読切(脚本)
〇街中の道路
女性の声「たっくん、お母さん飲み物買ってくるね」
子供A「うん!」
子供A「おもちゃ屋さんだ! シャカリキマンがあるぞ!」
子供A「見に行こう!」
子供の母親「ごめんねー ジュースも買ってきたから一緒に・・・」
子供の母親「えっ! 危ない! 拓海!」
ドンッ
青年「痛てて 危ないなあ、急に飛び出しちゃ駄目だぞ」
子供A「ご、ごめんなさい」
トラック運転手「おい、大丈夫か! 思いっきりぶつかったよな?」
青年「ああ、俺はこの通り無傷なんで 大丈夫です」
トラック運転手「え、いやでもドンって」
子供の母親「拓海!」
子供の母親「ごめんね、私が目を離しちゃったから」
子供A「大丈夫だよ。 このお兄さんが助けてくれたんだ」
子供の母親「ああ、ありがとうございます!」
青年「俺はただ通りがかっただけで その、失礼します!」
トラック運転手「確かにぶつかったような音が・・・あ! バンパーヘコんでるじゃねぇか!」
トラック運転手「おーい、兄ちゃん! 病院行くぞ!」
子供の母親「本当、怪我しなくてよかった おうち帰ろっか?」
子供A「うん」
〇ゆるやかな坂道
トラック運転手「あれ? いないな。 足早いな、あの兄ちゃん」
〇土手
青年「危ねぇ。つい助けちまった」
〇山中の坂道
〇古びた神社
青年「・・・」
パン、パン、パパパンッ
ーー認証シークエンス
個体名を答えよ
青年「ヴィダーだ」
ーーロック解除
〇地下に続く階段
〇研究所の中枢
シュタインボック「やあ、ヴィダー。おかえり。 また人助けか。君は変わってるね」
ヴィダー「君こそ『千里眼』で覗き見かい? シュタインボック。 助けてくれてもよかったのに」
シュタインボック「ふふ。私は仲間のためにしか 能力を使わない主義でね」
シュツェ「ヴィダー、おかえり。 予備の核融合炉、直った」
ヴィダー「いつもありがとう! シュツェ」
シュツェ「別に。 シュツェは好きなことをしてるだけ」
〇研究所の中枢
彼らはここ、”アジト”に住まう怪人だ。
初めは数人足らずだったが、
今では12人の怪人が住んでいる
クセのある奴ばかりだが
それなりに仲良くやっている
彼らには共通する点がある
ひとつは全員が人型になれること
〇宇宙空間
ひとつは全員がかつて、
宇宙を支配できるほどの
怪人であったということ
〇血しぶき
そしてもう一つは
全員が、”一度死んでいる”ということだ
〇土手
死んだ俺が目を覚ました場所は
地球という星だった
母艦と連絡をとるために
電波を辿っていたら
このアジトを見つけた
〇近未来の通路
俺がどうして死んだのかは
記憶が曖昧でわからない
だが今となっては些細なことだ
〇諜報機関
ヴィダー「何だ? 急用って」
ヴァッサーマン「ついにできたんだよ!」
ヴィダー「これは! 宇宙船で流行ってたワインじゃないか!」
シュツェ「分子食料生産装置を我々で アップデートした」
シュツェ「食品の経年変化の再現に成功した」
ヴァッサーマン「試作第一号がこれだ ロマネ・コンティ100年熟成」
ヴァッサーマン「飲んでみろ、ヤバいぞ」
ヴィダー「い、いいのか? じゃあ一口・・・」
ヴィダー「う、旨い!」
シュツェ「次はこれ。100年熟成の納豆」
「やめろ! 蓋を開けるな!」
「くっさー!!」
〇諜報機関
俺はこの生活が気に入ってる
奪ったり殺したりする生活はもう沢山だ
ここで気の合う奴らと
馬鹿やってる方が100倍ましだ
最近心底そう思う
〇諜報機関
緊急事態発生!!
総員、今すぐモニター室へ!
