〇田舎の空き地
「はああーーーーーーー!!!」
「どりゃあああああ!!」
学長バルバロッサ「・・・上田、シキブ、そこまでじゃ！」
上子「・・・はあ、はあ、はあ・・・」
シキブ「学長、なぜ止めるんですの・・・」
シキブ「まだまだ、勝負はこれからですわよ」
学長バルバロッサ「今回の戦いはあくまで、お互いの実力を知るのが目的じゃ」
学長バルバロッサ「相手を倒すことが目的ではない」
学長バルバロッサ「だから、もう十分じゃ。良いな？」
シキブ「・・・・・・・・・・・・。そうですわね」
シキブ「一応、これからは仲間として共に戦うわけですものね」
シキブ「上田さん、私のわがままに付き合っていただいてありがとうございます。感謝しますわ」
上子「い、いえ・・・。俺の方こそ、今夜の戦いの前に、自分の魔法のことをより知ることができたので、良かったです」
上子「途中、なぜか急に学長から炎で攻撃されたのには納得いってませんけど・・・」
学長バルバロッサ「そ、それはあくまで、貴様の魔法の正体を知るためにやっただけじゃ」
学長バルバロッサ「決して、良い魔法持ってるから悔しくなってちょっと痛い目に合わせてやろう、とか思った訳じゃないぞい」
上子「本音ダダ漏れじゃないですか・・・」
シキブ「でも確かに、あなたの魔法は強力ですわよ」
シキブ「「魔法をコピーする」・・・それがあなたの、力の正体ですわね」
上子「はい。てっきり、学長と同じパイロキネシスだと思ってましたけど」
学長バルバロッサ「貴様の魔法は特殊じゃ。じゃから、もう少し力の詳細を解き明かす必要がある」
学長バルバロッサ「じゃが、今は今夜の戦いのために体力を温存させておいた方が良いじゃろう」
上子「そうですね。まあ、さっきまでの戦いで結構わかったこともありますし」
上子「魔法の力を受けることで他人の魔法をコピーし、使うことができる」
上子「コピーできる魔法の数はわかりませんけど・・・少なくとも２つ以上はコピーできるみたいです」
上子「でも、コピーした魔法はいずれ使えなくなる・・・それが１時間後なのか、１日後なのかはまだわかりませんけど」
シキブ「・・・魔法が使えなくなるタイミングが生じるというのが、何とも惜しいですわね・・・」
シキブ「ですが、その弱点を持ってしても、あなたの魔法は羨ましいですわ」
シキブ「本来魔法は１人につき１つしか使えませんが、あなたにはその制約がありませんもの」
学長バルバロッサ「そうじゃな。それを踏まえ、今夜の戦いの作戦じゃが・・・」
学長バルバロッサ「とりあえず今の上田は、わしとシキブの魔法をコピーしている状態じゃ。あともう１つ、魔法をコピーしてもらいたい」
学長バルバロッサ「まあ、３つコピーできないなら、これから言う作戦は失敗に終わるんじゃが」
上子「わ、わかりました。何をコピーすれば良いんですか？リオ先輩のテレポートとか？」
学長バルバロッサ「・・・違う。今夜の敵の魔法の方じゃよ」
シキブ「粘土で魔物を作り、それを操る力・・・ですわね」
学長バルバロッサ「貴様が魔法の力を受けることでコピーすることができるなら、」
学長バルバロッサ「遠隔操作された魔物の攻撃をくらえば、魔法使い本体の魔法をコピーできると思うのじゃ」
上子「へー。それってつまり・・・」
上子「一回、痛い思いする必要があるってことですか。うへえ、嫌だなあ・・・」
上子「あ、でも相手は粘土で魔物を作るんですよね？それなら、手のひらサイズの魔物だろうし、そんなに痛くないかも」
学長バルバロッサ「何言っとるんじゃ。相手は、体長５メートルを超える魔物もバンバン出してくるぞ」
上子「・・・え？ご、ごめーとる？俺よりでかくないか・・・？」
学長バルバロッサ「そりゃお金持ちの大学で、設備も充実しとるからの」
学長バルバロッサ「材料となる粘土を仕入れるのも簡単じゃろうし、巨大な魔物を作るための地下室とかがあってもおかしくないじゃろ」
上子「・・・お、俺はそんな奴の攻撃を受けないといけないのか・・・」
シキブ「まあ、中には30cmの魔物もいますから。攻撃されても痛くなさそうな魔物を見つけるのが良いですわよ」
上子「そうします・・・」
学長バルバロッサ「そうして上田に相手の魔法をコピーしてもらえば、こちらも魔物を操ることができる」
学長バルバロッサ「そうすれば、魔法使い本体を探す時間を増やすことができるじゃろう」
シキブ「確かに名案ですが、肝心の粘土はどうやって用意するんですの？」
