第十六話「セナの秘密」(脚本)
〇テントの中
一晩中セナの言葉を考えて
朝を迎えてしまった。
〇黒背景
神崎セナ「千にも及ぶデフィジョンがこの星に来た 目的・・・それは私なんだ」
〇テントの中
もしそれが本当ならば、
セナは一体何者なんだろう・・・。
城井奏太「・・・ダメだ。考えすぎてお腹空いた」
〇戦線のテント
食堂では十数名の兵士たちが
朝食を食べていた。
奥のテーブルだけ、
不自然に兵士たちは寄り付いていない。
そこではセナが一人で
朝ごはんを食べていたのだ。
セナの向かいに座ると、兵士たちは
驚いたような顔をして、俺の方を見た。
城井奏太「おはよう」
神崎セナ「・・・・・・」
城井奏太「なあ、お前って嫌われてんのか?」
神崎セナ「?」
城井奏太「周りがすげー顔をして 俺たちのことを見てるじゃん」
俺とセナが兵士たちを見ると、
彼らは一斉に視線を逸らした。
神崎セナ「・・・さあな」
城井奏太「はぁ・・・そんなんだから孤立すんだよ、 セナ」
神崎セナ「・・・・・・」
城井奏太「コミュ障。意地っ張り。 唯我独尊・・・それでも昔は もうちょっとかわいかったのに」
神崎セナ「・・・それ以上言うと怒るぞ」
城井奏太「もう怒ってるじゃん」
隣のテーブルでお皿の割れる音がした。
二人の兵士が喧嘩を始めて、
周りが止めに入ったのだ。
兵士1「明日、死ぬかもしれないんだぞ! お前と一緒にするんじゃねえ!」
兵士2「今更怖気づいてるのかよ」
兵士1「そうじゃねえ! そうじゃねえけど、 冷静でいられるわけもねえだろ!」
兵士1「俺はセナさんとは違う・・・ 普通の人間だぞ!」
兵士の叫び声に辺りが静まり返る。
セナは表情を変えずに
スープを啜っている。
俺は叫んでいた兵士に歩み寄った。
兵士1「な、なんだよ、お前」
城井奏太「怖いに決まってんだろ」
兵士1「はあ?」
城井奏太「セナだって普通の人間だ。 それに女の子だぞ」
神崎セナ「・・・・・・」
少しの沈黙の後、その場にいた兵士たちがクスクスと笑い出した。
俺が云った「女の子」という言葉が
おかしかったらしい。
城井奏太「・・・むかついた。セナ行こう」
神崎セナ「は? 私はまだスープを──」
城井奏太「いいから早く!」
〇荒廃したショッピングモールの中
セナをシェルターの外に連れ出すと、
ショッピングモールへ向かった。
戦いを前日に控えた今の状況下で、
付き合ってくれるとは思っていなかったが
思いがけずセナは拒否しなかった。
多くの店は潰れて朽ち果てていたが、
埃を被った商品から洋服を選ぶと、
それを押し付けてセナを試着室に入れた。
〇荒廃したショッピングモールの中
しばらくして、私服に着替えたセナが、
顔を赤くして出てきた。
神崎セナ「・・・い、いいのか? これで」
城井奏太「すげー似合う! かわいい!」
神崎セナ「こ、こんな服着たのは数年ぶりだ」
城井奏太「たまにはいいじゃん。さっき笑った奴らが見たら泡吹くだろうなぁ」
神崎セナ「・・・ふん。私は別に──」
城井奏太「あ! セナ、いま笑わなかった!?」
神崎セナ「バ、バカ! 笑うか!」
城井奏太「いや、笑っただろ! 絶対笑った!」
神崎セナ「笑ってなんかいないっ!」
〇荒廃したショッピングモールの中
それから俺たちは、
ショッピングモールの中を回った。
ここにかつて華やかだった面影が
あるだけで、何かがあるわけではない。
それでも俺たちは多くを語らず、
長い廊下を並んで歩いた。
〇池のほとり
俺たちはバイクを飛ばして市街地を
抜けると、海の見える丘に来た。
地平線に沈む夕日を眺めていると、
世界が荒廃していることなんて
嘘のように思える。
城井奏太「なんかさ、 こうしてるとデートしてるみたいだよな?」
神崎セナ「・・・・・・」
城井奏太「無理に付き合わせちゃってごめん」
神崎セナ「まあ・・・こういうのも悪くない。 最後くらい、な」
城井奏太「・・・最後?」
セナは自分の髪の毛を持ち上げると、
首筋を見せた。
そこには大きな傷痕が残っていた。
城井奏太「これって・・・」
神崎セナ「あいつらの言ってたことは本当だ。 私は普通の人間じゃない。 一部の兵士はそれに気づいている」
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