怪視病

オカリ

人間に戻った日(脚本)

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オカリ

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〇病院の診察室
医者「人間全てが怪人に見える・・ですか」
医者「例えば、私は何に見えますか?」
  えっと
  バケツ顔の怪人・・です
医者「バケツ顔ねぇ」
医者「言葉通りだと悪口に聞こえますね」
  そんなつもりは!
医者「分かってますよ」
医者「断言できませんが・・ ある種の共感覚かな」
  共感覚?
医者「ええ」

〇渋谷のスクランブル交差点
医者「ある人は他者を色で見分けるそうです」
医者「動物のイメージしか持てない タクシードライバーや」
医者「ニオイで識別する患者もいる」

〇病院の診察室
医者「アナタも人の外見を脳内で再構成して」
医者「空想の怪物にしか見れなくなった・・ のかもしれません」
医者「いずれにせよ突発的な症状だ」
医者「急に治ることもあり得ます 一緒に治しましょう!」
  はい・・

〇病院の待合室
  ハァ
  原因は不明
  処方も向精神薬のみ
  相変わらず僕の視界は──
  怪人
  怪人
  怪人だらけだ
  そして、僕自身も例外なく

〇学生の一人部屋
  3日前
母「いつまで寝てるの!?」
母「はやく起きなさい!」
  目の前に母の声をした
  ヤバい奴がいた
涼太(りょうた)「いま起きますよ・・」

〇白いバスルーム
  ふぅ、目が覚め・・
涼太「え?」
涼太「僕?あれ?」
涼太「痛いって、こと、は── 夢じゃ、ない?」
涼太「う」

〇システムキッチン
母「朝ごはん完せ・・」
母「涼太!?」

〇白いバスルーム
涼太「僕の顔が、体がぁ!?」
母「涼太、大丈夫!?」
涼太「ひっ、化け物!」
母「バケッ・・!? なんてこと言うの!」
父「朝からうるさいぞ!」
母「アナタ、涼太が私を化け物って・・」
涼太「うわ!?剣を持った不審者!」
父「け、剣・・? 落ち着け涼太!」
父「コレは孫の手だ 父さん、背中カユくて・・」
父「あ、待ちなさい!」

〇住宅街の道
  夢中で逃げ出した
  ハッ、ハッ・・
お隣のオバチャン「あら涼ちゃん、今朝は早いのね〜」
  近所のオバチャン!?
ハス向かいのお爺さん「む〜〜ふんっ!」
  太極拳のお爺さんも!?
犬養くん「お、涼太」
犬養くん「パジャマ姿じゃん 寝ぼけてんのか〜?」
  友人の犬養くんまで!?
  全部、全部がおかしくて
  それで気づいた
涼太「──僕だ」
  イカれたのは世界じゃない
  僕の眼だったんだ

〇総合病院
  怖くて部屋に閉じこもった
  でもこれじゃ解決しない
  目線は下、怪人を見ないよう意識して
  ようやく病院に着いたのに
涼太「なんの解決にも・・」

〇電車の中
  帰り道も憂鬱だ
  バスも電車も僕から見れば
  モンスターハウス
  現実離れした光景に怖気立つ

〇駅のホーム
  せめてもの自己防衛に
  窓の外へ視線を逃す
  その瞬間
  怪人
  怪人
  怪じ・・

〇電車の中
涼太「怪人じゃない」
涼太「アレは人間だ!」

〇広い改札
  バケモノだらけの駅構内
  だけど彼女を見失うのは
  ありえなかった
涼太「いた!」

〇ハチ公前
涼太「あ、あの・・」
涼太「あの、すみません!」
彼女「はい?」
涼太「あっ・・」
  どうしよう
  ノープランで呼び止めちゃった!
彼女「警察・・じゃないか 何かご用ですか?」
涼太「えっと、その」
彼女「ないなら行きますね」
涼太「えっ!?」
  待ってくれ!
  唯一、ニンゲンに見えるんだ
  置き去りにしないでくれ!
涼太「──っ!」
涼太「お、お姉さん!」
彼女「まだ何か・・」
涼太「好きです!」
  今、なんて言った?
  ええい、ままよ!
涼太「とにかくお茶でもいかがですか!?」
涼太「2人きりで話したいなって お誘いを・・」
彼女「ナンパですか、これ」
涼太「結果的にはそうです!」
彼女「私、用事があるんですけど」
涼太「終わってからで構いません!」
彼女「いつ終わるかも・・」
涼太「いつまでも待ってます!」
涼太「気が向いたらでイイです! どうか、どうか!」
彼女「ごめんなさい!」
涼太「あ・・」
  行ってしまった
  何やってんだ僕は
  これじゃホントに怪人・・
  もとい、不審者だ

