『紐糸渡り(アンバランス)』

透水

後編(脚本)

『紐糸渡り(アンバランス)』

透水

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〇名門の学校
  十四ヶ月。およそ一年と二ヶ月。
  日向野ひよりが圓磨学院中等部に入学してから過ぎた時間である。
  これは即ち、彼女の持ち込む火種に学院が悩まされた時間でもある。
  そしてそれは、現在進行形で続いている。

〇学食
  ある日、学食のメニューが全て昆虫食になった。
  『刻み蜻蛉の炒飯』『バッタの刺身』『蝉のとろとろ煮込み』――
  食堂の運営委員会に手を回し、一日限定ではあるが、メニューを全て変更させた者がいたのだ。
  誰であるのかは言うまでもない。
  幸い、犯人は真樹菜によってすぐに取り押さえられた。
  食材として仕入れた昆虫は、罰として犯人が全て食べさせられた。

〇施設の男子トイレ
  ある日、男子トイレの鏡に血まみれの男が映り込んだ。
  いきなり出てきた血まみれ男に男子生徒は軒並み失禁した。
  トイレの鏡がいつの間にかマジックミラーの一種にすり替えられていた。
  鏡に内蔵された映像装置が血まみれ男を映し出したのだ。
  幸い、犯人は真樹菜によってすぐに取り押さえられた。
  犯人は罰として中等部・高等部・大学の校舎全ての便所掃除をさせられた。

〇綺麗な図書館
  ある日、図書館の蔵書が全て十八禁の同人誌になっていた。
  男子生徒は普通に喜んだ。
  某所で行われた同人誌即売会で、頒布されていた同人誌を全て買い占めた者がいたのだ。
  幸い、犯人は真樹菜によってすぐに取り押さえられた。
  犯人は罰として凌辱系同人誌二十冊を全校集会で音読させられた。

〇学校の昇降口
  事件が起こった時は、いつも学内が騒がしかった。
  被害者の悲鳴やら関係者の怒号やらで、いつだって騒然としていたのだ。
真樹菜「…………?」
  この日の静けさは、その真逆。
  あまりにも静寂が強すぎて――何も起こっていないと考えるのは、少しばかり難しい。
ひより「なんか静かっすね。 休校だからかなー。」
真樹菜「いや……それでもちょっと、静かすぎるわ。 休校だけど無人ってわけじゃないのに……」
  不審な静寂に嫌な胸騒ぎを覚えながら、校舎へと足を踏み入れる。
  足音ばかりが不気味に反響して、それが余計に気味が悪い。
ひより「じゃ、じぶんこっち探してみるんで。 せんぱいは上の階をお願いするですよ。」
真樹菜「ええ、お願いね。 ヘンなことがあったらすぐ連絡して。」
ひより「おっす、りょーかいです。」
真樹菜「さて、と。」
  何が起こるか判らない――何が起こっているか、判らない。
  覚悟を決める、なんて大袈裟なものではないけれど。
  何を見ても動じない、という程度の心構えを済ませて、真樹菜は歩き出した。

〇階段の踊り場
真樹菜「………………っ!」
  駄目だった。
  動じない、なんて――絶対無理だ。
  何故なら。
真樹菜「死ん、でる……!?」

〇血しぶき
  そう、死んでいる。
  高等部の教師だ。確か一年生のクラス担任。
  それが梶田と同じように
  ――その後に殺された三人と同じように――
  腹を引き裂かれ、内臓をぶち撒けて、階段に転がっている。

〇清潔な廊下
  階段だけじゃない。
  廊下にも、

〇おしゃれな教室
  ――教室にも。
  校舎内、至るところに死体が転がっている。
  腹を裂かれ、内臓を引きずり出された死体。
  死んでいるのは教職員ばかりで、生徒の死体は見当たらないが――
  それが何かの救いであるかといえば、明確に否だ。
真樹菜「なんっ……で、これ……!」
  充満する臓物臭に吐き気を催しながら、教室を出る。

