《エデン》

草加奈呼

エピソード14 緑の守り神(脚本)

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草加奈呼

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〇睡蓮の花園
  獣道を数十分ほど進んだ一行は、ようやく広い場所に辿り着いた。
紅蓮「うへぇ、腰が痛い・・・」
吹雪「おお、これがその湖か!」
影利「でも、この湖のどこにあるのかしら?」
影利「あのナンパ男は、『湖にある』としか 言わなかったわよ?」
影利「湖の中だったとしたら、どうするの? 誰かが潜るってわけ?」
紅蓮「それは、勘弁願いたいなぁ・・・」
風華「とにかく、湖の周りを調べてみましょうよ。そんなに大きな湖じゃないし」
紅蓮「地季はどうするんだ? 一応、部外者だぞ?」
吹雪「もちろん、手伝わせる! 部外者とは言え、こんなに荷物持ち させられて黙ってられるか!」
  吹雪が憤慨して、地季を羽交い絞めにする。
地季「ちょ、ちょっと、 さっきから何なんですか? 湖の中とか、調べるとか・・・」
吹雪「そういえば、説明してなかったな」
風華「私たち、探し物をしているのよ。 神具・・・って、聞いたことない?」
地季「シング? いや、聞いたことないけど・・・」
地季「でも、たしかこの辺りには緑の神様が 奉られているって聞いたことが・・・」
「それよ!!」
  その場所へ、地季のわずかながらの記憶を頼りに移動する。
  すると、多量の苔に覆われていたが、石で造られた祠のようなものがあった。
紅蓮「これ・・・だよなぁ・・・?」
地季「たぶん・・・」
  お供え物を置いてみたり、祈ってみたりしたが、何が起こるわけでもなく、時間だけが過ぎて行った。
吹雪「だあああああっ、 もう、面倒くさいっ!!」
  苛立ちの頂点に達した吹雪が、思わず祠を蹴り飛ばした。当然、石でできた祠は崩れる。
地季「な、なんてバチあたりな・・・!」
吹雪「俺は、神なんて信じてないぞ」
紅蓮「アイ=リーン様も、 女神って呼ばれてるんだけどな・・・」
影利「ちょ、ちょっと、みんな・・・!」
  3人を、影利が呼び戻した。
  見ると、崩れた部分が光り輝いている。
吹雪「ほーら見ろ。 俺の行動はいつでも正しい」
影利「単なる偶然じゃない」
紅蓮「この光は、なんだろう・・・?」
  恐る恐る、紅蓮が手を伸ばすが、光に近づくたびに、手が鉛のように重くなっていった。
紅蓮「げっ・・・。 ちょ、ちょっと待った待った! だ、誰か引っ張ってくれ!」
  もはや自分の力だけでは手を引き抜くことができなくなり、紅蓮は助けを求めた。
紅蓮「ふーっ、引き摺り込まれるかと思った」
紅蓮「神具は主人を選ぶんだ。 俺と風華は、もう神具を持ってるからな」
風華「吹雪か影利の、どちらかかしら?」
吹雪「やってやろうじゃないか」
吹雪「いや、ダメだ! やっぱ無理!! 引っ張ってくれ!!」
影利「私のじゃないわね。 さっき祠に触れて占ってみたら、違ったわ」
紅蓮「・・・じゃあ、まだ仲間になってない奴の 神具なのか・・・」
紅蓮「サンダーブレードの時みたいに、 持ち出せたら良かったんだけど・・・」
影利「・・・・・・・・・・・・」
影利「地季、あんた、やってみなさいよ」
地季「えっ? お、俺!?」
紅蓮「影利、そういえばハンスの町で地季が仲間かもしれないような事言ってたな」
地季「仲間って・・・どういう事?」
吹雪「いいから、 ウダウダ言わずにやってみろよ!」
地季「うわ、ちょっと、なにする・・・」
  不思議なことに地季が手を入れた途端、
  光は渦を描いた。
地季「レイシアからもらった、 お守りの袋が・・・!」
  お守りの袋から飛び出した琥珀色の小さな玉が、その渦の中に飛び込んだ。
地季「・・・・・・・・・・・・」
地季「わわっ! な、なんで短剣なんか持ってるんだ!?」
  短剣の柄には、先程光の渦に飛び込んだ、琥珀色の玉があった。
紅蓮「地季、それが、俺達が探していた神具 なんだよ。そして、アイ=リーン様の 子孫である君もな」
地季「俺が、あの女神アイ=リーンの子孫? 何かの間違いだろ?」
風華「間違いじゃないわ。 神具を手にすることができ、 宝玉を持っているということは、 あなたはアイ=リーン様の子孫・・・」
風華「私たちの仲間なのよ」
  風華の言葉と一斉に、それぞれ自分の宝玉を見せる。
  紅蓮は赤、吹雪は銀、影利は黒。
  風華の宝玉は、カートに奪われている。
  地季の神具にはめられている宝玉は琥珀色。地季は、地の能力を受け継ぐ者である。
紅蓮「地季。俺達は、魔術の封印を解いた者を 再び封印するために、神具と仲間を探し、 世界中を旅している」
紅蓮「君も、俺達と一緒に来てほしい。 君の力が必要なんだ」
地季「俺は・・・。 そんな、大それたこと・・・」
地季「アイ=リーンの子孫なら、確かに・・・ でも、御伽話だって思ってたから・・・」
地季「だから・・・ しばらく、考えさせてほしい・・・」
吹雪「なぁに、ウダウダ言ってんだ!? 悪いヤツを倒して、《エデン》を守る! いいことじゃねぇか!」
地季「でもっ、俺には今の生活があるしっ・・・」
吹雪「魔術の封印を解いたヤツに、《エデン》が 滅ぼされたら、生活もなにもないだろ?」
地季「それは・・・ そうだけど・・・・・・」
  答えに詰まる地季の肩に、風華が手を置いた。
風華「ハンスに戻るまでに、答えをくれれば いいわ。きっといい返事をくれるって、 信じてるわよ、地季」
吹雪「チッ、甘いなぁ。風華」
影利「違うわよ。『ハイ』って言いたくても、 いきなりのことで気持ちの整理がついて いないのよ」
影利「風華はそれを見抜いたのね。 力ずくのあんたと違って」
  ジェルバーンと名乗る男の情報は、真実だった。しかし、それを教えてくれた意図は、まだわかっていない。
  不安、謎、一欠けらの希望を抱いて、
  一行はガイアへと急いだ。

次のエピソード:エピソード15 レグルス

コメント

  • やはり地季でしたね。
    しかし吹雪……そりゃアカンよ、ちょっとはバチ当たれー!😂

  • おお、いきなり選ばれても確かにこういうリアクションになりますよね。感情がリアルだなぁと感じました。

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