ここが俺(私)の蔵杏大学

萩野 須郷

エピソード9〜絶望を誘う再会〜(脚本)

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萩野 須郷

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〇華やかな寮
  〜次の日〜
リオ「・・・あ、シキブ先輩。お疲れ様です」
シキブ「あら、リオさん。ご機嫌麗しゅう」
シキブ「これから学長室に向かうところですの?」
リオ「ええ、そうです」
リオ「・・・あの・・・シキブ先輩」
リオ「昨日は、申し訳ありませんでした」
リオ「シキブ先輩はあんなに頑張ってくれていたのに、私は何もできなくて・・・」
シキブ「・・・・・・・・・・・・」
シキブ「それで・・・あなたは今後、どうするつもりですの?」
リオ「私は学長のいうとおり、表の戦いにはあまり参加していません」
リオ「私の役目はあくまで後方支援・・・テレポートという性質上、前衛としては戦えないからです」
リオ「でも、昨日家でおじいちゃんと話して、わかりました」
リオ「「自分には戦う力がない」・・・その理由を盾にして、自分の弱さから逃げることはもうやめよう、って」
リオ「戦う魔法を持ってないのなら、魔法以外の手段で戦う方法を見つければ良い」
リオ「魔法だけに頼らず、自分ができることをやろう。・・・そう決めました」
リオ「だから、いつか・・・」
リオ「おじいちゃんと、シキブ先輩・・・2人の後ろではなく、横に並んで戦えるように、私も自分を鍛えたいと思います」
シキブ「・・・・・・ふうん・・・」
シキブ(さすが学長・・・リオさんの目が輝きを取り戻してますわ)
シキブ(しかもその輝きは、以前よりも強くなっている)
シキブ(リオさんは今まで、どこか冷めていた印象がありましたけど・・・。ふふっ、前を向き始めたみたいですわね)
シキブ「・・・わかりましたわ」
シキブ「私も、あなたが戦えるよう尽力させていただきます。共に肩を並べて戦えるように・・・」
リオ「・・・はい!!」
「・・・クスクスクス・・・」
「共に戦う・・・ですか」
「戦うどころか、隣にいる人すら守れないあなたが・・・ねえ」
シキブ「い、一体どなたですの!?」
レイ「昨日はどうも、お世話になりました・・・リオさん」
リオ「・・・あ、あんたは昨日のっ・・・!!」
レイ「そして隣にいるのは・・・同じ魔界同好会のシキブさん・・・ですわね」
シキブ「聖裁大学の・・・魔法使い」
シキブ「こ、こんな真っ昼間に・・・。一体、何しに来ましたの!?」
レイ「決まっています。お礼参り・・・ですよ」
レイ「昨日はよくも、私のベイビーたちをかわいがってくれましたわね」
レイ「リオさんと一緒にいた新入り・・・あいつのせいで・・・私たちの計画は台無しですわ・・・」
レイ「昨日の戦いで、大学の機能を停止させるほどの破壊を巻き起こそうと思ったのに・・・」
レイ「計画の20%も実現することができなかった!!」
レイ「ですので、あの新入りの魔法について、洗いざらい話していただきますわよ」
レイ「そいつを何とかしないと、私たちの野望は実現しないのでね・・・。だから・・・」
レイ「あなたたちを、聖裁大学に連行しますわ」
レイ「おっと、変な動きをしないでくださいまし」
レイ「少しでも不審な動きをすれば・・・。私のベイビーが、蔵杏大学の学生たちを襲いますわよ。あなたたちも含めて・・・ね」