〇階段の踊り場
  よろめくように階段まで戻ってくる。
  そこにも一つ死体が転がっている。
  手当たり次第に殺している。
  目についた者から殺している。
  箍が外れたのか。
  歯止めが効かなくなったのか。
  どうあれ確かなのは、下手人に躊躇が無いということ。
真樹菜「……! そうだ、あの子――」
  今更になって思い至る。
  ひよりと別行動を取ったのは、明らかに失策だった。
  殺人犯――それが人間かチュパカブラかはともかく――がまだ校内に居るのなら、ひよりの身が危ない。
  すぐにでも合流して逃げようと、スマートフォンを取り出した、その時。
真樹菜「! 日向野っ……!?」
  ぺたん、と上から足音がした。
  誰かが階段を下りてきたのだと察し、真樹菜は顔を上げてひよりに呼びかけて、
  そこに、一匹のチュパカブラが立っていた。
  ぷよ子ではない。
  ぽろ助でもない。
  二人の子供でもない――
  完全に初見の、第四のチュパカブラ。
真樹菜「……っ! ……………………っ……!?」
  びくん、と。
  一つ身体が痙攣した。
  痙攣して、そこで真樹菜は異変に気付いた。
真樹菜「……か……! っ、………………っぁ……!」
  声が出せない。
  身体が動かない。
  チュパカブラと『目が合った』瞬間、射竦められたかのように、身動きが封じられた。
???「……××××、×××」
  何事かを呟きながら、怪チュパカブラが階段を下りてくる。
  怪物の手には一本のナイフが握られている。
  軍用と思しき拵えの、しかし刃が欠け、錆も浮いている、廃棄品めいた一振り。
  刃と、それを握るチュパカブラの手からは、ぽたぽたと血が滴っている。
  つい今し方、それを使ってきましたとばかりに。
  そして今またそれを使おうと、チュパカブラは近付いてくる。
  その獲物が誰であるか、考えるまでもない。
真樹菜「ひ……!」
  血を吸うためではない。食べるため、生きるためではない。
  ただ、殺すために殺すのだ。
  それが、否応なく、判ってしまう。
  判ってしまうが、逃げられない。
  身体が動かない。
  声が出せない。
  抵抗できない――
ひより「とうっ!」
  ……が、まあ、その必要は無かったというか。
???「!?」
  階段を下りていたチュパカブラが、背後からのドロップキックを喰らってごろごろと転げ落ちていく。
  アクション映画のように見事な階段落ちを見せたチュパカブラは、転がった先の壁に頭を打ち付け、動かなくなった。
ひより「危ないところだったですね! だいじょーぶですか、せんぱい?」
真樹菜「……っ、あ……」
ひより「あー、神経ハックされたですね。 しょーがない、ちょっとごめんなさいですよ。」
  ばっちーん、と。
  派手な音を立てて、真樹菜の頬が張られた。
ひより「そーれ、もういっぱつ!」
  今度は反対側の頬が引っ叩かれる。
  更にもう一度叩かれる。
  加えてもう一度叩かれる。
  ついでにもう一度叩かれる――
真樹菜「何してくれてんのよ貴方ッ!!」
ひより「お。復旧したですね。よかったよかった。」
真樹菜「……! 動ける……!」
ひより「ほらせんぱい、こっちこっち。 そこのヒトが目ぇ覚ます前に逃げるですよ。」
真樹菜「え、あ、ちょっと、日向野……!?」
  ひよりに強引に手を引かれ、真樹菜はその場を離れた。