〇ハチ公前
  ぼんやりと街を眺める
  怪人
  怪人
  怪人・・
  そして僕も
  怪人
  まともな人間は誰もいない
  訂正、誰もまともに『見えない』
  現実とかけ離れた光景
  慣れる時は来るだろうか
涼太「いや、ムリだ」

〇魔物の巣窟
  他人が怪人に見えるのは
  いつか慣れるかもしれない
  延々と続く特撮と思えば
  耐えられないのは──
  己の姿が怪人に見えることだ
  自分の存在を確信できない
  自我は崩れ、霧散し、何者か忘れる

〇黒背景
  目の色は?鼻の形は?
  口元はどうだっけ?
  わからない
  耐えれない
  気が狂いそうだ
  バケモノしか見れないなら
  何も見えない方がいい
  いっそ両眼を潰して──
???「あの・・」

〇ハチ公前
涼太「ハイッ!?」
彼女「ずっと待ってたんですか?」
涼太「・・そうです」
彼女「なぜ、私なんかを?」
彼女「ほ、ほら! 私のこと好きとか・・ナントカ」
涼太「あ、それはですね! ひと言で申しますと・・」
涼太「アナタが、日常そのものに見えたんです」
彼女「意味がよく・・」
涼太「よ、要は!」
涼太「顔も仕草もスタイルも・・ 運命的に惹かれました!」
彼女「一目惚れってコトですか?」
涼太「それです!!」
彼女「なるほど」
彼女「アブない人ですね」
涼太「うっ・・」
彼女「・・いいですよ 興味が湧きました」
彼女「スマホあります?」
涼太「あっ、ハイ!」
彼女「涼太くんって名前なんだ」
彼女「スタンプ送りました 私のアカウントです」
彼女「では、これで・・」
涼太「連絡先、教えてくれた」
涼太「よし!」
涼太「即・連絡だ」

〇広い改札
  『今週末いかがですか?場所は──』

〇ハチ公前
涼太「既読ついた!返事は・・」
  『いいですよ😁』

〇黒
  こうして
  僕と彼女の交流がはじまった

〇ラーメン屋のカウンター
ラーメン屋オヤジ「ラッシャアセェ!!」
彼女「初デートがラーメンって・・」
彼女「私、白のブラウスなんですけど」
涼太「ご心配なく!」
涼太「白フン一丁!」
ラーメン屋オヤジ「アイヨォ!」
彼女「これ・・」
涼太「紙エプロンです」
涼太「ラーメンも来ましたよ!」
ラーメン屋オヤジ「オマチィ!」
涼太「待ってました!」
彼女「いただきます・・」
「ズッ、ズーッ」
涼太「いかがです?」
彼女「・・おいしい、です」

〇遊園地の広場
  彼女はかけがえのない存在だ

〇映画館のロビー
  だって、人間が彼女しかいない

〇見晴らしのいい公園
  バケモノとの将来なんて
  考えられない

〇空

〇黒背景
  彼女の側は安心する
  人間を忘れずにいられる
  唯一の時間だから
  でもときおり、疑問を抱く
  なぜ彼女だけ──

〇テーブル席
彼女「バケモノに見えるの!?」
彼女「私は違う?どういうこと?」
涼太「僕にとって、キミ以外は 全て怪物に見えるんだ」
彼女「新手の口説き文句?」
涼太「違うって!」
涼太「コレ、診断書」
彼女「『特異性視認障害』・・ 初めて聞いた病名だ」
彼女「あ、まさか一目惚れって言うのも」
涼太「ご明察」
彼女「私以外は人間じゃない・・」
彼女「意外と悪い気はしないな♪」
涼太「それを聞いて安心した」
彼女「でもなんでだろ 写真でもダメ?」
涼太「ダメ、テレビも論外だ」
涼太「最近、自分の顔すら思い出せない」
彼女「大変だね・・」
彼女「下ばかり見て歩く理由はソレか」
涼太「うん、特に鏡はムリ」
涼太「自分がバケモノにしか見えないんだ 発狂しそうになる」
涼太「正気を保てたのもキミのおかげだ」
涼太「ありがとう」
彼女「もう、やめてよ!」

