第10話 憂いの旋律マリッジブルー①(脚本)
〇結婚式場前の広場
苗場桜「え!? 愛天使になれ?」
朝陽林檎「お願い!」
苗場桜「やだよ」
朝陽林檎「魔霊がね、人々の愛を壊そうとしてるの。 私たち戦わなくちゃいけないんだよ」
苗場桜「何度もしつこい。嫌だったら嫌!」
朝陽林檎「・・・はあ」
朝陽林檎「・・・ん?」
林の木陰に、ボロボロの服を纏(まと)った小さな影が横たわっていた。
バビルン「・・・・・・」
朝陽林檎「ウサギ? まだ息してる・・・」
〇宇宙要塞
〇謎の施設の中枢
ベーザイ「ブクロクめ、無様に負けるとは・・・」
ベーザイ「しかも二人目の愛天使が現われた。 奴らをすみやかに見つけ出して殺せ」
「お任せを」
ベーザイ「ただし、我々が地球にやって来た真の目的を忘れるな」
ベーザイ「それは地球上のすべての人間どもの心を悪に染め、我々に従属させることだ」
「承知しております」
ベーザイ「音楽を使っての洗脳、そのためにFRENZYを結成し、ライブ活動を行っているのだ」
ベーザイ「ビーモン、首尾はどうだ?」
ビーモン「はい、全て順調です。本日もアリーナにて生中継ライブを予定しております」
ベーザイ「良かろう。いかなることがあろうとライブ活動を優先せよ」
ベーザイ「ライブだけは落ち度なきようにな」
「心得ました」
ベーザイが去ったあと、悪神たちの間には重い沈黙が流れる。
ビュオーーー!!
突然、魔船の室内に力強い突風が吹き荒れた。
ビーモン「ホーディ、何の真似だ?」
ホーディ「バカでノロマなブクロクのせいで、俺までコケにされた気分だぜ・・・」
ホーディ「次は俺が行く。愛天使、覚悟しておけ!」
〇可愛らしい部屋
バビルン「・・・・・・」
バビルン「うう・・・あれ? ここは・・・」
目を覚ましたバビルンは、林檎の部屋のベッドに寝かされていた。
隣で眠っていた林檎が、寝ぼけてバビルンの耳を握りしめる。
バビルン「げふぅ!!」
朝陽林檎「ん~? げふ~?」
バビルン(に、人間だぁ!)
バビルン(ここは下等動物のウサギになりすまして・・・!)
朝陽林檎「ウサちゃん!」
バビルン「!?」
朝陽林檎「目が覚めた・・・よかった。 頑張ったねええ!」
林檎は涙目でバビルンを撫でまわす。
バビルン「ヒッヒッヒ、くすぐったい! も~やめろって!」
朝陽林檎「えっ? ・・・ウ、ウサギがしゃべった!?」
バビルン「あ! やば~!」
朝陽林檎「またしゃべった! やば~って? ねえねえ、話ができるの?」
バビルン「バレちまったら仕方ない」
バビルン「おい人間! いっとくが俺はウサギじゃない、バビルンだ!」
朝陽林檎「バビルン?」
バビルン「俺はな、尊敬するご主人様と旅をしていた」
バビルン「でもはぐれて──いででで!!」
朝陽林檎「だ、大丈夫?」
バビルン「・・・・・・」
朝陽まゆみ「林檎~学校遅刻するわよ~!」
朝陽林檎「あ! いっけな~い!」
朝陽林檎「バビルン、傷が治るまで好きなだけここにいていいよ」
バビルン「え・・・」
朝陽林檎「でも、いろんな人がいるから、これからは人前でしゃべっちゃだめ。いい?」
バビルン「・・・・・・」
朝陽まゆみ「林檎~? 起きてるの~?」
朝陽林檎「は~い!」
朝陽林檎「私の名前は林檎だよ、バビルン。 よろしくね!」
バビルン「騒がしいヤツ・・・?」
バビルンは呟くと、自身の体に巻かれた包帯に気づいた。
バビルン「あいつ、俺の手当てを?」
バビルン「・・・・・・」
バビルン「早くブクロク様を捜しに行かなければ・・・!」
〇高い屋上
朝陽林檎「二人で食べるとおいしいね」
武笠蘭「特に林檎と一緒だからね」
林檎と蘭がお弁当を食べていると、どこからかピアノの旋律が聞こえてきた。
朝陽林檎「なんだろう? この音、とても悲しい感じがする・・・」
武笠蘭「えっ? ちょっと、林檎!?」
〇音楽室
林檎はガラス窓越しに音楽室の中をのぞいた。
そこにいたのは、元音楽教師の柊音葉(ひいらぎおとは)だった。
ピアノを弾く音葉の瞳から、涙のしずくがポタリと鍵盤に落ちる。
朝陽林檎「音葉先生?」
思わず林檎が扉を開けると、音葉は慌てて涙をぬぐった。
柊音葉「朝陽さん!」
朝陽林檎「あ・・・」
柊音葉「久しぶりね。音楽室に何か用?」
朝陽林檎「いえ、その・・・」
柊音葉「?」
武笠蘭「いたいた、林檎―っ!」
武笠蘭「急に走り出すからビックリしたよ・・・」
武笠蘭「って、あれ? 音葉先生じゃん!」
柊音葉「武笠さんまで。元気そうね」
武笠蘭「今日はどうしたんですか? この前、結婚するからって学校辞めたんですよね?」
柊音葉「残ってた荷物を取りにきたの。 音楽室の前を通ったら、急にピアノが弾きたくなって・・・」
柊音葉「それじゃ、勉強頑張ってね!」
武笠蘭「! ・・・もっと話したかったのに」
朝陽林檎「・・・・・・」
〇まっすぐの廊下
朝陽林檎「音葉先生・・・」
武笠蘭「林檎。どしたの? ボーッとしちゃって」
朝陽林檎「実はね、音楽室に行ったとき、音葉先生が泣いてたの見ちゃって・・・」
武笠蘭「泣いてた?」
武笠蘭「うーむ。それはもしかしたら、マリッジブルーだね」
朝陽林檎「マリッジブルー?」
武笠蘭「結婚する人がさ、将来に不安を感じて落ち込むことだよ」
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