐島彩音「・・・・・・」
城井奏太「見てくれ。セナが・・・ セナがこんな状態になっていて・・・ なんとか助け──」
桐島彩音「人間・・・」
城井奏太「・・・・・・?」
ようやく彩音さんの様子が
おかしい事に気づいた。
デフィジョンによって切り裂かれて
いたはずの彩音さんの右腕は、
変色して再生していた。
城井奏太「その腕は・・・! もしかしてデフィジョンと融合して──」
言い終わらないうちに、彩音さんは
怪物の腕を空高く振り上げると、
まっすぐ俺に振り下ろした。
城井奏太「!」
寸前でそれを躱す。
城井奏太「何すんだよ! 俺だよ、奏太だ! 一緒にデフィジョンと戦っただろ!」
桐島彩音「人間・・・排除」
信じたくはなかったが、目の前にいる
彩音さんはアビオとしか思えなかった。
そんな考えを振り払うように、
彩音さんと向き合った。
城井奏太「・・・ほんとにごめん。俺のせいで・・・ 俺と一緒に基地を出たりしたから こんなことに・・・!」
桐島彩音「・・・・・・」
城井奏太「何度も探しに行こうとしたんだ。でも みんなが、彩音さんはもう死んでるって」
桐島彩音「・・・・・・」
城井奏太「彩音さん、一緒に帰ろう。 ここからセナを助け出して、みんなで──」
桐島彩音「グ・・・ギィャアィャァァーーー!!!」
城井奏太「!」
彩音さんは襲い掛かってきた。
それを反射的に躱して
レーザーガンを手に取るが、
彩音さんに向けて構えることができない。
神崎セナ「奏太、聞こえる・・・?」
セナの方を見るが、
彼女は水槽の中に浮かんだままだ。
城井奏太「いまどうやって──」
神崎セナ「今までやっていたのと同じ。 奏太の脳内に直接話しかけている」
城井奏太「お前、そんな状態で無事なのか!?」
神崎セナ「私は大丈夫。それより、彼女と戦って」
城井奏太「で、でも――彩音さんがアビオに・・・」
彩音さんはこちらを睨み、
じりじりと距離を詰めてくる。
神崎セナ「彼女は、もう前の彼女じゃない。 デフィジョンやアビオを操り、ここで 私に罠をかけた。彼女を殺すしか──」
城井奏太「殺せるかよ・・・! 彩音さんは、 この世界で俺に優しくしてくれた」
城井奏太「口は悪いけど一途で明るくて・・・それに セナのことを誰よりも慕っていたんだ」
神崎セナ「・・・・・・」
城井奏太「俺は・・・ セナも彩音さんも両方助けてみせる」
神崎セナ「ダメ・・・!」
一気に飛び出して、
彩音さんの注意を引いた。
狙いは一つ、
あの怪物の腕を撃ち落とすことだ。
突進してくる彩音さんを素早く躱して、
一瞬のチャンスを伺った。
彩音さんが怪物の腕を空高く振り上げた。
城井奏太「今だっ!!!」
素早い連射で、彩音さんの怪物の腕を
ぶち抜くと、それは腐った果実のように
ポトリと地面に落ちた。
腕を落とした箇所から
怪物のような緑色の液体が滴る。
その断面から細胞が泡立ち、
みるみるうちに腕が再生していった。
城井奏太「なっ! な、なんで!」
桐島彩音「我々は・・・人類を・・・滅ぼす・・・」
城井奏太「我々って何を言って──」
桐島彩音「グギィィヤァァァーーー!!!」
彩音さんが俺に向かって突進してきた。
直前で躱すと、彩音さんは
背後にあった水槽に突っ込んだ。
割れた水槽からセナが飛び出してきた。
神崎セナ「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
セナの胸に突き刺さっていたはずの
デフィジョンの爪は抜け落ち、
肉体が再生している。
城井奏太「セナ・・・! その胸の傷は・・・!」
神崎セナ「ハハ・・・人間じゃないと、 こういう時は得だな。私もあいつも・・・」
セナは腕の再生した彩音さんを睨んだ。
神崎セナ「あいつは・・・私と同じだ。デフィジョンに卵を植えつけられ、アビオにならずに 新しい生命体になろうとしている」
城井奏太「彩音さんが、セナと同じ・・・?」
神崎セナ「だが目的は全く違う。 あいつにはもう人間として意識はない」
神崎セナ「デフィジョンを率いて、この星を 完全征服しようとしているんだ。だが──」
彩音さんが頭を押さえて苦しみ出した。
上半身が膨張し、皮膚が破れ、
薄紅色の肉塊が露わになった。
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恐れずにいくんだ〜!
奏太!!