〇川沿いの公園
彼女「ね、写真ダメって言ったけど・・」
彼女「ホントに全部かな?」
涼太「誰?」
彼女「わかんない?」
彼女「正解は二刀流の メジャーリーガーでした!」
彼女「次は・・これどう?」
涼太「うわ、キツい!」
彼女「これもダメか」
涼太「今のは誰だ? 古そうな写真だけど」
彼女「んー、千円札になってる人〜」
彼女「次は・・」
涼太「ありがたいけどさ」
涼太「何度やっても無駄──」
彼女「じゃ、これでどうだ!」

〇黒
  え?

〇川沿いの公園
涼太「見える」
彼女「ほんと?」
涼太「うん、ヒトに見える!」
彼女「新選組副長はイケるんだ・・」
涼太「うぅ〜!人間の顔だ!」
彼女「もしかして・・」
彼女「コレも見える? 初代総理大臣だけど」
涼太「見える、見えるぞっ! 僕の目はヒトを認識できて──」

〇黒
  待てよ
  なぜヒトに見える?
  新選組副長
  初代総理大臣
  共通点は、既に『死んでいる』コトだ
  僕の目はヒトを怪人として認識する
  なら逆に『ヒトでないモノ』を
  人間と捉えるのでは?
  彼女が人間に見える理由も
  もう生きていないからで
  実は、ゆうれ──
彼女「こらっ!」

〇公園のベンチ
彼女「まさか幽霊だと思ってる?」
彼女「実体がないと手は繋げないし」
彼女「・・キスもできないよ?」
彼女「それに死者が条件なら・・ 千円札の人も見えたハズ」
涼太「あ、そっか」
涼太「でも治療の第一歩だ」
涼太「法則性を見つければ、きっと・・」
彼女「うん・・」

〇明るいリビング
  思い切って色々試す
  手始めに、避けてたテレビを
  見ることにした

〇山中の坂道
  本日夕方、──県─市の山中で
  男性の遺体が発見されました
  警察は身元の確認を進め──
  現場は─から東に──

〇明るいリビング
涼太「ダメだ、警察も怪人に見える」
涼太「新選組のイメージで いけるかなって思ったけど」
父「涼太、大丈夫か?」
父「怪物に見えるんだろ、ムリするな」
涼太「父さん?だよね ありがとう」
父「疑問符が付くのか・・」
涼太「ごめん」
涼太「おや、彼女から・・ また写真かな?」
涼太「なんか怖そうな人だ」
涼太「でも、人間に見えるぞ!」
  『法則性わかったかも』
  『明日、デートしよっか
   最後に確認したいから』
涼太「なんだって!? もちろんオッケーです!」
涼太「自分の姿を取り戻す日も・・ 近いかもしれない!」

〇ハチ公前
  翌日

〇渋谷駅前
彼女「交差点、大丈夫? 怪人だらけに見えるんだよね」
涼太「うん・・」
涼太「でも、法則さえ分かれば この景色ともお別れだ」
涼太「見納めと思って、顔を上げるよ!」
彼女「そう」
彼女「ならもっとよく見えるトコ・・ 行こっか」

〇渋谷の雑踏
彼女「上からよく見えるでしょ 1度に1千人が行き交うんだって」
彼女「私にはただの人ゴミだけど・・」
彼女「キミの目からヒトは見える?」
涼太「・・いや、それよりも」

〇ラブホテルの部屋
  ここ、ホテルじゃん!
涼太「男女2人が密室、これはもしや・・」
彼女「ね、ちゃんと探してみて」
彼女「私以外にいるかもよ?」
涼太「うん・・」
涼太「いつも通りだな 僕の意識し過ぎか?」
涼太「──おや?」

