リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第四話 濡れる悪魔(脚本)

リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

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〇広い和室
ヒクイ「一つ、お前らにいってなかった問題があった」
ヨモギ「な、何っすか?」
ヒクイ「それは・・・・・・」
「それは!?」
ヒクイ「俺は、料理ができない!」
ユリナ「・・・・・・え? それだけ?」
ヒクイ「海外旅行中の俺の保護者たちは、二週間くらいで帰ってくる予定だ」
ヒクイ「だから、それまでコンビニ飯ですませるつもりだった。けど・・・・・・」
ユリナ「わたしなら平気よ」
ヨモギ「先輩は好き嫌いするから、ダメっす! 栄養のバランスを考えて、ウチがつくるっす!」
ヒクイ「お前、料理できるのか?」
ユリナ「ヨモギの料理はおいしいわよ」
ヒクイ「ユリナは想像通り、料理できないんだな」
ユリナ「想像通りって、何よ!?」
ヨモギ「先輩の料理は、芸術的な見た目と味になってしまうっす・・・・・・」
ヒクイ「見た目だけでなく、味もか・・・・・・」
ユリナ「そ、そんなに芸術的じゃないよ! ただ、ほんのちょーと斬新なだけ・・・・・・」
ユリナ「・・・・・・」
ヒクイ「よし、お前らの宿代がわりに、食事はヨモギ! お前に任せた」
ヨモギ「しょうがないから、任されてやるっす。 天使だって、料理できるところを見せてやるっすよ!」
ヒクイ「でも、天使の料理って、どんなだ? 人間は食べられるのか?」
ヨモギ「人間の料理も天使の料理も、基本は大して変わらないっす」
ヨモギ「特に今回は人間界の食材でつくるから、アレルギーでもなければ食べられるっすよ」
ヒクイ「なら、大丈夫だな。台所はこっちだ」

〇綺麗なキッチン
ヨモギ「んー、もうちょっと肉とかほしいところっすね」
ユリナ「じゃあ、わたしが買ってくる」
ヒクイ「お前だけで買いものできるのか?」
ユリナ「う・・・・・・」
ヒクイ「しょうがないから、俺も行ってやる。ヨモギ、できるところまで準備しておいてくれ」
ヨモギ「任せろっす! これ、買いものメモ。 今夜はカレーっすよ」

〇スーパーの店内
ヒクイ「あれとこれと・・・・・・。 よし、こんなものか」
ユリナ「人間界には研修で何回か来たことがあるけど、スーパーは初めて来たなぁ」
ヒクイ「研修って、何をするんだ?」
ユリナ「悪魔を倒すか捕まえる実戦が目的だけど、他にも人間の生態を勉強したり、人間への擬態の練習をしたりしたよ」
ヒクイ「なるほど。 お前が人間界にやって来たときのことを考えると、ほとんど役に立たなかったんだな」
ユリナ「あ、あとは服の成形とか・・・・・・」
ヒクイ「服の成形?」
ユリナ「わたしたち天使の服は任意の形に変えられるから、人間の服に見えるように形を変えているの」
ユリナ「浄化の術が施されているから、汚れないんだ」
ヒクイ「へぇ、便利だな」
ヒクイ「・・・・・・ところで、だいぶ元気が出てきたみたいだな」
ユリナ「え?」
ヒクイ「最初より、笑顔が増えた」
ユリナ「うん、ヒクイたちのおかげで。 わたしも薄情ものだね」
ヒクイ「別に、いいんじゃねぇの。あの天使は、お前が落ちこんで喜ぶような奴だったのか?」
ユリナ「ううん、そんなことない! イリスは奔放なところはあったけど、優しい子だったもの」
ヒクイ「だったら、いいじゃねぇか。 そいつだって、仕事をサボれて案外喜んでいるかもしれないぞ」
ユリナ「うわぁ、ありえそう・・・・・・」
ヒクイ「え? 天使のくせに、マジでそんな奴なのか・・・・・・?」

〇開けた交差点
ユリナ「ねぇ、ヒクイはどうして、ここまでしてくれるの?」
ユリナ「励ましてくれたり、居候させてくれたり・・・・・・」
ヒクイ「別に。ただ、何となく放っておけなかったから」
ユリナ「え?」
ヒクイ「お前みたいな世間知らずな天使、野放しにしておいたら何をしでかすか・・・・・・」
ユリナ「ちょっと、それどういう意味!?」
ヒクイ「・・・・・・ん?」
ヒクイ(近くで、悪魔の気配がするな。 どこだ・・・・・・?)
ユリナ「キョロキョロして、どうしたの?」
ヒクイ「いや・・・・・・。 お前って、悪魔が近くにいるとわかるのか?」
ユリナ「うーん。相手が気配を消すのが、うまいかどうかによるかも」
ユリナ「感知系はもともと、ヨモギのほうが上手だし・・・・・・」
ヒクイ(ということは、こいつの感知レベルは俺以下か・・・・・・。ヘタに動くわけには──)
中級悪魔「おい、人間ども!」
「うわっ」
中級悪魔「俺と契約しろ。願いを叶えてやるから、代わりに魂を差しだせ」
ヒクイ(こいつ、俺やユリナの正体にも気づいていないのか)
ヒクイ(見たところ中級のようだが、悪魔の質も落ちたもんだ)
ユリナ「誰が、あんたなんか──」
ヒクイ「おい、よせ!」
ヒクイ「誰が見ているか、わからねぇんだ。 俺が引きつけておくから、人目のつかないところで天使の姿に戻れ」
ユリナ「でも・・・・・・」
ヒクイ「おい、お前!  俺の願いは、生半可な力じゃ叶えられねぇぞ! まずは、お前の力を見せてみろ!」
中級悪魔「オレにどうしろと?」
ヒクイ「そうだな。どうしても契約したいんなら、俺を捕まえてみやがれ!」
中級悪魔「よかろう!」
ユリナ「行っちゃった・・・・・・。 よし、今のうちに!」

〇赤いバラ

〇川沿いの原っぱ
ヒクイ「ハァハァ・・・・・・」
中級悪魔「どうした? もう終わりか? ならば約束通り、オレと契約しろ!」
ヒクイ(何もしないで逃げまわるっていうのも、無駄に疲れるな・・・・・・)
リリウム「そこまでよ! えいっ」
中級悪魔「ふん、聖水か? だが生憎、水を操るオレに聖水の効果は薄い!」
リリウム「くっ! せっかく、さっきスーパーで買った水を聖水に変えてきたのに・・・・・・」
ヒクイ「おい、水を無駄にすんな!」
リリウム「仕方ない、これでどう!? 水の仇よ!」
中級悪魔「うっ! だが、これしき・・・・・・」
リリウム「あんたの水の魔力、その木の糧にさせてもらうわよ!」
中級悪魔「ぐああっ!」
リリウム「捕縛完了!」
リリウム「どう? これで、水を無駄にしなかったでしょ?」
ヒクイ「いや、別に戦い方に反映さてろと、いっていたわけじゃねぇんだけど・・・・・・」

〇広い和室
ユリナ「いただきまーす」
ヒクイ「案外いけるな」
ユリナ「うん、やっぱりヨモギのつくる料理はおいしい!」
ヨモギ「えへへ、それならよかったっす」
ユリナ「ヒクイは明日、学校?」
ヒクイ「ああ、サボるから気にすんな」
ユリナ「何で!? ダメだよ!」
ヒクイ「お前らだけ、家においておけるかよ!」
ユリナ「わかった! じゃあ、わたしも一緒に学校行く!」
ヒクイ「はぁ!?」

次のエピソード:第五話 登場する保護者

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