〇おしゃれな教室
  真樹菜とひよりが逃げ込んだのは、チュパカブラと遭遇した階段から最も遠く、校舎のほぼ反対側にある教室だった。
ひより「ぷひゃー。 ちょっと全力疾走しすぎましたねー。」
真樹菜「ええ。上手く逃げ切れたみたいだし。 さっきは助かったわ、日向野。」
ひより「いえいえ、これっくらいなんてことねーですよ。 困った時にお役立ちのわたしですから――」
ひより「――って、痛い痛い痛い! なんであたま掴むんですかあ!」
真樹菜「ええ、とっても感謝してるのよ? それはそれとしてさっきの往復ビンタは何かしら?」
  真樹菜のアイアンクローがぎりぎりとひよりの頭を締め上げる。
  まだじんじんと頬が痛むのだ。
  ひより的に(恐らく)悪気はなかったのだろうが、ビンタの理由を問い質さなければ収まらない。
ひより「いやほら、チュパカブラの神経ハック喰らってましたし! 外部刺激で無理矢理にでも神経電流つなげた方が良かったんですよう!」
真樹菜「神経ハック……?」
ひより「です。 チュパカブラとかモスマンとかが使える『能力』なんですけど。」
ひより「ほら、怪物とか妖怪とか宇宙人とか見た時に、身が竦んで動けないってハナシあるじゃないですか。」
ひより「あの手のイキモノ、眼球が『発信』器官で。 そこから電磁波だかマイクロ波だかが出ているらしいんですね。」
真樹菜「……それを人間が『受信』すると、ああなるってこと?」
ひより「です。QRコードみたいなもんですかね。 『体を動かす』ための信号が、この電磁波で遮断されちゃうみたいで。」
  先の往復ビンタは、『痛み』の信号を脳に送り込むことで、脳内の神経電流をリセットする――という意味合いがあったらしい。
真樹菜「タネさえ判ってれば対処できる代物なのは有り難いわね。 ヘンな超能力よりよっぽどマシだわ。」
ひより「ですね。 神経ハックの信号をそのまま『受信』しなければいーわけですから。 最悪、お尻抓るだけでもなんとかなるですよ。」
  しかし逆に言えば、事前知識がなければ対処が極めて難しい能力でもある。
  遠からず学内の異変に気付いて警察が駆け付けるだろうが、到着した順に動きを止められて腹を捌かれるのがオチだ。
  そもそも警察が到着するまで、チュパカブラが学内に留まるか判らない。
  学校の外に逃げてしまえば、もう捕まえる術が無い。
  で、あるならば。
  舞洲真樹菜の、するべきことは――

〇清潔な廊下
真樹菜「――ああ、そんなところに居たの。」
  いつの間にやら気絶から覚め、再び校内を徘徊していたチュパカブラを、三階の廊下で発見する。
  先程逃がした獲物を、向こうも憶えているのだろう。
  真樹菜を目にしたチュパカブラには、明らかに苛立ちめいたものが窺えた。
真樹菜「………………っ、」
  ざわざわ、と。
  全身の神経に、漣が走るような感覚。
  恐らくは神経ハックを仕掛けられているのだろう。
  拳を強く握り込み、指が掌に食い込む痛みで、それに対抗する。
???「…………!?」
真樹菜「あら、どうかしまして? 何か上手くいかないことでもあったのかしら?」
  せせら笑うように煽りながら、ずんずんとチュパカブラとの距離を詰める。
  獲物が自分から近付いてくる不審さに、チュパカブラも警戒を覚えたのだろう。
  いったん離れようと一歩後ずさり、
真樹菜「ああ、そうそう。 貴方は動けない相手しか襲えないのよね。 だったら、これで良いかしら?」
  足を止める。
  相手との距離は三メートルも無い――飛び掛かれば仕留められる、そんな間合い。
  そんな距離で挑発された獣が、今更逃げるはずもなかった。
  腹を裂くためのナイフを凶器のように振り翳し、チュパカブラは真樹菜に襲い掛かって、
真樹菜「はい、残念でした。」
  ごぎり、という音が響いた。
  がらん、という音が鳴った。
  前者は突き出されたナイフをひらりと躱した真樹菜が、相手の腕を一瞬で捻り上げ、関節を外した音。
  後者は右の手首と肘の関節を外されたチュパカブラがナイフを取り落とし、それが床へと転がった音だった。
???「!? !?!?!?」
真樹菜「ああ、良かった。 人間型のイキモノだから大丈夫だとは思ってたけれど――身体の造りも人間と同じみたいね。」
  床に落ちたナイフを拾い上げ、ぽいと窓の外に放り捨てて、真樹菜は言う。
  中国拳法、鷹爪翻子拳の流れを汲む擒拿術。要は中国流の関節技。
  さすがの真樹菜も、人間以外に関節技を仕掛けるのは初めてのことだったが――即断即行が旨の彼女は、それに躊躇しなかった。
???「××××……っ!!」
真樹菜「っ! あら、思ったよりも……!」
  肩と肘の関節を外されて、しかし怪物の戦意は全く萎えていない。
  罵声のような咆哮とと共に、チュパカブラが飛び掛かってくる。
  人型であっても、やはり猛獣、チュパカブラ。
  驚異的な跳躍力で一気に間合いを詰めて、鋭い爪の備わる左腕を振り回す。
  ひらひら躱す真樹菜だが、当たれば大怪我は免れない。
  人間と猛獣。同じ知的生物であったとしても、そもそもの性能が違うのだ。
  だから、小細工を弄する。
真樹菜「――はっ!」
  低く身を沈め、床を薙ぐように振るわれた真樹菜の脚が、怪物の足を払う。
真樹菜「あら、ごめんあそばせ。 私、脚の長さが自慢ですので。」
真樹菜「それでは今日はこの辺で失礼させて頂きます。 こう見えて忙しい身なものでして。 ごきげんよう。」
  引っ繰り返って床に後頭部を打ちつけ、悶絶するチュパカブラに慇懃な捨て台詞を残して、真樹菜はその場を離れた。
???「~~~~………………ッ!!」
  起き上がったチュパカブラの発する怒気が、背中を炙る。
真樹菜「ふふっ……!」
  さあ、ついてこい。追いかけてこい。
  奈落の底に、案内してやる。

