4.忍びのアイデンティティ(後)(脚本)
〇牢獄
梨夢(りむ)「牢屋なのに一番居心地がいいのは何故・・・」
侍丸「いやあ~梨夢殿、すごかったでござるな!」
梨夢(りむ)「私からすると侍丸殿の方がすごいと思うけど。名前本当に呼びにくいな・・・」
梨夢(りむ)「自分から”縄で縛ってください!”ってお願いするのはなかなか・・・」
侍丸「拙者、縄抜けなどは得意でござるし・・・拘束されても大して意味はないでござる」
梨夢(りむ)「そうか、忍者だもんね」
梨夢(りむ)「いいなあ。私も一つくらい忍者技を教えてもらおうかな」
侍丸「いやいや、そんなに良いものではないでござるよ。役に立つことも少ないでござる」
梨夢(りむ)「そうなの?便利そうだけど」
侍丸「拙者がいた紫電の里にも・・・もうほとんど忍者はいないでござる」
梨夢(りむ)「えっ。異世界の忍者ワールドじゃないの?」
侍丸「二十年ほど前、拙者の世界に魔法が持ち込まれて、すごい早さで発展を遂げたんでござる」
侍丸「忍者は修業が厳しいでござる。皆、忍をやめて魔法使いを目指すようになってしまったんでござるよ」
侍丸「魔法に比べたら・・・拙者の技など大したことはないでござる」
〇集落の入口
〜紫電の里〜
侍丸「・・・」
元忍「いくぞー!えいっ!」
子供「わははっ!すげー!」
元忍「あ、侍丸だ!おーい!まだ忍者修行してんのかよ!」
元忍「もう無駄なんだからやめろよ!里の長も、三船丸が継ぐって噂だぜ!」
子供「修行なんてやめちゃえ!意味ないよ!」
元忍「古臭くて辛いだけだ。魔法の方がいいに決まってる!」
元忍「次いくぞー!ほらっ!」
「あはははっ!」
侍丸「・・・しかし、それでも拙者は」
侍丸「・・・くっ・・・」
侍丸(どんなに修行をしても、子供が使う簡単な魔法にすら敵わない・・・)
侍丸(拙者は意地になって、必死に伝統を守っているように見えるかもしれない)
侍丸(・・・でも実際は。魔法の適性が無く、扱えないから忍にしがみついているだけ、それだけでござる)
侍丸(もし拙者にも魔法が使えたら、きっと・・・)
侍丸「・・・」
侍丸(拙者は、弱い人間でござる)
〇牢獄
梨夢(りむ)「でも忍者って、忍んで潜んでるわけだから、目立たなくて当然なのでは?」
侍丸「それは、そうでござるが・・・」
梨夢(りむ)「少なくとも私は、侍丸殿がいて良かったと思うよ」
侍丸「拙者がいて良かった・・・?」
梨夢(りむ)「あのまま拘束されたら完全に終わりだったし・・・」
梨夢(りむ)「これから先、拘束された時も移動時間をカットしたい時も、侍丸殿がいれば安心」
侍丸「しかし拙者は・・・」
侍丸「・・・」
侍丸さんの深掘り回ですね!
シリアスな展開と細やかな設定に読み入ってしまいました!彼の抱える葛藤がどう物語本線と関わっていくのか楽しみになります。