ヴァッサーマン「何事だ!?」
ヴィダー「行ってみよう!」
〇近未来の通路
〇秘密基地のモニタールーム
シュタインボック「やあ、全員揃ったね」
ヴィダー「何があった?」
シュタインボック「周辺宙域でこんなものを 見つけてね」
〇宇宙空間
ヴィダー「無数の高速船!?」
シュタインボック「距離にして約二千光年。 ワープを繰り返せば3日で着く距離だ。 明らかにこの星に向かってる」
ヴィダー「ここに何の用だ? 文明も資源も大したものはないはずだ」
ヴィダー「エネルギー量的にも大したものは ・・・あっ!」
シュツェ「アジトのメイン核融合炉」
「・・・」
シュタインボック「それか・・・」
ヴァッサーマン「いずれにしても、我々としては この星を攻撃してもらっては困る」
ユングフラウ「そうね。この星に愛着は無いけど 安住の地を脅かされるのは 気に入らないわ」
レーヴェ「ハッ! 恐れることなどない! 宇宙を制覇した我らに敵うものか!」
ヴィダー「そうは言ってもな、レーヴェ 俺たちは今船団を持ってない。 物量には敵わんぞ」
〇秘密基地のモニタールーム
スコルピオン「一つ、いいか」
シュタインボック「何だい?」
スコルピオン「あれ多分俺の船団だと思う まあ、死んだから”元”だけどな」
ヴィダー「それって星雲領域を1ヶ月で 制圧したって言ってたアレか!」
スコルピオン「恐らく」
ヴィダー「それが本当なら こんな星ひとたまりもないぞ」
スコルピオン「俺が乗っていたリーダー機は 死んだときに消し飛んだが 部下の練度も相当なんだよな」
シュタインボック「リーダー機ってのは この紫色の機体かい?」
スコルピオン「おお、よく知ってるな パープル・ファントムを見たら死ぬ ってもっぱらの評判で・・・え?」
スコルピオン「おいシュタインボック! 画面拡大しろ!その紫のやつ!」
シュタインボック「これかい?」
スコルピオン「お、俺の機体! 爆発したはずじゃ」
シュタインボック「こんな放送も流れていたよ。 惑星間通信の周波数でね」
テス、テス・・・あーテステス?
ちょっと艦長、止めてくださいよ
誰か聞いてたらどうするんです
心配すんな、リーネ。どうせこの
何つった? 地球・・・だっけ
惑星間通信なんて使ってねぇから
じゃあ、どうしてわざわざ通信なんて
開くんですか
そりゃお前アレだよ。様式美?ってやつ
宣戦布告せずに攻撃したらマズいだろ
こんないい加減な放送垂れ流しで
様式美とか・・・
ハボック! 聞こえてんぞ!
とにかく地球の皆さーん!
数日後、攻撃するからよろしくね!
ひ、酷すぎる・・・ザザッ
「・・・」
シュタインボック「これがずっとループして流されていた」
スコルピオン「俺の声だ。 そしてかつての仲間達の声・・・」
〇秘密基地のモニタールーム
スコルピオン「痛っ!! あ、頭が・・・」
ヴィダー「大丈夫か!?」
スコルピオン「今、思い出した」
スコルピオン「あの放送、俺達が死ぬ前に流したやつだ その後なんかすげー敵が来て・・・ ああクソ! これ以上思い出せない!」
クレブス「どう思うかね?」
シュタインボック「うーん、”時空の捻れ”ってやつですか」
クレブス「恐らくな。生まれ変わった奴と 死ぬ前の奴の時空が交差したようじゃ」
シュタインボック「しかも状況は互いがぶつかるように 仕向けられていますね。 誰が何のために?」
クレブス「儂が思うに・・・いや 憶測で言うのは止めておこう」
クレブス「いずれにしても、我々に危機が 迫っていることに変わりはない」
シュタインボック「ですね。 ヴィダー、どうしますか?」
ヴィダー「とにかく時間がない。 彼らがあと3日で銀河系に来るなら 2日以内に退けないとな」
シュティア「何とかお話して帰ってもらえませんかね」
スコルピオン「止めとけ。伝達に来た船ごと 吹き飛ばすような奴らだ」
ヴィダー「作戦会議をしよう。 スコルピオン、気が向かないなら 君は参加しなくていい」
