私の計画

さや姉

私の計画(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  都会の雑踏でくしゃくしゃに踏まれた1枚のチラシを見つけ、俺の人生は変わった。現実では弱虫だと揶揄されたが今は確実に違う。

〇入り組んだ路地裏
  上層部からの許可を得て自分の持つ知識を応用し、自身に人間が所持しない能力も身に付けた。力が無い分、頭脳で勝負だ。

〇理科室
人間時代「人間の最後に乾杯」
メルド「ハハハハハ!今、俺は人間を捨てた!何て自由なんだ、皆が私を見て恐怖で怯える姿がみえる!」
  メルドと名付けて頂き、自分の知識を活かす研究室も与えられた。私は見た目は人間に近いが、飲食せずとも生きられる。

〇手術室
  私の調合した薬品を使用、戦闘能力を上げ思考力を統一化させる実験をした。上層部の方々は遠隔で手術観察されているそうだ。
メルド「試しに何か喋ってみろ」
下級員「我々は組織に忠誠を誓い、尽力します」
メルド「成功したぞ・・・・・・!量産的に生産し、秘密や組織の掟を破る場合は体内の起動爆弾が爆発し自ら命を絶つシステムだ」

〇理科室
下級員「メルド様」
  私は驚いた。コイツは俺の調合薬を投与した下級員・・・名前は分からないが、何故、身勝手な言動が可能なのか。
メルド「何だ、いきなり」
下級員「御相談がございます。お時間宜しいですか」
メルド「取り敢えず話は聞いてやる」
  内容次第ではコイツは始末しよう、代用品は沢山生産出来るからな。失敗作第1号としての記録資料作りに丁度いい。

〇理科室
下級員「私はメルド様の助手として役立ちたいのです、もう私も人間とは異なる身」
メルド「愚か者め、お前は行動での成果を出せ!私の実験体は思考力統一化を施したはずだ、何故お前は単独行動に出ている」
メルド「私の弱い心を救って下さった上層部様には私自身の知恵で貢献しなければならない。お前如きに出来るものではない」
下級員「廊下に重要書類を落とす知的な怪人がこの世の中に居るとは・・・・・・」
メルド「そ、それは私の・・・・・・!」
  少しインクは滲んでいるが、私が薬品調合の際に使用していたメモである事は間違いない
  。何故だ、私が失敗するはずない!

〇試着室
下級員「あなたは既に用済みの身、人間と異なる形態でありながら人間の脆さが捨てきれない半端な怪人なのです」
メルド「そ、そんな馬鹿な!組織の軸として研究に励んでいる私が邪魔者扱いだと?」
下級員「鏡というものは正直です、ほら御自身の今の姿。なんと哀れでしょう」
鏡にうつるメルド「これが今の俺なのか?人間を捨て、組織に尽力した結果がこれなのか?」
  メルドは鏡にうつる理想像とかけ離れた現実の有り様に愕然とした。白衣どころか表情が無い喪服姿の俺がうつっている。
カータ「本来の姿を見せてあげたので、このメモは私に権利譲渡して頂きます。私だって上層部様に気に入られたいですから」
鏡にうつるメルド「お、お前はカータ!俺を騙したな?!」
カータ「騙す?はじめから私は名乗っていませんが。組織にとっての邪魔者を多数排除した私に、今夜は内部の清掃を任されただけです」
  笑いながらカータは消えていった。カータは海洋生物の特徴に特化した怪人で、攻撃力が高い。巧みな話術で油断させる事も得意だ

〇薄暗い廊下
メルド「急げ、俺は何も悪くない、カータの陰謀に振り回されているだけだ!」
  名前まで与えて下さった上層部の方々ならば、私を認めて下さっている。早く薬品調合し強くなりたい!メルドは上層部階へ急ぐ。
メルド「何故お前たちも私の邪魔をする!」
下級員「・・・・・・」
下級員「・・・・・・」
メルド「止めろぉおおお!!!」
カータ「失敗作を作る弱者はこの組織に不要だ、成功こそ全て。お前たち、この紙切れを燃やせ」
下級員「・・・・・・」
カータ「弱い人間の乏しい知識のみでは怪人組織で通用する訳ない、茶番に付き合ってあげた我々に感謝してほしいくらいだ」

〇刑務所の牢屋
  地下牢に捕らえられ、僅かな情報さえ入って来ない。私の体は飲食せずとも生きられるが、地下牢は見張りが巡回し不快である。
  勿論、24時間の監視カメラに加え、組織から声をかけられた時は自分の本当の最後が来るということだ。
  静寂の中、くしゃりと音がした。音が聞こえた箇所に手を当てると1枚のチラシが出て来た
鏡にうつるメルド「これは俺がこの組織を知ったきっかけになったチラシ・・・・・・」
鏡にうつるメルド「人間か・・・・・・」

〇刑務所の牢屋
  あれからどのぐらい月日が経過しただろうか、いくら人間ではないとは言え、嗅覚で自らの体が発する腐敗臭に目眩がする
  薬の副作用が、体をはやく腐敗させている原因だろう。生きづらいと人間を捨てた結果がこれだ。人間より情けない最後じゃないか
メルド「カエリタイ・・・・・・もう一度外の世界を人間として見てみたい」
メルド「これをカータに渡してくれ、組織の戦力になるはずだ」
下級員「・・・・・・」

〇荒廃した市街地
カータ「今回も本気を出さずとも殲滅可能だったな、また良い報告が上層部の皆様に出来る」
下級員「カータ様、これを」
カータ「ん?何だこれは、輝きが何とも気色が悪い」
  カータは下級員に渡されたものを投げ捨てた

〇基地の広場(瓦礫あり)
カータ「熱線爆弾だと?!体が燃えるように熱い、硬い皮も溶けてしまう!!ふざけるな!」
メルド「更に燃やしてやるよ、我がこの身を全て利用出来る日が来るとはな」
カータ「おのれ・・・・・・!醜い姿になっても人間への罪滅ぼしとは!何故地下牢から出られた?!」
メルド「組織は監視下で俺が完全に死んだと判断し、地下牢から出した。俺もお前と共に地獄を泳ごうじゃないか」
  メルドの体が可燃剤となり、炎の中からは甲高い叫び声が響いた。人間の生活の裏の世界にも悲しい憎しみは存在するのかもしれない

コメント

  • 人間をやめた先に何が残るのかというと復讐と自滅。人間でいる時と左程変わらないことで悩み続けるのなら、どちらが幸せなのだろうかと考えさせられました。

  • 辛いからと自ら人間をやめてもその先の世界に何が待ち受けているのかは、やめた人にしか、やめたあとにしかわからない。恐ろしいストーリーではあったけれど最後にリベンジを見届けることができてすっきりしました。

  • 怪人となってその組織内で力を発揮できるようになったメルドが、人間組織と同じような組織力学で追われてしまうようになったのは皮肉的ですね。せっかく適した価値観や環境と出会うことができたのに。

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