シキブ「この女・・・白昼堂々、こんな人通りの多い場所で、魔法を使いやがってッ・・・!!」
レイ「・・・魔法、ねえ・・・」
レイ「私のベイビーは完璧ですの。まるで普通の動物みたいですのよ?」
レイ「だから、誰も私が魔法を使っているなんて思わないでしょうね」
レイ「でもシキブさん、あなたの魔法はクリオキネシス・・・でしたわよね」
レイ「この場でいきなり氷なんて出したら・・・それこそ、魔法だと一発でわかってしまいますわよねえ・・・?」
シキブ「こいつッ・・・!!だから、この明るい時間帯に来たのか・・・魔法を使わせないために・・・!!」
レイ「そういうことですわ。私、賢いでしょう?・・・まあ、これは学長が考えた作戦なんですけど」
レイ「・・・さあ、どうします」
レイ「おとなしく、付いて来てくれますか?」
シキブ(・・・リオさん。あなたはここから、テレポートでお逃げなさい)
シキブ(そして、このことをすぐ学長に報告するのです)
リオ(え・・・で、でも、そしたらシキブ先輩は・・・?)
シキブ(私はこのまま捕まったフリをして、奴らの動向を注視しますわ)
シキブ(もしかしたら、聖裁大学の内部情報を知ることができるかもしれませんし)
シキブ(だから早く行きなさい。魔物を盾に、こっそりテレポートするのです)
シキブ(そうすれば、あなたが魔法を使ったと周りの学生に気づかれることはありません)
リオ(・・・シキブ先輩・・・)
シキブ(私が奴らの注意を引きつけますわ。だから隙を見つけて、逃げてくださいまし)
リオ(・・・わかりました。必ず、助けに行きますから!!)
シキブ(ええ、期待していますわよ)
レイ「・・・決まりましたか?これからどうするか・・・」
シキブ「・・・仕方ないですわね。ここは潔く捕まることにしますわ」
レイ「ふふっ、随分物分かりが良いですわね。私好きですよ、そういう人」
シキブ「でも、ちょっと小腹が空きましたわ。あなた、何か食べ物でも持ってませんの?」
レイ「バナナならありますよ。えーっと、ちょっと待って下さいね。・・・確かポケットの中に・・・」
シキブ「・・・リオさん、今ですわ!!」
リオ「・・・はいっ!!」
レイ「・・・あ・・・あああ〜〜〜〜!!しまったですわ!!」
シキブ「あなた、ちょっと馬鹿じゃありませんの?まさかこんな単純な策に引っかかると思いませんでしたわ」
レイ「うるさいっ!!この三流魔法使いが・・・今のはわざと引っかかっただけです!!」
シキブ(絶対嘘ですわね)
レイ「それに・・・リオさんが逃げるのは、想定の範囲内でした」
レイ「私たちとしては、シキブさん。・・・あなたを捕らえられれば、それで良いんです」
シキブ「・・・なるほど・・・私たちはあくまであなたたちの掌の上・・・ということですわね」
レイ「・・・何だか大学内が騒がしくなってきましたわね。流石にこう何体も魔物がいると目立ちますか」
レイ「では、さっさとここから移動しましょう」
レイ「言っときますけど、ここで暴れたり、大声を出したら・・・どうなるか、わかっていますわよね?」
シキブ「ご安心を。私はそんな品の無いことはしませんので。さあ、行きましょうか」
レイ「わかりましたわ。・・・あ、バナナ食べます?」
シキブ「結構ですわ。・・・あいにく、バナナは嫌いですので」
シキブ(リオさん・・・頼みましたわよ・・・!!)