スコルピオン「そうもいかねーよ。 俺が一番あの船団のことがわかってる それに・・・」
スコルピオン「あの頃の俺たちが間違ってたって、 今では思うからな」
ヴィダー「スコルピオン・・・」
ヴィダー「よし、じゃあこれより 作戦会議を始める!」
〇研究機関の会議室
ヴィダー「──」
ヴァーゲ「──」
ヴァッサーマン「──」
ヴィダー「本当にいいんだな?」
スコルピオン「ああ。自分のケツは自分で拭く」
〇古びた神社
〇古びた神社
〇戦闘機の操縦席(滑走路)
シュツェ「聞こえる?」
スコルピオン「ああ、聞こえてるよ」
シュツェ「これからあなたを、一千光年先にいる 敵の本陣へワープさせます」
シュツェ「一緒に無人攻撃機を千機送りますが 相手は宇宙有数の船団です 期待はしないでください」
スコルピオン(宇宙有数? はっ、ちげーよ。 スコルピオン船団は宇宙一 だっつーの。言わねーけど)
シュツェ「攪乱が出来たら頃合いを見て 分子融解砲を本陣に放ちます 当たらないように注意してください」
スコルピオン「了解だ」
スコルピオン(つか、『頃合い』って何だよ! 俺に死ねって言ってるようなもんだぜ!)
スコルピオン(言わねーけど)
シュツェ「ああ、それと」
スコルピオン「もういいだろ。とっとと転送しろよ!」
シュツェ「その機体はシュツェの自信作だから 壊さないで」
スコルピオン「ああ!?」
ヴィダー「ああ、ごめん。スコルピオン これはつまり、シュツェなりに 無事に帰ってきてってことだよ」
スコルピオン「・・・ははっ、了解」
シュツェ「転送、開始」
〇宇宙空間
スコルピオン「久々の宇宙戦だ! のっけから本気で行くぞ!」
怪人『スコルピオン』の能力
超速機動
スコルピオンは機体と一体化し、
機体がもつ性能以上の速度を
出すことができる
スコルピオン「オラオラどけどけ! 見えた順に撃墜するぞォ!」
〇コックピット
昔のスコルピオン「何だ!?」
ハボック「て、敵襲!!」
昔のスコルピオン「敵襲? 馬鹿言え、こんな辺境に センサーにもかからない敵なんか」
部下A「本当です! すごいスピードで ・・・う、うああー!」
部下A「ザザ──」
昔のスコルピオン(ちっ、野良賞金首でもいやがったか?)
昔のスコルピオン「リーネ! ハボック! メメ! 警戒態勢を最大にしろ! 恐らく『丁重なお客様』だ!」
全員「了解、キャプテン!」
〇宇宙空間
スコルピオン(動きが変わった・・・ 警戒態勢に移行したな ならば・・・!)
〇コックピット
ハボック「キャプテン! メメが!」
リーネ「落ち着きなさい・・・クッ 敵の動きが早い! こんな動き・・・まるで・・・あっ!」
ハボック「リーネの駆動系がやられた これじゃあいい的だ!」
昔のスコルピオン「俺がカバーに入る! ハボックは周りのAI挺を撃墜しろ!」
〇宇宙空間
ハボック「了解っ!」
ハボック「うおっと、アブねぇ! AI機のクセにいい動きだな!」
〇秘密基地のモニタールーム
シュツェ「大丈夫? あなたの千里眼でも千機動かすのは 正直、無謀」
シュタインボック「フフフ。私のことは心配いりません それよりヴィダーはどうですか?」
シュツェ「モニターと睨めっこしてる」
シュタインボック(ヴィダーは何故か 分子融解砲の発動権を欲しがっていた)
シュタインボック(彼が頑なに秘匿している能力と 関係があるのか)
シュタインボック(今回の作戦、 奇跡的に上手くいったとすれば、 彼に対する警戒度を上方修正しなくては)
〇宇宙空間
スコルピオン「”俺”は必ずリーネを助けに行くはず その軌道を狙えば!」
〇コックピット
昔のスコルピオン「なっ、何だ! 被弾は軽微だったはず。 ・・・まさか奴はこの機体の 電気供給ユニットを正確に狙ったと?」
昔のスコルピオン(予備電源に切り替わるまでの 一秒が惜しい・・・クソ ここまでか!)
