いつか薔薇色の走馬灯

さくらだ

第7話「盗賊団の少女」(脚本)

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〇山中の川
  第7話
  「盗賊団の少女」
ローズ「な・・・」
ローズ「何するんだよ!?」
チェスター「・・・人毛は売れるんだよ」
チェスター「いい髪だな、これ 高く売れるぜ」
ローズ「はあ!?」
ローズ「売れるって・・・何ふざけたこと言ってるんだよ!?」
ローズ「食事と寝床のお礼は働くことで返してるんじゃなかったのか!?」
ローズ「その上髪まで盗るのかよ!?」
チェスター「ま、俺は盗賊だからな」
ローズ「答えになってない!」
盗賊団の男「あん? なんだなんだ? 喧嘩か?」
  そうこうしているうちに、他の仲間たちが戻ってきてしまった。
盗賊団の男「あれ? 坊主、おまえそんな頭だったっけ?」
ローズ「あ・・・ う、うん」
盗賊団の男「ふーん?」
  男たちは微妙に変わった私の頭を特に気にすることもなく、
  泥や返り血で汚れた服をさっさと脱ぎ、川の水で体の汚れを落としはじめる。
ローズ(げっ! 裸!)
ローズ(ど、どうしてこの人たちはそうポンポン脱ぐのよ! 乙女の前だっていうのに!)
ローズ(・・・まあ、この人たちはそんなこと知らないんだけど・・・)
ローズ「・・・ぼ、僕、食事の準備をしてくる!」
  私は彼らの開けっぴろげすぎる姿に背を向け、そそくさとその場をあとにした。
チェスター「・・・」

〇森の中
  夜
  どんちゃん騒ぎの食事の席。
ローズ(もう、本当に信じられない!)
ローズ(チェスターのやつ、人の髪を勝手に切るなんて!)
ローズ(今まで耐えてきたけど・・・ もう我慢の限界よ!)
ローズ(今夜、絶対にここを逃げ出してやる!)
  私はひとり静かに決意を固める。

〇けもの道
  深夜
  みんなが寝静まった頃、私は肩掛け鞄と弩を掴んで、忍び足で集団を離れる。
  すると──
「おい」
ローズ「!」
  木影から、チェスターが現れた。
チェスター「どこいくんだ? まさか逃げる気か?」
ローズ「チェスター・・・!」
ローズ(み、見つかっちゃった・・・)
ローズ(連れ戻される?)
ローズ(でも──)
  私だって、いつまでもここにいるわけにはいかない。
ローズ(──ここは強行突破するしかないわ 早くヴィクターにも会いたいし・・・)
  私はチェスターに構えた弓の先を向ける。
ローズ「・・・引き止めるつもりなら、撃つよ」
チェスター「何だよ、物騒だな」
ローズ「余裕だな・・・ 撃たれるわけがないと高を括ってるのか?」
ローズ「僕は本気だからな」
ローズ「僕だって急いでるんだ いつまでもここにいるわけにはいかない」
チェスター「あのなぁ・・・ 脱走ならせめて昼間にやれよ」
チェスター「夜の森は危険だぜ」
ローズ「バカにしてるのか? 明るい時間に逃げてもすぐに捕まるのがオチだろ」
チェスター「いや、心配してやってんだって」
ローズ「嘘だ!」
チェスター「本当だよ」
チェスター「ま、信じてくれなくてもいいけどよ でもその弓をくれてやったのだって──」
盗賊団の男「お頭! 大変です!」
  森の茂みから、男が飛び出してきた。
チェスター「どうした?」
ローズ(あれ? この人たしか・・・ 何日か前に街に情報収集に出た人?)
チェスター「何かあったのか?」
盗賊団の男「それが、ヤングットの街で仲間が捕まっちまって・・・」
チェスター「何?」
盗賊団の男「明日の正午までにお頭を連れてこないと 処刑しちまうって言ってるんです」
チェスター「明日の正午だと・・・?」
チェスター「って、今から出ねえと間に合わないじゃねえか!」
盗賊団の男「ええ・・・」
盗賊団の男「でものこのこ出ていったら、今度はお頭が・・・」
チェスター「ああ、代わりに断頭台行きかもな」
チェスター「でも、だからってあいつらを見捨てるわけにもいかねぇだろ」
チェスター「奥のやつら起こしてこい! 今すぐ出発するぞ!」
盗賊団の男「で、でも・・・」
チェスター「いいから早くしろ! 俺だってむざむざ殺されにいく気はねぇよ」
盗賊団の男「は、はい!」
チェスター「・・・つーことだから、おまえはもういけ」
ローズ「え?」
チェスター「街でひと暴れすることになりそうだからな」
チェスター「おまえ、荒っぽいことは好きじゃねぇんだろ? それくらい見てればわかるぜ」
チェスター「だったらいけよ 巻き添え食う前に」
ローズ「い、いいの・・・?」
チェスター「ああ もともとおまえにいてもらうのも少しの間って約束だったからな」
チェスター「それにいく場所があるやつを巻き込むのも趣味じゃねえし・・・」
ローズ「・・・」
  しかし、私は動かない。
チェスター「何だよ いかねえのか?」
ローズ「・・・うん、いかない」
ローズ「気が変わった 僕も君たちと一緒にいくよ」
チェスター「あ? なんでだ?」
ローズ「僕の行先もヤングットなんだ」
ローズ「一人でこの森を歩くよりは君たちと一緒にいるほうが安全だろうし・・・」
ローズ「それに、もし君たちが僕を街まで送り届けてくれたら」
ローズ「仲間を助けるのに協力してあげてもいいよ」
チェスター「はあ? 協力ぅ?」
チェスター「何言ってんだ おまえみたいなのがいても足手まといにしか──」
ローズ「戦うつもりはないの」
ローズ「でも、私の身柄を交渉材料に使ったらいいわ」
チェスター「・・・あ?」
ローズ「チェスター」
ローズ「私の名前はローズ・メイウェザー」
ローズ「『ヴィクター』っていうのは偽名で・・・」
ローズ「実は、イルヴレアの都に住む貴族の娘なの」
ローズ「ヤングットを治める領主は、私の叔父なのよ」
チェスター「・・・何だって?」
  第7話「盗賊団の少女」終
  
  第8話に続く

次のエピソード:第8話「人質ローズ」

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