リリウム〜罠に嵌まった天使〜

久望 蜜

第三話 認める天使(脚本)

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久望 蜜

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〇大きな木のある校舎
ユリナ「――ということになった。石になったイリスは、いつ目覚めるかわからない」
ユリナ「しかし、脱獄した悪魔どもは結界を形成しているこの石を狙ってくるだろう。石を守りながら、悪魔どもを捕まえるのが我々の仕事だ」
ユリナ「だが、結界のせいで、増援は望めない。厳しい戦いになるだろうが、何とか耐えてくれ」
ユリナ(混乱を招くから、今は裏切りものの話はできない。でも、これが本当に正しいかもわからない・・・・・・)
ヨモギ「ところで先輩、その人間は誰っすか?」
ユリナ(うーん、何て説明しよう。いいわけを考えるのを忘れていた。普通の人間がこの場にいるなんて、おかしいし・・・・・・)
ユリナ「あぁ彼は、えーと・・・・・・。 すまん、まだ名前を聞いていなかったな」
ヒクイ「俺は鳥羽ヒクイ。そこの高校の生徒だ」
ヒクイ「そういえば、お前の名前も聞いてなかったな。天使にも、名前ってあるんだよな?」
ヨモギ「こいつ、口が悪いっす! 先輩に向かって、お前だなんて!」
ユリナ「お前の口調も大概だけどな。まぁ部下でもないのだ、気にするな」
ユリナ「それよりヒクイ、名乗りが遅れた。 わたしは中天使リリウムという。 人間の姿のときは、ユリナと呼んでくれ」
ヒクイ「中天使って、偉いのか?」
ユリナ「位としては、一番偉い大天使の次だ」
ユリナ「このアルテミシア・・・・・・人間体のときは、ヨモギだったな。 彼女は小天使。中天使の下だ」
ヒクイ「へぇ」
ユリナ「ここで、一度戦力を整理しよう。 わたしを含めて人間界で今戦えるのは、中天使一人、小天使三人、末天使十人か」
ヒクイ「何か、おみくじみたいだな・・・・・・」
ユリナ「ちなみに、堕天使のことは凶天使とも呼ばれる」
ヒクイ「まんま、おみくじじゃねぇか!」
ユリナ「悪魔は上級、中級、下級の三段階のみで、もう少しわかりやすいと聞くな」
ユリナ「それより、天界と通信はできるようになったか?」
リンドウ「それが、結界の影響でノイズが出てしまい、まだうまく周波数が合いません・・・・・・」
ユリナ「そうか、引きつづき頼む。・・・・・・ということは、脱獄した悪魔の数も不明か?」
ヨモギ「ウチらが追っていたときは、二十匹はいたっす!」
ユリナ「イリスと戦っていた中には、上級の悪魔も混じっていた。 サシで戦ったら、勝てるかは五分五分だな」
ヒクイ「ってことは、ユリナは当分見つからないように隠れたほうがいいな」
ヨモギ「先輩が悪魔に負けるとでも!?」
ヒクイ「ちげぇよ。悪魔からしても、ユリナは上級に匹敵する脅威ってことだろ?」
ヒクイ「だったら、早めに数で圧倒して潰そうとしてくるはずだ。 そうならないように、ユリナを隠す」
ユリナ「しかし、それだと部下に負担が・・・・・・」
ヨモギ「そもそも、どうして人間のいうことを聞かなきゃいけないんすか!」
ヒクイ「あぁ、その話がまだだったな。 俺は、お前らの協力者だ」
ユリナ(待って、何て説明するつもり──)
ヒクイ「お前ら、天界の助けを借りられないのに、人間界でどこに住むつもりだ?」
「あ・・・・・・」
ヒクイ「俺は協力者になってやってもいいってことで、ここにいるんだ。その俺に、そんな偉そうな態度をとれるのか?」
ヨモギ「この、人間のくせに・・・・・・!」
ユリナ「だが、わたしが隠れるかどうかはともかく、この人数が厄介になっても本当に大丈夫なのか?」
ユリナ(さっきまでそんな話してなかったけど、いいの?)
ヒクイ「全部で十四人だろ? 何ヶ所かに分かれれば、問題ない」
ユリナ「そんなに拠点があるのか?」
ヒクイ「まず、俺の家に二人。 ユリナとそこの緑の奴でいい。俺の保護者はちょうど海外旅行中だから、バレねぇし」
ヨモギ「な、何でウチがお前の家に住むことになるっすか!?」
ヒクイ「別に誰でもいいけど、お前が一番ユリナと仲がよさそうだからな。 ユリナの護衛に適している」
ヨモギ「それは、まぁ、その通りっすけど・・・・・・。いや、でも何で先輩がお前の家に住むことになっているっすか!?」
ヒクイ「うるせぇな。自分の家に、そんなホイホイとよく知りもしない奴を泊めていられるか!」
ユリナ「わたしはヒクイの家でかまわない。 続けてくれ」
ヒクイ「他に、この町には俺の保護者が所有しているマンションが二つある。空き部屋を貸してやるから、二組に分かれて使え」
ユリナ「助かる、ありがとう。 では、天使を一班と二班に分ける」
ユリナ「ヨモギ以外の小天使二人が、それぞれの班を指揮しろ。 今後は班ごとに活動し、一人で行動するな」
ヒクイ「けど、さすがにこの数の食費は出せねぇぞ?」
ユリナ「問題ない。 天界名義のブラックカードを預かっている」
ヒクイ「天界名義って、何だ!?」
ユリナ「まぁ気にするな。住まいを借りるとなると躊躇うが、食費くらいの出費なら必要経費だ」
ヒクイ「んじゃまぁ、これからそれぞれのマンションと家に案内してやる。ついて来い」