昔のスコルピオン(なんだ? 奴が急に猛スピードで 離れていく・・・ まさか奴の狙いは俺ではなく!)
昔のスコルピオン(この船団そのもの!!)
〇コックピット
昔のスコルピオン「全員散開しろォォォォ!!」
〇秘密基地のモニタールーム
ヴィダー「シュツェ! 今だ!」
〇実験ルーム
シュツェ「分子融解砲、発射」
〇宇宙空間
〇コックピット
昔のスコルピオン「グアアアアッ!!」
〇秘密基地のモニタールーム
シュタインボック「船団の消滅を確認。 残党はAI挺が片付けるでしょう」
ヴィダー「まだスコルピオンの無事を 確認していない!」
ヴィダー「スコルピオン! 応答してくれ!」
「・・・」
シュタインボック「ヴィダー、君は良くやったよ 最小限の犠牲で皆を助けた。 彼のことは残念だが、我々は・・・」
???「おい! 勝手に殺すな!」
ヴィダー「スコルピオン! 無事か!」
〇宇宙空間
スコルピオン「ああ、何とかな。 だけどワープは難しそうだ。 誰か迎えに来てくれねぇか?」
シュツェ「ハムハム号を傷物にした お迎え、なし」
スコルピオン「命がけで戦ったやつに 言う台詞か、それ!」
スコルピオン「ったくよー なんかどっと疲れちまったぜ」
スコルピオン(生まれ変わった時、皆を殺したやつを 探して殺してやろうと思ってた)
スコルピオン(でもそれは俺だったんだな・・・ すまねぇ・・・みんな、すまねぇ!)
〇秘密基地のモニタールーム
シュツェ「なんかスコルピオン泣いてる キモい・・・迎え行く気、失せた」
ヴィダー「まあそう言うな。あいつの気持ちも わかってやってくれ」
シュツェ「通信回線開いたまま泣く かまってちゃん具合がイタい」
スコルピオン「おい聞こえてんぞ、シュツェ!」
シュツェ「ふふふ」
ヴィダー(シュツェが笑った!?)
〇戦闘機の操縦席(滑走路)
その後、スコルピオンは
シュツェの迎えで無事アジトに戻った
〇土手
事件は無事解決したが、
今回の事件は始まりにすぎない
と言う者もいた
俺はあんまり深刻に考える
タイプではないので
普段通り日常を過ごすことにした
〇空
普段通り・・・
ドン!!
運転手「おい、大丈夫か。ってまた兄ちゃんか! 今度こそ病院連れてくからな!」
普段通り・・・?
リコンストラクションズ 完
TapNovelで宇宙が舞台のSFは難しいと考えてましたが、迫力のバトルシーンの連続で、たっぷり楽しませてもらいました^^自分もいつか挑戦したいなと思います。
12人の怪人も短い登場ながら、印象に残るキャラが多く、続きが気になるラストでした。特に双子の怪人が気になります!
自分と戦うという因縁のある戦闘シーンでの、スコルピオンの冷静な対応が印象的でした。面白かったです。
二回もトラックに撥ねられる主人公の、戦闘シーンでのギャップも良かったです。
※昨日エラーが出てコメントできなかったので今日書き込みました。
緩やかな日時と、激しいバトルシーンの緩急が、メリハリついてすごくいいです!
怪人さんは人間形態でも強いんで、すごい丈夫だな、と。
車に撥ねられても傷がつくのが車側だけってすごいです!
最後にもまた撥ねた人出てきましたね。笑