〇美術室
  がらりと乱暴に扉を開けて、チュパカブラが美術室へと足を踏み入れる。
  確かあの雌は、ここに逃げ込んだはず。
  ぐるりと室内を見回すチュパカブラの耳が、その時がしゃんと何かが落ちる音を捉えた。
ひより「あ、わわ、わわわ……!」
  横倒しになった石膏像の向こうに、小柄な少女の姿が見える。
  室内に入ってきた怪物に驚いて、物音を立ててしまったのだろう。
  先程逃がした雌の姿は見当たらない。
  この部屋に逃げ込んだものと思っていたが、見誤っていただろうか。
???「…………?」
  見覚えのある少女だった。
  ただ、何処で見たのかは思い出せない。そもそも人間の顔などろくに憶えていない。
  それがチュパカブラの村に出入りする少女であると気付くこともなく、ついでにこの娘の腹も裂いておこうと、彼は歩み寄る。
ひより「わわわ! く、く、来るなぁ! あっち行ってくださいー!」
  その辺にあるものを片っ端から投げつけながら、少女が後ずさる。
  描きかけのカンバス。
  折り畳まれたイーゼル。
  更には近くの筆やら絵の具やらパレットやら――
  無論、それらがチュパカブラの足を止めることは無く。
  その身体が絵の具や塗料、溶剤に塗れるだけのこと。
ひより「あれ、やば、ちょ、ちょい待ち……!」
  そうして少女は、遂に窓際まで追い詰められた。
  ここは三階、窓から飛び降りて逃げる訳にもいかない。
  つまり、絶体絶命。
真樹菜「ええ。だから、これでお終い。」
???「!?」
  不意に背後からかけられた声に、彼は振り向いて――
  その視線が先程逃がした雌から、彼女が放り投げた何かに移って――
  人類の文明に疎い彼は知らない。
  己の足元に放り投げられたそれが、ライター――火を点けるための道具であることを。
???「!! !?!?!? ────ッ!!」
  チュパカブラが、炎上する。
  正確に言うなら、燃えているのは彼の身体に付着した液体だった。
  先程少女が投げつけた画材の一つ、油絵具の薄め液。
真樹菜「『テレピン油』。知ってるかしら?」
真樹菜「油絵を描く時に使う画材なのだけれど。 絵の具の濃度を調節したり、パレットの手入れに使ったり――ね。」
真樹菜「まあ、私も別に詳しいワケではないんだけどね。 選択授業は美術じゃなくて音楽だから。」
  言いながら、彼女は更に近くにあった小瓶を手に取ると、中の液体をチュパカブラへとぶち撒ける。
  その液体も同じく燃え上がり、見る間に彼の全身を炎が覆っていった。
真樹菜「まあ、使い方は知ってるのよ。 少し前にどこかの馬鹿が悪用したから。」