〇タワーマンション

〇中規模マンション

〇大きな日本家屋
ヨモギ「家が大きいっす!」

〇広い和室
ヒクイ「あー疲れた。 町といってもそこそこ広いし、マンションはちょうど南北の端にあって距離があるし」
ヨモギ「全く、だらしないっすねぇ」
ユリナ「だが、町全体をカバーできて、拠点として申し分ない。この家は町の中心地にあるしな」
ヒクイ「なぁそろそろ、その話し方をやめねぇか?」
ユリナ「う・・・・・・すまない、癖なんだ。 部下の前では戻せなくなった」
ヨモギ(先輩、この男の前ではもとの口調で話していたんすか?)
ヨモギ「先輩は真面目っすから。 上官たちの口調を真似たんすよ」
ヨモギ「部活のときは、そんな話し方じゃなかったのに・・・・・・」
ヒクイ「待て。先輩って、いつからの先輩なんだ?」
ヨモギ「学校からっす。同じ部活の──」
ユリナ「そ、その話は今いいだろう!」
ヒクイ「なるほど、どうりで打ちとけているわけだ。 で、何部だ?」
ヨモギ「文芸部っす! 先輩は、よくポエムとか書いていたっすよね?」
ユリナ「ヨモギ! 人の黒歴史を!」
ヒクイ「天使なのに、黒歴史・・・・・・」
ユリナ「あ、笑ったわね! 誰にでもあるでしょ、黒歴史くらい!」
ヒクイ「そうか?」
ヨモギ(先輩、口調が戻っているっす)
ヨモギ(多分、イリス様としかこの口調で話せていなかったのに・・・・・・。 何だか楽しそうっす)
ユリナ「ヨモギ、何を笑っているの!? あなたのせいだからね!」
ヨモギ「え〜」
ヨモギ(仕方ない。 この男のことを少しだけ認めてやるっす)
ヒクイ「あ」
ユリナ「どうしたの?」
ヒクイ「一つ、お前らにいってなかった問題があった」

次のエピソード:第四話 濡れる悪魔

コメント

  • 自分は緑の子が良いですね……

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