第十七話「セナの嘘」(脚本)
〇池のほとり
神崎セナ「奏太。今までずっと・・・ありがとう」
セナの顔は、かつて見たことがないほど
穏やかな顔をしていた。
去っていくセナの背中を見ながら、
俺の中に不安が芽生えた。
城井奏太「セナ・・・お前もしかして──」
〇地下の避難所
基地に戻ると、緊張感に包まれた兵士たちが思い思いに行動していた。
一人で鍛錬を続ける者や、
別れを惜しんで抱き合う者が、
明日の作戦の過酷さを物語っていた。
明日、きっと多くの血が流れるのだろう。
柊ノボル「おいおい。ずいぶん暗い顔してんな」
城井奏太「柊・・・! お前、その腕は・・・」
柊は千切れた腕の代わりに、
鋼鉄の義手をはめていた。
柊ノボル「どうだ。なかなかいいだろ?」
城井奏太「体調はもう大丈夫なのか?」
柊ノボル「今から戦闘でも余裕だ。なんならこの腕に 仕込んだマシンガンでも見るか?」
柊は近くにいた兵士に向かって
義手を伸ばす。
城井奏太「ば、ば、ばか! やめろっ!」
柊ノボル「ククッ・・・冗談だよ、バカ」
城井奏太「へ?」
柊ノボル「しっかし・・・お前、ほんと重症だな。 何か悩んでることでもあるのか?」
城井奏太「悩みっていうか・・・ 俺の勘違いならいいんだけど・・・」
柊ノボル「・・・・・・?」
〇テントの中
柊ノボル「セナさんが死ぬかもしれない?」
城井奏太「こ、根拠があるわけじゃない。 そういう不安があるってことだよ」
柊ノボル「俺たちはいつだって死と隣り合わせだ。 セナさんだってそうだろ」
城井奏太「それはまあ・・・そうだけど・・・」
柊ノボル「明日の作戦はセナさんを含む5人の精鋭と 20人の後方支援に分かれて行われると 聞いた。皆、犠牲を伴うのは覚悟の上だ」
城井奏太「柊もその中に選ばれたのか?」
柊ノボル「まさか。全員、第一部隊の連中だ。 エリートの中のエリートしかいねぇ」
城井奏太「なあ、柊・・・ 俺も明日の作戦に参加したいんだ」
柊ノボル「バカも休み休みに言え」
城井奏太「セナの力になりたい」
柊ノボル「俺はお前の力を認めているつもりだ。 だが経験不足は否めない。 足手まといになるだけだ」
城井奏太「頼む! 後方支援でもなんでもいい。 俺が作戦に参加するには どうしたらいいか教えてくれ!」
柊ノボル「いい加減にしろ! 俺はもう行くぞ!」
城井奏太「柊っ・・・!」
俺は柊の義手を思わず掴んでいた。
冷たい鋼鉄の感触が、
手の平に伝わって来る。
柊ノボル「お前も、こんな腕になりたいのか?」
城井奏太「セナを・・・救えるなら」
柊ノボル「・・・なら付いてこい」
城井奏太「?」
〇地下室
柊に導かれて、地下シェルターの
更に奥深くに向かっていた。
人の気配がまるでなく、
辺りは不気味な暗闇に包まれている。
城井奏太「なあ、この先に何があるんだ?」
柊ノボル「・・・着いたぞ。ここだ」
柊に背中を押されて部屋に入ると、
背後でガシャンと扉が閉まった。
城井奏太「!? な、なんだよ、これ・・・!」
柊ノボル「すまんな。明日の夜には解放してやる」
城井奏太「ふざけんな! なんでこんなこと!」
柊ノボル「どれだけ止めても、 お前は明日の作戦に行こうとするだろ?」
城井奏太「だからって・・・!」
柊ノボル「命令なんだ」
城井奏太「! それって──」
柊ノボル「またな。夜食は後で届ける」
城井奏太「ちょ、ちょっと待て!」
柊ノボル「夜食はハンバーグらしいぞ。 楽しみにしとけ」
〇地下室
ここは窓一つない独房だった。
散々脱出を試みたが、
どうすることもできなかった。
城井奏太「柊・・・どうして・・・」
靴音が響き、誰かが近づいてくる。
格子越しに暗闇へ目を凝らすと、
セナが見えた。
城井奏太「セナ・・・! これはお前の命令なのか」
神崎セナ「・・・こうでもしないと、お前はどんな 手を使っても前線についてくるだろう?」
城井奏太「嘘だったのか・・・? 俺にここの護衛を頼んだことも」
城井奏太「最前線の基地に呼んだことも、 最初からこうするために・・・」
神崎セナ「ああ」
城井奏太「・・・なんで・・・なんでだよ」
神崎セナ「私の目の前で、二度も奏太を 死なせたくない。わかってくれ」
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いい展開ですね!!
柊だけでなく、春斗の登場も熱いですね!セナを救えるのは奏太だけですわ✨