〇校長室
  〜16:10 蔵杏大学 学長室〜
学長バルバロッサ「上田。・・・それは・・・本気で言っているんかの?」
上田「はい。マジマジ王国のマジです」
学長バルバロッサ「ふうむ・・・。では、交渉決裂、じゃな」
上田「そうですね。・・・とても残念です」
「おじいちゃん!!」
リオ「た・・・大変よ、シキブ先輩が・・・シキブ先輩が・・・!!」
リオ「・・・って、2人ともどうしたの?神妙な顔して」
学長バルバロッサ「おお、リオか。実は、上田と大事な話をしていたのじゃ」
リオ「そ、そうなの?ごめん、話の邪魔しちゃって・・・。で、何の話をしていたの?」
学長バルバロッサ「それはな・・・・・・」
学長バルバロッサ「わしの持ってる女装用の服1着と、上田の持ってる化粧品3つを交換しようとしたのじゃが・・・」
リオ「・・・はい?」
学長バルバロッサ「・・・いまいち、お互いの妥協点が一致しなくての」
上田「そもそも、服1着に対して化粧品3つっていうのがおかしいですよ」
上田「俺が持ってる化粧品はデパコスなんですよ!?むしろこっちが服3着もらいたいくらいですッ!」
学長バルバロッサ「なっ何を言う!!わしの持ってる服だって、外国で生産された希少な服なんじゃぞ!」
学長バルバロッサ「素材にこだわり抜いた、最高の一品なのに・・・全く価値のわからん奴じゃな!」
上田「ガルルルルル・・・」
学長バルバロッサ「グルルルルル・・・」
リオ「・・・・・・って」
リオ「こんなくだらない話をしている場合じゃなーーーーーーーいッ!!」
リオ「シキブ先輩が攫われました!聖裁大学の、魔物を操る魔法使いに!!」
リオ「相手の狙いは、そこの新入りの魔法について知ること・・・それを、シキブ先輩から聞き出すためです!」
リオ「すぐに聖裁大学に行って、シキブ先輩を助けないと・・・」
学長バルバロッサ「・・・ま、待て、リオ。慌てるでない」
学長バルバロッサ「何も策を考えず、敵地に行くのは危険すぎる」
学長バルバロッサ「相手はシキブから情報を聞き出すこと・・・ということは、シキブにそこまで危害は加えんじゃろ」
学長バルバロッサ「少しの間様子見するんじゃ。相手から何かコンタクトがあるかもしれんしの」
リオ「よ、様子見なんて・・・。そんな悠長なことしていられません!」
リオ「私の目の前で、シキブ先輩が攫われたのに・・・」
学長バルバロッサ「リオ、シキブと一緒にいたのか?」
リオ「はい。私たち2人で話しているところへ、魔法使いがやってきたんです」
リオ「シキブ先輩は、私にテレポートで逃げるようにと言って・・・。一方、自分は情報を得るため、このまま捕まる、と・・・」
学長バルバロッサ「・・・むうん・・・」
学長バルバロッサ「・・・しかし、今の時間帯はまだ学生も多くいる」
学長バルバロッサ「そうなると、魔法が思うように使えん。やはり、夜に聖裁大学に忍び込むのが得策じゃろう」
リオ「そ、そんな・・・」
上田「・・・あ、あのー、ちょっと良いですか?」
リオ「・・・何よ、新入り」
上田「シキブ先輩は自ら捕まりに行った、っていうことなんですけど・・・」
上田「そもそも、リオ先輩のテレポートがあれば、シキブ先輩も捕まらずに済んだのでは?」
上田「そりゃあ、わざと捕まって相手の情報を探るっていうのも1つの手だと思いますけど、あまりにも危険すぎます」
上田「それなら、2人で一旦テレポートで逃げた方が良かったのでは・・・」
リオ「・・・・・・・・・・・・ッ!!」
上田(何だ・・・?リオ先輩も、それに学長までも、顔がこわばっている・・・?)
リオ「・・・・・・たし・・・だって・・・」
上田「え?」
リオ「私だって・・・それができたら・・・とっくにしてたわよ・・・!!」
リオ「シキブ先輩を見捨てることなんてしなかった・・・。でも・・・私の力じゃ・・・どうにもできなかったのよ・・・!!」
上田「・・・あっ、リオ先輩!!」
学長バルバロッサ「・・・・・・やれやれ」
学長バルバロッサ「・・・貴様・・・リオのパンドラの箱を・・・開けてしまったの」
上田「パンドラの箱・・・と言いますと・・・?」
学長バルバロッサ「・・・本当は、貴様には秘密にしたままにしようと思っていたんじゃがの」
学長バルバロッサ「やはり、隠し切ることは不可能か」
学長バルバロッサ「仕方ない。こうなったのも、わしの立ち回りが悪かったせいでもあるからな」
学長バルバロッサ「貴様に全て話そう。・・・わしと、リオのこと。・・・そして・・・」
学長バルバロッサ「聖裁大学のことについても、な」
上田「・・・やはり・・・聖裁大学と蔵杏大学は・・・何か因縁があったんですね」
学長バルバロッサ「そうじゃ。全ての始まりは10年前に遡る」
学長バルバロッサ「おいぼれの懺悔だと思って聞いとくれ」
上田「・・・わかりました」
学長バルバロッサ「・・・わしの一族は代々、優秀な魔法使いじゃった」
学長バルバロッサ「わしも、わしのおじいちゃんも、おじいちゃんのおばあちゃんも・・・そしてリオも、な」
学長バルバロッサ「リオのテレポートは、対象を何十メートルも何百メートルも飛ばすことができる。しかし、それは・・・」
学長バルバロッサ「あくまで、自分自身を飛ばすときの話。・・・自分以外は、飛ばせないんじゃ。1㎜もな」
学長バルバロッサ「それがリオの魔法の・・・重大な欠陥だったんじゃ」
上田「な・・・何だって・・・?」

次のエピソード:エピソード10〜後悔に沈んだ記憶 暗闇の10年〜

コメント

  • 緊迫感の漂う敵との遭遇、そして学長から語られようとうする過去の話。物語の転機となりそうな2シーンの間に挿し込まれる「交渉」、、、脱力しました。緩急の落差が大きすぎますw

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