〇高い屋上
  ある日、圓磨学院中等部校舎の屋上に、ナスカの地上絵よろしくでかでかと絵が描かれていた。
  絵は写実的で妙に上手かった。
  深夜に美術室から画材一式を持ち出し、屋上に忍び込んで落書きしようと試みた人間が居たのだ。
  幸い、犯人は真樹菜によってすぐに取り押さえられた――が、悪戯そのものは未遂で終わった。
  犯人は照明代わりに、一斗缶に紙や木切れを詰め込んで燃やしていた。
  ここから飛んだ火の粉が薄め液に引火したのだ。
  あわや大火事になろうかというところで真樹菜が駆け付け、事なきを得たのだが――

〇部屋のベッド
真樹菜「そのオトモダチは何やらかしたの? この前の貴方みたいに放火か何か?」
ひより「ほ、放火じゃないですよぅ。 あれは事故です、事故。」

〇体育館裏
「いやー、それにしてもすいませんねせんぱい。 ぽろ助くん捜しぜんぶ任せちゃって。」
真樹菜「ま、しょうがないわ。貴方美術室とか保健室とか、色々出禁になってるし。」

〇美術室
真樹菜「ええ。つまり、そういうこと。 よろしければ前編参照、なんてね。」
  そう。油絵の具の薄め液、テレピン油は可燃性の液体なのだ。
  国の定める第四類危険物、第二石油類に属する可燃性液体。
  当然ながらそんなものを持ち出した落書き犯には厳重注意が下され、以降美術室を出入り禁止にされている。
ひより「こ、今回はOKっすよね? きんきゅーひなんってやつっすよね?」
真樹菜「ま、しょうがないわね。私から事情説明しといてあげる。 ……説明する相手、さっき廊下で死んでたけど。」
  『追い詰められたひよりが苦し紛れにそこらの画材を投げつけた』というのも、勿論演技だ。標的にテレピン油を浴びせるための。
  猛獣を殺す方法、或いは怪物を殺す方法。
  答えは簡単、『道具を使う』。
  毒でも薬でも良い。今回は油を使って焼き殺す――
  このチュパカブラは、あまりにも殺し過ぎた。
  最早、理由を問う段階には無い。
  無関係だからと、放っておける段階にも無い。
  殺したからこそ、殺さねばならない。
  法で裁ける相手ではなく、罪を償わせる対象でもない。
  ならば、至る結末は一つきり。
???「~~~~っ、××××、××××……!!」
  炎に巻かれてのたうち回りながらも、チュパカブラは何かを叫んでいた。
  それが謝罪ではなく、罵倒の類であるとすぐに判った。
真樹菜「日向野、窓開けて。」
ひより「うぃっす!」
  天井の火災報知器が炎に反応し、非常ベルがけたたましく鳴り始めた。
  既に自動通報システムが火災の発生を関係各所に伝えている。
  程無く消防や警察……つまり邪魔者が駆け付けるだろう。
  それまでに、始末をつける。
  とは言えもう、やるべきことはあと一手。
  ひよりが開いた窓へ、火達磨のチュパカブラが歩み寄る。
  助けを求めるように彼は窓の外へと手を伸ばし、
真樹菜「じゃあ、さよなら。 貴方が殺した皆様に、よろしくね。」
  その背中に、引導を渡す。
  叩き付けるような真樹菜のヤクザキックがチュパカブラの背を直撃し、
  その身体が窓の外へと蹴り出される。
  ごしゃり、と。
  窓の外、十数メートル下の地面から、硬いものと柔らかいものが同時に潰れる音がした。
  物音はそれきりで、ぶすぶすと地上から立ち上り、三階の窓にまで届く黒煙が、殺人チュパカブラの絶命を伝えていた。

〇名門の学校

〇高い屋上
ひより「犯人はぽろ助くんのお父さんだったですよ。」
  怪チュパカブラによる連続殺人から、既に一週間が経っていた。
  圓磨学院の休校措置は未だ解除されていない。
  多数の教職員が殺されているから、休校が解除されても授業が成り立たないのだが。
  世間は名門学校で起こった凄惨な殺人事件に大騒ぎ。
  学院の評判は地に落ちて、下手をすればこのまま廃校になりかねない。

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