〇古生物の研究室
　　数日前
侍丸「拙者を好きなように拘束して欲しいでござる!!さあ!!どうぞ!!」
ネイト「なんなんだお前は・・・！」
梨夢（りむ）「・・・よし」
梨夢（りむ）（計算か天然か分からないけど、侍丸殿が時間を稼いでる隙に。手紙の続きを・・・）
梨夢（りむ）（・・・ネイトの母親は・・・）
梨夢（りむ）（ネイトの母親は──異世界からやってきた人?!）
梨夢（りむ）（ネイトの母親は、異世界から突然現れて結婚、ネイトを産んだ）
梨夢（りむ）（そしてまた異世界へ行ってしまった・・・いや、もしかしたら、元の世界に帰ったのかもしれない・・・）
梨夢（りむ）「・・・」
梨夢（りむ）（ネイトの父親であるヴァルトは、異世界人の研究と称して妻を探し続け・・・）
梨夢（りむ）（妻を見つけられないまま亡くなった。そして研究所は閉鎖）
梨夢（りむ）（閉鎖後の研究所を今も使い続けているのが、息子のネイト。ネイトはここで異世界から人を召喚して）
梨夢（りむ）（結婚相手にしようと・・・）
梨夢（りむ）（それで私が、結婚相手に選ばれたわけか）
梨夢（りむ）「でも私には、イクラという尊い存在が・・・」

〇牢獄
梨夢（りむ）「──ということで、私には心に決めた魚卵がいるんです」
ヴェロニカ「・・・途中でだいぶ混乱しましたが、話は大体分かりましたわ」
ヴェロニカ「要するに。あの薄汚い白衣を着た男、ネイトは──」
梨夢（りむ）「相当な異世界人マニア・・・ということですね」
梨夢（りむ）「父親の背中を見て育ち、異世界人に興味を持った挙句、異世界人と結婚したいと思うまでになった・・・」
梨夢（りむ）「我ながら完璧な推理だ・・・ドヤ顔」
ヴェロニカ「脳みそスカスカですの？」
梨夢（りむ）「のっ・・・脳みそがスカスカだったらこんなに賢くないと思います!!!」
ヴェロニカ「その神経の図太さは尊敬に値しますわ・・・」
ヴェロニカ「・・・私には分かります。あのネイトとかいう気味の悪い研究者は、無意識に母親を求めているんですのよ」
ヴェロニカ「つまり。貴方が彼と結婚をすれば全て丸く収まりますわ」
ヴェロニカ「と、いうか。元の世界に帰る手段を探していたのではなくて？どうしてネイトの身辺調査をしているんですの？」
ヴェロニカ「まあ、付け入る隙はあった方がいいですわね。完璧な人間なんていませんもの」
ヴェロニカ「こうなったら、ネイトを脅して帰る手段を吐かせた方が早そうですわね。脅す材料は充分にありますし」
梨夢（りむ）「あれえ？まるでこっちが悪役のよう・・・？」
梨夢（りむ）「はっ。そうだ、悪役令嬢だった・・・」
ヴェロニカ「前から気になっていたんですが、その呼び方はなんなんですの？」
梨夢（りむ）「悪役令嬢は悪役令嬢です」
ヴェロニカ「私にはヴェロニカ＝ユライヒ＝スーヴェニアンという立派な名前があります。そんな東洋のお茶のような名前ではありませんわ」
梨夢（りむ）「名前が長すぎて覚えられませんの」
ヴェロニカ「ヴェロニカ様でもお嬢様でも短くして呼べばいいでしょう」
梨夢（りむ）「えーじゃあー・・・略してベニちゃん」
ヴェロニカ「はい??????」
梨夢（りむ）「今日はどうする？ベニちゃん」
ヴェロニカ「ダサッ・・・ダサいですわ!!!!もっと他の呼び方があるでしょう!?」
梨夢（りむ）「ところでベニちゃん、残りの二人はまだ引きこもってるの？」
ヴェロニカ「ええ！二人とも牢屋の中で丸くなって陰湿な男展示会になっていますわ!!」
ヴェロニカ「それより、もっと良い呼び方があるでしょう!?私はスーヴェニアン家の長女ですのよ!?」
梨夢（りむ）「ヴェロニカを略してベニちゃんだけど、スーヴェニアンを略してベニちゃんでもいいね」
ヴェロニカ「センスが無さすぎますわ!!!どういう生き方をしてきたんですか貴方は!!」
梨夢（りむ）「今日はどうする？ベニちゃん。直接ネイトのところに行く？」
ヴェロニカ「私も行く流れになってます？これ」
梨夢（りむ）「行かないの・・・？」
ヴェロニカ「行きたくありませんわ・・・ですが貴方一人で行かせると不安で寝込みそうです・・・」