〇渋谷の雑踏
  ──いたっ!
  ヒトに見える!
  また見つけた!
  なんだ
  顔を上げれば・・
  ヒトはいたんだ

〇ラブホテルの部屋
涼太「う〜ん・・」
彼女「疲れた?」
涼太「ちょっとね」
涼太「やっぱり99%は怪人に見える」
涼太「けど、キミの言った通りだ」
涼太「数千人に1人はヒトに見えたよ」
彼女「──・・」
涼太「あれ、何か様子が──」
彼女「なあんだ、いるじゃん」
彼女「もっと少ないと思ったけど・・ 意外と物騒だね、この国」
彼女「・・ねぇ 少し疲れちゃった」
彼女「せっかくだし、休憩してく?」
涼太「えっ」
彼女「先にシャワー浴びてくるね」
涼太「テ、テレビでも見よっ!」

〇説明会場
  ・・山中で発見された
  身元不明の遺体ですが
  警察の調べによりますと──
涼太「昨日のニュースの続きか ぶっそうだな・・」
  遺体の正体は、指名手配中の
  男性だと判明しました
涼太「ん?」

〇白
  こちら、警察が公開した
  指名手配犯の写真です
  まさかの遺体での発見に
  警察は事件性があるとして──
涼太「殺されたのは手配犯の方か 確かに悪そうな顔だ」
涼太「──あれ?コイツはヒトに見える」
涼太「それどころか見覚えが・・」

〇明るいリビング

〇ラブホテルの部屋
涼太「昨晩の写真!」
涼太「彼女から送られ・・」
彼女「あーあ、残念」

〇清潔な浴室
涼太「うっ・・」
  ここは、風呂場?
彼女「あれ?電圧弱かったかな」
彼女「猫がショック死するレベルなのに・・」
彼女「手足は縛ったよ 暴れたら困るもん」
彼女「さ〜て」
  んーっ、んんー!!
  ぶはっ!!
彼女「あ、取れちゃった」
彼女「猿ぐつわ、次はキツめに・・」
  なんでっ・・!?
彼女「やっぱり気になるよね」
彼女「理由は簡単、キミの目だ」
  僕の目・・?
彼女「さっきのニュース 誰が犯人だと思う?」
彼女「ヒント!男が指名手配された 理由は強盗殺人ですが・・」
彼女「その被害者は私の家族だったりします!」
  ・・
彼女「ヒトに見える法則、これで分かったね」
彼女「だって──」

〇黒
  ヒトを殺した『人でなし』なら
  最初からバケモノだもんね?

〇清潔な浴室
涼太「ヒトに見える法則は」
涼太「殺人者であるか、否か──」
彼女「そこに気づいたら 私、捕まるじゃん」
彼女「だから口封じを・・」
涼太「待てよ」
涼太「僕がチクるわけないだろ」
涼太「だってキミのこと愛して──」
彼女「人間に見えるから、でしょ?」
涼太「ち、ちがっ!」
彼女「はぁ・・」
彼女「白状するとね」

〇山中の坂道

〇清潔な浴室
彼女「あの快感が忘れられなくて」
彼女「またヤりたいって思っちゃった」
  狂ってる
  人間じゃない
  そうか、だから僕の目は・・
彼女「じゃあね、ありがと 楽しかったよ」
涼太「くっ、こんな・・」
涼太「待てよ?」
涼太「人殺しはヒトに見える」

〇黒
  なら、僕も人でなしになれば──
  ヒトの姿に戻れる?

〇清潔な浴室
涼太「ゴメン、石頭なんだ」
涼太「──歯並びもいいよ」

〇清潔な浴室
  ゆっくりと洗い流しながら
  鏡に映る、自分の姿を見た

〇黒背景
  あぁ
  やっと
  やっと──
  『人間』に戻れた

コメント

  • 途中で法則には気がつくけど、その法則を利用して納得させる結末で物語を終えるのは流石です。作風と表紙やタイトルの作り方がどうにもミスマッチな感じがするなとは思っていたのですが、最後まで読んだら納得でした。ひねりもあって読み応えのある作品😊

  • 受賞おめでとうございます!
    法則性はなんとなく気づいていましたが、ラスト、そう来るかー!と思いました。
    主人公も狂ってしまっていたのですね。
    まさにホラーでした。

  • 怪人のコンテストなのに怪人がいない…この作風で挑んだのは凄いです…。人間に見える法則の謎を、主人公と一緒に推理する楽しさが味わえて面白かったです…!
    佳作受賞、おめでとうございます…!

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