異世界ベースボール ~フワッとしか知らなかったので、なんだかおかしなルールになりました~

アーム・ザ・コニー・ロト男

第二十話『そして異世界は、ほんの少し平和に近づいたとさ』(脚本)

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〇中世の野球場
実況コカンダ「さあ、9対11で迎えた9回の表。 なんとここでピッチャーマウンドに立ったのは、マコ選手」
解説ヒルダ「ドロシー選手はほとんど魔力が尽きたのでしょう。代わりにキャッチャーに入るようですね」
実況コカンダ「マコ選手はどんな球を投げるのか? 投球練習が始まるようです」
  ドスン
実況コカンダ「凄い! ドロシー選手に負けず劣らずの剛速球だ!」
解説ヒルダ「・・・というか、そのままですけどね」
ドロシー「・・・なるほど。飛んできた球の勢いを魔法でミットに入る直前で消すか」
マコ「どう? できそう?」
ドロシー「これくらいなら、ギリギリ出来そう。 というかマコは魔力大丈夫なの?」
マコ「だって私、そもそも魔力ないから」
ドロシー「・・・ただ相手の使う魔法をコピーしているだけだから魔力の有無も関係ないか」
ドロシー「ホント、無敵の神の御使い様ね」
マコ「よし、みんな! ここをキッチリ抑えて勝つぞ!」
ハッピーズ一同「おおぅ!」
  バスン、バスン、バスン
実況コカンダ「三球三振! 三番のギルバート選手がまったく手が出せず、これでワンアウト」
実況コカンダ「そして続くのはドラゴンズの不動の四番。エンシェントドラゴンのユズハ選手」
  ピカッ
実況コカンダ「こ、これはどうしたことだ! ユズハ選手の姿がドラゴンから人の姿に変わりました!」
解説ヒルダ「姿は自在。流石はエンシェントドラゴンといったところですね」
マコ「うわっ、そんなことができちゃうんだ」
実況コカンダ「さあ、姿を変えたユズハ選手、手にしたバットを構えます」
ユズハ「・・・・・・」
ユズハ(新たなる神の御使いよ)
マコ「おわっ、頭の中にドラゴンさんの声が!」
ユズハ(テレパシーというヤツだ。 お前に聞きたいことがあってな)
マコ(・・・試合で対戦している今ですか?)
ユズハ(今だからだ)
ユズハ(お前が神々より与えられた力があれば、この世界はどうとでもできるだろう)
ユズハ(新たな神の御使い、お前はこの世界をどうしたい? お前は何を望む?)
マコ(うーん、とりあえず。戦争が失くなって、皆が笑顔になればいいかな)
マコ(ただ私はそれを『争い』以外の方法で実現したい)
ユズハ(争い以外で?)
マコ(うん、そう。あなたが良く知る前の神の御使いさんやこれまで神の御使いの人たちがやってきた以外の方法とは違う方法で)
ユズハ(具体的にどうする?)
マコ(それを考えるのは私じゃない)
マコ(私よりこの世界のことを沢山知っていて、沢山考えているユニファであり、レヴィリックたち)
マコ(私はただ、それを手伝うだけ)
マコ(そうして、みんなが選べる世界になればいいなと思っている)
ユズハ(選べる?)
マコ(全ての人が、どうするかを自分で考えて選べるの。それって、とっても素晴らしいことだから)
マコ(だけど戦争はそれを失くす。 だから私は戦争が大嫌いなの)
ユズハ(・・・そうか。お前はすでに彼の地で争いを経験しているのだな)
ユズハ(それが我を置いて逝ったアイツとの違いか)
  バスン
実況コカンダ「おっとスリーボール」
ユズハ「なんだ、勝負せんのか。つまらんな」
マコ「次のヤツをぎゃふんと言わせたかったから今日はゴメンなさい。次の試合では真っ向勝負するから」
ユズハ「次の試合?」
マコ「次もある。それがヤ・キュウでしょ?」
ユズハ「・・・ふはは、なるほど楽しくなりそうだ」
実況コカンダ「ワンアウト一塁。バッターボックスに入るのは5番のレオンハルト選手」
レオンハルト「・・・・・・」
ドロシー「前にランナーがいるとワープ魔法が効果的には使えないしやり辛いわよね」
レオンハルト「考えたのはレヴィリック宰相かな?」
ドロシー「わざと歩かせるのもいい戦略ね。 ホント、野球ってヤツは奥が深いわ」
レオンハルト「マコさんは、まるで別人のようになった。どうやったか・・・聞くまでもないか。女神から与えられた御使いの能力か」
レオンハルト「もしかして、4回の裏にした、あの握手?」
ドロシー「さあ、どうかしらね?」
レオンハルト「・・・ドロシー。本当にヤ・キュウで世界から戦争はなくなると思うかい?」
ドロシー「なくすわよ、ユニファが」
レオンハルト「マコさんではなくて?」
ドロシー「だってマコは【助っ人】じゃない」
ドロシー「この世界を変えるべき者ではなく、あくまでその手伝いをする者」
ドロシー「その為に、あの子は女神に遣わされた」
レオンハルト「これまでの神の御使いとは違うと?」
ドロシー「というかさ、きっとそのくらいでいいのよ、神の御使いなんて」
レオンハルト「・・・なんで帝国を出て行ったんだい?」
ドロシー「あの時も言ったでしょ? 戦争なんてまっぴらごめん。私は日がな一日のんびり寝て、お酒を飲んで暮らしたいからよ」
  バスン
実況コカンダ「三球三振! これでツーアウト! さあいよいよ後がない、ドラゴンズ!」
実況コカンダ「バッターボックスに入るのは6番クルトガ選手」
ドロシー「マコからの伝言よ。 あなたで最後のバッターだって」
クルトガ「吹っ飛ばしたことを根に持っているのか?」
ドロシー「だって、わざとやったんでしょ? アレを火種に、あなた自身が戦争を始めたくて」
クルトガ「・・・・・・なぜそう思う?」
ドロシー「私じゃないわ。マコが言ったのよ!」
  バスン
ドロシー「マコからの伝言よ」
ドロシー「そんなことはさせないよ。 私たちが絶対にね」
  バスン
クルトガ「まあ、お手並み拝見といこう。 お前たちが本当に世界を変えられるのかどうか」
  バスン
実況コカンダ「ストライクバッターアウト! 決まった!」
実況コカンダ「聖国ハッピーズの勝利です!」
マコ「やったー!」
ドロシー「よくやったわ、マコ!」
マスクマン「さすが我が永遠のライバルだ!」
パキマビ「マコさん、カッコよかったです!」
ヤマクモ「見事だ、小ぶりなモノよ」
レヴィリック「・・・・・・」
マコ「どうよ、レヴィリック」
レヴィリック「まあまあだな」
マコ「そこは素直に褒めてよ」
ユニファ王女「マコさん、凄いです! 本当に勝ってしまわれるなんて!」
マコ「ちょ、ユニファ! そんな抱き着かれたら、恥ずかしって!」
ユニファ王女「・・・・・・私、本当はずっと怖かったんです。もし皆さんが負けてしまったら、どうなってしまうのか」

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