第十三話「アビオの進化」(脚本)
〇地下道
城井奏太「この先に、 逃げ出したデフィジョンがいるのか・・・」
柊ノボル「奴らがこの星にやって来て3年。 最近、急激にデフィジョンが 増えているんだ。なぜだと思う?」
城井奏太「?」
柊ノボル「孵化だよ。卵を植え付けられたアビオからデフィジョンが生まれ始めているんだ」
城井奏太「!? それが本当なら、世界中にデフィジョンが溢れ返るじゃないか!」
柊ノボル「ククッ。カオスだよなぁ」
城井奏太「笑いごとじゃないだろ!」
柊ノボル「そうカッカするなって。 本部ではセナさんを中心に、 既に色々な作戦が立てられているんだ」
城井奏太「じゃあセナは、デフィジョンの爆発的な 増加を防ごうとして・・・」
柊ノボル「だろうな。ちなみに言っておくが、 俺はあの女嫌いだからな」
城井奏太「セナだって、 お前には好かれたくないと思うよ」
柊ノボル「ククッ。そういうお前は、 あの女に好かれたくて必死って感じだな」
城井奏太「お、俺は別に──」
柊ノボル「下心がないとは言わせねえぞ。 そうでもなきゃ、命を賭ける理由がねえ」
城井奏太「お前、ほんとにひねくれてるな」
柊ノボル「余計なお世話だ」
柊は不意に立ち止まると、
手をかざして俺の行く手を阻んだ。
道の先にうずくまっている人影が見える。
城井奏太「あれは・・・?」
柊ノボル「アビオだ。背中を見ろ」
アビオの背中がメリメリと
音を立てて破ける。
中から小さな形をしたデフィジョンが
体液にまみれて姿を現した。
城井奏太「う、生まれた・・・!?」
柊ノボル「いや、待て。様子がおかしい」
小さなデフィジョンは、
フラフラと数歩歩くと、横に倒れて
そのまま動かなくなってしまった。
城井奏太「どういうことだ? 生まれてすぐに死んだのか・・・?」
柊ノボル「・・・奴らも苦戦しているんだろう。 この星に適応することに」
城井奏太「なんだか・・・哀れだな」
遠くで獣の吠えるような
大きな声が鳴り響いた。
城井奏太「今の声は!?」
柊ノボル「そいつの親が戻って来たのかもしれない! 急いで隠れろ!」
〇地下広場
走って開けた場所へ行き、物陰に隠れた。
通路の先から3m級のデフィジョンが
姿を現した。
デフィジョン「ヒュー・・・ヒュー・・・」
手にはさっき死んだばかりの
小さなデフィジョンを抱えている。
城井奏太「な、なんだ! あれ・・・!?」
柊ノボル「標準の1.5倍の大きさはある。 上級のデフィジョンだ」
デフィジョンは小さなデフィジョンに
顔を近づけたかと思うと、
突然それを噛みちぎった。
城井奏太「げぇ! あれってもしかして、共食いってやつか!?」
柊ノボル「バカな・・・デフィジョンがデフィジョンを喰うなんて話、聞いたことない」
城井奏太「でも・・・あまりに無防備だ。今なら──」
柊ノボル「冗談じゃないぞ。ここを動くな」
城井奏太「撃ち取れるチャンスかもしれない」
柊ノボル「対デフィジョンの戦略は、 一体多数が原則だ」
城井奏太「俺は前にも一人で倒したことがある」
柊ノボル「あいつと戦うなら、せめて セナさんの本隊と合流してからにしろ」
城井奏太「・・・それじゃ、ダメだ」
柊ノボル「?」
城井奏太「セナに・・・また助けられてしまう。 それじゃダメなんだ」
柊ノボル「お前・・・」
城井奏太「たとえ相手が上級のデフィジョンでも、 一人で倒せるくらいじゃなきゃ セナの役には立てない」
俺は飛び出しながら、
レーザーガンをデフィジョンに連射した。
柊ノボル「お、おい! やめろバカ!」
城井奏太「あんな奴、俺が一人で駆逐してやる!」
デフィジョンはゆっくりと振り向いて、
俺を見下ろした。
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)