学長バルバロッサ「こちらで用意する必要はない。もう既に相手が用意しているんじゃからな」
学長バルバロッサ「相手が遠隔操作している魔物を乗っ取ってこちらで操作する。それで魔法使い本体を混乱させるんじゃ」
シキブ「そんなことができるんでしょうか・・・。相手が操っている魔物を乗っ取る、なんて・・・」
学長バルバロッサ「上田は相手の魔法を完璧にコピーすることができる」
学長バルバロッサ「完璧には操れなくても、魔物の判断を鈍らせて機能停止にすることはできるんじゃないだろうか？」
学長バルバロッサ「1つのものに全く異なる指示を出すと、人間も機械もちょっと戸惑うじゃろ。それと同じになるはずじゃよ。・・・多分」
シキブ「・・・何だか・・・今夜の戦いは、全体的に「運まかせ」と言うか・・・上田さんの力次第というところですわね」
上子「ちょ、プレッシャーかけないでくださいよ！」
学長バルバロッサ「大丈夫じゃよ、上田。もしわしの予想通りにいかなくても、貴様は十分強い。相手を結構追い詰めることができると思うぞ」
学長バルバロッサ「とにかく相手が手を引いてくれればそれで良いんじゃ。ま、例の魔法使いを捕まえて、聖裁大学に文句を言うのが理想じゃがの」
学長バルバロッサ（そしてあわよくば、今まで破壊された大学設備の修理代を全額払ってくれれば良いのじゃが・・・）
学長バルバロッサ「これ以上聖裁大学の好きにはさせん。わしらに二度と危害を加えないでもらえれば良いのじゃ」
学長バルバロッサ「全く。自分たちが金持ちだからって大学のあらゆる設備に金箔を使いおって。気に食わんわい」
学長バルバロッサ「そもそも、あの学長も生け好かんしの」
上子「・・・学長って、聖裁大学と何か因縁でもあるんですか？」
上子「さっきからものすごい愚痴ってますけど」
学長バルバロッサ「・・・・・・・・・・・・。以前、聖裁大学の学長と会った時、」
学長バルバロッサ「ちょうど奴が、女装しておったんじゃ」
学長バルバロッサ「そして、その女装姿を見て、思わずわしは言ったんじゃ」
学長バルバロッサ「・・・「かわいくない」・・・と」
学長バルバロッサ「それからじゃよ。あの学長と、何かにつけていがみ合うようになったのは」
上子「・・・・・・いやいやいやそれはあんたが悪いだろ!!」
学長バルバロッサ「なっ！何でじゃ！わしは自分の素直な気持ちを口に出しただけじゃい!!」
上子「だってその学長は、きっと俺たちみたいに女装が好きなんだろ？それなのに「かわいくない」なんて言われたら傷つくだろ！」
学長バルバロッサ「あ、あ、あ、あいつはそんなガラスのハートな持ち主じゃないわい！」
学長バルバロッサ「まあ、そういう出来事があってから、わしの大学設備が破壊され始めたんじゃがな」
上子「相手にがっつり根に持たれてるじゃねーか!!」
上子「あーあー。全くこのおっさんは。自業自得だよ・・・」
学長バルバロッサ「うるさいうるさーーーい！みなまで言うな!!」
学長バルバロッサ「何じゃい何じゃい。かわいくないって言われたくらいで・・・そんなに怒らんでもいいじゃろがい」
上子（いじけてしまった）
学長バルバロッサ「ふん。とにかく今夜決着をつければ良いんじゃ。終わりよければ全て良しじゃし」
学長バルバロッサ「ということで、今夜10時、よろしく頼むぞい。呆れて逃げ出すでないぞ、特に上田」
上子「わかってますよ！」
学長バルバロッサ「では解散じゃ。各々、戦いに備えるが良い」
上子「わかりました。・・・ふああ。家に帰って、仮眠でも取ろうかな・・・」
シキブ「・・・学長。今の話ですけど・・・」
学長バルバロッサ「・・・その話はもうお終いじゃ。シキブももう帰れ。今夜はきっと、激しい戦いになるからの」
シキブ「・・・わかりましたわ。では一旦失礼します」
「・・・おじいちゃん」
リオ「さっきの、嘘だよね？」
リオ「「かわいくない」・・・それが全ての因縁の始まり、だなんて」
リオ「本当は・・・・・・」
学長バルバロッサ「良いんじゃよ、リオ」
学長バルバロッサ「わしはあくまで上田を利用しているに過ぎない。そいつに、全てを話す必要なんてないじゃろ」
学長バルバロッサ「あいつは、あくまで「特別枠」なんじゃからな」
リオ「・・・・・・うん、わかった」
学長バルバロッサ「さ、リオも少し休め」
学長バルバロッサ「今日の戦いが、きっとわしらの今後の運命を変えることになるじゃろう」
リオ「・・・・・・そうなると良いな・・・」